伊東歌詞太郎(Vo.)と宮田“レフティ”リョウ(Ba./G./Key.)による2人組音楽ユニット、イトヲカシが昨年9月のメジャーデビューシングルに続く2ndシングル『さいごまで/カナデアイ』をリリースする。今作は“キットカット”受験生応援キャンペーンソングにして河合塾2017年度CMタイアップソングでもある「さいごまで」と、TVアニメ『双星の陰陽師』のオープニングテーマ「カナデアイ」の2曲を収録した両A面シングルだ。受験生だけに限らず目標に向かって突き進む人たちに“さいごまで 走り抜けてやれ”という力強いメッセージを歌うミドルバラード調の「さいごまで」と、アニメの世界観に沿いつつも共に夢を追い続けるメンバー2人の関係性にも重ねられるような「カナデアイ」。老若男女に届くポップス的な普遍性を持ったサウンドに、嘘偽りのない等身大の言葉を乗せた2曲は、イトヲカシの目指す“王道”が明確に刻み込まれている。
「僕たちは“夢追い人だな”って思うんですよ。言いたいことって“頑張りたい”とかだし、嘘偽りなく“夢を叶えたい”という願望もあるし、夢を叶えたら笑ってくれる人たちも周りにいる」
●今作のM-1「さいごまで」は、“キットカット”受験生応援キャンペーンソングと河合塾2017年度CMタイアップソングに選ばれているんですよね。この曲は実際に受験生を応援するような気持ちで作ったんでしょうか?
歌詞太郎:ミュージシャンとしてすごく貴重な機会を頂けたなと思って、嬉しかったですね。“パワーワード”って僕らは勝手に呼んでいるんですけど、サビの1行目・1つ目の言葉に刺さる言葉がある曲ってすごく強いなと思うんですよ。たとえば“負けないで”とか、“大丈夫”や“ありがとう”だったり。そういう言葉と同じくらいの力を持つパワーワードを、僕らなりに見つけ出したいという話をしていた時期があって。その中で“さいごまで”という言葉とメロディが一緒に出てきたんです。
●最初はそこがキッカケだった。
歌詞太郎:レフティと「これって僕らなりのパワーワードだよね」っていう話をしていた直後に、今回のお話を頂いたんです。だから、もうすぐに「これじゃないか!?」となって。“最後まで頑張れ!”って応援する自分たちなりの一番のパワーワードはこれだなということで、2人ともすごく納得して選びました。
●ちょうどハマる言葉が出てきた時と重なったわけですね。
レフティ:今回のお話を頂いた時に2人の間では「あれだよね!」っていう感じで、すぐに浮かびましたね。
歌詞太郎:そういう運命的な天の配剤も含めて、今回のお話を頂けたことが本当に嬉しく思いました。
●歌詞太郎くんは自分自身の受験経験だけではなく、塾講師をやっていた時期に受験生と接した経験も活かして今回の歌詞を書いたそうですが。
歌詞太郎:教える側として生徒たちを見てきた中で自分なりに“受験ってこういうものなんだなと学んだこともあったので、そういう経験も歌詞に入れ込みたいなと思って書かせて頂きました。これも偶然なんですけど、ちょうど当時教えていた生徒から連絡が来て、同窓会みたいなものをやりましょうという話があったところだったんですよ。それをキッカケに当時どんな気持ちだったかを電話で訊いたりしたことで、自分の中から出てくる言葉にも変化があったと思うんです。
●実際に当時の生徒から訊いた想いも歌詞に反映している。
歌詞太郎:そういうものも含めた色んな経験の集合体を、この歌詞には落とし込めたなと思います。”偶然が色々重なるものなんだな”とその時にすごく感じたこともあって、思い入れの深い曲になりましたね。
●レフティくんも、路上ライブで受験生と出会ったりしたそうですね。
レフティ:路上ライブにも、受験生の子がたくさん観に来てくれているんですよね。その中で「“受験頑張って!”と言って下さい」と頼まれたりもして。そういう人たちの顔が見えているのと見えていないのでは全然違うと思うんですよ。僕は音に気持ちを乗せられると思っているから。そういう意味ではその人たちの表情を思い浮かべたりすることが、自分のプレイにもすごく活きていると思います。
●自分自身の受験経験も活かされている?
