結成20周年を迎え、メジャーへと復帰したTHE SLUT BANKS。昨年夏に現メンバーが揃い、まさに充実の時を迎えたロックの猛者たちが、バンドと音楽を楽しみながら生み出したニューアルバム『ROXY BABY』には、極上のロックンロール・アンサンブルが満ちあふれている。飽くなき探究と好奇心、バンドをやる楽しさ、生きていく中で感じた葛藤や怒り、哀しみや喜びを活き活きと書き綴った歌詞…瑞々しい感性と衝動が結晶化した今作を携え、彼らは夢に向かって突き進む。
「みんなで“おめでとう”みたいな感じはあるから、いい方向にバンドが行ったらいいねという気持ちがありましたね」
●現メンバーになったのはいつのタイミングなんですか?
ACE DRIVER:俺が入ったのは去年の8月ですね。
DUCK-LEE:でも付き合いが古いから、そういう感覚があんまりないんだけど。
●もう馴染みました?
ACE DRIVER:いや、まだ馴染んでないです。
TUSK:よく言うよ(笑)。
DUCK-LEE:毎回必死だそうです(笑)。
ACE DRIVER:カネタクはどれくらい経ったんだっけ?
カネタク:僕は2年くらいですね。出会ったのが2012年くらいでした。
●今年は結成20周年ということですが、感慨深いですか?
DUCK-LEE:“TUSKとの付き合いも20年以上になるんだ”というのが。そっちの方が“そんなに経ったのか”と思う。成人式みたいなものだもんね。
ACE DRIVER:もう他人じゃないくらい(笑)。
DUCK-LEE:“そりゃ自分も歳を取るよなぁ”と思うこともあるし。人生の何というか、“あぁ〜”って。
TUSK:じゃあ記念に旅行でも行こうか。
一同:アハハハハ(爆笑)。
ACE DRIVER:気持ち悪っ(笑)。
TUSK:夫婦みたいな(笑)。
●20年前のことは覚えていますか?
TUSK:俺なんかはビンビン覚えてますよ。戸城(DUCK-LEE)さんは今と変わらずイケイケな感じで、常に新しいことをしようとして「これ新曲だから歌わない?」「え、歌えるかな?」「いいよ、やっちゃおうぜ!」みたいな感じだった(笑)。
●20年前から変わらず(笑)。
DUCK-LEE:うん、全然変わんないよ。逆にTUSKは、こんなに人当たりのいいやつとは思わなかったもん。雑誌とかのインタビューなんかを読むと憂鬱っぽい人というイメージだったけど、実際は“何だこいつ?”と思うくらい人当たりがいいんだよね(笑)。知り合いになってから“こんなやつなんだ、おもしろいな”とびっくりした。
●THE SLUT BANKSはそういうキャラクターが音楽にも出ていますよね。今作のもう1つのトピックスとしては、メジャー帰り咲きということですが。
DUCK-LEE:気付いたらやってくれるメーカーがあったという感じなんだよね。絶対に無理だと思ってたもん。“チャンスがあればいいな”くらいの感じだったんだけど、ディレクターが目をキラキラさせながら「ぜひうちで!」と言ってくれて。
TUSK:でも、カネタクの存在が大きかったと思う。変な話、メジャーでリリースということに関して俺たちは飛び上がって喜ぶようなことでもないんだけど…もちろんありがたい話なんだけど…カネタクは28歳で、せっかくバンドをやっているならそういう世界も経験してみようっていう。
●それがひとつの動機になっていると。
TUSK:いろんな理由がある中のひとつとしてね。
●カネタクさんはメジャーデビューについてはどうですか?
カネタク:嬉しいです。バンドでフルアルバムをメジャーから出すのは初めてだから、嬉しい半分、このバンドはメジャーだからといっても今までと変わらずにやるべきだと思っていて。「今まで」といっても僕は2年くらいしかやっていなけど(笑)。
TUSK:話が薄いよ!
カネタク:20年の深みのある話の後で申し訳ないです(笑)。
ACE DRIVER:ゆとり世代だからしょうがない(笑)。
●ゆとり世代なんですか?
