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THE STARBEMS

荒々しき獣を心に宿す5人の男たちが世に解き放つ新たなる13ソングス

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日高 央(Vo.)を中心に2012年に結成されたパンクバンド、THE STARBEMSが2年ぶりのフルアルバム『Feast The Beast』をテイチクエンタテインメント・インペリアルレコードよりリリースした。サポートメンバーだったBa.山下潤一郎を正式メンバーに迎え、全国のライブハウスからフェスまで数えきれないほどのステージで熱狂を巻き起こしてきた2年間。その中で心に焼きついた全ての光景を投影した楽曲はエモーショナルかつ、新鮮な興奮を掻き立てるものだ。フワフワしているように見せかけつつも、確固たる芯を秘めたメンバーに迫るインタビュー。

 

「この5人って本当に“獣”みたいなところがあって。たとえば潤は今日も連絡なしで取材に来ないとか、俺と西くんは遅刻がすごいとか、篤はさっきラーメンを食ったばかりなのにまたオムライスを食うような尋常じゃない食欲があって、高地はちょっと性欲がハンパない…(笑)。“そういうところも受け入れてくれ”みたいなことなんですよ」

●今作『Feast The Beast』についてのコメントの中で日高さんが「会場限定シングルを発表した2015年秋頃から、自分たちにとっても世間にとっても明るいニュースが多くなかった1年だけど」と書かれていて。バンドとしての状況はあまり良くなかったんでしょうか?

日高:そうですね。俺が前にやっていたBEAT CRUSADERS時代からライブに来てくれていた人も最初はいっぱいいましたけど、(THE STARBEMSとは音楽性が)全然違うじゃないですか。かと言ってBEAT CRUSADERS的なものを期待されても仕方がないので、お客さんも目減りする一方で。その先の“新しいお客さんにどう見せていけば良いのか?”というところで、バンド側も試行錯誤していたというか。だから色んな人と対バンしつつ、たまにワンマンもしてみたりと、色々やってみてはいたんです。暗いニュースだけじゃなかったけど、総合すると明るいニュースもそんなになかった1年だなという気がして。

●前作の2ndアルバム『VANISHING CITY』を出してから2年経つわけですが、その間にはメンバーチェンジもあったんですよね。

日高:まずギターのゴスケ(※後藤裕亮)が辞めて、潤(※Ba.山下潤一郎)にサポートで入ってもらってから正式加入するまでにも1年くらいかかったのかな。メンバーが定まっていないことでフワフワした感じもあって、落ち着かない1年でしたね。

●バンドとしては作品を重ねるごとに固まってきた部分もあるのでは?

日高:音に関してはそうですね。「(これまでと)全然違うことをやろう」と言って始めたので、参考にしていた音源も当初はハードコアばかりで。メロディがないものばかりをあえて聴いて、その中からメロディを自分なりに抽出するというようなことをやっていたんです。でも今は普通にEDMも聴くし、何でも聴くようなところに戻ってきた。そういう意味では、音は年々固まっているんですけど…。

菊池:人がフワフワしてきたんです(笑)。だから、バンドが固まらない。

●メンバーが定まらないことによって、バンドとしてもフワフワしている状態だった。

日高:元々、潤がフワフワした人なんですよ。今日もいないですけど(笑)。

●今日の取材は潤さんだけ不在ですね。

日高:こっちも別に無理して来いとも言わないから。今、FM PORTでラジオ番組をやらせてもらっていて、一応メンバー5人全員がレギュラーのはずなんですけど、基本は俺が1人で毎週やっているんですよ。たまに2〜3人来たりとか、そこはもうメンバーのさじ加減次第なのですごくフワフワしていて。

●そのフワフワした感じも楽しめているし、マイナスに捉えてはいないのかなと。

菊池:決してマイナスではないと思います。もうわかってきているというか、フワフワでも成立させられる何かがあるのかもしれないですね。

日高:最悪、「ライブ本番にいれば良いだろう」くらいの気持ちでいます(笑)。

高地:何回か危うい時もありましたけどね。

●ライブにすら遅れてきたりする?