レフティ:僕自身は受験をした経験はあまりないんですけど、バンドのコンテストに出たことは高校時代にあって。そういうものに向かって行く時や生活の中で落ち込んでいる時に、音楽に鼓舞されて助けられることがたくさんあったんです。だから、音楽は背中を押してくれる魔法のようなものだと思っていて。そういうものを僕らはミュージシャンとして作らないといけないなと思っています。
●聴いてくれる人の背中を押すような曲にしようという意識もあった。
レフティ:テンポ的にはミドルバラードの部類に入ると思うんですけど、そういう中でも背中を押してくれるようなドライブ感をどこかで表現できないかというところは考えました。だから色んな部分のアレンジ面でも、すごくミュージシャンとしての気持ちが入っていったんです。デモでは打ち込みだったドラムが途中で生音に差し替わったりして、どんどん気持ちが倍加していくのを感じた作品ですね。
●アレンジ面ではストリングスの導入も、気持ちを高めるのに効果的なものになっているかなと。
レフティ:今回も琴線に触れるような、グッとくるラインにはすごくこだわりましたね。ラインを自分で考えながら、少し泣いちゃう時もあるんですよ。そういう気持ちを大切にしたいなと思っています。歌詞の情景をサウンドに落とし込めるように意識して、アレンジを作りました。
●歌詞で言うと、“振り返らず同じ場所を見つめていて”と歌っておいて、その後で“いつの日か振り返り思い出せばいい”となっているのが面白いなと思いました。
歌詞太郎:“いつの日か”なんですよね。自分が受験生の時もそうでしたけど、今は本当に余裕なんてないのはわかっているから。家族や塾の先生が“ずっと応援しているよ”っていう気持ちでいても、本人には全く余裕がないから伝わらなかったりもする。でも“無償の愛”というか、“どんなことがあったとしても自分の息子・娘なんだ”という大きな愛が親にはあると思うんですよ。そういうことも含めて、後で振り返った時にわかることがたくさんあって。
●余裕がない時には気付けないこともある。
歌詞太郎:受験だけじゃなくて音楽活動においても、後から振り返った時に“あんなにも支えてくれる人たちがいたんだな”というのは自分の人生でも感じてきたことなんです。その中で今回は“受験”というテーマに限定した時に、“今はとにかく真っすぐ目標だけを見ていろ”と。でも後で思い出すことで、また1つ成長できるんじゃないかなという気持ちをそこには込めました。
●受験生以外の人も後押しするような歌詞になっているのでは?
レフティ:そうですね。人生はスタートとゴールの連続だと思うんですよ。色んなターニングポイントや試練もある中で、目指すゴールもあって。
歌詞太郎:受験が終わった先にいる人間として、僕らも“勝負はずっと続く。生きることは死ぬまで続くから”と思っているから。この曲をそういうふうに捉えて、色んな人に聴いてもらえたらなと思います。
●“さいごまで”と歌ってはいるけど、受験の結果は1つのゴールでしかなくて、そこから先も新しいスタートやゴールが待っているわけですよね。
歌詞太郎:だから“走り抜けてやれ“と歌っているんですよね。ラストの大サビでは“そのゴールから誰よりも遠くまで君が自分の足で行くんだ”ということを伝えたかったんです。その後の“僕たちはただ願う笑顔でいてよ”というのは、その人の人生だから僕らがずっと一緒に行ってあげることはできないけど、笑顔で幸せでいて欲しいということで。たとえば何かを頑張っている人がいて、その周りでは誰も応援してくれていない状況だとしても、僕たちは“一生懸命応援したい”という気持ちでこの曲を演奏しているわけだから。“最低限、僕らは味方でいるぜ”っていう気持ちなんですよ。
●そういう気持ちが込められているんですね。
歌詞太郎:大サビは特に気持ちがストレートに出ちゃったというか。これを聴いて“頑張ろう”と思ってくれたら、ミュージシャン冥利に尽きるなと思います。
●もう一方のM-2「カナデアイ」は、TVアニメ『双星の陰陽師』のオープニングテーマなんですよね。前作のメジャー1stシングルに収録されていた「宿り星」も、同じアニメのエンディングテーマだったわけですが。
歌詞太郎:前回はエンディングテーマをやらせて頂いた上に、今回はオープニングテーマにも選んで頂いて、すごく嬉しく思っています。
レフティ:原作者の助野嘉昭先生も僕らの大阪でのライブを観に来てくれたりして、本当にイトヲカシの音楽が好きだと言って頂いていて。そういうところも色々とつながって、今回のお話になったんだと思いますね。
●歌詞の内容的にも、アニメの世界観に沿うものになっている?
