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ラックライフ Vo./G.PONインタビュー

メジャーデビュー記念・全メンバー個別インタビュー #1:Vo./G.PON ソロインタビュー

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「自信を持って”この曲でメジャーデビューします!”と言ってお披露目できたのもすごく嬉しかったんです。そこで全部繋がったというか。ラックライフはラックライフのままで、PONはPONのままでイケちゃったなと思って、爆泣きしたんですよね」

●今回はメジャーデビューシングルのリリースということで、届ける経路が確実に増えて新たに知ってもらう機会も増えるタイミングじゃないですか。メジャーデビューについては、どう捉えているんですか?

PON:めちゃくちゃ嬉しいですよ。夢やったし、目標やったから。バンドをやるなら、やっぱりメジャーデビューしたいと思っていました。メジャーデビューしないと、紅白歌合戦にもミュージックステーションにも出られないじゃないですか。自分が聴いてきた音楽みたいになりたいと思って、これまで活動を続けてきて。今回すごいチャンスをいただけたので、とてもハッピーな気持ちでいっぱいです。

●いつ頃に決まったんですか?

PON:去年の年末です。だから今年も、元旦から安威川(あいがわ)でギターを弾いていました。

●安威川というのは、PONくんがいつも曲を拾ってくる河原ですよね。

PON:そうです(笑)。今年5月にメジャーデビューというのが決まっていたので、年始からさっそく繰り出しましたね。

●メジャーデビューする時期も決まっていたと。

PON:4月に始まるTVアニメ(『文豪ストレイドッグス』)のエンディング主題歌ということが決まっていて、それを機にメジャーデビューをするという話だったから。実は去年のクリスマス頃にマネージャーから「大阪まで行くので話をしよう」と言われたので、もしかして「クビかな?」と思っていたんですよ。「こんな聖なる夜にクビ宣告? 事務所に入って2年くらいだし、そういうこと…?」とか思っていたら、実際は「タイアップが決まったので、メジャーデビューしましょう」という話で。「うわぁぁあ、すげぇ!」となって喜んでいたら、「1月5日までにデモを下さい」と言われたっていう。

●ハハハ(笑)。スケジュール感がエグい。

PON:マジでエグいなと思いました。ライブもたくさん詰まっているし、年始でスタジオも空いていない中、元旦から河原で歌っていたら風邪をひき、地元のライブハウスに連絡して、お店が閉まっているところをわざわざ開けてもらって貸してもらい…みたいな。そんな感じで何とかデモを作って、ハミングで録ったものを渡してみたらOKを頂いて。そこから「ここはこうしていきましょう」みたいな話もあって、1月中旬にはもうプリプロだったんですよ。

●すごいペースですね。

PON:プリプロまでに歌詞もないといけないので、書き進めていたんです。そしたらプリプロの2日前くらいにアニメの制作会社の監督さんから、「歌詞の内容について打ち合わせがしたい」と言われて。そこで「こういう気持ちを汲んで、取り入れてほしい」と監督さんから伝えられたことが、僕が思っていたことと全部一緒だったんですよ。書いてほしいところがピンポイントで入っていたらしくて、ちゃんと同じ気持ちになれていた。それによって自信が出たので、帰りの新幹線で残りも全部書いてプリプロをしてレコーディングもして…という流れでしたね。

●歌詞を読んで、すごくPONくんらしいなと思いました。

PON:原作を読んで自分と重なるところを探してみたら、主人公と自分には重なるところがあって。そこからキッカケをもらって、あとは自分の気持ちを曲にしただけという感じですね。歌っていることは原作からもらったことだけど、歌っている景色や人に対する想いとかは完全に僕の歌なんです。

●重なるところというのは?

PON:“誰かに認められないと、誰かに「生きていていいよ」って言われないと、人は生きていけない”みたいなセリフがあって。それを読んだときに「あぁ、すごくわかるな。バンドも一緒やな」と思ったんです。

●今回の3曲は、どれもすごく自分を見つめたうえで生まれた言葉のような印象が共通していて。カップリングの2曲は、「名前を呼ぶよ」が決まったうえで選んだんでしょうか?

PON:他にも候補が何曲かあって、作り貯めていたものが結構あったんですよ。M-2「ブレイバー」は、去年の年末くらいからライブでもやっていたりして。「名前を呼ぶよ」の原型が見えたときに「シンプルな曲やから(カップリングを)どうしようかな?」と考えたんです。そのうえで他の曲たちを眺めてみたら、「これとこれだろうな」っていう感じで即決でしたね。

●今回の3曲は歌い方が全部違うというか、声の聴こえ方が違うなと感じていて。「名前を呼ぶよ」は歌いきる感じで、「ブレイバー」はライブのように気張っている感じもあるし、ちょっと歌がロールしているような聴こえ方もする。M-3「ストレンジマン」は喋っているときのPONくんの声に近くて、リラックスしているというか。そういう3色のボーカルのイメージがあって、すごく幅が広がったように思いました。

PON:それはめっちゃ嬉しいですね。ちゃんと狙い通りのコメントを頂けたので、満足です。

●実際に自分でも、歌い方を意識している?

