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片平里菜

普遍的なポピュラリティを備えた歌とメロディに乗り、 深層にまで届く言葉が心の中に消えない“何か”を残す

PH_katahira片平里菜が2枚目のオリジナルアルバムとなる『最高の仕打ち』を完成させた。2014年8月に発売した1stアルバム『amazing sky』から約1年半ぶりにリリースされる今作には、「誰もが」「誰にだってシンデレラストーリー」「この涙を知らない」といいったシングル曲も含めて全14曲を収録。SCANDALやcinema staffといったバンドからミト(クラムボン)や亀田誠治に至るまで数多くのミュージシャンを迎え、曲ごとに様々なジャンルや多彩な色を感じさせる作品となっている。リスナーの耳を捉える強力なポピュラリティを持った歌とメロディだけでなく、心の奥深くに浸透するような深みも兼ね備えた今作。『最高の仕打ち』という強烈なインパクトを持った言葉に少しでも興味を惹かれたなら、まずはこの音源に触れてみて欲しい。そこにはきっと胸の中に消えない“何か”を残す、言葉と音との出会いがあるはずだから。

 

「10代の頃は“殻を破りたいけど破れない”みたいなところを行ったり来たりしている感じがあったんです。その殻を破って、今回の2作目では自由になれた感じがすごく出ていますね」

「今は色んな方とやることで色んなやり方を知ることができていて。選択肢がどんどん自分の中で増えているので、この先はそこから選べるって考えたらすごくワクワクするというか」

●まずアルバムタイトルにもなっている“最高の仕打ち”という言葉にすごく目を惹かれたんですが、どういうところから出てきたものなんでしょうか?

片平:この曲で歌っている想いというのは(自分の中に)ずっとあったんです。何とか形にしたいなと思って何度も曲作りに挑戦したんですけど、なかなかできなくて。でも1stアルバム(『amazing sky』2015年)のタイミングあたりでやっと出てきたのが“最高の仕打ち”っていうフレーズでそれにビビッと来て、この曲を作り上げました。

●歌いたいこと自体は以前からあったんですね。

片平:たぶん学生の頃から何となく感じていたことではあって、それが音楽活動を始めてからなお表現したくなったというか。ずっとあったんですけど、なかなか上手い表現が見つからなくて。どちらかに寄ってしまうというか、すごくネガティブなままで終わってしまったり、逆に前向きなんだけど上辺だけになってしまったりとか…その二面性が難しかった。でも今回のM-13「最高の仕打ち」は本当にそこから上を目指しているハングリー精神のようなものもあって、どっちもある曲だなと。

●これまで経験を積み重ねてきて、今ようやく自分の中にあったものを形にできたという感じでしょうか?

片平:そうかもしれないです。色んな表現に挑戦して、自分なりにそれぞれのジャンルを消化しながらずっとやってきて、自分自身でも自信がついたのかもしれない。この曲ができた時は“できた!”っていう達成感というか、確信に近いものがありましたね。

●タイトル曲になっているわけですが、今作を作る上での指針にもなった?

片平:なりましたね。この曲ができた時に、どこかのタイミングで録音したいなとは思っていて。最初からアルバムのタイトルやリード曲にするつもりはなかったんですけど、結果的にこの曲を軸に2ndアルバムを作りたいと思ったから。

●2ndアルバムのイメージは、いつ頃からあったんでしょうか?

片平:『amazing sky』を作りながらも、次の曲については何となく考えていて。『amazing sky』の時はわりと昔の曲や10代の頃を思い返して作った曲をいっぱい入れていたから、2ndアルバムは“次の自分”のものを書きたいっていう欲がすごく高まっていたんです。「最高の仕打ち」はそのタイミングでできた曲なので、この曲を入れたアルバムにするということは考えていましたね。

●ある意味、『amazing sky』はそこまでの自分の集大成的な作品でもあったのかなと。

片平:そうですね。18歳からギターを持って音楽活動を始めてから3年間くらいの、まだ手探り状態で作った音楽というか。まず昔の曲を消化しないと、次のものも生まれないなと思っていたんです。初期の曲をみんなに聴いてもらってから、次に進みたいなと思っていました。

●1stアルバムを作ったことで、そこまでの楽曲を消化できた。

片平:だから今回はもっと自由に、色んなことに挑戦できるようになったんだと思います。

●今回たくさんのミュージシャンと一緒に制作したのも、挑戦の1つだったんでしょうか?

