2012年から3年間、群馬県のヤマダグリーンドーム前橋を舞台に開催されてきた“GUNMA ROCK FESTIVAL”。数々の名場面を生み出し、群馬の音楽シーンの代名詞となった同フェスが休催となった2015年を経て、“山人音楽祭”と名前を変えて開催することが発表された。先月号の主催者・茂木洋晃のインタビューに引き続き、今月号では出演アーティストとして発表された10-FEETのTAKUMA(Vo./G.)とのスペシャル対談を敢行した。
「もう1回意地で開催するというか。それはやっぱり、もう1回自分たちが挑んでいかなきゃ駄目だと思っていたから」(茂木)
「気持ちにディストーションをかけるというか、レベルを上げすぎて歪んじゃったくらいの自分にならないと駄目っていうプレッシャーがいつもある」(TAKUMA)
●“山人音楽祭”の開催が決定し、つい先日10-FEETの出演も発表されましたよね。10-FEETは“GUNMA ROCK FESTIVAL”に毎年出演してきましたが、群馬で観る10-FEETのライブが大好きなんですよね。全力でG-FREAK FACTORYにバトンを渡しているというか。
茂木:うんうん。
●今年はどんな気持ちで出演しようと思っていますか?
TAKUMA:今年も、いつも以上に“絶対に繋げよう”と思っていますね。あとはもう、俺らもG-FREAK FACTORYもほんまに振り切ってライブをやらなあかんし。例えば小学校の運動会とかでお父さんが参加したりするとき、めっちゃ動けるお父さんとか居たら“うわ〜”ってなるじゃないですか。
●1人か2人はそういうお父さん居ましたよね。
TAKUMA:そうそう。だいたいみんなコーナーでこけるのに、めっちゃ動けるという。ああいう人を見たら、おじさん全体がかっこよく見えるんですよね。
茂木:フフフ(笑)。
TAKUMA:僕らもほぼそれくらいの年齢ですけど、そういう年齢の人間が歳相応ではない活躍をするのはもう、本っっっ当に大事。ある意味、若手が活躍するよりも大事やと俺は思ってる。当事者の年齢として。
●はいはい。
TAKUMA:しかも、そんなおっさんたちがロックフェスやってるんやぞっていう。やっぱり日本って…世界もそうかもしれないけど…昔になればなるほど、俳優さんとかスターの年齢が今よりも上やったと思うんですよ。
茂木:ほお〜。
TAKUMA:今は20代の人がスターで、ちょっと年を取ったら次の若い人たちが出てくるけど、そうじゃなくて石原裕次郎とかね。少しくらい歳を取ってもいつまでもあの人のようにカリスマ性を持ち続けるというか。“山人音楽祭”はそういうロックフェスになって欲しいなと思います。
●TAKUMAくんは今年41歳ということですが、最近そう思うようになったんですか?
TAKUMA:最近めっちゃ思うようになりました。
茂木:ハハハハハ(笑)。
TAKUMA:若いときは放っておいても張り切るじゃないですか。でもおじさんになってくればくるほど…まあ自分がまだ“おじさん”だとは思っていないですけど。
茂木:でもバンドの寿命は明らかに伸びたよね。
TAKUMA:うん。伸びたし、この年齢でひと昔前の時代だったらバンドやってなかったかもしれない。
茂木:やってないし、自分が40歳になるまでバンドをやると思ってなかったでしょ?
