DEAD POP FESTiVAL 2016
2016/7/9-10@川崎市東扇島東公園特設会場
2年目の開催となる“DEAD POP FESTiVAL”。東扇島東公園に設営された特設会場には、期待に胸をふくらませたライブキッズたちの列が連なっていた。あいにく空には灰色の雲が低く垂れ込めていたが、そんなことはお構いなしと開演前から会場のテンションは高い。
飲食/アパレルブースエリアに設置されたSTUDIO DEAD POP(バンドセットが置かれており、観客は自由に楽器を鳴らしてライブができる。SiMの盟友・HEY-SMITHのG./Vo.猪狩が常々言ってきた「みんなバンドやろうぜ」という想いが具現化したブースと言える)では観客が出演者たちの楽曲をカヴァーし、たくさんの観客がその周りで腕を振り上げて声をあげる。オーディエンスのコンディションとテンションは既に万全なのだ。
CHAOSステージでENTHが勢い良く先陣を切り、大型ビジョンに登場したSiMメンバー(アニメーション)が注意事項&開幕を告げたあと、CAVEステージにはWANIMAが登場。少し前から降り始めた雨と風がだんだんと強くなる中、観客は腕を振り上げてVo./Ba.KENTAと一緒に大合唱。B-Sax.谷中が「雨、大変だね」と言えば、客席からは「全然!」「大丈夫!!」とたくさんの声が返される。降りしきる雨の中で音楽の素晴らしさを体現した東京スカパラダイスオーケストラ。
蒼く燃える炎のようなストイックかつ熱を帯びたステージで圧倒したACIDMAN、大きな大きなシンガロングや最高にイカしたビートでオーディエンスの脳内をひっかきまわしたTHE BAWDIES、キレキレのステージングで肩車からのダイバーを乱発させた[Alexandros]。SiMが用意した最高の遊び場で、出演者もオーディエンスも全員が思い切り音楽で遊びまくっている光景が繰り広げられる。雨は降ったり止んだりの繰り返しで、全身ずぶ濡れの観客も少なくなかったが、彼ら彼女ら1人1人の表情からは“この場所で経験する時間は1秒たりとも逃すまい”という気迫すら伺える。
「活動休止中の俺たちを誘ってくれてマジで感謝してます。正式メンバー6人で帰ってきました!」と猪狩が叫んでライブをスタートさせ、いつまでも途切れないダイバーとモッシュ、巨大サークルで客席エリアをカオスにしたHEY-SMITH。会場のテンションはますます上がるばかり。いよいよSiMの登場だ。
Dr.GODRiが繰り出す重厚なリズム、心を震えさせるBa.SINのベース、夜空を切り裂くほど鋭利なG.SHOW-HATEのギター。「ANTHEM」でスタートしたSiMのライブは、東扇島公園を巨大なライブハウスへと変化させた。「JACK.B」「KiLLiNG ME」とオーディエンスのテンションを右肩上がりさせるキラーチューンを連射、ステージ上の4人の表情は清々しく、心からライブを楽しんでいるのがよくわかる。MAHはまだまだ満足していないらしく「こっちは必死こいてルール無用のライブハウスみたいな感じでやってんだよ! やるならやる! やらないなら棒立ちで結構!」と観客を叱咤し、大きな歓声が会場全体からステージに向けられる。「Amy」「Blah Blah Blah」「GUNSHOTS」と更にキラーチューンを連発、ここまで一切勢いを止めること無く怒涛のセットリスト。
MAHはMCで「個人的には幸せを共有して分かち合うよりも、悲しいことの方が深く分かち合えると思ってる。でも今日だけはめちゃくちゃ幸せで、今だけはこの幸せな気持ちをみんなと分かち合いたいと思います。こういうのも悪くないなって。本当にありがとうございます」と気持ちを露わにし、「西と東で、“京都大作戦”と一緒にやっていければいいと俺は勝手に思ってます」と言った。そう、全員が全力で楽しむという、他では味わえないこの独特な雰囲気は、出演者のカラーやキャラクターは違えども、確かに“京都大作戦”と共通している。
