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イロメガネ

155万人の、引きこもり予備軍に贈る。聴く者の心に“平穏”をもたらす珠玉のポップソング集

イロメガネ2016fix作詞/作曲/編曲からボーカル/ピアノ/ギター/DTMまでの全てを自らこなす“東 亜優(ヒガシ アユ)”のソロプロジェクト、“イロメガネ”が2ndミニアルバム『37.2℃』をリリースした。イジメによる高校中退から2年間の引きこもり期間を経て、音楽活動を始めたという彼女。その実体験に基づいて書かれた歌詞の言葉は聴く者の心に突き刺さってくるが、決して突き放しはしない。生々しい感情を垣間見せる歌声が運ぶキャッチーなメロディとバラエティ豊かなサウンドは、その心に“平穏”をもたらすのだ。苦難と対峙して乗り越えた先にある光をまとったような、珠玉のポップソング集が完成した。

 

「突き刺したいけど、突き放したくないというか。そういう気持ちになってもらえる曲を集めたつもりです」

●亜優さんが音楽活動を始めたのは、いつ頃からなんですか?

亜優:20歳前後の頃に、1人で家に引きこもって曲を作り始めたのが活動の始まりでした。ライブは2010年頃から本名の“東 亜優”名義で、打ち込みのDTM音源を流しながら1人でやっていて。ずっと曲を作り貯めていたので、みんなに聴いて欲しいなと思ってライブをやり始めたんです。

●曲作りを始めたのは、引きこもりの期間だった。

亜優:高校は中退したんですけど、大学に入ってから社会復帰して。そこで初めて学校にちゃんと通ったんです。でもやっぱり家にいることが多くて、プチ引きこもりみたいになっていましたね。

●人と接するのが苦手だったりする?

亜優:元々、苦手ですね。喋るのが苦手なんです…。

●それは子どもの頃から?

亜優:小学校の頃は明るい子だったんですけど、身体が強くなかったので学校を休みがちだったりして…。だから、あんまりコミュニケーション能力が育ってこなかったんだと思います(笑)。

●元々は明るかったんですね。

亜優:イジメられたのがキッカケで本格的な引きこもりと不登校になってから、暗い子になりました(笑)。中学生くらいの頃からですね。

●今はその経験を乗り越えられている?

亜優:かなり前に乗り越えましたね。今は(イジメられたことを)そんなに気にしてもいないし、恨んだりもしていなくて。音楽を始めた大学1年生の時くらいには自分も周りも大人になっていたし、良い人たちとも知り合えたので乗り越えられました。

●中学〜高校の頃はまだ音楽を始めていなかったんですか?

亜優:やっていなかったです。でも音楽を聴くのは好きだったので、ライブに行ったりはしていて。2003年の“SUMMER SONIC”でRadioheadのライブを観たことが人生で一番の衝撃で、ミュージシャンになりたいと思ったキッカケもそこだったんです。つらそうにうずくまって歌っている姿に勇気を与えられたし、それを見て自分も発する側になってみたいと思いました。

●Radioheadのライブを体験したことが、音楽を始めるキッカケになった。

亜優:(曲調等が)暗い感じではあるんですけど、そこから絶望だけを受け取るんじゃなくて「傷付いても良いんだよ」と言われている気持ちになって。自分もそういう表現者になって、「傷付いても良いんだよ」って言いたいなと思ったんです。

●出発点はつらい思い出や悲しい気持ちだとしても、それを曲として表現する時はちゃんと前向きな形で出しているというか。

亜優:それが目標なんです。最初の頃はつらいことを消化するためだけに曲を作っていたんですけど、自分にとっても聴いている人にとっても、最後はちょっと救われたいなと思って。自分の音楽を聴いてくれる人が増えてきてからは、「聴いている人が穏やかで優しい気持ちになってほしい」という想いが出てきましたね。

●リスナーの存在によって、意識が変わってきたわけですね。

亜優:音楽をやっていると、お客さんも含めて色んな人と触れ合うから。それまでは本当に1人の世界だったんですけど、今は「成長させてもらえているな」って感じています。こうやってインタビューでお話しさせてもらう機会とかも、1人で引きこもっていたらなかったわけですからね。

●外の世界に出たことで、成長できたわけですよね。でもやっぱり部屋に1人でいるほうが楽だし、誰でもそうしたい時があると思うんですよね。

亜優:そういう人も多いんじゃないかなと思うんです。「ちゃんと生活しなきゃいけないけど、本当はずっと家にいたい。心が疲れちゃった…」という人もいるだろうなって。みんな自分の中に色々と抱えているものだと思うから。

●そういう想いを抱えているのが「自分1人じゃないんだよ」と伝えたい気持ちもあるのでは?

亜優:「1人じゃない」とまではおこがましくて言えないんですけど、共感してもらえるというのはリスナーの方とのつながりが生まれることだと思うから。そういうところはすごく伝えていきたいです。

●元々は自分の気持ちを消化するために書いていたところから、今は人に伝えたいという気持ちが生まれている。

亜優:人に伝えたいですね…すごく。最初は自分の気持ちを消化するために、日記を書いていたんです。大学の授業で「感情が乱れた時は他人にぶつける前に文字に起こすと良い」という話を聞いて、やってみようと思ったところから書き始めたのがキッカケで。それが歌詞のノートになっていったので、やっぱりパーソナルな感情や自分の言いたいことが元になっているんでしょうね。

●歌詞の内容は実体験を元にしているんでしょうか?