TAKUMA:思ってなかった。というかそもそも自分が40歳くらいになることを考えてへんかった。
茂木:だけど40歳になってもまだバンドをやれていて、先輩はもっとがんばっていたりして。こんな俺らでもたまに、その現場でいちばん若いときがあるんですよ。
●ほう。
茂木:そういうのはすごく嬉しいっていうか。若いバンドはそれだけでひとつの武器があって…フレッシュさとか清潔感っていうのかな…でも俺らはどうやってもそれは得られないものだと思うんです。だから違うもので、どう出していくか。ましてや群馬なんてド田舎でさ、全くと言っていいほど条件も揃ってなくて、でももう1回意地で開催するというか。それはやっぱり、TAKUMAが言うようにもう1回自分たちが挑んでいかなきゃ駄目だと思っていたからで。
●なるほど。その“山人音楽祭”ですが、G-FREAK FACTORY、10-FEET、HAWAIIAN6、HEY-SMITHという出演アーティストが発表されましたね。
茂木:10-FEETについては、真っ先に声をかけたんですよ。真っ先に声をかけて、真っ先に返事をいただきました。
●ハハハ(笑)。
茂木:もし10-FEETに「出られない」と言われたら開催日自体を変えようかなと思うくらい絶対に出てもらいたいと思っていたんです。10-FEETとHAWAIIAN6に関しては“GUNMA ROCK FESTIVAL”を立ち上げた当初から出てもらっているし。俺から見た10-FEETって、代わりの利かないというか、かけがえのない仲間だと思ってるんです。何よりも、バンドや音楽はもちろんのこと、人というものに強く惹かれているので。だからサウンドがどうこうとか…それも大事なんでしょうけど…それよりも、この人たちが鳴らしている音っていう。そっちの方が俺は、特に10-FEETとHAWAIIAN6に関しては意識が強いですね。
●なるほど。
茂木:奏でている張本人がどうやってそこに居るんだろう? っていうことに興味がいくというか。やっぱり惚れてるから、なにをやっても感動するんですけどね(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
●茂木くんから見て、10-FEETはどういうバンドだと思いますか?
茂木:もう、モンスターバンドですよね。“10-FEET”というジャンルが出来ていると思います。そこはどこにもハマらないっていうか、こういうバンドは他に類を見ないじゃないですか。
●はい。当人はカフェオレ飲んでますけどね。
TAKUMA:ゴクッ……ゴクッ……。
茂木:過去にもムーブメントを作ってきたバンドはいっぱい居ると思うんですけど、今の10-FEETはリアルタイムでジャンルになっているなっていう実感が横から見ていてあるんですよね。だから気の向くままにとことんいったらいいと俺は10-FEETに対して思ってます。
●もう1組の皆勤賞、HAWAIIAN6はどうですか?
茂木:HAWAIIAN6ってすごく拘りがあって凄みがあるけど、それ以上に近年稀に見る人間味のある人たちなんです。だから好きだったりするんですよね。HAWAIIAN6も俺らにとってかけがえのない存在で、だから当然この2組には出てほしいなと思って真っ先に声をかけさせていただいたんです。
●それとHEY-SMITHは、以前にも“GUNMA ROCK FESTIVAL”に出演していましたよね。
茂木:はい。HEY-SMITHの正規メンバーになったTp.イイカワケンは、“GUNMA ROCK FESTIVAL”の初年度からG-FREAK FACTORYのライブで吹いてくれてたりとか。そういう経緯もあったり。それに俺、やっぱりHEY-SMITHが好きなんですよね。一緒にライブをして、色々と話したりして、「タイミングが合えば是非!」という感じで声をかけたんです。それと第1弾で発表した3組に関しては、去年から今年にかけて群馬で俺らと一緒にやったバンドなんですよ。
●お、なるほど。
茂木:しかもちゃんと顔が見えるというか、人間として繋がっているバンドなんです。繋がりが直接目に見えるバンドが第1弾なんです。
●いいですね。TAKUMAくんはこの4組を見てどう思いました?
TAKUMA:うーん………独特ですね。そう感じさせるのは群馬やからかな?
一同:ハハハ(笑)。
TAKUMA:なんでしょうね…。探したらね、この4組が居る場所っていうのはあると思うんですよ。でもなんか“山人音楽祭”は独特ですね(笑)。濃いなと思います。
茂木:うん。
●泥臭さみたいな?