片平:というよりも、自分の作る曲は毎回バラバラで…。全曲アコギの弾き語りで作っているんですけど、その曲が求める音っていうのが毎回違うんです。だから自然と、アレンジをお願いするバンドさんやアーティストさん(の人選)が振り切れていったというか。

●参加ミュージシャンの人選は全部、自分で考えたんですか?

片平:自分で浮かんだ人もあれば、思い付かない時はスタッフさんから提案をもらったりして。でも今回は前作よりも自分の中でイメージは固まっていましたね。たとえばM-3「Party」は女の子がロックしているイメージで作ったので、SCANDALさんがまず思い浮かんで。M-7「舟漕ぐ人」は、昔からお世話になっていたベーシストの須長(和広)さんのソロアルバム(『MIRROR』2015年)を聴いて「これは良い!」と思ったのでお願いしたりとか。どの方も何かしらつながりがあって、お願いさせてもらいました。

●ガールズバンドというイメージがあったところから、その象徴的な存在としてSCANDALが浮かんだ?

片平:そうですね。でも実際にお会いしてレコーディングも一緒にやってみて、“ガールズバンド”っていうレッテルとは関係なく、普通に“バンドだな”って思いました。戦っている感じが伝わってくるところにも共感しましたね。

●バンドの中に自分が入って一緒にやるというのも新鮮だったのでは?

片平:新鮮でした。中高生の時にバンドを組みたくても仲間がいなくてできなかった青春を今やっと味わえた感じです(笑)。女の子と、しかも同世代と一緒にやるっていうことはあんまりなかったので楽しかったですね。

●一緒に制作する中で得たアイデアもあったりする?

片平:アレンジを進めていく中で、曲の構成も変わったりして。最初はサビがいっぱいあったんですけど(笑)、「そのサビをBメロに持っていったら良いんじゃない?」っていうアイデアをもらったりもしたんですよ。歌詞の面やアレンジや曲構成についても、ヒントをたくさんもらいました。最初にもらったデモのイントロも派手だったので王道なロックが良いということになって、女の子だけど骨太な音でカッコ良い曲になりましたね。

●今作中で最もBPMの速い曲だそうですね。

片平:私が作った段階でも速いイメージがありましたけど、さらに速くなった気がします。アルバムの中で、女の子とやっている曲が一番速くて男前っていう(笑)。

●確かに(笑)。本当に1つのバンドとして演奏している画が浮かぶ曲というか。

片平:オケみたいな感じになったら嫌だなって思っていたので、トラックダウンの段階でもあんまり楽器と歌を離さないようにしてもらって。リバーブもあんまりかけないようにしてもらって、一緒にやっている感じが出せたら良いなと思っていました。

●単にアレンジを依頼するというよりも、一緒に作ったというイメージが近い?

片平:アレンジされたものを歌うというよりは、自分が提案したものを作ってもらって、そこからまた詰めていって…という作業が毎回あったんです。だから、確かに“一緒に作った”というのに近いかもしれない。

●お願いする時に、ある程度イメージは伝えている。

片平:毎回伝えますね。逆に自分にはイメージが全くなくて、「好きに料理してください」って言う時もあります。cinema staffさんと一緒にやったM-9「大人になれなくて」は曲を作った段階では音のイメージが全然浮かばなかったから、「思ったように一度作ってください」とお願いして。でもお任せして、上がってきたものがとても良かったんです。そこから自分のイメージも固定されて、細かいところをお願いしたりもしましたね。

●アレンジしてもらったことで、自分のイメージも固まったんですね。

片平:“あ、こういう曲なんだ!”というのがやっとわかるというか。元々バンド経験がないので、音のことが全くわからないんです。最初は本当に手探りな感じだったんですけど、それが毎回レコーディングを重ねていくうちにわかってきて。…最近はどんどん頑固になっている部分もあるなって思います(笑)。

●譲れない部分もある?

片平:曲によっては「これはしないでください」っていうことを最初にリクエストする時もあって。“この曲は本当にこだわりたい”っていうものもあるから。M-14「そんなふうに愛することができる?」は、「なるべく曲の世界感に寄せたい」とか「ポップにはしたくない」といったやりとりを色々としながら作りましたね。

●「大人になれなくて」に関してはcinema staffにお任せしたということですが、レコーディングはどんな雰囲気だったんですか?