日高:(越川がステージ)袖に5分前到着とかもあったよね(笑)。

高地:新幹線に乗り遅れるっていう(笑)。さすがにあれは焦りましたね。

越川:5分前に着いた時は“ホンマにすまん!”と思っていたけど、ステージに入る瞬間は毅然とした態度でいきました。

菊池:遅刻してきているのに、ちょっと険しい顔をして“俺もそれなりに苦労して、ここまで来たんだよ!”っていうオーラを出しているんです(笑)。それでも何とかなっているんですけどね。

●そういう状況でもどうにかできるメンバーが集まっているというか。

越川:どうにもなっていないですけどね(笑)。でも信頼関係がある程度はできているから、“ここは任せても良いかな”っていうところは得意な人がやるっていう。

日高:ラジオとかは、そういうことですよね。

●だからラジオは日高さんが1人でやることが多い。

越川:ダカさん(※日高)も「無理しないでね」っていう感じなんですよ。無理してラジオに出演するよりは、その間に練習をしたりすることを良しとする人だから。だったらライブの会場入りも5分前で良いのかなっていう…(笑)。

菊池:西(※越川)にはそういう判断になったと(笑)。西が遅刻している時、俺らはちょっと映画でも観ている感覚なんですよ。“どうなるのかな…?”っていう。

●スリリングな感じはある(笑)。

越川:そこを楽しんで頂けているっていうことじゃないですか。普通やったら、怒られるもん。でもそこを笑える環境やから、続いているんだよね。

菊池:(日高が怒らないように)俺と高地がフォローしているんだけどな。

一同:ハハハ(笑)。

日高:俺も“良いブログのネタになったな”くらいの気持ちはあるかもしれないですね。ライブって結局、その日限りで良いと思うんですよ。誰かが失敗したりハプニングが起きても、後々は面白い話になるから。極論、死ななきゃ何でも良いだろうっていう。

●今作の曲作りに関しては、ギリギリになったりはしなかったんでしょうか?

日高:でも個々で色々やっているのもあって、最初は5〜6曲しかなかったですね。その段階でテイチクとの契約が決まってしまったので、急に慌ててアルバムを作ることになって。いきなり13曲録ろうという流れになっちゃって、ひいこら言いながら2ヶ月弱くらいで作りました。

●M-5「Fighting Fate」とM-9「Jingle Jangle Song」はライブ会場限定シングルで2015年秋には発表していたわけですが、それ以外の曲はまだあまりできていなかった?

日高:全然です。あの時点では、3〜4曲くらいじゃないかな。

高地:この2年間でボツにした曲も結構あったんですよ。曲作り自体は何回かしていた記憶があります。

菊池:曲作りをしていなかったわけじゃないんです。ただ、期間が空くとダカさんが飽きちゃうんですよ。「1年前に作った曲は嫌だ」とか言ってレコーディング前にまた作り始めちゃうから、結局(スケジュールが)カツカツになるんです(笑)。その時に一番フレッシュな引き出しを開ける感じですね。

●曲の原型になるものは、日高さんから出てきている?

日高:はい。俺が1コーラスくらいのデモを送って、そこから篤(※菊池)が「こうしましょうか」と言って、最後に西くんが録って終わりというか。だから、最終的にどんなギターが入るのか俺たちもわからないんです。

●最後に西くんがギターを加えることで曲の印象が変わったりもするんでしょうか?

日高:特に今回はアコギが入ったりもして、すごく変わった曲もありますね。

越川:やっぱりメンバーをまずビックリさせないと、リスナーにも新しい感じには聴こえないかなと思っていて。今回はいつもとは違うアプローチでやってみたところがあるかもしれない。

●いつもと違うアプローチとは?

越川:今回はキャッチーで派手な感じにしたくて。今までならもうちょっと強めでヘヴィな感じやったかもしれないけど、ヘヴィなところを一度削ぎ落とそうと思ったんです。録っている時もそういう意識でやっていたし、結果的に自分が思っていた感じにはなったので良かったかなと。メンバーの中にはもっとヘヴィにしたかった人もいるかもしれないですけど、メンバーの意向は無視しました(笑)。今回は“俺のイメージで録る”という感じで操作できたので、そこも面白かったですね。