歌詞太郎:助野先生をはじめ僕らを選んでくれた方々の気持ちに応えたいし、アニメがもっと魅力的に輝くように、僕らはそこに華を添えるべき存在だと思っているんですよ。だから「カナデアイ」に関しては、『双星の陰陽師』の世界観を入れ込むのが当然だと思っていたし、無理に入れたわけではないんです。それに加えて“オープニングテーマである”ということと、僕たち2人で作っているものだから“イトヲカシらしさから逸脱してはいけない”ということも考えて作り上げたのが「カナデアイ」で。その全てを埋め込むことができたので今は大満足なんですけど、本当に難産で当初は全然違う曲調だったりもして…。
●どういうところで詰まったんでしょうか?
歌詞太郎:いつもは僕がメロディを作ってからレフティに渡して、彼からアレンジが上がってくるまでの間に歌詞を書いたりしていて。“こういうアレンジになるだろうな”と予想できるところもあれば、僕の発想にはないようなものを入れてきてくれることもあるので、すごくワクワクして待っているんです。だから僕はイトヲカシの制作が大好きで、歌詞を書き終わって歌入れしてから改めて2人で聴いた時に「マジで良い曲を作っちゃったな」って心の底から言い合ったりするんですよ。でも最初に作ってきた「カナデアイ」のデモを聴いた時はそういう言葉が出なくて、「イトヲカシの方向性ってさ…」みたいな話が第一声で出てきちゃって…。
●自分たちの方向性とは違う形になっていた。
歌詞太郎:「バンドじゃないよね」っていうことを、その時に再確認できて。1日寝かせてから聴き直してみたら、歌詞を書いていた時も“これは絶対良いものになるんだ!”と自分に言い聞かせているような感じで、どこかで自分の本当の気持ちに目を背けているような不健全な制作だったなと思ったんです。そしたらレフティからも連絡があって「これは違うんじゃないか」と言われたので、僕も「そうだよね!」と。
●お互いの気持ちが一致したわけですね。
歌詞太郎:2人とも同じことを考えていたんだなと思いました。イトヲカシは2人組であって、バンドではないし、老若男女に向けた王道のポップスを目指しているんだと思い出したんです。本当にこの曲のおかげでというか、イトヲカシの2人の気持ちがもっと1つになるための曲だったんだなと思って。そこからもう一度作り直したのが、今の「カナデアイ」なんですよ。
●そういった経緯があって、今の形になったと。
歌詞太郎:2人の間で“イトヲカシをどう見せたいか”という部分に違いが出てくると、絶対につらくなってくると思うんですよ。でも最終的にレフティが「カナデアイ」のアレンジをあげてきた時には、“やっぱりここに落としてくるよね”というものになっていて。ポップスであり、アニメのオープニングテーマであり、イトヲカシらしいという、本当に“そこしかない”ところに落とせたから。これから先に何かあっても信頼しているし、この曲のおかげでイトヲカシはもっと1つになれたというのを感じているので、すごく思入れの深い曲になりましたね。
レフティ:本当に良い学びがあったなと思う楽曲ですね。その結果として、愛せる作品ができたと思っています。だからこそ、“ダブルAサイドシングル”という形になったんですよ。
●“さいごまで 走り抜けてやれ”という「さいごまで」も、“夢の先の先へ 終わりのない旅を続けていく”という「カナデアイ」も、両方ともイトヲカシの姿勢に通じる曲かなと思いました。