「Life is Beautiful」で魅せ、鬼気迫る「MAKE ME DEAD!」「f.a.i.t.h」で会場は前から後ろまでぐっしゃぐしゃの大盛り上がり。雨に濡れ、泥にまみれ、汗にまみれ、音にまみれるオーディエンスとメンバー4人。昨年のやや張り詰めた緊張感のあるステージとはうってかわり、今年の4人はいい意味で肩の力が抜けていて、それがよりライブの凄まじさを増幅させているようだ。
アンコールでは「夜を越えるってわかる? 明日を待つんじゃなくて、明日へ向かって自ら向かって行くってこと。俺はバンド人生を賭けてそれを証明したい!」とMAHが言って「EXiSTANCE」で“DEAD POP FESTiVAL 2016”の1日目は幕を閉じた。
昨日の雨が嘘のような青空の下、“DEAD POP FESTiVAL2016” 2日目は灼熱の1日となった。CHAOSステージのトップバッターを飾る10-FEETは「goes on」「VIBES BY VIBES」というスタート。彼らの気合いの入れ具合がわかる幕開けに観客は大興奮、会場はまたたく間にダイバーの嵐。ドラムとギターのみという必要最小限のフォーマットで観者の胸を熱くしたMIYAVI、Vo.Koieが「今日は“DEAD POP FESTiVAL”をぶっ潰しに来ました!」と叫び、MAHが乱入し、オーディエンスが飛び跳ねて会場が(本当に)揺れるほどに盛り上がったCrossfaith。エアバンドとは思えないほどの“生”感で抱腹絶倒させたゴールデンボンバー、夕日を浴びながら圧倒的な存在感を示した響く都の雄・ROTTENGRAFFTY。「“DEAD POP FESTiVAL”は最高のフェスだ。俺らのもんじゃねぇ、お前らのもんだ」とVo./G.Kjが告げ、誰に媚びるわけでもなく、ひたすら己を貫くが如く、神々しいまでのステージで魅せたDragon Ash。
ジャンルやキャリアは違えども、音楽シーン最前線で闘い続ける歴戦の猛者たちが集い、全身全霊で音を鳴らす…ライブキッズにとって最高の遊び場は、いよいよ最後の出演者を残すばかりとなった。
太陽が沈み、会場を闇が包み込む。ステージに登場したSiMの4人。客席からは大歓声。MAHが「最後に力を貸してくれ」と言う。全員が気合いを入れ、声を振り絞って叫び、腕を上げる。狂宴が始まった。
全員がヘドバンした「Get Up, Get Up」では数えきれないほどのモッシュとダイバーが照明に浮かび上がる。「GUNSHOTS」ではオーディエンスのモンキーダンスが波打つ海面のように見える。MAHが「この2日間で再確認したことがある。ライブってやっぱり最高だよね。終わりたくないだろ? 帰りたくないだろ? でも終わっちまうんだよ」と泣くように叫ぶ。決して絵空事を言わず、すべてのものには終わりが来ることを常に意識している彼の視点は一見悲観的に思えるかもしれないが、終わりがあるからこそ、その場で尋常ではないほどの爆発力を生む。実際のところ、それ以降の盛り上がりはえげつないほどで、PAテントをぐるっとまわる巨大サークルが生まれ、客席エリアの最前列から最後尾までまんべんなくライブハウスのごとく全力で暴れる人が溢れかえる。
「合計26バンド、この1年間気持よく出演してもらうために色々と考えてきたけど、ステージに立つとやっぱり俺バンドマンだから…後輩にも同世代にも先輩にも負けたくねぇんだよ」とMAHが牙をむき、いよいよ“DEAD POP FESTiVAL2016”は大詰めに。本編最の後「KiLLiNG ME」では、笑顔と歓声と汗とモッシュとダイブが入り交じる壮絶な状態に。タフな現場を数多くこなし、常に先を見て駆け続けてきた4人のステージングは堂に入っており、熱く、ほどよく力が抜けていて、ステージで見せる笑みは不敵で、憎らしいほどに頼もしい。
アンコールではCrossfaithが参加して“これぞフェス”という大団円。最後に「俺らにしかできないフェスを作っていきましょう」と言うMAH。まさに“DEAD POP FESTiVAL2016”は、SiMと26組の出演者、そして2日間を全力で楽しんだオーディエンスたちにしか作れないフェスだった。
TEXT:Takeshi.Yamanaka