ライブにおいてオーディエンスを惹き付ける要素は様々であり、そこがバンドの個性に繋がる部分でもある。kasumiの場合、それはエンターテインメント性あるパフォーマンスだ。ミュージカルにヒントを得た芝居的演出に、ブロードウェイ仕込みのダンス。フロア中を飛び交いまるで手品のように次々と笑顔を生み出す姿は、さしずめマジシャンのようだ。ライブハウスから仕掛けるkasumiのミュージック・マジックショーをご覧あれ!
●kasumiはパーティー感のあるオシャレな雰囲気が印象的ですが、結成当時から今のような音楽性だったんでしょうか?
StO:そこに到達するまで結構試行錯誤しました。Kashitamiくんと僕は初期からのメンバーで17年近く一緒にやっているんですけど、最初は歌うのが嫌でインストバンドをやっていたんですよ(笑)。
●そうなんですか! 今とまったく違いますね。
StO:でもやっぱり“これじゃあかん”と思って、Kashitamiくんと僕が好きなミュージカルを参考にして、振り付けや演技を入れるようになったんです。
●それは面白いですね。まずミュージカルを取り入れるという発想がなかなか出てこない気がします。
StO:ライブの中でどう見せるか難しいですからね。ただ芝居を入れるだけでは“何のためにやったの?”ってなると思うし、「ちゃんと演奏しなよ」ってボロッカスに言われたりもしたんですけど…これで間違っていないと信じてやっていくうちに、良いと言ってくれる人がだんだん増えてきて。
●みんなで楽しむエンターテインメント性は、その辺りから培われていったと。
StO:振り付けのあるバンドはよくいると思うんですけど、そこから一線を越えて“そんなことするんや”ってくらい無茶なことをやっていましたね(笑)。
Rikitake:初めて観たときに“なんやこのバンドは!”ってなりましたからね(笑)。
●人と違うことをやりたいという想いがある?
StO:それはめちゃくちゃ大きいでしょうね。違っていれば良いというわけじゃないですけど、“人と違うことをしなければいけない”くらいの想いが今でも根底にありますし。
Rikitake:KashitamiさんとStOさんは“目立ってナンボ!”って考え方の2人なので(笑)。
StO:このバンドはフロントマンが3人いるんですけど、だいたい僕とKashitamiくんが前に出過ぎているので、ちょっと申し訳ないと思っています(笑)。
●わりと目立ちたがりなタイプというか。
StO:元々人前でしゃべったりするのは恥ずかしいタイプで、だけど何かをしたいという気持ちがあって。照れを振り切ろうとして続けるうちに変わっていって、今ではステージに立つときにメイクまでするようになりました。前に女装をしてみようってアイディアを出したときは、メンバーから却下されたこともあって(笑)。
●ハハハ! それも魅せるという意識の変化ですよね。
StO:ひとりひとりが濃いキャラを出していくのがkasumiのスタイルなので、それぞれの個性が上手く融合してバンドの力になっていくと思うんです。例えばRikitakeだけが化粧で肌を真っ黒にするとかも面白いと思うし(笑)。
Rikitake:みんなが派手な中、ドラムのKambeさんはナチュラルな感じなんで、逆に目立つんですよね。そうやってクールに叩いてくれるから、こっちが無茶しても成り立つというのもあります。
●RikitakeさんとドラムのKambeさんは昨年5月に加入されたそうですが、元々面識があったんですか?
Rikitake:僕は元々ボーカルのKashitamiさんと仲良くさせてもらっていて、それがキッカケで誘われたんですよ。別のバンドをやっていたときにkasumiと対バンしたこともあるし、活動休止前のライブも見にいっていました。
●これまでもガッツリとバンド活動をしていたんですね。曲はどなたが作っているんですか?
StO:ボーカルのKashitamiくんと僕です。基本的にワンコーラスくらいのコード進行と、それに乗る主メロを考えてきて、ドラムやベース、ギターが各々に肉付けしていく感じですね。
●基本となる形を持っていって、それ以外は各パートがアレンジすると。
StO:コードがない場合もありますし、「こんな感じで!」って擬音を交えて伝えることもあります(笑)。Kashitamiくんもそういうタイプなので、イメージを受け取って肉付けしていくことが多いですね。セッションやジャムに近いのかもしれないです。
●すごくライブ感のある作り方ですね! 今作『La.La.La ON THE FLOOR』の曲もそうだった?
Rikitake:はい。しかも全新曲なんですよね。
StO:今作の曲は、自分たちの中でも幅広いテイストの曲があるんですよ。ちょっとハードロック気味な王道なロックであったり、パンチのあるような疾走感のある曲だったり、4つ打ちのダンスナンバーだったり…“こういう子たちは、こういう曲で楽しんでくれるんじゃないか”というのを考えて入れているんです。
●一定の好みの人たちだけじゃなく、幅広い人に楽しんでもらえる作品を目指した。
Rikitake:そうですね。かといってまったく違う別物ではなく、自分たちの作り出すビジョンがありきの中ですけど。kasumiっぽいエッセンスを残しつつ、新しいことに挑戦して表現を幅広く持つという感じですね。
StO:メンバーが変わってバンドにも変化があったから、当然お客さんからの見え方も変わるだろうし、新しく始めたバンドくらいの意識でやるようにしていて。リリース後は長期的なツアーで全国に行きたいと思っているんですよ。だから今作は、新しいkasumiを見せるための名刺的存在になるだろうし、そこから生で体感しないとわからないキャラクターやパフォーマンスをぜひ観てほしいんです。僕らのようなバンドは、好きになってくれる人と絶対に無理だっていう人が極端に分かれると思うんですよ。
●それくらい個性が色濃く出ているんでしょうね。だからこそ、ハマる人は一発でハマるというか。
Rikitake:例えば僕は、ステージ上ではオールバックでグラサンをかけているので、アー写の雰囲気から怖い人だと思われがちなんですよ。でも話してみたら全然怖くないと思うし、むしろ大人しい方なので(笑)。そういった人間的な部分がわかるのも直接話してこそなので、ぜひライブで会いに来てください!
Interview:森下恭子