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The Winking Owl

孤独の中に愛を見る

PHOTO_The Winking Owl“Warped Tour”への出演経験もあるギタリストYomaを中心に結成されたThe Winking Owl。ラウドやメタルをルーツにする楽器陣が繰り出すロックサウンドと、ルーマニアと日本にルーツを持つLuizaの伸びやかなヴォーカル、そして奥深い歌詞が融合するその世界は、新しい景色を我々の目の前に描き出す。ONE OK ROCKのツアーサポートや“OZZFEST JAPAN2015”への出演など、ニューカマーながら各方面から注目を集めている彼らが、新しい扉を開ける『Open Up My Heart』を完成させた。

 

“孤独”っていう単語が結構好きで。さみしいとか、マイナスのイメージを持つと思うんですけど、自分の中でワクワクするような言葉でもあるんです」

●もともとYomaさんはアメリカで活動していたんですよね? そのバンドでは“Warped Tour”にも出演したらしいですが。

Yoma:はい。バンドがやりたくて留学したんです。高校を卒業して、アメリカの音楽学校に入って勉強してて、学校は2年で卒業したんですけど、それと平行しつつバンド活動していました。3年ちょっとアメリカに行ってたんですが、ビザとかの問題が出てきて、その時にやってたバンドも上手く行かなくなったりで、いろいろ悩んで、帰国することにしたんです。

●日本に帰って来て、バンドをやろうと思って組んだのがThe Winking Owl?

Yoma:そうです。日本に帰って来て、すぐにバンドがやりたかったのですぐに組みました。

●時差ボケもまだ解けてないくらいすぐに?

Yoma:時差ボケというか(笑)、まだアメリカに居る時からSNSを使って1ヶ月くらい前からメンバーを探したんです。アメリカでやっていたバンドも女性ヴォーカルだったんですけど、そのヴォーカルが歌ってたデモがあったので、それでメンバー探したりして。

●なるほど。

Yoma:ヴォーカルはやりたい人って人からけっこう連絡あって、オーディションみたいな感じで探したんですけどなかなかピンと来なくて。それで“どうしようかな?”と思っていたときに、Luizaを思い出したんです。Luizaは高校の後輩なんですよ。いい声してたのは覚えてて、留学してからしばらく会ってなかったんですけど連絡してみました。

Luiza:そのとき、私は音楽の勉強をするために群馬から東京へ出てきていて、音楽学校で勉強していたんですよ。特に活動という活動は全然しておらず、「声をかけてくれたんだったらまぁやってもいいかな」という軽い気持ちで。もともとバンドをやろうと思っていたわけではなくて、音楽がやりたかったので、歌が歌えればいいのかなと思っていて。

●とにかく歌が歌いたかった。

Luiza:そうですね。私もともとポップスとか、ロックとか、R&Bとか、いろんなジャンルを聴いていて、メロディが良ければ何でもよかったんです。もちろん“バンドもかっこいいな”とも思っていたので、誘われた時に「やってみよう!」と。

Yoma:それからベースとドラムも何度かメンバーチェンジがありました。

●そうなんですね。

Ranmalu:デビューEP『Deep River』(2011年12月)を出したのは、僕が入る前なんです。僕は都内と群馬でいろいろバンドをやってたんですけど、もともとはギターをやってたんですよ。

●あ、ギタリストだったんですか。

Ranmalu:はい。個人的にThe Winking Owlはファンだったし、地元も同じだったので、お客さんとしてライブも観に行っていて。それで「ベースやってくれないか?」と電話もらって「やらしてください」という感じ。ベースは遊び程度しか弾けなかったんですけど、The Winking Owlが大好きだったので入ろうと。

Yoma:その後、ミニアルバム『Supernova』(2014年9月リリース)のツアーが今年の4月に終わったんですけど、そのタイミングで前任のドラマーが脱退しました。それでKenTが入ったという経緯ですね。

●なるほど。KenTくんはめっちゃ若いんですよね?

