9/21に新作ミニアルバム『深き森の迷路』をリリースする名古屋発5人組バンド、ミソッカス。その発売を記念して、奇しくも同じ日にシングル『スターダスト / 宿り星』でメジャーデビューを果たす2人組ユニット、イトヲカシとの対談が実現した。ラジオにゲスト出演し、その後イトヲカシの主催の夏フェス“バズフェス”にミソッカスが出演して以降、より親交を深めてきたという両者の関係とは? お互いへのシンパシーとリスペクトを一層強めた今回の対談を読めば、10/28に開催される“ミソパニッククーデター 〜最後の聖戦〜”仙台公演での2マンがより楽しみになることは間違いないだろう。
●今年7月に開かれたイトヲカシ主催の夏フェス“バズフェス”に、ミソッカスが出演したんですよね。その時に仲良くなったんでしょうか?
歌詞太郎:その時の打ち上げで結構深く話したんですよ。音楽的な話にもなって、すごく楽しかったです。
レフティ:最終的には『マジック:ザ・ギャザリング』(※カードゲーム)の話になっていたけどね(笑)。
はるきち:あと、昔ハマっていた漫画の話もしたよね。年代が近いというのもあって、聴いてきた音楽や育ってきた環境もほぼ同じだと思うんです。打ち上げの時にも「あれやったよね?」「やったやった!」みたいな感じになっていて。
●世代が近いことで共通するものも多い。
歌詞太郎:好きな曲とか聴いてきたアーティストも、もしかしたら重なっているかもしれない。
はるきち:“良い曲”の定義が一緒、みたいな。イトヲカシの歌詞は、僕の考える“古き良きJ-POP”の王道を行っている感じがして。今はわりと直接的で強めな言葉を言っちゃうような歌詞だったり、コーラスや振り付けがあったりして、刺激が強くて即効性のある音楽が流行っているというか。周りにもそういう方向に行きつつあるバンドはいるんだけど、その中でもイトヲカシは我が道を行っている感じがするんですよね。僕の好きだったJ-POPの王道を突き進んでいる感じがうらやましいし、すごくカッコ良いなと思う。
レフティ:それはまさに僕らが目指さんとしているところで。サブカルチャーがあるのは全然OKなんだけど、僕らはやっぱりメインカルチャーになりたいんですよ。メインカルチャーと言えるものが今はほとんどないなと、僕は感じていて。
●確かに最近の音楽で老若男女が誰でも知っているようなものって、少ないですよね。
レフティ:“みんな聴いている”みたいなものがほとんどないんですよ。本来はそこに対するカウンター的なものが、サブカルチャーだったわけで。だから僕らはあえてメインカルチャー的なもので、サブカルチャー的なものにカウンターしていこうっていう。
歌詞太郎:確かにサブカルチャーが多くなって、味付けの濃い音楽が増えていて。そういうものがグッと台頭してきているんだけど、僕らは“王道ってこうだったじゃん?”っていうものでボディブローをかましてみたいなと思っていますね。
はるきち:イトヲカシは『ONE PIECE』(尾田栄一郎)になって欲しいなと。僕らは『ジョジョ』(『ジョジョの奇妙な冒険』荒木飛呂彦)になるから。
レフティ:良いね〜! 色んなものがあって良いと思うんですよね。その中でも僕らはど真ん中の音楽みたいなところで、しっかりバトンをつなぎたいなと思っていて。
歌詞太郎:王道がないと、サブカルチャーも輝けないと思うんですよ。“王道を目指すのが恥ずかしい”みたいな風潮もちょっとあるとは思うけど、僕らは全然恥ずかしくないから。
●バックボーンになっているものは近いんだけど、それぞれに表現の仕方は違うというか。
はるきち:昨日ずっと(イトヲカシの)『捲土重来』を聴いていたんですよ。歌詞を読んだりしているうちに、ミソッカスとイトヲカシって音楽性は違うと思われるかもしれないけど、実は根底にある“目指しているところ”は一緒で、出し方が違うだけなんじゃないかなと思って。内面にあるものは一緒で、僕はわりと偏屈な出し方をしているんですけど、イトヲカシはそれを真っ直ぐ出している感じがするというか。
レフティ:ミソッカスのそういう“ひねくれた”感じが、僕はすごく好きで。でもメロディの作り方が似ている気はするんだよね。
●メロディに関しては通じるものを感じると。
はるきち:イトヲカシの『スターダスト / 宿り星』もすごく良くて。特にメロディがドラマチックに上がっていく感じは、“僕もこう行きたくなるな”って思うんですよ。他のバンドの音源を聴いていると“こう行ったら良いのにな”って思うことが多いんだけど、イトヲカシの場合は僕が思っている方向にちゃんと行く。逆に“こう行ったか! 良いねぇ”みたいな、予想外なところがあるのも良いんですよね。
歌詞太郎:すごく嬉しい。ちなみに、はるきっちゃん(はるきち)はどうやってメロディを作っているの?
