メンバーの脱退、交通事故による活動休止といったピンチから不死鳥の如く復活したホロ。大型イベントや自主企画などのライブを通じ着実にその名を広めている中、ついに2年振りのミニアルバムが到着! 今作は昨年9月に発表されたシングルの曲からアルバムオリジナルの最新曲まで、ここ1年以内に作られた楽曲のみを収録している。絶望的な状況を経験しつつも、それをバネにしてより高く飛び上がったホロの唯一無二性を証明する最高傑作だ。誰にも似ていない彼らなら、誰にも作れなかった新しいギターロックシーンを開拓していくことができるのかもしれない…そう思わせるだけの説得力を有した、楽曲&ライブに酔いしれたい。
●前回のミニアルバムから約2年振りのリリースとなりますが、その間はいろいろな出来事がありましたね。
石木:そうですね。まずはメンバー脱退があって、その後に交通事故にあって3ヶ月バンドが活動できなくなって…止まったことによる悔しさもありましたし、その分いろいろとチャージされた状態で制作に迎えました。
●その期間があったからこそ、制作欲やライブ欲もいっそう強くなっていた?
岩石:ずっと前を見て走ってきたけど、前しか見えていなかったから気付けなかったこともあったと思うんですよ。それを改めて見る期間があったから、また動き出すことになったとき、気持ち等がいろいろと含まった作品になったと思います。
赤毛:過去にも活動休止したことが何回かあるんですけど、その期間中はメンバーにとって絶望的な期間で。本当に前向きになれたのは再開の1ヶ月前くらいで、それ以外は悔しさや絶望しかなくて。
●悔しさが大きかったんですね。
赤毛:ただ、まったくマイナスなのかというとそうでもなくて、結局は今活動できていることのバネになっていると思うんです。今年で結成6年目に入るんですけど、ずっと円満にいっていたら、たぶん作品にも多少は影響が出ていただろうし。活動の仕方や貪欲さも多少違いはあったと思います。
石木:M-3「この世界を愛する人へ」やM-5「カゲロウと少年」、M-8「暁の唄」も活動休止があったからこそできた曲ですね。
●そのときに感じたことが、今作にも影響していると。影響というところで、特に意識した部分はありますか?
岩石:今まで自分がやってきたことを、もうちょっと突き詰めたいなと。もちろんそういう意識は常にあるんですけど、今作はいっそう強かったんです。今回は基盤だけは石木が作って、ギターのアレンジや音の使い方、隠し味的なものも全部僕が担当したので、『耳を澄ませて』(前作のミニアルバム)と比べるとちょっと違うサウンドが楽しんで頂けるかなと。
●確かに。フレーズとしては“ホロっぽいな”と感じるところもたくさんあったんですが、雰囲気として以前より開けた印象を感じたんです。それはライブで聴いたときに特に思ったんですが、煽りやMCで冗談を飛ばしたりする部分が増えたというか。ちょっと砕けた面白いMCが新鮮な気がしたんです。
石木:事故ってからなんですけど、周りの人のおかげで音楽ができているし、生かしてもらってるんだなという意識が強く芽生えて。それがライブに出ているのかもしれないですね。お客さんがいるから今のステージがある…当たり前に考えないといけないことですけど、それが100パーセント自分の意識として沸いてきたのは、自分で変わった部分だと思います。それが出たのかもしれないですね。
●大事だとわかっていても、理解することと実感することは違いますよね。今作のリードはどの曲になるんですか?
赤毛:一応ダブルリードなんです。M-1「道化師が泣く」とM-3「この世界を愛する人へ」。
石木:いい曲ができ過ぎて、今回はトリプルリードになりそうやったくらい。
●ちなみに、どれがリード候補だったんですか?
石木:「道化師が泣く」と「この世界を愛する人へ」、「暁の唄」ですね。リードはみんなでかなり悩んで決まりました。レコーディングの段階で「リードにするならこの3曲だな」というのがあったんです。
●M-2「ドローイング」やM-7「閃光と雷鳴」は、2015年に会場限定でリリースされたシングルにも入っていましたよね。「ドローイング」はシングルではタイトルが英語表記でしたが、曲にも変化があるんですか?
石木:あ、英語で書いてるんや! ずっとカタカナのつもりやったんですけど。
赤毛:いまさら(笑)?
