2011年に機材マニアが集まり結成されたというロックバンド、Aftertalk。今年4月からはJUNGLE☆LIFE誌上で「Aftertalkのエクストリーム人生」を連載中の彼らが、ライブ会場限定で1st EP『Growth』をリリースした。発売を記念しての2ヶ月連続インタビュー前編では、まずバンドの成り立ちとこれまでの歩みに迫る。果たして、そのエクストリームな実態とは…?
「在り方が変わったというか。自分の中だけに終始していたものが、他者との関わりを以って完成する形に変わっていったのかな」
●Aftertalkは2011年に機材マニアが集まり結成したということですが。
永井:当時、あるエフェクターのブランドの周りに、人が集まり始めた時期があって。そこで知り合った人たちで呑み会をする機会があったんですよ。その前日に、たまたま自分がTwitterで機材のことをつぶやいていたら、原田さんが声をかけてくれたんです。そこで原田さんとは若干つながって。呑み会の当日にも色々話をさせてもらっていたんですが、流れの中で主催したメンバーの1人から「バンドを組んだことがない」という話が出たので、「じゃあ1回やってみようか」っていう気軽な感じでスタートしました。
●最初は気軽な感じで始めたと。
永井:でも実は、僕の中では“やってやろう”という想いが強くあって。当時は大学2年くらいだったんですけど、バンド活動が上手くいっていなかったんです。そういう時に降って湧いた話だったので、“これは良い機会だ”と思って本腰を入れて曲を作ったりしましたね。今初めて言いますけど、僕だけ最初から熱量が高かった(笑)。
●原田さんはどうだったんですか?
原田:峻くんはやりたいことがハッキリしているなと思っていて。音楽をやりたいという人はたくさんいるんですけど、“これをやりたい”という具体的なモノがある人って意外と少ないんですよね。そういう意味で面白いなと思ったし、歌声も好きだったので一緒にやったら楽しそうだなと感じていましたね。
●そこから始まったわけですが、2013年から2年間ほど活動休止していたんですよね?
永井:活動を続けるうちに、だんだんバンド内の空気が重くなってきて。当時は4人で活動していたんですけど、僕ら以外の2人が抜けることになったんです。ちょうど自分も就職が決まったタイミングで最初はなかなか休みも取れないだろうということで、「ちょっと時間がかかるかもしれないですけど、僕は原田さんと一緒にやりたいので解散はせず休止にして、いつかまた一緒にやりませんか?」という話をさせてもらいました。
●休止を挟んだことで心境は変わったりもした?
永井:仕事を始めたことで見えるものも変わってきて、今までの自分は視野が狭かったなということを知ったんです。それまではバンド界隈の狭いカテゴリの中でしか知り合いが増えなかったところから、仕事をすることで色んな人に出会えるようになって。ものの見え方が変わってきたことで、歌詞に対する気持ちも変わりました。
●それはどういった面で?
永井:それまではどちらかというと耳触りの良い歌詞を書いていたので、そこに想いや伝えるという気持ちが入っていなかったんです。でも今は明確に“これを伝えたい”という部分があるし、言葉の節の入れ方も変わってきて。以前の歌詞はただ音に当てはめる記号みたいだったところから、歌詞を彩るための音に変わったことで、印象がものすごく変わりましたね。自分の中での取り組み方も変わって、色んな人の意見に耳を傾けるようになったのが一番の大きな違いかなと思っています。
●人間的な成長が楽曲にも良い影響を与えた。
原田:休止期間中はAftertalkとしては全く動いていなかったので、音楽活動というもの自体に飢餓感を持てた2年間なのかなと感じました。活動再開後に峻くんが作ってきた曲を休止前のものと比べてみても、ベクトルの向きとエネルギーの強さが全然違ったので“変わったな”と思いましたね。ただ出していた音が表現へと変わっていく感じもあったので、得るものがあった2年間だったんだろうなと思います。
永井:元々は生活の中でほぼ音楽が主体だったところから、音楽をやるためにストレスに耐える日々に変わったので、飢餓感はものすごかったです。発散じゃないですけど、“エネルギーを使う場所はここ”っていうものがあって、そのために感情を溜めているみたいな場ができたんですよね。良い意味で、音楽に対する特別感が自分の中で増したのかなと思います。
●それによって楽曲のベクトルも変わったと。
原田:休止前は、曲のベクトルが峻くん自身向きだった気がするんですよ。でも再開後はちゃんとお客さんのほうへ向けるようになって。お客さんと真正面から向き合うことができるようになったので、出てくる音もだいぶ変わりましたね。もちろん以前の曲も彼の中の一部だと思うんですけど、在り方が変わったというか。自分の中だけに終始していたものが、他者との関わりを以って完成する形に変わっていったのかなと。
永井:当時の曲は果てしなく暗いというか、ドス黒いイメージが強かったんですよ。物語ってだいたい最後に救いがあるものだと思うんですけど、自分の場合は“死にました”で終るみたいな(笑)。それくらい救いのないまま、現状に絶望した感じで終わる曲が多かったんです。でも今は誰かに響いて欲しいし、誰かの後押しになってくれたら良いなと思うし、逆に言えば自分の背中を自分で蹴り飛ばす曲でもあるのかなっていう。今に対する不満を述べるようなものではなくなったというのが、一番大きな差かなと思います。
●軸にある“やりたいこと”は変わっていない?
永井:明確に言葉にするのは難しいんですけど、“これがカッコ良い”と思っているものが自分の中にずっとあるんです。ただ僕は誰かのフォロワーになったり、「◯◯系だよね」って言われるのがものすごく嫌いで。色んな音楽を聴いている中で“これカッコ良いな。でもこうしたほうがもっとカッコ良いんじゃないか?”って思うことの集合体が今の形になっている、みたいなところがあるんですよ。僕の中のカッコ良いと思う理想像があって、それに向かっていつも曲を作っているイメージです。
原田:結成当初から今までずっと僕が峻くんの歌に感じているのは、“すごく素直だな”ということなんです。基本的にAftertalkの曲は羨望とか焦りとかのネガティブな感情からスタートしている曲が多いんですけど、それはすごく素直な感情だなと思っていて。誰だって成功している人を見たら“良いな”と思うし、お金持ちが羨ましいと思うんですよ。そういう普通はあまり口に出せないことを曲としてパッと出せるっていうのは才能だし、誰にでもできることじゃないなと。それをある意味、峻くんは自然にやっているから。たとえば今までは呑み会の端っこの席で壁に寄りかかって「へっ」っていう感じだったのが、今は「こっちにもっと楽しいことがあるよー」ってみんなを誘えるようになったのが、再開後の変化かなという気がします。
永井:すごい! 今、文字に起こしてくれましたね。僕が言いたかったのは、そういうことです。
一同:ハハハ(笑)。
※次回後編に続く。
Interview:IMAI
Assistant:森下恭子