歌詞太郎:僕たちは“夢追い人だな”って思うんですよ。言いたいことって“頑張りたい”とかだし、嘘偽りなく“夢を叶えたい”という願望もあるし、夢を叶えたら笑ってくれる人たちも周りにいる。両親や一緒に頑張ってくれているスタッフもみんな、僕らが夢を叶えていけば幸せになるし、お客さんも幸せになってくれると勝手に信じていて。今ついてきてくれているお客さんたちは僕らが夢を叶えるのを一生懸命にサポートしてくれているわけで、それが実ったら絶対に嬉しいだろうから。
●自分たちが夢を叶えることで、お客さんも幸せにすることができる。
歌詞太郎:そこが僕の人生の中では大きいんだなって思います。何のために歌うかと言えば自分のためでもあるけど、僕が歌うことで色んな人が幸せになると、迷わず信じているんですよ。それがボーカリストとして生まれてきた意味だと思うから。だからこそ、どの曲にもそういう想いが出てくるんだと思いますね。
レフティ:色んな作品の作り方があると思うんですけど、やっぱり僕たちはそういうふうに等身大で作る楽曲が多いですね。
●自分たちの生き方が反映されているというか。
歌詞太郎:曲に自分たちの状況が素直に反映されてしまうタイプなのかなと思います。2人とも器用な部分と不器用な部分があって。そういう人間性と音楽性を切り離して考えるということは個人的に賛同できなくて、絶対に音楽性に人間性は出てしまうと思っているんですよ。だから今はこういう音楽の作り方しか、自分たちにはできないのかなと思っていますね。
●不器用な部分も曲に自然と表れている。
レフティ:昔から僕は器用貧乏と言われてきたんですけど、「いやいや…不器用なんだよ」っていう(笑)。
歌詞太郎:彼をよく見ていると、すごく不器用なんですよ(笑)。もちろん音楽に関してはすごく器用だと思うけれど、人間関係とかに関してはすごく不器用で。“今こう思っているんじゃないかな? でも優しいし、不器用だから言わないんだろうな”っていうのを汲み取って、こっそり周りに伝えたりする時もありますね。
●本心を汲み取ってあげられるのも、長く一緒にいるからこそかなと。
レフティ:これくらい一緒にいると、何か喋った瞬間に内心で“ウッ!”となっている時とかもわかるんですよ。それをそのままにしてずっと続けていったら、掛け違いみたいなものが生まれてしまうと思うし、コミュニケーションはちゃんと取らないといけないなと思いますね。
歌詞太郎:そういう面で去年の夏頃には、ちょっと甘えていた部分があったと思うんです。“わかっているつもりではいるけど、最近どうなんだろう?”と思って、レフティに話をしたら「俺もこう思っているんだよ」と言われて。“なるほど! 僕たちはコミュニケーションが不足していたんだな”と思いました。
●実は2人の間で、いつの間にかコミュニケーションが不足していたことに気付いた。
レフティ:ずっと一緒にいるので、わかっているつもりになっている部分もありましたね。
歌詞太郎:そこからもう一度、お互いに向き合う時間を増やした方が良いんじゃないかと考えるようになって。その後にできた2曲なので、そういう想いも絶対に入っているなとは思います。すごく正直に作り上げた曲たちだなと。
●「カナデアイ」の最後に歌っている“もう一度行こう”は、自分たち自身にも重なる言葉になっているんでしょうね。
レフティ:本当ですよね。今回の2曲に関しては、こういうテーマを頂いたことに感謝しています。
歌詞太郎:曲を作ったことで人間的にもすごく成長させてもらったなというのは、この2曲に関して僕らが強く思っていることですね。
Interview:IMAI
Assistant:Fukushima Tetsuya
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