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Nothing’s Carved In Stone 村松&生形インタビュー:4人の音が存在する。そこには理由すら必要ない。

4人の音が存在する。そこには理由すら必要ない。

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比類なきアンサンブルとヴォーカリストを擁し、作品を重ねるごとに進化を遂げてきたNothing's Carved In Stone。彼らが12/14にリリースする8枚目のアルバム『Existence』は、4人のキャラクターと可能性、息遣いやパーソナリティ、誇りと歴史と感情、1stアルバム『PARALLEL LIVES』から前アルバム『MAZE』までの年月をすべて凝縮させたような作品だ。まるで結成した当初から、2016年12月14日に鳴り始めることが決まっていたかのような必然性のある楽曲たち。前回のシングル『Adventures』村松拓ソロインタビューに続き、今月号ではアルバム『Existence』について、村松と生形に迫った。

 
 
 
 
 
 

INTERVIEW #1

重要な曲になってきたのかもしれないですね。自分たちの演り方というか、ライブでも持っていき方もわかってきたというか。

 
 
●11/15のワンマンライブ“Live on November 15th”はすごく楽しそうでしたけど(※インタビューはライブ後の11月下旬に敢行)、いかがでした?

 
 
p_muramatsu229感慨深かったです。みんな待っててくれたのがすごく伝わって、やってよかったなって。ライブが始まってすぐにそう思いました。

 
 
●お。客席からも伝わってくるものがあった?

 
 
p_muramatsu229うん。久しぶりのワンマンっていうのもあるかもしれないけど、すごく喜んでくれているのがステージから見ててわかったし。

 
 
p_ubukata229そうだね。ワンマンとしては5月以来だったし、イベントとかではなく自分たち発信のライブがそもそも久しぶりだったんですね。久しぶりに演った曲もあったし、ゲストを呼んだのも初めてだったし。

 
 
●ゲストは初めてだったんですか。

 
 
p_ubukata229はい。今までそういう機会が無かったんですよ。今回は、「Adventures」にピアノを入れようという話になって、レコーディングにはヒイズミくん(ヒイズミマサユ機)に入ってもらって。なので「せっかくだからライブにも来てもらおうよ」ということで。それがすごく楽しかったですね。1曲だけじゃなくて3曲入ってもらって。

 
 
●ヒイズミさんがゲスト参加したのは「Adventures」「Diachronic」、それとアンコールの「November 15th」でしたね。

 
 
p_ubukata229「Diachronic」とかすごく気持ちよかった。色付けされてる気がしたというか。

 
 
p_muramatsu229キラキラしてたよね。

 
 
●そうですよね。今まで“Nothing's Carved In Stoneはこの4人で完璧だ!”と思ってたんですけど、あの3曲をライブで観たとき、まだまだ大きな可能性を感じたというか。“ヒイズミさん加入してくれないかな〜”と勝手に思いました。

 
 
p_ubukata229馴染んでましたよね。きっと、相当考えてくれたんだと思います。リハは1回しか入れなかったんですよ。

 
 
●ええっ!

 
 
p_ubukata229それにリハから本番まで10日間くらい空いてたんですよ。ヒイズミくんのスケジュールがそこしか取れなくて。で、いざ本番をやったらリハと結構違っていて。

 
 
●あ、マジですか。

 
 
p_muramatsu229そうそう。

 
 
p_ubukata229きっとその10日くらいの間で、ヒイズミくんなりに組み立ててくれたんでしょうね。あの人はもともとPE’Zでジャズもすごくやっていたから、インプロビゼーション的にその場でできると思うんですけど、たぶん本番までにもいろいろと考えてきてくれたんだなって。そんな気がしました。

 
 
p_muramatsu229曲の中でギリギリまでいきつつ、結局尺は全然変わってなくて。

 
 
p_ubukata229だから俺らがやってることは変わんないんだよね。

 
 
●なるほど。

 
 
p_muramatsu229要するにそこを考えてくれているというか。

 
 
p_ubukata229すごくやりやすかったな。…やりやすかったというか、俺らはいつもやることしかしてないけど(笑)。

 
 
●ハハハ(笑)。

 
 
p_muramatsu229いつも通りっていうね(笑)。でもヒイズミさんが居ることでバンドの音が豊かになるし、気持ちよかった。

 
 
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●あの日のライブ、ヒイズミさんがゲスト参加した曲もすごくよかったんですけど、全体を通して考えると「In Future」がすごく印象的だったんですよね。

 
 
p_muramatsu229友達にも言われました。「「In Future」でライブの最高値を迎えられる感じになったね」って。

 
 
●それは言い得て妙かも。自分たちとしても意識していたんですか?