TAKUMA:うん。めちゃくちゃ泥臭い。G-FREAK FACTORYのキャラが出てると思いますね。例えば「俺たちはハードコアなメンツでやってるよ」とか「俺らは俺らでやってるよ」みたいな感じでもないし、でもそれをガッとエンターテインメントに変えてやっているような感じでもない。純粋に「これおもしろいよ」とやっているのがスッと伝わってくる。そこがなんか自然でいいなと思うし、だからこそお客さんと一緒に歩んで行ってくれるというか。「とにかく動員のあるアーティストだけを呼んでソールドアウトにしたい!」とかじゃなくて、純粋に「こういうイベントやりたいんやけど、どう?」と言ってくれてる感じが好きですね。
●なるほど。
TAKUMA:で、「いずれみんなで売り切れるようなイベントにしようよ。おもしろいイベントやし、こだわりもあるからそうなると思うねん」みたいな想いがお客さんに伝わってくる感じが好きです。
●ライブハウスでバンド企画でやるイベントの延長線上というか。
TAKUMA:そうですね。でもそれをちゃんと、自分らの仲良い人たちだけとか、自分らのやりたいことだけやるわけじゃなくて、でも動員とかをめっちゃ意識するわけでもなくて。群馬のあの場所でやるからには…みたいなところのバランスが毎年絶妙な感じで伝わってくる。
TAKUMA:かっこつけすぎるわけでもなく、売ろうとする感じでもなく、来た人にちゃんとおもしろさを伝えて“次また来たい”と思ってもらえるような雰囲気を毎年感じさせてくれるんです。たぶん若いやつらもこういうイベントがしたいと思ってるんじゃないですか。だから“ECHOES”(HAWAIIAN6主催イベント)と共通するような部分はあると思います。心意気みたいなところで。
●ヤマダグリーンドームのステージというのは、他とは違います?
TAKUMA:他とはちょっと違いますね。ステージというのは、何かを表現したり、それを観てもらったりするという発信する場所でありながら、エンターテインメントでもあると思うんですけど…。でも自分な勝手な思い込みとかG-FREAK FACTORYとの関係性とかがそうさせているのかもしれないですけど、ヤマダグリーンドームでやっているときは…なんだろう…試合みたいな。
茂木:アハハハハ(笑)。
TAKUMA:ずっとずっと練習してきて、それを練習通りじゃなくて、思い切り自分の思うままに表現して「さあお前どうなる?」ということを試されている場所のようなプレッシャーが毎年あるんですよ。
●なるほど。
TAKUMA:「お前どれだけできるかやってみろ!」みたいな。でも場はエンターテインメントなんですよ。だから楽しませるライブをしなくちゃいけないハズなんですけど、「お前どれだけ勇気を持って叫べるねん?」とか「どれだけ繋げられるんや?」みたいな。もちろんエンターテイナーみたいなことをしてもいいんですよ。そういう制限があるわけでもなく。でもそれをすごく試されている感じになるんですよ、あそこに行くと。それはG-FREAK FACTORYがやってるからなのか、競輪場という会場(※ヤマダグリーンドームは普段競輪場として使用されていて、会場にはバンクもある)がそうさせているのか、勝手に自分がそう思い込んでいるのか…どれかはわかんないですけど、毎回そのプレッシャーがあるんですよ。楽しい友達のイベントのハズやのに。
●友達ばかりなのに(笑)。
TAKUMA:で、そのプレッシャーを越えるのが実は毎年めっちゃ難しいんですよ。好きなようにやってる様に見えるかもしれないですけど。
●群馬の10-FEETは“好きなように”というより、気持ちがあふれるままにやっているように見えます。
TAKUMA:あふれる想いはあるんですけど、それをうまく伝えられるかな? とか、それを伝えたとして失敗したらただちょっとエモいだけのライブで終わるかも? というビビリも自分の中にあったりして…こういうこと書いてもらったらちょっとかっこ悪いですけど。
●はい(笑)。