片平:とにかく新鮮で、刺激を一番もらえました。もう少し年齢が上の方だと割り切っちゃうというか、“年も離れているし、私はまだ新人だから”みたいな気持ちになっちゃうんですよ。でも同世代のバンドさんと一緒にやると、背筋が伸びるんです。同じ土俵で戦っているわけだから、自分も頑張らなきゃと思って刺激をもらいますね。和気あいあいとしていたんですけど、初めて一緒にやるので緊張感もすごくありました。

●この曲でも、バンドと一緒にやる楽しさを味わえたのでは?

片平:そうですね。バンドってカッコ良いものとして憧れがすごくあったから。“もしかしたらアコギとか要らないんじゃないかな…?”って途中で何度も思ったくらいなんですけど、逆にメンバーさんからは「アコギは絶対に入れよう」って言われて(笑)。音の広がりはすごくありました。

●亀田誠治さんとやったM-11「BAD GIRL」もバンドサウンドになっています。

片平:そうですね。ロカビリーまではいかないけれど、スタイリッシュなロックンロールというか。

●この曲も最初からバンドのイメージがあったんですか?

片平:これは曲ができた時点で、コード進行も激渋だったから(笑)。どこまでも渋くなるし、カッコ良くなるとは思っていたんです。でもそこであえて亀田さんと一緒にやることでちょっと人の心を引っかける“毒”みたいなエッセンスを入れたいなと思って、まとめあげてもらいました。バンド編成のライブでも何回もやっていて、遊べる曲なんですよ。(各パートの)ソロまわしもできるし、お客さんと掛け合いすることもできる曲なので、ライブでもセッション曲みたいな感じになっていて。それを亀田さんにちょっとポップにしてもらった感じですね。

●すごく楽しそうに演奏している様子が伝わってくる曲かなと。

片平:本当に素晴らしいミュージシャンの方々と一緒に、一発録りしたんです。みんなでその瞬間を封じ込めたので、楽しさがすごく伝わる楽曲になりましたね。クールな部分と遊び心もちゃんとあるから、何回も聴けるかなって思います。

●ポップな曲調でありつつ、歌詞の中には“毒”の部分も入っていて。収録曲の歌詞を見ていると、“これが全部1人の中にあるものなのか…”と思わせられるくらい色んな人格が見えるというか。

片平:自分でも怖いです(笑)。

●でも全部、自分の中にあるものなんですよね?

片平:そうですね。自分の中に色々あるから、出さないと爆発しちゃうんです。曲を作っていないと溜まって消化不良になるので、アウトプットが大変で…。上手く形にならないと、それこそただの汚い言葉で終わってしまうというか。だから上手い表現をいつも探しています。

●ネガティブとポジティブのどちらにも寄り過ぎていない、良いバランスの歌詞になっている気がします。

片平:普段のモチベーションがそうだからかもしれない。ネガティブじゃないと、本当の意味でポジティブな部分も生まれない気がしていて。そこは今回のテーマだなと思います。色んなものや人の“陰と陽”とか、二面性の表現を自分なりに描いたというか。自分の中にある多面性を1つの作品として表現できると、すごく快感なんです。

●今回はまさにそれができた作品なのでは?

片平:それができて、やっと「自分です」って言える感じがあるから。今回はリリースが決まって、ちょっとホッとしています。

●前作の段階では、ここまで自分の持っている面を出せているわけではなかった?

片平:『amazing sky』を作った当時の自分の色んな面が詰まっていたとは思いますね。10代の頃の沸々と湧いてくるような葛藤や苦しみとか、そういったところが出ていて。「夏の夜」は特にそうなんですけど、10代の頃は“殻を破りたいけど破れない”みたいなところを行ったり来たりしている感じがあったんです。その殻を破って、今回の2作目では自由になれた感じがすごく出ていますね。

●それは『amazing sky』を作れたからこそというのもあるのかなと。

片平:ありますね。あの時にいっぱい悩んで、感じていたことがあるから。逆に今は、10代の頃にはあまり向き合ってこなかった問題に直面しているかもしれない。当時は完全に自分との対峙だったんですけど、今は他人が自分の鏡になっていたりして。今作では第三者というか…人とのつながりや関わりがすごく見える気がします。

●実際、今作にはたくさんの人が制作に関わっているわけですからね。

片平:やっぱり自信がなかったりもして、自分の書いた曲に確信が持てなかったりしたんです。でも色んな音が自分の曲の良さを引き出してくれたりするのは、すごく感じていて。“良い曲なんだな”って思いました(笑)。

●色んな人と一緒にやることで、“こういうやり方もあるんだ”という発見もあったのでは?