石木:誰かが間違えたんでしょうね。
●そうなんですか! ローマ字表記のタイトルは珍しいから、何か意図があるのかなと思っていたんですが…。
石木:意味はないです。
一同:(笑)。
赤毛:「ドローイング」や「閃光と雷鳴」は会場限定のシングルだったので、今回流通に乗せるなら入れないとダメでしょってことで。全曲とも、ここ1年以内にできたものが入っています。
石木:今回は、前に比べて進化していると思うんですよ。新しいこともしているし、アルバムとしての広がりも前回を超えているものですし、前のアルバムより聴いていて面白いんじゃないかなと思います。
●今作を聴いていると、聴きこむほどいい作品だと思ったんです。ホロは細かいところまですごくこだわっているじゃないですか。
赤毛:そうですね。それはデモアルバムの段階から毎回やっているんですけど、誰も気付いてくれず、はや3枚目です。
石木・岩石:(笑)。
●たぶん、素人目から見てもめちゃくちゃ難しいことをやっているじゃないですか。だから1回聴いただけじゃそこがわからないんですよ。特にライブでは、初見で一言一句聴き逃さないようにする人は少ないでしょうし。その分アルバムだと何度も聴けるので“ここでこんな音を鳴らしていたんだ!”っていう発見があって面白いです。
石木:他のバンドと比べても、かなり繊細に作っていると思います。
●岩石さんがTwitterでもおっしゃっていましたけど、「轟音だけど繊細」ですよね。
岩石:そうなんです。それは常に思っていて。石木がデモを送ってきた段階で、細かいところまで作ってきているんで、それを僕らの力でどれだけよくするかっていうのが僕のプライドでもありますね。
●音での表現欲が強くあるんでしょうね。
石木:それは人一倍あると思います。
●前回のインタビューでも言っていましたけど「自分がいちばん目立とう」という気持ちがあるというか。
石木:あれから2年経ちましたけど、それは揺るぎないですね。常に1番を狙ってきています。
赤毛:ただベースの場合、ライブパフォーマンスではボーカルよりいかに目立つかというところが僕の焦点ではあるんですけど、プレイに関しては目立ってやろうという音にはしていなくて。「すげぇな」より「上手いな」と言われる方が嬉しい。
石木:縁の下の力持ちやんな。
岩石:ギターがめちゃめちゃ暴れられるのも、ベースがしっかりしているからなんですよ。
●あぁ〜、なるほど!
赤毛:僕がベースヒーローになろうという願望を出しちゃうと、たぶんドラムとも噛み合なくなってくるし、歌が全然気持ちよくなくなるんですよ。ドラムとギターと歌のつなぎ目が僕のベースやと思っているんで、そこは上手に繋げているつもりです。これは一部の人にしかわからないでしょうけど、バイオハザードでいうレッドハーブなんですよ。
●………?
石木:僕はわからん(笑)。
赤毛:グリーンハーブという回復アイテムの効果を増強させるアイテムなんですよ。
●ええと…つまり、他のパートのよさをより引き出す存在ということ?
赤毛:そうです(笑)。
●音そのもので主張するというより、表現の方法にこだわりがあるんですね。現在ホロはドラムメンバーを募集中ですが、レコーディングの際のドラムはどうされたんですか?
岩石:ライブでもサポートをやってもらっている人に頼んでいます。実はメンバー募集については、前のアー写にも書いていたんですけど…。
赤毛:これも誰にも気付いてもらえないという(笑)。
●せっかくなので、この場で募集しましょうか。
石木:僕たちを唸らせるドラマーを募集中です。
赤毛:やるからには、当然僕らよりカッコよくないと。
●そうなるとかなり限られてきますけど(笑)。
石木:メンバーが入るというのは、バンドにとって結婚するようなものなので。まぁ2回離婚しましたけどね。
赤毛:そうなんですよ。バツ2やからもう後がないんです。子ども(アルバム)も3人目ですよ!
一同:アハハハ!
●今のサポートの方はどうなんですか?
石木:めっちゃ面白いです。ただ、別でバンドをやっている人なので、不倫はできないです(笑)。
●なるほど(笑)。結婚となると年齢も大事だと思いますけど、何歳くらいならOKですか?
赤毛:見た目年齢28歳くらいですかね。
石木:見た目年齢って(笑)。まぁ大事やな。
●では、それで募集しましょう(笑)。9/9の名古屋からツアーがスタートで、ファイナルを含めて15箇所回りますが、今回はファイナルが東京なんですね。
赤毛:東京に行くことはバンドとしてのステップアップだと思うんです。東京で結果を修めることは自然な流れだと思うので、ファイナルを東京にするのも挑戦というか。
●でも昨今の広がりを見るに、全然イケるような気がします。去年の9月から復活して、“MINAMI WHEEL”で入場規制がかかったり、“RUSH BALL☆R”のような著名なイベントに出演したりと、着実に広がっている感があるなと思うんです。
石木:それはめっちゃ感じます。ただ、特にキッカケがあったわけではなくて。
石木:やっと世間がついてきたなという感じですね。
一同:アハハハ!
●時代が追いついてきたと(笑)。フェスに呼ばれるだけでなく、みなさんは“ホロフェス”という主催イベントをやっていますが、評判はどんな感じですか?
石木:「出してくれ」とはよく言われます。
赤毛:お客さんは毎年なかなか楽しそうにしてくれていますね。僕ら的にはその年の盟友達との祭であり、同時に勝負でもあります。願望として、このイベントを通じてシーンを作りたい感があるんです。ギターロックっていうジャンルは、あまり認知されていないんですよ。メタルとかメロコアとかは、みんなだいたいどんな感じかイメージがあるじゃないですか。でもギターロックは定義がふわっとしているんで、「どんなバンドをやってるの?」って訊かれてギターロックって答えると、わかってもらえないのが悔しくて。あわよくば僕らでイメージを作っていきたいから、ホロフェスは結構ギターロックが中心ですね。もちろんそうじゃないバンドもいますけど、僕らが一緒にやっていていいなと思って、かつ同じ界隈やなっていう親近感のあるバンドを呼んでいるつもりです。
●自分たちの仲間を集めるだけじゃなくて、一種のシーンを作るという意味合いもある。
岩石:それはありますね。
●そこに行けばいいギターロックに出会える、みたいな場所になると素敵ですね。
Interview:森下恭子