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感情のままに解き放たれた想いを乗せた4人の音が果てなき物語を描き出す

PH_cinema_main10/28に『WAYPOINT E.P.』を出したばかりのcinema staffが、過去最短のスパンで12/16に新作『SOLUTION E.P.』をリリースする。テレビ東京系アニメ『遊☆戯☆王ARC-V』の新オープニングテーマにもなっている今回のリード曲「切り札」では、前回のリード曲「YOUR SONG」に続いてプロデューサーに江口亮を迎えて制作。ピアノアレンジを導入したバラード調の「YOUR SONG」を軸とした前作からは一転、今作では彼らの持ち味であるソリッドかつエッジィなバンドサウンドがハイテンションに迫りくる作品となった。JUNGLE☆LIFEでは、そんな新作を録り終えたばかりの翌日にメンバー4人へのインタビューを敢行。既に次なるアルバムも視野に入れながら精力的な活動を続けるバンドの勢いと状態の良さが、彼らの言葉からもしっかり感じられるはずだ。

 

「今回のレコーディングをしてみて、ハードな曲でもまだまだやれることはいっぱいあるなと思ったんですよ。魅力のあるところはどれも消さずに、これからもやっていきたいなと思いますね」

●まず10/28に『WAYPOINT E.P.』をリリースされましたが、特にリード曲の「YOUR SONG」はバラードということでちょっと驚きました。

三島:「YOUR SONG」はドラマの主題歌というのもあって、曲の雰囲気というよりもまずメッセージありきというところからスタートしたんです。だからスピード感のある曲よりも、言葉を伝えるための曲であるべきだなというのがあって。

●「YOUR SONG」は、NHK岐阜放送局開局75周年を記念して制作されたドラマ『ガッタン ガッタン それでもゴー』の主題歌だったんですよね。そこも意識して、曲を作ったと。

三島:でも最初から狙って、ああいう形にしたわけではないんですよ。流れの中で、バラードになって。ピアノアレンジになったのは、完全に江口(亮)さんの仕業というか(笑)。江口さんにアレンジをお願いしたら、そういうものが上がってきたんです。

●最初から意図していたわけではない。

三島:ではないですね。

飯田:弾き語りの状態でデモを渡したら、江口さんから上がってきたのがピアノアレンジだったんです。でも江口さんの中で色々と考えた上で、「これが今のcinema staffにとって良いんじゃないか」というものを出してくれたのかなと思っています。

●プロデューサーの江口亮さんとは、昔からの知り合いなんですよね?

三島:地元の先輩なんですよ。江口さんがやっていたStereo Fabrication of Youthのファンだったし、自分が19〜20歳くらいの時に対バンしたこともあって。当時はお互いに名古屋に住んでいたのでライブハウスで会うことも多くて、よくお話はさせてもらっていましたね。

●辻くんは昔、江口さんと喧嘩したそうですが…。

辻:喧嘩ではないんですけど、僕もすごく酔っ払っていて…。何かのライブで江口さんにばったり会って「お前ら、最近どうなんや?」と訊かれた流れで、突っかかったことがあったんです。でもその後も何回か会っていて、お互いにちゃんと話したので今はもう大丈夫ですね。

三島:江口さんは歯に衣着せない人なので、攻撃的に聞こえる瞬間があるんです。でも別にディスっているわけじゃなくて、本音で話してくれる人だというのがすごくわかりました。

●ある意味、ちゃんと向き合ってくれるというか。

三島:ズバッと言ってくれるから。僕らもキャリア的に中堅に差し掛かってきて、周りから何か言われることが少なくなってきているんです。わりと完成されているものとして自分たちに接してくれるのはありがたいんですけど、そこに新しい風を吹かせたいという時にちょうど良かったというか。

●プロデューサーを入れたいというアイデアはあったんですね。

三島:「外部のプロデューサーを入れてみても良いかもね」という話は、『blueprint』(4thフルアルバム/2015年4月)を作った後にしていたんです。漠然と「江口さんが良いかもね」と言っていたら、その後でドラマの話が来て。ちょうど江口さんに「次は一緒にやりましょうよ」という話をしていたところにその話が来たので、すぐに「じゃあ、お願いします」となりました。

●今回の『SOLUTION E.P.』リード曲のM-1「切り札」は、江口さんをプロデューサーに迎えての制作だったわけですが。

三島:「YOUR SONG」ほどは、江口さんがアレンジを全体的に管理するというわけではなくて。こっちである程度の形まで作ったものを提示してから、そこにプラスαしてもらうという感じでした。結構、色々とやってはもらいましたけどね。

飯田:時間がない中での作業ということもあって、すごく力を借りました。

●「切り札」はテレビ東京系アニメ『遊☆戯☆王ARC-V』のオープニングテーマにもなっているわけですが、制作にあたって江口さんから何か具体的なアドバイスもあったんでしょうか?