片平:可能性がどんどん広がっている感じがするのが、本当にありがたいですね。最初から1人のプロデューサーと一緒に1つの世界観を作りあげるということもいつかはやってみたいんですけど、今は色んな方とやることで色んなやり方を知ることができていて。選択肢がどんどん自分の中で増えているので、この先はそこから選べるって考えたらすごくワクワクするというか。

●選択肢を増やせる1枚にもなった。

片平:そうですね。“あんなこともしたい、こんなこともしたい”とか“あれもできる、これもできる”っていうのを今は楽しんでいる感じで。自分はどういうビートが好きで、どういう音色が好きなのかというのがまだ完全にはわかっていないと思うんですよ。色んな音楽が好き過ぎて、“全部好き!”みたいな感じがあって。そこを今はだんだんわかるようになってきている感じはありますね。

●今はまず可能性を広げて、その中から自分の芯に近いものや本当にやりたいものを見つけていく。

片平:そうですね。みんなは最初から“これ!”というのがあったり、“昔からこの音楽だけをずっと聴いてきた”というのがあるんでしょうけど、自分にはそういうものがないから。歌があったら、基本的に何でも好きなんですよ。

●そういう意味でも、歌とギターのみで構成されている「最高の仕打ち」が今作の軸なんでしょうね。

片平:「最高の仕打ち」という曲が今作で一番、伝えたくて届けたいと思っているものなんです。その軸があるおかげで、他の曲で色々と遊べたというのはありますね。

●この曲は安野勇太(HAWAIIAN6 / The Yasuno N°5 Group)さんと一緒に制作しているわけですが、最初からアレンジのイメージが浮かんでいた?

片平:最初は安野さんと一緒にバンドアレンジの方向でずっと詰めていたんですけど、アルバムのリリースが決まってから(自分の中で)ちょっと引っかかるところがあって。改めてディレクターと安野さんと私でアレンジのことを話し合ったんですけど、そこですごくエモーショナルな会話にもなり…結局「この曲は歌だけで良いんじゃないか」ということになったんです。

●元々はバンドアレンジで考えていたんですね。

片平:レコーディング当日は勇太さんのギターと私の歌だけで録ったんですけど、最初は別々のブースに分かれてヘッドホンでお互いの音を聴きながら録っていて。でもせっかくなら同じ空間での一発録りが良いとなって、最後は同じ空間でお互いの音を生で聴きながら歌ったんです。それがとても良くて…、終わった後は2人で顔を見合わせて「録れたっぽいね」みたいな顔をしていたのが印象的でしたね。

●録り終えた瞬間に“これだ!”という感覚があった。

片平:“ハンパねぇ”みたいな(笑)。それがもう感動的でした。本当にお互いの音と歌で“ワァ〜!”ってなっていく感じが2人ともにあって。緊張感から解き放たれる瞬間があったんですけど、そこの無敵な感じに2人で到達した感じがありました。“あ、これイケる!”みたいな…完全にマジックでしたね。そんな素晴らしいテイクを世に出せるのが嬉しいです。

●この曲の後にラストの「そんなふうに愛することができる?」を持ってきているわけですが。

片平:ちょうど自由とか愛について考えて過ごしている時期だったので、今回はそういうテーマにしたいなと思っていて。自分の中で鍵となる曲がM-1「この空を上手に飛ぶには」と「舟漕ぐ人」、最後の「そんなふうに愛することができる?」だったんです。その曲たちを大事な場所に置きたいなとは思っていたから、「この空を上手に飛ぶには」から始まって「そんなふうに愛することができる?」で終わるというのはずっと前から何となくイメージがあって。最後に“愛って何だろう?”って考えさせられるというか。この終わり方がスッキリしているなと。

●「そんなふうに愛することができる?」は、どういうイメージで書いた曲なんでしょうか?

片平:福島から東京に出てきて1人暮らしを始めたんですけど、そこの環境の変化がすごく影響していると思っていて。ずっと親の愛情に守られてきたところから1人巣立って、新しい愛情を求めている中で東京という街でたまに寂しくなったりする。その時に“本当の愛情って何だろう?”って考えたりする中でできた曲ですね。

●アルバム全体の流れから、この曲がラストというイメージがあった?