Yoma:めっちゃ若いんです。

KenT:18歳です。

●わぁ。高校卒業したばかり?

KenT:はい、3月に。もともとは僕もThe Winking Owlのファンだったんですよ。3年ぐらい前から「すげぇバンドがいる」と思ってずっとライブに行っていて、次第に仲良くなって。僕、地元が三重なんですけど、個人でイベントを打ったんです。

●高校生のときに?

KenT:はい。そのイベントに出てもらったのがちょうどミニアルバム『Supernova』のツアーのタイミングだったんですけど、その時に前のドラムの人が離れるという話を聞いていて。その後しばらくしたら連絡が来たんです。

●KenTくんは小さい頃からドラムをやってたんですよね?

KenT:9〜10歳くらいからですね。ドラムを始めたときからずっとバンドをやっていたんですけど、高校を卒業したら上京したいと思っていて、ちょうどタイミングが良かったというか。

●なるほど。

Yoma:KenTにサポートからやってもらうとなったとき、ちょうどONE OK ROCKのオープニングアクトの大阪城ホールが決まったんです。だからKenTはサポート2本目のライブが大阪城ホールだったという。

●うわ!

Yoma:だからかなりバタバタしました。

●それで現在の4人の体制になり、今回EP『Open Up My Heart』をリリースされたわけですが、どういう経緯でタイトル曲ができたんですか?

Yoma:EPを出すということになって、デモを15曲くらい作ったんですけど、その中から選んだんです。事務所やレーベルも含めて話し合って。

●今回はメジャー移籍ということもあるし、“OZZFEST JAPAN2015”も決まっているし…要するにガツンといく曲が必要なタイミングだったと。

Yoma:そういうことです。だから制作は苦しかったですね(苦笑)。いい曲を作らなくちゃダメだっていうプレッシャーがあって。

●「Open Up My Heart」はグッと入ってくるインパクトがありますよね。特にサビで一気に開けるというか。楽曲の中心にはサビがあって、その中心に向かってすべての楽器のアレンジを集約させている。

Yoma:特に最近は、スタンダードなサビが好きなんですよね。グッとくるというか。サビなのにあんまり盛り上がんないのより、やっぱりグッと来る感じがいい。

●それとLuizaさんのヴォーカルの乗せ方がすごく洋楽っぽいというか。英語詞がメインだからそうなんでしょうけど、譜割りとか言葉の乗せ方がすごく気持ちいい。単語が持つイントネーションを上手く利用して、リズムと組み合わせている印象があるんです。

Luiza:そうですね。私、「さぁ考えるぞ!」って作詞をやるとできない性格みたいで、瞑想じゃないですけどぼーっとしながら曲を聴いて「ここのAメロのメロディは、音と音の間があまり開いてないから、この感じだと英語が合うな」みたいな感じで作っていくんです。音と音の間が開いてる方が日本語の短音を乗せやすいので、「じゃあここのBメロは日本語にしよう」とか。感覚だけで作っちゃうとちょっと飽きてしまうというか説得力がないので、理論的な要素も入れつつ歌詞を書くんです。

●サウンド面からはラウドとかメタルなどの志向性を感じるんですけど、Luizaさんの歌が入ることによってバランスがグッとまとまるというか。

KenT:あくまでも、ヴォーカルがメインというか。Luizaさんはやっぱり歌ってるだけで華があるので。

Ranmalu:楽曲を通して通じるのは、入り口はキャッチーで聴きやすいLuizaのメロディなんですけど、バンドとか楽器をやってる人が聴くと「裏でおいしいことやってるな」とか「ギター、ベース、ドラムがおいしいフレーズ弾いてるな」っていうのがこのバンドの肝でもあるというか。

Yoma:楽器陣は3人とも、そういう立ち位置が単純に好きなんですよね。

●美学というか。

Ranmalu:ラウド畑を通ってきた3人のゴリっとしたサウンドに、ポップスとかR&Bを通ってきたLuizaのキャッチーなメロディが乗るっていうところが、大切にしているバランス感というか。

●なるほど。それと、M-2「Here For You」とM-3「Fallen Angel」の歌詞を読んで、ふと、LuizaさんがTwitterで書いていたことを思い出したんです。

Luiza:なにか書いてましたっけ?