 
 
p_muramatsu229それはどうだろう? あまり意識していなかったかも。

 
 
●そうなのか(笑)。

 
 
p_ubukata229「In Future」はかなりの数をライブで演っているんですよ。リリースは今年の4月でしたけど、たぶんリリース以来全部のライブで演っているんです。

 
 
p_muramatsu229それにリリース前の“Hand In Hand Tour”から演ってるからね。

 
 
p_ubukata229だからそういう意味では、重要な曲になってきたのかもしれないですね。自分たちの演り方というか、ライブでも持っていき方もわかってきたというか。

 
 
●「In Future」は拓さんがハンドマイクだし、ステージングの自由度も高いと思うんですよね。

 
 
p_muramatsu229単純に、ギターを持って歌うよりも、ハンドマイクで歌った方が盛り上がるし、そういうことが自分自身わかってきたのかもしれないですね。確かに自由度がある。

 
 
●それと前回の『Adventures』のインタビューのとき、拓さんが「「November 15th」という曲は、歌詞の意味的にも“このバンドをやろう”って自分の中で決めたときの気持ちを書いた歌だから、それを4人で鳴らしているので、(11/15は)誕生日的な意味合いでもいいかな」という話をされていたじゃないですか。

 
 
p_muramatsu229はい。

 
 
●だからあのライブでも、「November 15th」を演る前とかにそういう話をするのかな? と思っていたんです。言ってみれば、そういう話をしてちょっとエモーショナルな感じになるのかな? と。でも実際にはそうじゃなくて、すごくハッピーな雰囲気に包まれていた。

 
 
p_muramatsu229ヒイズミさんが「November 15th」にゲストで入ってくれるっていうのもあったんですよね。ヒイズミさんが入ってもらったときに、なるべく曲が映えるようになって欲しいと思っていたというか。

 
 
●あ、なるほど。確かに。

 
 
p_muramatsu229だからそこに付加価値を付けるっていうよりは、一緒に楽しんでもらいたかったんです。

 
 
●そういう意味では、今までのライブの中でもいちばんエンターテインメント性が高かったライブだったのかもしれないですね。

 
 
p_muramatsu229うん、そうですね。セットリストも今までとかなり違うし、ライブハウスだけどホールっぽいライブにしようと思っていたんです。中盤にもヤマを作るというか、ライブ中盤の「Adventures」「Diachronic」でヒイズミさんに入ってもらうっていうことがありきで考えたセットリストだったので、今までのようにモッシュ&ダイブだけじゃなくて、きちんと聴かせることができるものにしようと思っていて。イメージとしては、2〜3幕くらいあるような感じ。
 
 
 
 
 
 

INTERVIEW #2

結局のところ、この4人で演ればNothing's Carved In Stoneらしくなるんでしょうね。アレンジを4人で考えて、4人で鳴らしているっていうところがNothing's Carved In Stoneっぽさに繋がる。

 
 
●そして今まで年1枚ペースでアルバムをリリースしてきたNothing's Carved In Stoneですが、8枚目となるアルバム『Existence』が12/14にリリースということで。

 
 
p_ubukata229今回はギリギリでしたね(笑)。

 
 
●12月にリリースしようというのはもともと決めていたんですか?

 
 
p_ubukata229春くらいですね。11月か12月くらいに出そうって。ここ3〜4作はそうなんですけど、特に“こういうアルバムにしよう”ということは決めていなくて、各々が持ち寄った曲を集めた感じなんです。だから今回も、4人でスタジオに入る前にそういう話は特にせず、1曲1曲についてどれだけ完成度を上げていくかっていう作業でした。

 
 
●生形さんはアルバム制作では、いつもたくさん候補曲を持ってくると以前おっしゃっていましたが、今回生形さんが持ってきた曲は?

 
 
p_ubukata229今回も10曲くらいアイディアを持ってきたんですけど、形になったのはM-1「Overflowing」M-2「Like a Shooting Star」、M-6「Good-bye」、M-8「Honor is Gone」、M-9「Sing」ですね。

 
 
●個人的に思うところはあったんですか?

 
 
p_ubukata229アルバム制作に入る前に「In Future」と「Adventures」があったんですけど、2曲ともNothing's Carved In Stoneでは新しいタイプの曲なんですよね。

 
 
●はい。

 
 
p_ubukata229だからいわゆる“Nothing's Carved In Stoneっぽい曲”を俺が持ってきた方がいいのかな? と思ってました。意識したのはそれくらいかな? で、正直に言うと曲のストックというか、元ネタは山ほどあるんですよ。「Overflowing」なんかは3年くらい前に作った曲だし、“いつ出そうか?”ってタイミングだけ考えていたんです。

 
 
●あ、マジですか。

 
 
p_ubukata229「Overflowing」はすごくNothing's Carved In Stoneっぽい曲だから、このタイミングで持ってこようと思って。

 
 
●ストックが山ほどあるということは、常に作っているんですか?