はるきち:ミソッカスはマイケル(Key.マイケルTHEドリーム)とノブリル(G./Cho.)も曲を作るんだけど、あの2人はわりと楽典的な作り方で「このコードに対してはナインス始まり」みたいな感じで作っていくらしいんだよね。でも僕はまずコードを鳴らして、そこに何となく自分の今の気持ち的なところで当てたい音に行くという感じで。一番気持ち良いように行くというか。それを録った後しばらくしてから、冷静になって聴いてみたりする。もしくは、お風呂で鼻歌みたいな感じかな。
歌詞太郎:お風呂で鼻歌っていうのは、全く僕と同じ作り方ですね。レフティは楽典的な作り方をすることもあるけど、僕ははるきっちゃんと同じ作り方で。
●そこは重なる部分が大きい。
はるきち:『捲土重来』は全部が全部できれいなハーモニーになっているので、何回聴いても飽きないんだよね。“ずっと聴いていられるな”と思って、今日も朝から聴いていて。最初は「堂々巡リ」が良いなと思っていて、次に「ブルースプリングティーン」が良いなとなったんだけど、最終的に家を出る前には「たましいのゆくえ」になっていた。
歌詞太郎:あの曲を愛してくれるのは嬉しいね。あの歌詞は“死んだらこうなるんじゃないか”っていうことを歌っていて、壮大なテーマで書いたというか。
はるきち:僕もそういうことを考えるし、歌詞にも書きたいなって思うけど、たぶん僕がアウトプットするとすごく変なものになるんだよね。同じことを思っていても、僕が出すと変なものになる(笑)。
歌詞太郎:逆にそれは僕にはできないことだから、聴いていてうらやましいなと思う。
はるきち:僕は逆にイトヲカシがうらやましいと思う。
レフティ:お互い、ないものねだりですよ(笑)。
●違う表現の仕方をしているから惹かれ合うのでは?
歌詞太郎:それはそうかもしれない。根本は一緒だけどアウトプットが違うから、一番ハマりが良いのかもしれないですね。
レフティ:紆余曲折があってそういう手法を選び取っているというだけで、たぶんミソッカスは普通に出すことも全然できると思う。ただ、あえてそこでフックを加えているのが素敵だなと思って。
●そういうところにも面白さを感じている。
レフティ:ミソッカスは、楽曲によってカラーもすごくあって。2ビートでゴリゴリのサウンドの曲もあれば、ちょっとジャジーな曲とかもあって、音楽的なバックボーンの広さをすごく感じるから、ライブを1本観ても飽きないんですよね。“この引き出しの多さは反則だろう!”みたいな(笑)。
歌詞太郎:実際にライブを観た時に“あ、こういうふうになるんだ!”っていう驚きもあった。特にはるきっちゃんの歌は音源で聴いているよりも、ライブで観たほうがより突き刺さるような感じがしたんですよね。僕もハイトーンボイスと言われるんですけど、はるきっちゃんのほうが僕よりも高いレンジにいる気がして。
はるきち:そうかな? 自分でも“もうちょっと喉に優しいキーにすれば良かった”と思う時はあるけど(笑)。
●自分でも後悔するくらい高くしてしまうんだ(笑)。
歌詞太郎:なんでそういうキーで作っちゃうの?
はるきち:Aメロって、低めから始まりたくない?
