4月にシングル『Too oLD To KNoW』をリリースし、ツアーファイナルとなった新宿LOFT公演を熱狂の中で大成功させたG-FREAK FACTORY。地元・群馬を拠点に活動を続け、生命力あふれる音楽と唯一無二のライブで聴く者・観る者の魂を大きく揺さぶってきた彼らが、主催フェス“山人音楽祭 2016”を目前にニューシングル「ダディ・ダーリン」を完成させた。まるで太陽のように熱く、力強く、生命力を感じさせる同曲は、我々リスナーにとって大事な存在になっていくに違いない。なによりも、9/24の“山人音楽祭 2016”、そして10月から始まる“ダディ・ダーリン” TOUR 2016でこの曲を聴くのが今から楽しみだ。
●6/26、新宿LOFTでの“Too oLD To KNoW” TOUR 2016ファイナルがものすごく印象的だったんです。前から「島生民」とかはその日その場で出てきたリリックを絡めてライブをしていましたけど、あのファイナルのライブでは、MCなのか歌なのか、どこからどこまでがMCで、どこから曲が始まったのかもわからないというか。
茂木:ああ〜、あの日は特にそうでしたね。
●それってすごいことだと思うんです。その場で感じたことを、楽器陣の演奏に乗せて発する。
茂木:でも精一杯ですけどね。もちろん今までの延長線上で、ライブ中も“終わりまでちゃんといけるかな?”と何回も思います。でもあの日くらい、身も心もサウナ状態になっているくらい凝縮していた方がたぶん出てくるんです。だからドMなんでしょうね(笑)。極ドSと激ドMが混在している。
●ハハハ(笑)。
茂木:そういう状態になったとき、よくわからない何かが出てくる。
●火事場のクソ力というかランナーズ・ハイというか。
茂木:ある意味、ライブはプロレスみたいな感じですかね。お客さんからグワーッと押し込まれて、またこっちから押し返して。
●ライブが一歩進んだという感覚は、自分の中でもあるんですか?
茂木:うーん、20年近くやってきたけどわかんないんですよね。自分の中で“今日はすげぇやれそうだな”と思ったらズッコケたり、“言えないけど今日はちょっと体調良くないんだよね”というときにすげぇいいライブができたり。もっと自分を知らなきゃダメだなって思いますよね。
●しかもライブって、自分だけじゃない要素も多いというか、お客さんがライブを作る部分もありますよね。
茂木:あります。自分とお客さんの感覚が違うこともあるし。俺はとにかくセットリストをこなすことに精一杯という感じですね。もっといかなきゃダメだと思ってます。
●G-FREAK FACTORYのライブを観ると、そもそも“音楽”ってこういうことなのかなとも思うんですよね。CDはそのときの完成形ではあるけど、別にその通りに再現することが良いライブに繋がるかどうかはわからないし。
茂木:楽曲がライブで育ったりすることもありますもんね。
●はい。そういう意味で、G-FREAK FACTORYがライブでやろうとしていることは、あまり他に例がない。
茂木:例えばワイヤレスのマイクを持つこと自体が俺は恥ずかしくて、ライブはシールドに絡まりながら喘げばいいやと思っているんですよね。そういうことを考えている奴は少ないでしょうね。
●そうでしょうね。ところで今回リリースとなったシングル「ダディ・ダーリン」は既にライブでも演っていますけど、この曲は「Too oLD To KNoW」と同じくらいのタイミングで出来たんですよね?
茂木:そうです。もともとのきっかけは、3/4拍子の曲を作りたかったんです。なんでかというと、今までやったことがなかったから。
●ほう。
茂木:そう思ってアコギ持って作り始めたんですけど、実は最初、3/4拍子に裏打ちを当てたんですよ。ンチャンチャッ…って。
●はい。
茂木:でもそれがクッソ野暮ったい感じになってボツにして(笑)、3/4拍子のオケを1回作ったんです。実は「Too oLD To KNoW」と同じタイミングで書いた、悩み狂ったリリックがあったんですけど、この中から半分くらいは「Too oLD To KNoW」の歌詞にして、もう半分は「ダディ・ダーリン」の歌詞にしたんです。
●お! 双子みたいな。
茂木:うん。俺の中では、リリックの素材としては1つなんですよね。仮に「Too oLD To KNoW」に3番のAメロがあったとしたら、これ(「ダディ・ダーリン」)のリリックになってました。
●ほう。おもしろい。
茂木:だから「ダディ・ダーリン」は、「Too oLD To KNoW」で使った残りの部分をただ単にハメただけなんですよね。字余りや字足らずが多いでしょ?