 
 
p_ubukata229常にですね。だって俺、既にアルバムのレコーディングが終わってから3曲くらい作りましたもん。

 
 
●え? ネタが尽きることはないんですか?

 
 
p_ubukata229ネタが尽きるというか、それが採用されるかどうかはわからないんですけど、でも作るんです。ボツになることもすごくあるんですけど。例えば今回、アルバムの最後に入れようと思って作ってきたエンディングの曲があるんですよ。でもその曲は今回は入らなくて。

 
 
●あっ、そうだったんですか。

 
 
p_ubukata229アルバムに入らなかったから悔しい、とかじゃなくて、その曲はストックとして取ってあります。もう8年やってるから、そういう曲がどんどん増えてきて、すごいことになってます(笑)。

 
 
●そこをもうちょっと掘り下げますけど、生形さんにとって曲作りのモチベーションは何なんですか?

 
 
p_ubukata229俺、何もない日はなるべくスタジオに入るようにしていて。と言っても、長時間ずっとスタジオに居るわけではなく、本当に1〜2時間だけのときもあるし。でもそうやっていると、ネタはどんどん出来ていくんですよ。

 
 
●ほう。

 
 
p_ubukata229俺、時間を無駄にするのが本当に嫌で。特にここ数年。だから暇なときは出来る限りスタジオに入るようにしているんです。

 
 
●スタジオでは練習もしているんですか?

 
 
p_ubukata229練習もしてます。いろいろ出来る時期って、レコーディングの後くらいしかないんですよ。ギターの練習をしたりとか、新しいフレーズをコピーしたりとか、新しいコード進行を考えたり。そうやっていると、すぐ新しい曲のネタが出来るんです。

 
 
●なるほど。ここ最近、アルバムで生形さんは2曲くらい歌詞を書くじゃないですか。だから今回どの曲の歌詞を書いたのかな? と予想してみたんです。

 
 
p_muramatsu229はい。

 
 
p_ubukata229今回、未発表曲の中で2曲は作詞をしてます(※「In Future」は生形と大喜多による作詞)。

 
 
●やっぱり2曲ですか。「Overflowing」は生形さんが歌詞を書いたとすぐわかったんですが…。

 
 
p_ubukata229そうです。「Overflowing」の歌詞は俺ですね。

 
 
●きっと割合的にもう1曲くらいあるだろうと思っていたんですが、わからなくて…。

 
 
p_ubukata229もう1曲は「Like a Shooting Star」です。

 
 
●あっ、そうだったんですか。ちょっと意外。

 
 
Like a Shooting Star MUSIC VIDEO

 
 
p_ubukata229うん。この曲は今回のアルバム制作でいちばん最初にみんなが反応した曲なんですよ。もともと、アコギで作ってみたりもしたし、デモを3パターンくらい作っていたんです。それで最終的なデモをメンバーのところに持ってきて、その後みんなでアレンジしてイントロ付けたり、構成を考えたりして。

 
 
p_muramatsu229真一が持ってきたデモを聴いたとき、まず“いい曲だな”と思ったし、Nothing's Carved In Stoneだなっていう感じだったんです。特にメロディラインとか。

 
 
●はい。

 
 
p_muramatsu229「Adventures」がグレーゾーンに投げたい曲だとしたら、「Like a Shooting Star」は今のNothing's Carved In Stoneらしさみたいなものをより濃くしたものを投げていく曲だなって。

 
 
●確かに「Like a Shooting Star」はNothing's Carved In Stoneらしさがある。

 
 
p_muramatsu229結局のところ、この4人で演ればNothing's Carved In Stoneらしくなるんでしょうね。バンドの初期からずっと曲を書いているのは真一なので、そのキャラクターもあると思うし、後はそのアレンジを4人で考えて、4人で鳴らしているっていうところがNothing's Carved In Stoneっぽさに繋がる。真一がよく言うんですけど、4人で演ればどんな曲でもNothing's Carved In Stoneになると思うんです。

 
 
●「Like a Shooting Star」の作詞も生形さんということですが、この曲の歌詞で“And I'm walking/In the blackhole”(俺は歩いてる/ブラックホールの中を)というフレーズがあるじゃないですか。こういう表現は拓さんっぽいと思ったので、ちょっと意外だったんですよね。