カネタク:ゆとり世代です。だから今回のメジャーからのリリースについては、ゆとりなりの余裕というか、浮き足立たないようにしようと思いました。実際やっていることはそんなに変わっていないですし。
●なるほど。ACE DRIVERさんは以前から知っている仲だったとのことですが、4人の中ではいちばん後に加入されたので、いちばん客観的にバンドを見ることができると思うんですよ。THE SLUT BANKSはどんなバンドだと思いますか?
ACE DRIVER:おもしろいバンドだと思う。例えば音楽もそうだし、人もそうだし、それぞれメンバーが個性的ですよね。たぶんファンの人の方はわかっていると思うけど、みんなが思っているイメージの通りの人たちだと思う。
●裏表があるわけでもなく、ステージ上のキャラクターそのままだと。
ACE DRIVER:みんな素直にやっているというか。バンドもそうだし、普段の生活もそうだし。だからすごく魅力的だし、なによりやっていて楽しいです。
●メンバーがのびのびとできているというか。
ACE DRIVER:すごくいいことですよね。たいていの人たちはかっこつけたり、変なものにこだわったりしているけど、この人たちはそういうのがあまりないんだよね。すごく自然にやっていて、そこが強みになっている。
●なるほど。今回のアルバム『ROXY BABY』を聴かせてもらって、音の馴染み具合というかバランスがすごくいいという印象があったんです。それはいまおっしゃったような、メンバーの雰囲気が音にも出ているような気がして。
DUCK-LEE:メンバーの個性を引き出すという意味で、曲が合っていたんじゃないかな。
●曲作りの段階でメンバーを意識したということですか?
DUCK-LEE:そうだね。なるべくならバンドっぽくと思っていて。最近はあまりそういうのがないじゃん。ちょっとズレたって結局は機械で直せるし。でもそうじゃなくて、もっと原始的なものをやりたかったかな。アナログで録音をする必要はないけど、俗に言うアナログチックな演奏と音でやりたかった。俺が思う古き良き時代のロックバンドみたいなイメージなんだけど。
TUSK:戸城さんの中に、今まで以上にそういうのはあったと思うんですよ。さっき丈朋(ACE DRIVER)くんが言っていた「楽しい」というのは、新しいものを作ろうとして4人が去年の夏から集まって、新しい曲をやるというときに、要は今までとは違うわけだから“どうなるんだろう?”と思うじゃないですか。それをみんなが楽しみにできたという部分があって。
●ほう。
TUSK:挑戦的な曲もあったし、戸城さんも幼少の頃に好きだった音楽を意識しながら作ったり、音作りをしたり。でもそれをそのまま再現するわけじゃなくて、俺たちなりにやっていこうという想いもあるし。カネタクはまだ20代だけど、“あいつはどうやるだろう?”みたいなところもすごく楽しみだった。
●バンドにとって新曲がいい刺激になっているんですね。
TUSK:そうそう。「またバンドやろうよ!」みたいな感じがすごくあった。
●「楽しい」というのは音からなんとなく伝わってきたんですよね。勝手な印象ですけど、例えばMVになっているM-5「デコレーションBABY」とかは、ライブで尺を長くしてセッション的にメンバーが楽しめるような感じがあって。
DUCK-LEE:そうそう。それはアリなんだよね。古きよき時代のThe Rolling Stones的な。
●4人が音で楽しんでいる様を観て、音楽を聴いて、お客さんも陶酔していく感じ。ライブが楽しみになる。
DUCK-LEE:そうそう! やらないけどね。
一同:アハハ(笑)。
ACE DRIVER:やらないんかい(笑)。
DUCK-LEE:やらないけど、その感じはわかる。“ウッドストック・フェスティバル”の匂いね。やりたいね〜。
●この曲のアンサンブルが、すごくバンドの状態を表しているというか。
DUCK-LEE:女性コーラスとかサックスとかパーカッションとかをガンガン入れて、10分くらいのアレンジでやりたいよね(笑)。やらないけど(笑)。
カネタク:ドラムに関しても、カウベルとかパーカッションとか、それこそ「The Rolling Stonesのようなイメージで」と言われていたんです。デモ曲を聴いたときに、今までのメタルやハードコアみたいな感じではない作品になるだろうなと思っていて、アレンジの話もしていたから意識はしましたね。
●カネタクさんは、ルーツとしてそういう音楽を通っていたんですか?
