若干19歳とは思えないほどのメロディセンスを武器に地元・厚木で評価を高めてきた、君ノトナリ。2012年に同級生4人で結成、2015年4月に現バンド名に変更して初のミニアルバムを、厚木のライブハウスThunder Snakeの店長・長島氏(MINOR LEAGUE)の新レーベルからリリースする。エレクトロの要素を取り入れた独自のロックサウンドに切ないメロディが乗る全6曲は、一度聴いた者の耳と心を決して離さない。
●メンバー4人は同級生なんですよね。
鈴木:地元の同級生で、中学3年生の時にバンドを結成しました。その時からずっと同じメンバーで活動を続けている感じですね。でも最初にバンドを組もうという話が出た時はまだ誰も楽器を持っていなくて、触ったこともなかったんです。
●楽器経験は誰もなかったと。
中久喜:高校の学校説明会で軽音楽部の練習を見てみたらカッコ良くて、その時になぜか「俺もできるんじゃないか」と思ったんですよね(笑)。それでいつも遊びに誘うような感覚で「バンドやろうぜ!」って言ってみたら、(鈴木)穂高も「やるか」となって。
鈴木:人間関係ありきでしたね。友だちとしての歴史が長いから、変に気負いしないでやれていて。担当する楽器を決める時もスパッと決まったので、経緯を全然覚えていないんですよ(笑)。
●覚えていないんだ(笑)。
笛木:(末永)優磨が先にベースを買っていた気がします。
末永:バンドをやるとなった時に「じゃあ、ベースだな」と思って買ったんです。でもどうやって弾いたら良いのかわからなかったので、教室に通い始めて。
鈴木:そう考えたら結成した時点で一番やる気があったのは、優磨かもしれない。4人で一緒に遊んでいる感覚の延長線上だったんですけど、全員がバンドに同じくらいの熱量を注げている感じで。聴く音楽はみんな大体一緒だったので、それも良い方向に左右したのかな。
●初めてライブをやったのは?
鈴木:優磨が通っていた教室の主催するイベントに誘われて出たのが初めてですね。高校1年生の10月だったかな。全員が楽器を買って初めてスタジオに入ったのが高校1年生の4月で、そこから半年後くらいでした。その時はまだコピーをやっていて「楽しいな〜」くらいの感じで、そこから徐々にバンドにハマっていったんです。
●ライブの本数も増えていった?
鈴木:高校2年生の時にものすごい数のライブをやって。そのあたりで人とのつながりが広がって、色んな人から「ここは良い」とか「ここはダメだから、もっとこうしたほうが良い」みたいなことを指摘してもらうようになったんです。そこからようやく道が開けたというか、先のステージが見えた実感がありましたね。
●音楽性的な部分での変化もあったんでしょうか?
鈴木:オリジナルを作り始めた時から、楽曲のイメージや雰囲気はあんまり変わっていないですね。原点になるものはありつつ、色んなジャンルからついばんだ知識を織り交ぜていった感じで。たとえばオートチューンに関しては、エレクトロから引っ張ってきて取り入れた感じなんです。オートチューンは、バンドが新しいステージに進むための起点になったと思います。
●オートチューンを取り入れたのは最近?
鈴木:2015年になってからですね。M-1「SUPER HERO!!」は今作の中で一番最後に作った曲なんですけど、オートチューンをガッツリ使って作ったものをレーベル主宰の長島さんに聴いてもらったら「良いね。これをリード曲にしよう」ということになって。
●今回は長島さんが立ち上げた新レーベルからの第1弾リリースになるんですよね。
鈴木:元々M-2「311号室」とM-6「きれいごと」は、厚木Thunder Snakeのオムニバス(『3WAY BOX』)に参加するためにレコーディングして。その2曲のマスタリング前の音源を聴いた長島さんが僕らに可能性を感じて下さって、「レーベルを立ち上げようと思うんだけど、リリースしないか?」というお話を頂いたんです。
●それが今回のリリースにつながったと。収録曲は今作に向けて作ったもの?
鈴木:M-4「Altair」以外は今作に向けて新たに録り下ろした曲で、「311号室」と「きれいごと」もオムニバスの時とは違うアレンジで録り直しました。僕らの間では「Altair」がリード曲になるんじゃないかという話をしていたので、この曲だけ先に録ってMVも撮っちゃったんですよね。
●「Altair」はバンドにとって、キーになる曲なのかなと。
鈴木:この曲で、今までやっていた曲を一新したというか。自分の中ではこの曲を書いた後に、軽いスランプに陥って…。曲は書けるんですけど「この曲を超えられないな」と思ってしまうくらい、自分の殻を破った曲だったんです。ピアノの音を入れたり色んなサウンドアプローチもしているし、オートチューンも初めて使ったので、新しい一歩目の曲というイメージですね。
●メンバーにとっても思い入れが深い?
末永:その時の自分が持てる技術を「Altair」に全部注ぎ込んだ感じがします。
笛木:初めて聴いた時も今までと全然違う雰囲気があったし、「これから作っていく曲はどうなっていくんだろう?」っていうのが楽しみになりましたね。
中久喜:歌詞を初めて見た時に、すごくきれいだなと思ったんです。良い言葉がたくさん並んでいるなと思って、「成長したな」って思いましたね。
●「Altair」やM-5「夜間飛行」など、夜空を想起させる歌詞が多いですよね。
鈴木:宇宙や夜とか星が好きなんです。冬にふと夜空の星を見上げた時にすごく切なくなる瞬間があって。そういう得体の知れない切なさがたまらなく好きなので、それが楽曲に影響していたりもしますね。
●作品タイトルの『未完星ドラマチック』もそういうイメージから?
鈴木:“未完星”は「まだ完成していない星だけど、輝けるよ」っていう意味で。色んな案があったんですけど、手応えが一番あったのでこれになりましたね。
中久喜:タイトルが決まったことで、作品が締まったというか。このタイトルに集約されている感じがするなと思いました。
末永:曲に合ったタイトルになっているし、タイトルに合った曲にもなっていて。良いアルバムになったと感じますね。
●自信のあるものが作れたのでは?
鈴木:そうですね。でも自分の中ではやり残した感覚もあって、「次はこうしたいな」っていうアイデアが出てくる良いキッカケにはなりました。
中久喜:穂高が作った曲のデモはまだまだあるので、それをどんどんアレンジして形にしていきたいですね。
笛木:まだ行けていない場所で自分たちの曲がどう通用するのかわからないけど、色んな人に聴いてもらえるようにもっとライブもしたいですね。君ノトナリというものを全国の人に知ってもらえるように頑張ります。
Interview:IMAI