 
 
p_ubukata229ここの言葉だけ最初からあったんですよ、英語で。歌詞をどうしようかずーっと考えていたんですけど、そのまま使おうと思って。最初からメロディと一緒にあったから、たぶん気になる言葉だったのかな? と思って残したんです。

 
 
●アルバム毎の変化でいうと、『Stranger In Heaven』から前作『MAZE』のときの変化がいちばん大きかったと僕は思っていて。

 
 
p_muramatsu229p_ubukata229はい。

 
 
●対して『MAZE』から『Existence』の変化はそこまで大きいものではないと思うんですが、『Existence』は全部の曲が自然に鳴っている感じがあるんです。今までバンドとしていろんな道のりを越えてきて、作品毎にいろんな変化や成長をしてきたけど、2016年12月にこのアルバムが出ることは何年も前から決まっていたような感触がある。新しいこともたくさんしていて、少し聴いただけでは気づかないようなこともいっぱい詰まっていると思うんですけど、“今のNothing's Carved In Stoneらしさ”をものすごく感じる。

 
 
p_muramatsu229ほう。

 
 
●大きく変化した『MAZE』の流れを汲みつつ、『MAZE』以前のアルバムが持っていた要素も全部繋がっているというか。

 
 
p_ubukata229やっぱり4人のキャラが明確になったような気がしますね、今まで以上に。

 
 
●キャラクター?

 
 
p_ubukata229持ってくる曲のキャラクターという意味で。

 
 
p_muramatsu229確かにそうだね。

 
 
p_ubukata229みんなが好きなものが交わる感じがすごく自然になってきたというか。やっぱりアルバムを8枚くらいも作ると、そうなってくるんだろうなって。だから制作もどんどん速くなるんです。ウチはもともと制作で煮詰まったりすることがあまりないんですけど、更に速くなった気がする。曲を作る前に必ず4人で話してからスタジオに入るんですけど、その意思統一と、そこに向かうスピードも速くなってますね。

 
 
●なるほど。

 
 
p_ubukata229昔は“こういう曲を作ろう”と決めてからスタジオに入って、「やっぱり違った」となって作り直したりもしたんですけど、そういうことがほとんど無くなってきた。

 
 
●今から下ネタを言いますけど、要するに4人が同時に射精できるようになったと。

 
 
p_ubukata229それはちょっと違うんですけど…。

 
 
●あ、ごめんなさい。

 
 
p_muramatsu229ハハハ(笑)。

 
 
p_ubukata229同じイメージをより共有できるようになったというか。そのイメージに対して自分が何をすればいいのかが、みんながよりわかってきたというか。
 
 
 
 
 
 

 
 
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INTERVIEW #3

よく「「Spirit Inspiration」のサビのコーラスがデカい」っていろんな人に言われるんですよ。それは俺が熱くなって、自然に声がデカくなってるからっていう。

 
 
●拓さんがきっかけを持ってきた「華やぐ街に向かう君」は、聴いたときに不思議な感覚があったんですよね。物語を見ているというか、映像を観ているときに近いような感触。

 
 
p_ubukata229これ、結構前からあったよね?

 
 
p_muramatsu229そうだね。1年くらい前からネタはあって、メロディも歌詞もあって、実は弾き語りでちょっと演っていたりしたんです。

 
 
●あっ、そうなんですね。

 
 
p_muramatsu229それで「Adventures」と同じような感じでメンバーに聴かせたら「いいじゃん」となって、バンドでやろうと。でもこの曲、Nothing's Carved In Stoneらしくないと言えばらしくないんですよね。

 
 
●確かに。

 
 
p_muramatsu229すごく音を抜いているし、構成もシンプルだし。でもノリがいいし、音を詰め込み過ぎていないところが洋楽っぽいですよね。浮遊感に繋がっていて。バンドでこういう感じになってよかったなと。

 
 
●歌詞の中では、女性口調になる部分もあるじゃないですか。こういう物語性がある世界観はどういう風に出来たんですか?

 
 
p_muramatsu229少女性を表現したかったというか。

 
 
●少女性?

 
 
p_muramatsu229“どうにかされたいけど、怖い!”みたいな感覚って若いときにあるじゃないですか。それで街に出ていく、みたいな。

 
 
●なるほど。

 
 
p_muramatsu229そういう気持ちを歌いたかったんですよね。見たことがない世界を見せてくれるの? キャー! 怖いー! みたいな(笑)。

 
 
●ハハハ(笑)。それは自己投影じゃなくて、物語を作るような感覚?