歌詞太郎:僕はそうだね。
はるきち:Aメロが低めから始まったとしたら次のBメロではちょっと驚かせたいなと思うから、その時点で既にわりと高いところに行くんだよね。それでBメロのサビ前くらいでまた盛り上げようとするから、さらに高いところに行って。そしたらサビの出だしは、もっと高いところに行かなきゃいけないじゃん?
歌詞太郎:サビってさ、Bメロの最後の音より高いほうが良いんだよね。
はるきち:高いほうが良い! (と言って、2人で固い握手を交わす)。
●考えが見事に一致しましたね(笑)。
歌詞太郎:本当に同じなんだ…。ちょっとビックリしました(笑)。
はるきち:出だしの音も高いんだけど、サビの起伏の中で絶対にもっと高いところに行くんだよね。
歌詞太郎:ピークを作りたくなるよね。すごくわかる。
レフティ:しかも(ミソッカスは曲のピークを)エンディングのほうに持ってくるよね。そこも似ているなって思う。
●色んな部分で近しいところがある。
歌詞太郎:本当に近いところを考えているんだなって、今日の対談でよりわかりました。
はるきち:初めて会った時から、近いものをなぜか感じていて。ここまでとは思っていなかったけど、相性が良い感じはしていたんですよね。だから、Twitterのリプライとかで「仲良くなりたい」とは言っていたんだけど…。
歌詞太郎:言う必要もなかったね(笑)。仲の良いバンドも重なっていたりして、“あ、そうなんだ”っていうのは感じていたんですよ。仲良くなるバンドはやっぱり自分の好きな音楽性だったりするから、今考えるとそういう部分でも共通していたんだと思いますね。
●お互いの音楽性が好きというのは、何よりも大きいですよね。
はるきち:僕はやっぱり「たましいのゆくえ」が好きですね。あれをカバーしたいな。あの曲なら、僕なりに歌える気がするから。
歌詞太郎:聴いてみたい! どんなふうに歌ってくれるのか、すごく興味がある。
レフティ:じゃあ僕らもカバーして良いですか?
はるきち:ぜひお願いします!
歌詞太郎:どれをカバーして欲しいとかある?
はるきち:歌詞太郎くんの声だったら、僕らの中では数少ない前向きな曲のほうが良いのかなと思ったりする。…今パッと思い付いたんだけど、歌詞太郎くんに歌って欲しいのは「太陽の塔」かな。その曲はまだ自分でもあんまり飲み込めていなくて上手く歌えないんだけど、歌詞太郎くんが歌っているのはすぐに想像がつくから。
●自分ではまだ飲み込めていないんですね。
はるきち:「太陽の塔」は何枚か前の作品(※ミニアルバム『統一された混沌(カオス)』2014年)に入っていて、ノブリルが書いた曲なんです。ノブリルはわりと素直なアウトプットで出しているから、どちらかというとイトヲカシの曲に近いというか。僕らが素直なアウトプットで出したら、こんな曲になるんだろうなっていう感じで。
歌詞太郎:それはすごく気になるな。各々の曲をカバーできたら面白いよね。
レフティ:じゃあ、仙台でやろうよ。お互いに発見があると思うし、せっかくの2マンだから面白いことをやりたいなっていう。
●10/28に開催される“ミソパニッククーデター 〜最後の聖戦〜”仙台公演で2マンが実現するわけですが、そこで新たに受ける刺激もあるんでしょうね。
レフティ:絶対にあると思いますね。ライブはアウトプットであると同時に、多大なるインプットがあると思っていて。
歌詞太郎:他の人のライブからは必ず学ぶところがあるので、すごく楽しみです。“バズフェス”で対バンした時にミソッカスが「温度を上げたい」と言ってくれていたのを見て、カッコ良いなと思って。逆に今度は僕らがミソッカスのステージの前に出るので、温度を上げたいですね。バトンをつなぐということをしたいんですよ。やっぱり楽しいと思ってもらいたいから。
はるきち:本当に“楽しみ!”の一言につきますね。“バズフェス”の時は歓迎してもらっていた感じがあったので、今回はこっちが歓迎しなくちゃいけないなと。イトヲカシがやりやすい感じにできたら良いなと思います。
Interview:IMAI
Assistant:森下恭子