カネタク:もともと70年代のバンドが好きなんです。
DUCK-LEE:若い割りにはすごい。
カネタク:The Rolling Stonesには特に思い入れもないんですけど。
一同:アハハハハ(笑)。
カネタク:Led ZeppelinとThe Whoはすごく好きだったので、そういうイメージ…全然曲調が似てるわけじゃないんですけど…質感とかはチャーリー・ワッツのイメージで叩きました。全然違うけど(笑)。
DUCK-LEE:でもそれでいいんだよ。コピーバンドじゃないんだもん、俺たちはさ。
カネタク:チャーリー・ワッツが速いパンキッシュな曲を叩いたらどうなるかを想像しながら。そしたら今風の感じになるかなと思って。そしたらちょっと軽い感じになっちゃって“うわっ!”と思ったんだけど、結果的にそれですごく風通しがよくなったというか、いい意味で明るい作風になった。
●“風通しがいい”というのはすごくわかります。
カネタク:もうちょっとロックっぽくヘヴィな音にしてもいいかなと思ったんだけど、結果として曲に合ったカラーになっているから。
●TUSKさんは歌ってみてどうでしたか?
TUSK:曲の感じは今までと違うものもあったし、でもさっきも言ったようにこのメンバーだから挑戦していこうという気分でやりましたね。でも例えば「デコレーションBABY」は、「これを坊主でタオルを巻いてるおっさんが歌っていいのか?」みたいな葛藤があった(笑)。“全然イメージが浮かばないんだけど…”と思いながら。歌詞も曲に寄った内容になっていると思うんですけど、俺の主張というよりは、完全に曲に合わせたというか。“ダイヤモンドのヒールを引っかけて”というフレーズとか(笑)。
DUCK-LEE:LAメタル感バリバリの人が歌っているような(笑)。
TUSK:だからそこもひとつの挑戦だった。
●あ〜、なるほど。
TUSK:俺の中では、どの曲でMVを作るかとなったとき、この曲だけはないだろうなとずっと思っていたんだけど、この曲でMVを作ることになって。
一同:アハハハ(爆笑)。
DUCK-LEE:そんな悩みがあったなんて知らなかった(笑)。
TUSK:それもひとつの挑戦で、俺も世界観を提示して歌っているわけで、MVも撮ったわけで、これからもライブでやるわけで。それが楽しいの。
●NGにするんじゃなくて、自らが楽しんで挑戦している。
TUSK:それが今後のバンドの広がりになるし。今までと同じ檻の中でやっていてもしょうがないですよね。“ここも開けてみよう”という。それが今回で言えばメジャーのことなのかもしれないし。このバンドが全体的に、開けていくことができるすごくいいバランスの環境にあるというか。“そういうのもやろうよ”とみんなで思える。
●そういう雰囲気が歌詞にも影響しているのかもしれないですけど、今回は何曲かに“夢”という言葉が出てきているんですよね。それが印象的で。
TUSK:今回は特にこの仲間っていうか、レコーディングの仲間もみんなそうだし、今回から一緒になったKING RECORDSのチームもそうだし、スタジオのスタッフもそうだし、ファンもそうだし…20年のファンも然り、ここ何年かのファンも然り、丈朋くんが入ってからのファンも然りだけど…みんなで“おめでとう”みたいな感じはあるから、いい方向にバンドが行ったらいいねという気持ちがありましたね。
●M-14「MY STREET」も、まさにそういう気持ちが出ている曲だし。
TUSK:うん。「MY STREET」は特にそうだけど、THE SLUT BANKSが最近レコーディングをするとそういうシンプルな曲を録ったりするんだけど、シンプルだからこそいちばん“何を歌おう?”と考えるんです。4人でスタジオに入って合わせたときに“こういう感じで歌おう”と考えるというか。家で“どうしよう?”じゃなくて。
●はい。
TUSK:やっぱりスタジオに入って、メンバーの顔を見て音を合わせたからこそ、“こういうクサいフレーズもいいかな”と思えたんだよね。それを恥ずかしげもなく歌えたのは、今だからかな。
interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子