 
 
p_muramatsu229いや、自分の中にもある気持ちです。全然フィクションとかじゃなくて、そういう気持ちになりたかったという部分もあるし。

 
 
●ドキドキしたかったのか。

 
 
p_muramatsu229そういうことを思うことってないですか? あー、どうにでもしてくれー! みたいな(笑)。

 
 
●ある。

 
 
p_muramatsu229そういうことを書きたかったんです。確かにこういう感じの歌詞はNothing's Carved In Stoneでは無かったかもしれないですね。

 
 
●先ほどNothing's Carved In Stoneらしさの話がありましたけど、もう1つのNothing's Carved In Stoneらしさ…M-7「Prisoner Music」は、別の意味でらしい曲ですよね。ヴッヴヴヴヴッ。

 
 
p_ubukata229ひなっちのベースの音ですね(笑)。

 
 
●このバンドには空間を切り裂くギタリストがいますけど、この曲のベースは空間を破くベースだと思う。

 
 
p_muramatsu229空間を破くベース(笑)。

 
 
●この曲は違和感と違和感をくっつけて美しいものを作るという、真骨頂の曲だと思うんです。

 
 
p_ubukata229そうですね。この曲はまさにひなっちが「ヴヴヴヴッ」っていうベースを持ってきて。確かにこの曲は、ものを作る感覚に近いというか、パーツを1個1個はめていくというか。ギターもなるべく無機質にして。

 
 
p_muramatsu229断片的だよね。

 
 
●繋げるというより、はめていく感じ。

 
 
p_ubukata229うん。はめていって作った感じですね。サビの後半では割とメロディアスにしつつ。

 
 
●この曲、サビの低音のコーラスは誰が歌っているんですか?

 
 
p_muramatsu229CDは俺が歌ってます。ライブでは真一が歌うことになるんでしょうけど。

 
 
●今回のアルバム、コーラスが結構印象的だったんです。例えば「Good-bye」のサビ前のコーラスは、最初に聴いたとき“女の人が歌ってるのかな?”と思って。

 
 
p_ubukata229実は初めて言われたけど「Good-bye」は本当は女の人の声を入れたかったんだよね。

 
 
p_muramatsu229あ、そうなの?

 
 
p_ubukata229うん。この曲の頭で女の人の声を英語で入れたかったんですけど、実際には拓ちゃんにやってもらったんです。

 
 
●あら。

 
 
p_ubukata229実は、デモの段階では俺が裏声で、イントロにループさせたコーラスを入れてたんです。

 
 
p_muramatsu229へぇ〜。

 
 
p_ubukata229でもメンバーが誰も反応しなかったから、知らない間にこっそり消したんです(笑)。誰かが何か反応したら、女の人を呼んでコーラスしてもらおうと思っていたんです。

 
 
p_muramatsu229マジで! そのアイディア良かったじゃん。

 
 
p_ubukata229また別の機会にできるから、全然いいんだけどね。だから「Good-bye」のコーラスは、女の人をイメージして歌いました。

 
 
●Nothing's Carved In Stoneの場合、コーラスをガッツリというより、要所要所のポイントで入れますよね。EX THEATER ROPPONGIのライブを観ていたときも思ったんですけど、生形さんはどういう感覚でコーラスを歌っているんだろうなと思って。

 
 
p_ubukata229コーラスを入れるポイントですか?

 
 
●はい。

 
 
p_ubukata229うーん、それはやっぱり全体のバランスを見て、ですかね。楽器に近い感覚というか。ギターを増やさない代わりにコーラスを入れたり。もちろん違う場合もあるんですよ。サビのコーラスとかは歌メロを際立たせることを意識するんだけど。

 
 
●例えばライブのとき、生形さんはどういう感覚で歌っているんですか?

 
 
p_ubukata229普通に歌っている感覚に近いんですけど、感情を込める場合もあれば、敢えて感情を消すときもありますね。

 
 
●その違いは?

 
 
p_ubukata229感覚かな? それにコーラスはどこまでいってもコーラスだから、いちばんの目的としては主メロを惹き立たせることで。コーラスを一切使わないバンドも居るじゃないですか。俺からすると、なにかもったいないような気がするんです。

 
 
●なるほど。

 
 
p_ubukata229ヴォーカリストのタイプもあるからコーラスを入れないのがダメという話ではないんですけど、自分たちの曲の場合は、曲を良くするためにコーラスを入れるっていう感じですね。

 
 
●ちなみに生形さんがコーラスに気持ちを込める曲は?