●あっ、確かに。
茂木:今までの俺は、そういうところにめちゃくちゃこだわってきたというか、ちょっとゲーム感覚でリリックを組み上げてきた部分があったんですけど、それをまったく無視したんです。結構自然に出来たんですよ。自分でも“あれ?”と思って。“後で清書しよう”と思っていたんですよね。
●はい。
茂木:今年の正月だったかな? スタジオにこもって、夜中…4時くらいかな…爆音にしてヘッドホンでこの曲を聴いてたら、バーっと自然に涙が出てきたんですよね。そのときに“これでいいんだ”と思えたというか、“この状態から直すところは1つも無いんだな”って。
●整えることをしなかったのか。
茂木:いや、厳密に言うと整えようとしたんです。単にあったリリックを当てはめただけだったから、きっと歌詞というのはもっと苦労しなきゃダメだなと勝手に思っていて、整えようと試みた時間はすごく長かったんですよ。でも結果的に、下書きがそのまま形になったというか。自分がちゃんと“これでいい”と感じられたらそれでいいんですよね。そこを物差しにしたんです。
●メンバーはどういう反応でした?
茂木:いちばん最初、メンバーの前でアコギ弾き語りで聴かせたんですけど、メンバーも心配だったと思います。実際に「こんなにフォーキーにいくの?」とも言ってました。「これマズいだろ」って。
●今までに無さすぎるアプローチだった。
茂木:はい。その上で裏打ちを当ててみたりしたんですけど、“まあこのままでいいんじゃないか”という結論になって。
●要するに、もう少しG-FREAK FACTORYっぽくしようとしたけど、このままでいいだろうと。
茂木:それに俺の歌も、節があまりないというか。“そういう曲を作っていいのだろうか?”みたいな不安というか疑問みたいなものは、メンバーの中にずっとあったと思います。ちょいちょい「大丈夫?」と訊いてきて(笑)、そのたびに「大丈夫だよ」と答えてました。
●前作が「Too oLD To KNoW」ということもあるんでしょうけど、ここ最近のG-FREAK FACTORYのイメージは、“強さ”という意味での“生命力”を感じていたんです。ライブもさっき言ったとおりだし。
茂木:はい。
●命を賭けてギリギリでやっている印象だったので、「ダディ・ダーリン」の優しい感じは意外だったんですね。でも「ダディ・ダーリン」を何回も聴いて、歌詞を読むんじゃなくて耳で聴いていくうちに、やっぱりG-FREAK FACTORYは“リアル”だなと思ったんです。地に足が着いたリアルな音楽。痛いことも、辛いことも全部直視させられるし、気付かされる。「ダディ・ダーリン」は、結論とかメッセージを明確に歌っているわけではないですよね。そうじゃなくて、“今の世の中をこう見ています”だったり“こう思っています”という歌だと思うんです。
茂木:そうなんですよね。
●1人の人間が、今の日本で、大地に足を着けて、淡々と歌っている。それがものすごく染みるというか、グサグサと刺さるんです。ヒリヒリする。
茂木:俺にとっては「Too oLD To KNoW」よりも「ダディ・ダーリン」の方が“生命力”だと思っているんです。演奏するとき、ライブで演るときは、ビートが活きていたりグルーヴがある「Too oLD To KNoW」のような曲よりも「ダディ・ダーリン」の方がすごく体力を使う。
●ああ〜、なるほど。
茂木:置きに行ったら無になるというか。歌でどうこうというより、心構えとして“生命力”を持って臨まないとこの曲は成立しないんですよね。
●おもしろいな。さっきおっしゃっていましたけど、歌詞は「Too oLD To KNoW」のときに書いていたんですよね?
茂木:書いてました。でも「ダディ・ダーリン」の冒頭に“空の色”という言葉が出てきますけど、実際にぼーっと空を見ていて「あ、“空”でいこう」というのは決めていたんです。“空”とか“温故知新”とか“倫理”とか、そういったものをちゃんと感じて書いていって、サビはやっぱり都会じゃなくて田舎者じゃないと書けないものでいいんじゃないかなって。
●あっ、それ! サビの“太陽が西の山を突き破って”という歌詞、ものすごくグッときました。
茂木:あれ? 田舎が出身でしたっけ?