●確かアカウントのプロフィールに「孤独と愛と音楽でできてます」と書いてましたよね?

Luiza:あ、はい。そうです。

●なんとなくですけど、今作の歌詞からは“孤独”を感じたというか。

Luiza:孤独かもしれないです。“孤独”っていう単語が結構好きで。深い言葉なんだろうなっていうのをすごく昔から感じてて。さみしいとか、マイナスのイメージを持つと思うんですけど。

●一般的にはそうですね。

Luiza:ですよね。でも実は希望的な要素も含まれているんじゃないかとか、いろいろ考えて。自分の中でワクワクするような言葉でもあるんですよ。“アイデンティティ”とかそういう感じじゃないですけど、深く考えると“あぁ、孤独ってさみしいとかいろいろあるけど、実は深くていい奴なんだな”みたいな。なんか言い方変ですけど(笑)。

●でもなんとなくわかります。

Luiza:その次に来るのが“愛”で。愛も歌詞の中には結構登場してくるんです。全体像として、愛を感じられるような歌詞を創り上げていきたいなっていうのは常日頃思っていて。

●その上で音楽をやっている。孤独と愛は常に根底にあるんですね。

Luiza:あります。曲調も暗い曲、マイナーな曲とか聴くと落ち着くし、美を感じるんですよ。

Ranmalu:確かにそう言われると、歌詞はそんな感じかも。

Luiza:うん。必ずしも、暗いとか辛いとかっていうわけではなく、その中に希望の光が見えているというか。

●状態としての孤独というものは、悪いわけではない?

Luiza:そうですね。故意的にわざと孤独になろうっていう時もあります(笑)。私は結構友達が多い方だったんですけど…。

Ranmalu:え、そうなの?

●そうなの?

Luiza:でもいつからか、ひとりで過ごす多くなって、友達も作らなくなったりとか、そこから初めて孤独について考えるようになって。哲学的な意味も考えたり。

●哲学の勉強をしたんですか?

Luiza:勉強っていうか本を読んだことがあって。哲学って、表面上以上の事について触れるじゃないですか。それでかなり衝撃を受けた事があったんです。

●ほう。

Luiza:専門的な勉強をしたわけじゃないんですけど、そこから人間関係についてとかよく考えるようになって。“この人が言った事は、実はこういうことだったのかな?”とか。例えば「嫌い」という言葉があるじゃないですか。一般的に「嫌い」と言われたら、自分を嫌っていると受け取るかもしれないですけど、実は理由があるかもしれない。その人をかばうからこその「嫌い」だとか。

●ふむふむ。

Luiza:孤独についても、そこにちょっと繋がるのかなと思うんですけど。みんな孤独の部分って持っていると思うんです。例えば「Fallen Angel」は歌詞に辛い要素が散りばめられているんですけど、でもその中にある“孤独”は、一般的な孤独だけではなくて、孤独の中の美を作ってるんです。

●孤独の中の美。

Luiza:理由があって、孤独を選んでる場合もあるというか。…というか、わけわかんない話になっちゃってすみません(笑)。

●いや、でもLuizaさんが描く世界観はひと言で表現できないかもしれないけれど、リアルに近いような気がする。それで良いと思うんですけどね。

Luiza:うん。

Ranmalu:すっごいリアルだと思いますね。

KenT:人間ですね。

●うん人間っぽい。…というか君、本当に18歳か?

一同:ハハハ(笑)。

Luiza:まさに今回の3曲は、人と人とが関わり合っている歌ですね。

interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:絹丸

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