 
 
p_ubukata229「Pride」とか「Spirit Inspiration」のサビとか。俺、よく「「Spirit Inspiration」のサビのコーラスがデカい」っていろんな人に言われるんですよ。それは俺が熱くなって、自然に声がデカくなってるからっていう。

 
 
●ハハハ(笑)。
 
 
 
 
 
 

 
 
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INTERVIEW #3

バンドが楽しいですもんね。必要以上に自分たちに対して理由を求めてないし。そういうことは、もう考える必要が無いかなって。その分、今は4人とも自分に厳しくなれている。

 
 
●『MAZE』のとき、拓さんは「声を張って出す歌い方が俺の美学だったんだけど、もっと自分のオリジナリティを突き詰めた」とおっしゃっていましたよね。

 
 
p_muramatsu229「Go My Punks!!!!」とかの話でしたっけ?

 
 
●そうそう。歌のキーが今までよりも低いというか、地声に近いというか。その延長線上だと思うんですが、今回の拓さんの歌は表情が豊かな気がしたんです。

 
 
p_muramatsu229ああ〜。最近は結構いろんな人とやる機会が多かったんですよね。そういうところで、“思っていたよりちゃんと歌っているな”という視点が増えたというか。

 
 
●どういうことですか?

 
 
p_muramatsu229THE BACK HORNの山田さんとか、BRAHMANのTOSHI-LOWさんとか。すごくストレートなヴォーカリストに感じるじゃないですか。でも実際は技術的な面で優れているからこそ、ストレートに聴こえているというか。そういうことを明確に意識させられることが最近多かったんです。04 Limited SazabysのGENちゃんも表現力があると思ったし。

 
 
●なるほど。

 
 
p_muramatsu229L'Arc〜en〜Cielのhydeさんと同じステージに立ったときも感じたし。俺の歌い方だと様にならないフレーズをかっこよく歌われていて。そういう感じで、研究対象が結構多かったんです。だから技術が無いのは罪だと思ったというか、そこを高めようと毎日ずっとそのことばかり考えてるんです。それが今回のアルバムに影響しているんじゃないですかね。

 
 
●へぇ〜。それは、生形さんのようにスタジオに入って練習するんですか?

 
 
p_muramatsu229俺の場合は、朝起きたらまず舌の動きを確認するし、ずっと喉と発音の調子を気にしてるし、英語の発音もずっと気にしてるんです。しゃべりながら。

 
 
●ほう。

 
 
p_muramatsu229自分の技術的な部分をちゃんと見つめて、何ができるかを明確にすべきだと思ったんですよね。日によって違うと、ライブで毎回違う歌になっちゃうじゃないですか。それは避けたいし、だから自分の状態は常に見つめるようにしているんです。

 
 
●今作の村松拓というヴォーカリストは、曲によってすごくキャラクターが違う気がしたんです。それも別に様々なキャラクターを演じているというよりは、元来持っていたものをより強く出したというか。

 
 
p_muramatsu229引き出しが増えたんでしょうね。

 
 
●例えばM-8「Honor is Gone」が象徴的で、“You bullshitting bastard”(お前は偽物だ)というフレーズとかは、誰になんと言われようが己を貫く“全能感”というか“無敵感”みたいなものがあって。

 
 
p_muramatsu229それ、「(as if it's)Warning」でも言ってましたよね。

 
 
●そうそう。一方で「華やぐ街に向かう君」の歌からは艶っぽさを感じる。歌が曲によって全然違うんですよね。

 
 
p_muramatsu229歌がクサくなったらアウトなんですよね。ダサいっていうのは絶対的にアウトだから。そのギリギリのラインがどんどん変わってきていると思うんです。それはセンスだと思うんです。いろんなことを試して、“どこまで行けるんだろう?”ということをやらないとわからなくて。

 
 
●うんうん。

 
 
p_muramatsu229ライブで“この曲はどうやって歌ったらいいんだろう?”ということは常に考えているので、そういう毎日を過ごしてきたことが今回のアルバムに影響しているのかなと思いますね。

 
 
p_ubukata229やっぱり歌の幅は拡がってますよね。俺、レコーディングでは歌入れもずっと見てるんですけど、解決するスピードが速くなっていると思うんです。自分の中に想いがあって、そこに到達する方法を見つけるのが速くなった。それが表現の幅にも繋がっていると思う。狭い部屋で歌ったり。でもそうする気持ちはわかるな、俺。

 
 
●狭い部屋?