片平:何となくアルバムの途中で入ってしまうと、囚われてしまうというか。最後の最後だからこそ、どっぷり深いところまで世界を作り込める感じがしていて。歌詞も雰囲気も、色んな要素を含めて最後が良いなと思っていました。

●すごく浮遊感のあるアレンジになっていますよね。

片平:浮遊感はすごくありますね。Babiさんが曲の持つメッセージとかを頑張って読み取って、再現してくれました。私の中では都会のひんやりとした感じをイメージしていて。歌詞にもあるように、深夜の新宿に降り立った時のイメージがあったんです。新宿駅の南口が去年までずっと工事をしていたんですけど、大きなクレーンが空に突き刺さっているかのような光景を見た時になぜかものすごく悲しくなって…。そういう人工の冷たさとか、東京の水面下ということをテーマに作りたいなと思っていたんですよね。

●水中を漂っているような感じというか。

片平:歌詞に“竜宮城”っていう言葉も出てくるくらい、水の中のひんやりしたような感じを伝えて考えてもらいました。Babiさんはとても繊細で雰囲気のある音作りをする方なんですけど、どっぷり浸かってしまう感じの曲にして頂きましたね。

●ラストは「そんなふうに愛することができる?」なわけですが、逆に冒頭を飾る「この空を上手に飛ぶには」のほうはどんなイメージで?

片平:この曲も実は10代の頃のことを思って書いた曲で。学校っていう箱はとても小さく見えるけど、当時はその世界が全てだったじゃないですか。だからどこか遠くに行きたいという願望がずっと昔から強くて。自由になりたいというか。そういう決意表明というのが、ここには強く出ていますね。“何かをしたい”とか、衝動的な精神をずっと感じていたんです。

●1曲目に持ってきたのは、自分の中で大事な曲だから?

片平:「そんなふうに愛することができる?」も最後というイメージがあったんですけど、この曲も“1曲目じゃなかったらどこに置くんだろう?”みたいな感じがあって。

●もしこの曲がなくて、M-2「誰もが」から始まったとしたらアルバムの印象も変わってくる気がします。

片平:全然違いますね。「この空を上手に飛ぶには」があることで、ただの“シングルやアルバム曲を詰め込みました”っていうことにならないというか。どういったメッセージがこの先に詰まっているのかを伝えるような、本当にイントロダクション的な曲だと思います。

●「誰もが」やM-4「誰にだってシンデレラストーリー」、M-10「この涙を知らない」といった伝わりやすいシングル曲もありつつ、心の深層に入り込むような曲も良いバランスで入っている作品だなと感じました。

片平:ポップスも好きで聴いていたけど、ルーツというか音楽の本質を突いているような曲も好きで、そのどちらかに偏っちゃうのが嫌なんです。どっちもやりたいなと思った結果、いつも派手なことになっちゃうんですけどね(笑)。日本では歌を中心に聴く人が多いと思うのでまずはそういうところで引っかかってもらって、深い曲にも耳を傾けてくれたら良いなっていう想いは常にあります。

●さらにリスナー層が広がるキッカケにもなる作品になったのでは?

片平:そうありたいと思って作りました。こうやって(インタビューで)話したりしている中で自信がどんどんついてくるので、本当に「ありがとうございます」っていう感じです(笑)。リリースできることにも、ホッとしてるというか。このタイミングでたくさんの人に届いてほしいけど、その量よりも“ちゃんと残るものであってほしいな”っていう想いのほうが強くて。それは完璧にできたと思いますね。広がって残るものになれば最高ですけど…広げます(笑)。

●ハハハ(笑)。あと、初回限定盤に付いているDVDのライブ映像もすごく良かったです。

片平:住吉神社能楽殿というところで生歌でやったんですけど、素敵でした。でも実は、ライブ中のことをあんまり覚えていないんですよ。

●えっ、そうなんですか?

片平:無意識に歌には集中しているんですけど、歌よりも他のところに意識がいっていたというか。(会場の都合上)クーラーをつけられないので暑くて、しかもステージ上で水も飲めなかったりして…。夏の雨の日だったのでとにかく蒸し暑くて、サウナ状態みたいになっていて過酷だったんです(笑)。

●でも映像で見ると、そういうことを全く感じさせないですよね。

片平:自分でも映像を観るまで、どうなっているのかわからなくて…。観るのが怖かったんですけど、ちゃんと綺麗に収まっていて良かったです。見てもらえたら、きっと楽しんでもらえるものになっていると思いますね。

Interview:IMAI
Assistant:森下恭子

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