●特にM-13「Nobody Trusts Me」は弾き語りで歌っても成立するような曲で、今までにない感じかなと。

日高:最初に「うるさめのエモっぽい曲を思いついたから送るわ」って宣言しておいて、送ったのがこれという(笑)。

菊池:初めに聴いた時はズッコケましたね(笑)。しかもレコーディングまで1週間を切っている段階で、今までと全く違う曲調のものが来たからどうしようかと考えて。

高地:デモが1コーラス送られてきた段階ではツインペダルがそんなに入っていなかったんですけど、結局アレンジをする時にキックをもうちょっと増やそうということになって。完成して聴いてみたら“こういう感じの曲調でも、こういうふうにやれば自分たちのものになるんだな”と思いました。

●自分たちの幅を広げることにもなった。

日高:“パンク”と一口に言っても、トガッている表現というのは色々あるなと思っていて。BPMが遅めでもトガれなきゃと思って作ってみたんです。そういうことを試してみたかったし、今回のアルバムを作る前から“バリエーションを出したい”というのはみんなに共通した気持ちだったと思うんですよ。なるべく幅を広げていこうと思っていたので、そういうチャレンジの一貫ですね。

●M-10「Nonfiction」も、今作の中ではちょっと異色な感じがします。

日高:これはちょっとearly レッチリ(※Red Hot Chili Peppers)的なイメージで作りました。元々リアルタイムに90年代前半の音楽を聴いてきているので、あの頃のイナたさみたいなものが好きなんですよね。でもこの年齢でそういうことを普通にやっちゃうと、ただのイナたいオジさんのロックだと言われちゃう。確かにオジさんのロックなんですけど、“何が新しいエッジになるだろうか”というのを高地と色々相談しながら考えていきましたね。

●そこは高地さんと一緒に考えたと。

日高:高地はレッチリとかBeastie Boysが好きなんですよ。“レッチリのチャド・スミス(Dr.)がツインペダルだったら”というイメージで、高地に頑張ってもらいましたね。

越川:これはミクスチャーですよね。俺はレッチリとRage Against The Machineを混ぜて、1人で90年代を表現してみたんです。ギャグのつもりで“こんなん絶対にナシやろ”と思って入れてみたら、(メンバーに)「良いね」って言われて…。

日高:地味な曲が派手になったので良かった(笑)。

●結果的に良い方向に行った。この曲の中に出てくる“feast the beast(この獣をもてなしてくれ)”というフレーズがアルバムタイトルにもなっているわけですが。

日高:今日よく出てきている“フワフワ”っていうのも悪く言えば、いい加減な感じに映っちゃうと思うんです。俺も遅刻が多いし、メンバーも遅刻したりラジオに全員揃わなかったりとか多々ご迷惑をおかけしている部分もあるかもしれないですけど、この5人って本当に“獣”みたいなところがあって。たとえば潤は今日も連絡なしで取材に来ないとか、俺と西くんは遅刻がすごいとか、篤はさっきラーメンを食ったばかりなのにまたオムライスを食うような尋常じゃない食欲があって、高地はちょっと性欲がハンパない…(笑)。“そういうところも受け入れてくれ”みたいなことなんですよ。その代わりこっちも文句は言うかもしれないけど、“嫌じゃないよ”っていう。“まずはやってみないとわからないじゃん?”っていうことなんですよね。

●まずは一度受け入れてみないとわからない。

日高:1つのジャンルやシーンの中で小さくまとまっているんじゃなくて、“もうちょっと広がりをお互いにつけようよ”って思うんです。こっち側もそうだし、リスナーに対してもそういうことを発信したいというか。たとえば(メンバーがそれぞれ過去にやっていた)BEAT CRUSADERSや毛皮のマリーズ、Fed MUSICやASPARAGUSのイメージがあることで「THE STARBEMSは聴けない」っていう人がいたら、“試しに聴いてみな”っていうニュアンスもあって。だから11月からは色んな人たちと対バンをするんです。初めましての人もいっぱいいるし、楽しみなんですよね。そういうメッセージを暗に込めてみたタイトルなんです。

●そこの幅を広げられるのは、バンドとして固まってきたからこそかなと。

日高:レコーディングはカツカツでしたけど、その中でも最善のものができたし、そこはお互いの信頼がないとできないところだと思うから。やっとバンドとして固まったんだなという実感はありますね。

Interview:IMAI
Assistant:森下恭子

 

 
 
 
 

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