PON:曲調と曲の内容と歌の表情をすごく意識してやったレコーディングでした。「ブレイバー」は、プリプロの段階ではもっと綺麗に歌っていたんですよ。歌は綺麗な感じで、サウンドは駆け抜けるようなイメージがあって。今まで他のメンバーは歌については全然触れてこなかったんですけど、今回のプリプロをやっているときに大石(Dr.LOVE大石)が急に「もうちょっとライブみたいにやってもいいんじゃない?」みたいなことをポロッと言ったんです。その時はちょっとカチンと来て「歌は俺がいちばん知ってるねん!」とか思ったんですけど、よく考えたら「そうかもしれない…」と。

●受け入れた(笑)。

PON:実際にガッと歌ってみたら曲が全然変わって、自分的にも「化けたな」という感覚だったんです。そういう意味ではすごくよかったですね。「録音でこんなに攻めるのってアリなんや」って思えたから。今までは自分で勝手に引いていたラインというか、綺麗な中でライブ感を出すことを意識してやっていたんですよ。その線をもう少し先に延ばせたレコーディングだったなと思います。

●勝手な想像ですけど、「ブレイバー」は気持ちと音楽と歌の距離がすごく近いというか。「本当にこう思っているんだろうな」というものがダイレクトに伝わってくるから、聴いただけで体温が3℃上がるような感じがして。すごく熱量がある曲ですよね。

PON:歌詞の内容とも相まって…という感じですね。ほんまに悔しくて、どうにかしたくてワナワナしてるときに書いた曲なんですよ。だから、そういうふうに歌えてよかったなと思います。

●自分に対してケツバットをやりまくっている感じ?

PON:自分のケツを叩くためだけに書いた曲です(笑)。ライブでやると、めちゃくちゃアツくなってしまう曲なんですよ。たぶん大石はそれをライブで感じていて、その感じをCDにパッケージングできたらいいんじゃないかと思って言ってくれたんでしょうね。

●「自分のケツを叩くためだけに書いた」ということは、何か悔しいことがあったんですか?

PON:悔しいことなんて、死ぬほどありますよ。めっちゃ小さいことから大きいことまで…何があったかは全然覚えていないんですけど。

●覚えていないんだ(笑)。

PON:男って、やっぱりカッコいいものに憧れるじゃないですか。漫画の主人公ってブッ飛んでいる人が多いし、思ったことをそのまま言えちゃったり、すごい特技や才能があるとか、そういうものに憧れる部分がある。でも、どう探しても自分にはそういうものがないんですよね。ブッ飛んだ解釈の仕方や誇れる武器とかが全然見当たらない。しかも思ったことをそのまま言えずに、「これを言ったらどう思われるかな?」とビビっている自分がめっちゃサブいなと思って。

●子どもの頃はもっと自由でしたもんね。

PON:そうなんですよ。ムカついたら、すぐケンカしたりもして。最近なんてケンカすることもないし、「上手いこと生きているな」っていう感じがして、そういう自分がほんまにサブいなと思って書き始めた曲なんです。

●実際に思ったことをダイレクトに綴っている。

PON:“考えてばっかで 何が変わった?”なんて、ほんまにそうですね。

●聴いていると胸がアツくなるけど、みんな耳が痛いというか胸が痛くなると思います(笑)。

PON:誰しもそういう一面があると思うんです。“そうやって僕は まだここにいる”なんて、悲し過ぎますからね。考えることばかりが先行しちゃうんですけど、考える前に動ける人がカッコいいと思っちゃうから。そういう人に少しでも近づけるようにというか。

●まさに自分のケツを叩くために書いたと。「ストレンジマン」は、死を意識した内容なのかなと。人間は誰しも死ぬからといって諦めるわけじゃなくて、それをポジティブな方向に転化させている感じがします。

PON:この曲って、別に何の答えも出していないんですよ。10年くらい前に高槻RASPBERRYで先輩のバンドを観たときにMCで「死ぬとわかっていながら笑える動物は人間だけだ」っていう哲学的なMCをしていて、それを聴いたときに何となく「ほんまにそうやな」と思ったんです。それを最近になってふと思い出して、「やっぱりほんまにそうやな」と。死ぬってわかっているけど、どうせ明日も生きると思っているし、楽しい予定を先に組もうとしているっていう矛盾がある。「死んだらどうなるんだろう?」とか「誰にも会えなくなる」とか考え始めたらめっちゃ怖いけど、「たぶん死なないだろうな」っていう楽観的な考えがどこかにあって。

●人はいつか死ぬものだとわかっているけど、明日死ぬわけじゃないと勝手に思っている。

PON:そういうことって、生きている中で他にもたくさんあるなと思うんですよ。TVの中で人が殺されているニュースを適当にTwitterを見ながら片手間に眺めていたりとか、逆に作り物のドラマを観て感動して泣いたりとか…。いろいろと感じたり思ったりするけど、「どれがほんまもんなんやろうな?」と思ったら全部が嘘にも見えてくるし本当にも思える。でも毎日ヘラヘラしながら、結構楽しく生きているんですよ。そう思ったら人間って、よくわからない不思議なものやなっていう。

●そういうことを「ストレンジマン」では歌っている?