亜優:実体験が元ですね。でも(歌詞として)印象的になるような言葉を選んでいるので、変えたりはしています。具体的に書いたほうが想像しやすいのかなと思っているので、たとえば“東京タワー”とか具体名をあえて使っていたりもして。

●“東京タワー”という言葉が出てくるM-5「白い橋」も実体験を元にしている?

亜優:これはレインボーブリッジのことですね。一番最近にできた曲だから、とても大切だけど、ちょっとつらい曲でもあって…。自分の音楽性や性格もよく出ていて、象徴的な曲だと思います。

●「白い橋」は最近作った曲なんですね。

亜優:M-1「勇気を持ってグッドバイ」と「白い橋」とM-6「Shall we love?」が新しい曲です。他の曲を作った時期はバラバラなんですけど、M-3「こわい」とM-8「思春期」は特に初期のものですね。

●「思春期」はタイトルどおり、思春期に書いた曲だったりもする?

亜優:いや、思春期のまっただ中に書いたわけではなくて、その頃を思い返して書いた曲ですね。17歳の頃を思い返して歌いました。この曲を歌うと、いつも泣いちゃうんです…。

●この曲は特にそうですが、イロメガネの楽曲は歌の隙間から“生(ナマ)”の感情が漏れ聞こえる瞬間があるような気がしていて。

亜優:そう言ってもらえると、すごく嬉しいですね。そういう歌い手になりたいんです。上手く聴かせるんじゃなくて、曲を伝えたいから。

●イロメガネの楽曲は、亜優さん自身の人生を描いているような面もあるのかなと。

亜優:そう思います。成長していっているところや、その中での変化も出ていて。「これは自分の人生だな」と思うことで、奮い立っています。

●前作の1stミニアルバム『お花畑につれてって』から成長しているという実感もある?

亜優:自分でも「大人になったな」と思います。前作を今聴いてみると、ちょっと稚拙な感じがして…。その良さもあるとは思いますけど、必死さが前面に出ているなと。前回は訳がわからないまま終わっちゃった感じがあるんですよ。でも今回の2ndミニアルバムにはすごく時間をかけて、本当に作りたいものを作れたから。前回もトラックメイキングから自分で全部やったので、やり方も徐々に覚えてきていて。そういう面でも成長したなと思いますし、曲も前作よりバラエティに富んでいますね。

●時間をかけて作れたことが良い方向に作用した。

亜優:「自分がどう見えるかな?」ということを考える時間も多かったので、そこも変わったところだと思います。「見られているんだな」という意識が出てきたし、「伝えられるんだな」という気持ちにもなれて。

●リスナーの反響から得たものも大きかったんでしょうか?

亜優:私にとっては、すごく大きかったです。「大学の卒業コンサートでコピーしたいです」と言ってくれる人がいて、観に行ったりもしたんですよ。泣きながら歌ってくれている姿を見て自分も泣きそうになったし、本当に作って良かったな…と。それだけで「もう本望だな」と思えるようなことがたくさんありました。

●全国リリースしたことで、知らない人にも聴いてもらえて広がったというのも大きいのかなと。

亜優:それこそ“引きこもり”とは相反する行為だと思うので、本当に大きなことでした。それがなかったらまたCDを作ろうとは思えなかったくらい、私にとっては大きな事柄ですね。

●そこから今作を作るにあたって、どういう作品にしたいというイメージはあったんでしょうか?

亜優:特にコンセプトや一貫して「こういう気持ちになって欲しい」というものはなくて。突き刺したいけど、突き放したくないというか。そういう気持ちになってもらえる曲を集めたつもりです。

●『37.2℃』というタイトルはどこから?

亜優:『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』(1986年)というフランス映画がとても好きで、その原題が『37°2 le matin』というところからですね。調べてみたら“37.2℃”というのは女性が一番妊娠しやすい体温で、“微熱を帯びている”という意味があって。微熱を帯びている感じが今回の作品にあっていたし、その映画はちょっと歪(イビツ)な恋愛の話で。今作はちょうど自分がすごく歪な恋愛をしていた時期を思い起こして描いた曲が多いというのもあって、“歪”という言葉がテーマになっていたので『37.2℃』にしました。

●“歪”という言葉がテーマだったんですね。

亜優:曲の中にも出てくるんですけど(※「白い橋」)、“歪”という言葉は今回のテーマになっていますね。たぶん自分が歪だから、歪なものに惹かれちゃうんだと思います。

●歪さは前作から変わらずにある?

亜優:そうですね。でもちょうど私生活が歪な感じだったので、今回はもっと歪になっちゃったのかもしれない…(笑)。

●その時の精神状態が曲に反映されている?

亜優:すごく反映されています。ライブも精神状態に左右されやすいので、すごく波があるんですよ。お客さんはお金を払って観に来てくれているわけなのであんまりダメなライブはしたくないんですけど、やっぱり“生”でいたいから。まだまだ勉強中ですね。

●今回の曲をリリース後のツアーでやった時の反応も楽しみなのでは?

亜優:やっぱり音源そのままだとつまらないですからね。もっと突き刺したいし、もっとハッとしてもらいたいし、もっと共感して欲しいなと思っていて。「伝わったな」というのがわかるくらい(音で)会話できたほうが気持ち良いんですよ。ライブだと目の前に伝えたい人がいるわけなので、そこでのやりとりをすごく楽しみにしています。

Interview:IMAI

 
 
 
 

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