TAKUMA:そういうのがいっぱいある中でガッと踏み出しているんですよね。でも失敗することを恐れて置きにいったら、ずっと後悔してもしきれない感じになる。だから噛もうが間違えようが、とことんいく。いろんな場所があるんですけど、とにかくこの日だけは気持ちにディストーションをかけるというか、レベルを上げすぎて歪んじゃったくらいの自分にならないと駄目っていうプレッシャーがいつもあるんです。
●すごい現場ですね。
TAKUMA:それをやらないと、最後のG-FREAK FACTORYのライブで一緒にやったりとか、ステージに出たりすることがあったとしても、そこも茶番にしてしまう。もう、バーニングしたところがないと成立しないっていうか。そういうプレッシャーが、あのステージから見た客席の感じとか、ずーっと焼き付いていますね。勝手に、特殊な場所やと思ってます。
茂木:特に、1回目の“GUNMA ROCK FESTIVAL”の10-FEETのライブ…ステージに出てきて最初に3〜4分くらいギターをかき鳴らしながらMCをして。あれって、1曲出来るじゃないですか。
●ヤバかったですよね。
茂木:もうヤバかったですよね。あんな10-FEET初めて見たんです。本当に1曲出来るんですよ。それをやるって、俺はもう器でしかないかなと。普通はそんな破天荒なことをやれないですよね。だけどきっとあれをやってもらったおかげで、全部がうまくいったと思うんです。だからTAKUMAがあのステージをさっき言ったように感じてくれてるんだったら嬉しいですけど…そのプレッシャーはマストじゃないよ(笑)。
一同:アハハハハハ(笑)。
茂木:嬉しいっす。俺は出来ない。ちくしょう! かっけぇな! って思う。
TAKUMA:“京都大作戦”でG-FREAK FACTORYはやってくれてたよ。
茂木:いやいや(苦笑)。
●G-FREAK FACTORYの茂木くん、10-FEETのTAKUMAくん、ROTTENGRAFFTYのN∀OKIくん…この3人の誰かに会ったらいつも思い出す話があるんです。
茂木&TAKUMA:はい。
●3人は10年以上前、「この中で誰かが出来るような状況になったらフェスを主催して、他の2組を出そうな」という約束をしたという話。TAKUMAくんがよく言ってたんでしたっけ?
茂木:TAKUMAですね。よく言ってたな〜。
●今、3組ともフェスを主催しているんですよね。感慨深いなと。
TAKUMA:俺らはそういうフェスを見て育っているから、バンドを始めた頃はそういうことばかり言ってましたよね。まず俺らが付き合っている理由は“ほんまにかっこいい”と思っているからって。“CDが100万枚売れるアーティストと比べても、俺らの仲間はほんまに勝つと思ってる”という感じで付き合ってるから。だから“自分がフェスをやる立場になったら呼ぶのは当たり前やろ!”という想いはお互いに持ってました。そこは今も一切ブレてないと思います。
●10年以上前の若いバンドたちが夢を形にしたんですよね。すごいな。
TAKUMA:これがまたおじさんになって辿り着いてる感じがいいですよね(笑)。
茂木:ハハハ(笑)、そうだね(笑)。
TAKUMA:できれば23歳くらいで実現した方が伝説みたいな感じになるのに(笑)。
茂木:でもおっさんにならないと出来ないよね。世の中の仕組みがわからなすぎて(笑)。
TAKUMA:嘘になってもいいから口には出すべきだよね。
茂木:うん。
interview:Takeshi.Yamanaka
“山人音楽祭 2016”
9/24(土)ヤマダグリーンドーム前橋
G-FREAK FACTORY / 10-FEET / HAWAIIAN6 / HEY-SMITH / and more…
http://yamabito-ongakusai.com/
“京都大作戦 2016”
7/2(土)7/3(日)
京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ
10-FEET / ストレイテナー / FEIRE BALL with HOME GROWN / Fear and Loathing in Las Vegas / 04 Limited Sazabys / MONOEYES / WANIMA / and more…
http://www.sound-c.co.jp/kyotodai/16/