●はい。山に囲まれていて、冬だと夕方4時くらいに太陽が山の陰に隠れちゃうような村です。
茂木:うわ〜。この歌詞を書いているのも冬だったんですけど、その日は夕日がめっちゃくちゃすごかったんです。その夕日を見て“これ都会の奴ら見たいだろうな〜”って。いつもビルに沈む夕日しか見たことがないだろうから。そう思っていたら、リリックはサラッと書けたんです。
●夕日の話でふと思い出したんですけど、今回の3曲、M-1「ダディ・ダーリン」、M-2「MONKEY GOVERMENT feat.HEY-SMITH(Horns)」、M-3「イロハニホエロ」からは共通点を感じたんです。
茂木:はい。
●「ダディ・ダーリン」と「イロハニホエロ」は“色”が共通していて、「ダディ・ダーリン」と「MONKEY GOVERMENT feat.HEY-SMITH(Horns)」は“嘘”が共通している。だからカップリングの2曲とも、「ダディ・ダーリン」から派生したような楽曲なのかなと。
茂木:なるほど。確かに。でも偶然ですけど(笑)。
●あ、そうなんだ(笑)。
茂木:はい。いっぱいある中からこの3曲が今回作品になったという感じ。でも“色”については、ずーっと考えてますね。バンドやろうと思ったときからずーっと考えてます。
●ずーっと?
茂木:例えば肌の色とか、“2トーン”というスカの文化は“白人と黒人”という意味があって。そこには黄色人種は完全に無視されているので、そこに黄色を入れて“3トーン”にしたらどうか? と考えたり。
●うんうん。
茂木:やっぱり色のコントラストとか、好きなんですよね。昔から“あいつは何色っぽい”とか考えるクセがあって。今はそんなに無いですけど、ガキの頃の俺は色に対する執着心がすごかったんです。
●どういうことですか?
茂木:「赤じゃないと嫌だ」とか言って、靴もズボンもシャツも全身真っ赤だったり。
●共感覚なんですかね?
茂木:うーん、わかんないですけど、曲に対する色のイメージはいつもあります。例えば「ダディ・ダーリン」は紺色とピンク…夕日と空の色で、「MONKEY GOVERMENT feat.HEY-SMITH(Horns)」はオレンジ…ちょっとアーバンな都会の街頭の色。
●なるほど。
茂木:「イロハニホエロ」はラスタカラーで、「Too oLD To KNoW」は青。
●なんかおもしろい!
茂木:絶対にメンバーには伝えるんですよ。きっとみんな聞き流してると思いますけど、「この曲青ね! 青!」って。
●理由は訊かれないんですか?
茂木:訊かれないです。毎回のことだから、きっと飽々してる(笑)。原田とかは相槌も打たない。
●ハハハ(笑)。でもまさに「ダディ・ダーリン」はすごく“太陽”のようなイメージがあったんですよね。温かいけどヒリヒリするというか。
茂木:本当に「ダディ・ダーリン」は、すごく大事な曲が出来ました。歌っていることは特別なことじゃなくて、日々考えていることなんですけど、結局俺はあれもこれもと考えているわけじゃなくて、紐解いていくと1つのことを考えているだけなんですよね。それをどの角度からどう表現してるか、だけの違いだと思うんですよ。ただ、今の時代で歌っていくんだったら、こういうことをちゃんと歌いたいなと思ってます。
●そしていよいよ9/24に“山人音楽祭 2016”が開催されますが、今年も楽しみですね。
茂木:楽しみですね。いいメンツだな〜。
●現時点ではどういう心境ですか?
茂木:“山人音楽祭”のことは毎日考えているんですけど、夢に見ます。
●夢に出てくる。
茂木:グリーンドームのステージからの景色が見えて“あっ! ここグリーンドームじゃん!”ってびっくりして飛び起きたら、全身汗びっしょりかいてます。
●ハハハ(笑)。
茂木:だから今の心境としては、安らかではないですね(笑)。本当にド田舎なんですけど、そんなド田舎にこれだけの人たちがライブをしに来てくれるなんて、誰も想像していなかったと思うんです。
●はい。
茂木:だから田舎を化粧せずに、そのまま見てもらったらいいかなと思ってます。その中で出演者や県外からの来場者にどう気に入ってもらえるか…それだけというか。群馬でやるとしたら、これで足りないものは1つも無いだろうし、たぶんこれを東京で開催したらチケットが即完すると思うんです。それを敢えて群馬でやるっていうところが大事なのかなと。だから“やるしかねぇ!”って。“やるんだぞ!”って思ってます。
interview:Takeshi.Yamanaka
09/24(土)ヤマダグリーンドーム前橋
http://yamabito-ongakusai.com/
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