 
 
p_ubukata229いつも使っているスタジオで、ブースの中の更に狭いギターアンプを置くためだけの1畳くらいの部屋があるんですけど、「Like a Shooting Star」はそこで歌ったんです。リバーブをなるべく無くすために。

 
 
p_muramatsu229そうそう。壁との距離を近くしてね。

 
 
p_ubukata229でもそれよりも、あの部屋で歌う方が集中力が増したと思うんだよね。実際に「歌いやすい」って言ってたし。

 
 
p_muramatsu229うん、めっちゃ歌いやすかった。

 
 
●ほう。

 
 
p_ubukata229邪魔されないし、誰にも見られていないし。いつも歌入れするブースだと、外からガラス窓越しに見えるんですよ。

 
 
p_muramatsu229見られるの、意外とストレスなんだよね。

 
 
p_ubukata229でもその部屋だと絶対に見られないし、真っ暗だし。

 
 
p_muramatsu229あ、今わかったな〜。

 
 
●え? なにが?

 
 
p_muramatsu229いや、いつも歌入れではガラスの方向を向いて歌ってたんですけど、反対側を向いて歌えばよかったんだって(笑)。別に反対じゃなくても、横向いて歌ったらいいんだ。解決した(笑)。

 
 
●ハハハ(笑)。このアルバムは「Adventures」で締め括られますけど、シングルとして聴いたときの印象と、アルバムで聴いたときの印象がいい意味で違ったんですよね。9曲聴いた後、アルバムの最後で「Adventures」を聴けるのが嬉しいというか。

 
 
p_ubukata229ぐっときますよね。

 
 

 
 
p_muramatsu229真一がアルバムの最後は「Adventures」にしようって言ったんだっけ?

 
 
p_ubukata229うん。本当の最後の最後にそうしたんです。もともと「華やぐ街に向かう君」と「Adventures」の場所が逆だったんですよ。なんとなく俺のイメージでは、「華やぐ街に向かう君」が出来たときに“アルバムの最後にハマるのはこの曲しかないな”と思ったんです。

 
 
●なるほど。

 
 
p_ubukata229制作しながらずっとそう思っていたんですけど、「Adventures」を最後にしたらこの曲も惹き立つんじゃないかと思ったし、「華やぐ街に向かう君」が5曲目にあった方が惹き立つんじゃないかと思ったんです。

 
 
●先ほど「それぞれが持ってくる曲のキャラクターが明確になった」という話がありましたけど、4人の性格というか人柄みたいなものが音を通して伝わってくる感じがすごくあるんですよね。音の1つ1つからそれぞれの人間を感じるし、アンサンブルからは4人の関係性を感じる。まあ、僕がNothing's Carved In Stoneに近すぎるからそう感じるという説はあるんですけど(笑)。

 
 
p_muramatsu229ハハハ(笑)。

 
 
p_ubukata229やっぱりバンドは長くやればやるほど、音楽以外でも本当にいろんなことがあるんですよね。ゴタゴタもあるし、そういうことは絶対に作品に反映されるんです。だからやればやるほど出す音も深くなっていくし。“Hand In Hand Tour”でBRAHMANとやったとき、リハでBRAHMANの4人がステージに立っただけで空気が変わるんですよ。本当に。

 
 
●はい。

 
 
p_ubukata229みんな張り詰めるっていうか。俺らも、スタッフも。あれはやっぱりBRAHMANというバンドがいろんな経験をしてきて、その経験を経てそこのステージに立っているっていう歴史があるからだと思うんです。でも俺らには、同じくらいのキャリアのバンドに比べて圧倒的に歴史がなかったんです。

 
 
●はい。

 
 
p_ubukata229それでもなんとか追いつきたいと思って毎年アルバムを出してきて、ようやくそういう空気が少しは出せるようになってきたのかなって。ここ2〜3ヶ月そう思います。

 
 
●最近ですね。

 
 
p_ubukata229そういうのってワンマンじゃなくて、対バンのときにどれだけ空気を出せるかだと思うんです。別にそれを意識しているわけでもないですし、BRAHMANも意識しているわけじゃないでしょうけど、なんとなくそういう空気を初めて出せるようになってきたかな。気負ってないというか、自然体というか。それがバンドだと思うし、そういうものがアルバムにも絶対に反映されると思うんです。

 
 
p_muramatsu229だからバンドが楽しいですもんね。必要以上に自分たちに対して理由を求めてないし。そういうことは、もう考える必要が無いかなって。その分、今は4人とも自分に厳しくなれているし、周りの人に求めることも変わってきてると思うし。それでバンドがいい方向に変わっていけたらいいなって思ってます。
 
 
 
 
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interview:Takeshi.Yamanaka
 
 
 
 
 
 

LIVE REPORT
Nothing's Carved In Stone Live on November 15th
2016/11/15@EX THEATER ROPPONGI