PON:僕もその一部やから「何か不思議やんな〜」って、みんなに言いたいというか。それで「そうやんな〜」って言ってほしいだけの曲なんです。「どうせ死ぬし、死ぬのは怖いけど、とりあえず楽しく生きていこうか」みたいな柔い(やわい)覚悟みたいなものを歌にしたくて。でも本当は“生き死に”の問題って、すごく重いじゃないですか。「いろんな嘘を張ってイメージを大事にしながら、ほんまの自分を殺してでも生きる」みたいなめっちゃ重たいテーマを、めっちゃポップに歌いたかったんですよ。

●だから、こんな歌い方になったんですね。

PON:アホみたいというか、腑抜けた感じというか。あんまりガッとアツくなることもなく、普段のテンションに近いのんびりした感じだから、いちばん普段のキャラクターに近いのは間違いないですね。重いテーマを歌っているからこそ、バックのオケは逆にハッピーな遊園地みたいなイメージにしたいなと思いながら作った曲です。

●ちゃんと理由があって、3曲とも違う歌い方になったんですね。昔はよく「歌いながら泣きそうになる」とか「帰って来られなくなる」と言っていたじゃないですか。その当時と比べて、今はどうですか?

PON:全然変わらないですね(笑)。でも変わらないことがいいことかなとも思えているし、そうなれるのが自分の強みでもあるのかなって。ちゃんと曲を理解して、曲に入り込んで歌えているから。何年も前の曲だったら、作ったときの気持ちはもう忘れているものじゃないですか。だからそのときの気持ちを思い出すんじゃなくて、今の自分としてその曲に対する想いをちゃんと持って臨めている証拠かなと思うんです。

●昔の曲を今でもちゃんと歌える?

PON:たぶん、どれでもイケますね。これまで100曲くらい書いてきたものを読み返してみても、今でも歌える歌詞ばかりなんですよ。だから、何も変わっていないですね。もちろん表現方法は変わったりしていますけど、「この曲で言っている意味が全然わからない」っていうものはまったくないです。

●もっと若い時に書いた曲でも恥ずかしくなったりしない?

PON:恥ずかしいのは恥ずかしいですよ。“そんなにストレートに言う?”みたいな。でもそれはそのときの自分の素直な気持ちやし、恥ずかしいけどめっちゃわかるんです。自分の書いた曲には嘘がないと思っていましたけど、“ほんまに嘘がなかったんやな”と思いますね。

●曲を聴けば嘘がないのはわかるというか。今回メジャーデビューだからといって音楽性がガラッと変わったわけでもなくて、安心したんです。

PON:初メジャーデビューって、1回しかないことじゃないですか。ずっと目指していたところだし、バンドを10年やってきてやっと努力が報われてメジャーデビューできる…となったときに書いた曲が「名前を呼ぶよ」だったんですよ。その内容が、やっぱりライブハウスの人たちに向けた歌だったっていう。しんどいときに自分たちを支えてくれた「ラックライフよかったです」っていう一言とかを思い出しながら、ライブハウスにいる人たちに「次は自分たちがあなたたちの支えになれるように歌い続けたいな」っていう曲を書いたんですよね。それが自分的にもすごく嬉しくて。“全然ブレてへんやん、俺”って思えた。

●自分でもブレていないことを実感できた。

PON:この曲ができたときに、チームのみんなもアニメの制作サイドの人たちも「めちゃくちゃいい曲だね」と言ってくれて。自分が生きてきた10年で出会った歌を今、この場で関係者が評価してくれたっていうのが嬉しかった。この前のなんばHatch(2016年3月26日の“GOOD LUCK vol.38”)で初めて歌ったんですけど、自信を持って「この曲でメジャーデビューします!」と言ってお披露目できたのもすごく嬉しかったんです。そこで全部繋がったというか。ラックライフはラックライフのままで、PONはPONのままでイケちゃったなと思って、爆泣きしたんですよね。

●歌っているときに泣いたんですか?

PON:歌う前ですね。「この曲はライブハウスで出会った人たちに支えてもらったことを思い出しながら書いた曲なんです」とMCで話しているときに、目の前に色んな顔が浮かんできて。この人たちに向けて作った歌でメジャーデビューするんだなって思うと、「この歌を書かせてくれてほんまにありがとう!」っていう気持ちになったんです。そしたら自分でもビックリするくらい泣いてしまって…。客席から「頑張れ〜!」っていう声も聞こえてくるし、“発表会”みたいな空気になっちゃいました(笑)。すごく幸せな歌やなと思いましたね。

●そうやってキチンと進んで来れているというのはいいことですよね。

PON:そうですね。メジャーデビューっていうスタートを、今まで生きてきたものを背負いながら踏み出した一歩やったなと思います。

interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子

 

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