 
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 「November 15th」という曲は、歌詞の意味的にも“このバンドをやろう”って自分の中で決めたときの気持ちを書いた歌だから、誕生日でもいいかなと思っていて。それはもともと俺の気持ちだったけど、それを4人で鳴らしているので、誕生日的な意味合いでもいいかなと。
 これは前号のインタビューで、11/15に開催されたワンマンライブ“Live on November 15th”について村松が語った言葉だ。そういう彼らの気持ちはおそらく観客にも伝わっているのだろう、EX THEATERに集った人たちは、頬を高揚させ、次から次へと会場に入っていく。日比谷野外音楽堂のワンマンから約半年、記念すべき“Live on November 15th”は、なんとも言えない多幸感に包まれた中で始まった。

 SEが止み、大喜多がシンバルを鳴らす。割れんばかりの大歓声と興奮の中、「Around the Clock」でライブは幕を開けた。日向と生形が近づいて音をぶつけ合い、村松が放つ最強の歌が鳴り響く。「Chaotic Imagination」は、まるで限界まで絞った弓を解き放つかのような爆発力のあるサビが印象的で、オーディエンスの興奮と4人が鳴らす音が会場を埋め尽くす。生形のギターが鋭利な音を放ち、オーディエンスが叫び、日向が拳を握って客席を煽り、「Spirit Inspiration」が始まる。

 シングル『Adventures』のカップリング「The Brake」では、艶っぽい歌と音で表現の幅を見せつける。大喜多がソロで煽り、絶妙のタイミングで生形が福音を鳴らすかのようにギターを差し込んでスタートした「Brotherhood」、村松の歌と生形のギター、日向のベースと大喜多のドラムが絶妙なアンサンブルを紡ぎ出す「MAZE**」、クラップの雨の中で村松が「最高に楽しい! ありがとう!」と笑顔を見せた「きらめきの花」。一瞬たりとも見逃せない、1音たりとも聴き逃せない瞬間の連続。

 ステージにキーボードがセットされる。シングル『Adventures』にキーボードで参加したヒイズミマサユ機がライブゲストとして登場し、観客は大興奮。アコギを持った村松が「すべての冒険者たちに捧げます」と告げ、村松の声とギター、そしてヒイズミのキーボードのみで始まった「Adventures」は格別だった。更にヒイズミは続く「Diachronic」にも参加。重厚感のある4人の音にヒイズミが加わり、まるで曲が生まれた時点からそういうアレンジだったと錯覚させるほどの見事なアンサンブルを作り上げる。ステージの5人はどんどん熱を帯び、観ている我々にも、ステージで音を一緒に鳴らす彼らの興奮がビシビシと伝わってくる。村松が「最高だ!」と何度も叫ぶ。うん、最高だ。

 大きな拍手を浴びてヒイズミがステージを去り、「Gravity」「What's My Satisfaction」のダイナミズムを存分に味わった後、村松がギターを置く。ハンドマイクの村松がステージを大きく使いながら歌った「Bog」「In Future」で、狂気にも似た興奮と高揚がピークへと到達。その時のステージは、まるで誰にも邪魔することができない聖域と化し、彼らが出す音は絶対的な確信を伴って鳴り、村松の声は全能感を帯びて響き、村松が掲げた拳にオーディエンスが大歓声をあげる。興奮に包まれたこの状態をメンバー4人とオーディエンスが自由と呼んで「Milestone」、「Out of Control」「Isolation」でダイバーと大合唱とモッシュが入り乱れ、「Perfect Sound」で本編が終了。

 わかってはいたけれど、まだ「November 15th」を聴いていないのでオーディエンスは当然まったく帰らない。大きな大きなアンコールに応えて4人がステージに登場、更にヒイズミマサユ機も登場。肩車からのダイバーが舞い、ヒイズミマサユ機が加わった「November 15th」は最高のひと言。ライブで聴く度に心を大きく揺さぶられる大好きな曲が、もっと大好きになるステージに、会場全員が魅了される。「白昼」そしてアンコール最後は「Sands of Time」というセットリストも完璧で、バンドが持つダイナミズムと強靭なアンサンブル、ヒイズミマサユ機が参加した楽曲の表現力とライブ感、エンターテインメントとエモーショナル、様々な魅力をギュッと凝縮したこの日のワンマンは、Nothing's Carved In Stoneというバンドのこれからの進化と可能性を存分に予感させるものだった。
 
 
 
 
 
TEXT:Takeshi.Yamanaka
 
 
 
 
 
 
 

228_ncisNothing’s Carved In Stone 輝ける冒険者たちへ 村松拓が観る情景に迫る単独インタビュー

 

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