三島:「切り札」に関しては「アニメサイズの89秒というのがすごく重要だよ」ということをおっしゃっていて。まずは(オープニングテーマで使用される89秒分の)1コーラスをしっかり固めて、あとは色んなことを考えながらバンドで作っていくというやり方にしてもらえたのはすごく助かりました。

●「great escape」(TVアニメ『進撃の巨人』エンディングテーマ)の時は、曲の秒数をあまり意識していなかった?

三島:全く意識していなかったですね。たぶん当時はディレクターが、あえて意識しないようにしてくれたんだと思います。「自由にやったら良いよ」と言ってくれて。でも江口さんはそういう仕事もたくさんやられているから、「とりあえず時間がないなら1回そのサイズで作ったらどうか?」っていう提案をしてくれたんです。

●「切り札」は最初からアニメを想定して作ったんですか?

三島:曲については、とりあえずメインになるリフとサビまでの流れしかできていなくて。だから頭にはありつつも、全部が全部アニメを意識したというわけではないです。最終的に、歌詞についてはすごく意識して書きましたけどね。

●歌詞はアニメの内容に寄せたところもある?

三島:アニメを何話か見て、他にも色々と調べたりして。アニメを見ている層には絶対に伝わるものにしたかったし、作品を理解せずに書いているというふうには絶対に思われたくなかったんです。それは念頭に置きつつ、メッセージとしては前向きなものにしたいというモードが自分の中で最近続いているので、そこも絡めて書いていった感じですね。

●サビの部分に、電子音的なものが入っているのも面白いなと思いました。

三島:あれは江口さんのアイデアですね。その場での思いつきみたいなものもバンバン入れちゃうんですよ。急にアプリを使ってメロトロンの音を入れ始めたりして、そういうものがそのまま入っている感じです。

●遊び心的な感じでしょうか?

三島:江口さんは今回、フルレンジで鳴らすということにすごくこだわっていたんですよ。ハイファイでフルレンジな感じで今回は行こうというところで、ああいう音が入っていることで埋まる音の帯域があって。そういうところはすごく意識していましたね。

●「YOUR SONG」でも、バックで小さくギターの音が音響的な感じで鳴っていたりしますよね。

三島:あれも江口さんのアイデアですね。

●辻くんが考えたわけではない?

辻:江口さんがcinema staffのことを考えて、僕が弾きそうな感じのギターをアイデアで出してくれたりもして。そこから自分で考えていくような感じでした。

久野:ドラムに関しても最後のサビでドコドコと鳴っている部分は、江口さんのアイデアなんです。江口さんから提案されたことをレコーディングの場で試しながら、足していった感じですね。

●アレンジは江口さんと一緒に考えている?

三島:江口さんから最初のプランが来て、それをバンドで揉んでからまた戻して、添削されて戻ってきたデータを元にまた僕らがやるという感じで。常に同じスタジオにはいられないので、基本的にはデータでやりとりをしていました。

●今回の『SOLUTION E.P.』はエッジィな曲がメインで、『WAYPOINT E.P.』は歌が軸になっている作品というところで最初から対になるものをイメージして作ったんでしょうか?

三島:「YOUR SONG」と「切り札」は同じタイミングであったから、別々の作品で出すとしたらそれぞれに振り切っているほうが良いなと思って。「切り札」のほうはハードな部分を前面に出していこうという話をしていたんですけど、カップリングの2曲をチョイスしたのはだいぶ後でしたね。

●カップリングにこの2曲を選んだ基準とは?

三島:これは久野くんが考えました。

久野:今作を3曲入りで出すと決まった時点では、まだどの曲を入れるか決まっていなくて。でも『WAYPOINT E.P.』が歌を第一に考えた作品だったので、「今回は激しいものが良いよね」という話はしていたんです。M-2「deadman」は『blueprint』の時から原曲があったんですけど、その時は僕が納得いかなくて収録しなかったんですよ。

●一度は作品への収録を見送られていた。

久野:でも「切り札」をやってみて、今の感じでアレンジし直したらすごく良くなるんじゃないかと思って。スタッフからも「あの曲は良かった」という意見があったので、再度チャレンジしてみようということになりました。

●M-3「wildcard2」は?

久野:「wildcard2」は『残響record Compilation vol.4』(2014年8月)に入っていたもののリアレンジなんですけど、“wildcard”と“切り札”って同じような意味じゃないですか。その2曲が同じ作品に入っていたら面白いなというところから始まって。元々の「wildcard」はあの時にパッと作ってパッと録った感じだったので、ライブでもちゃんとやれるような形にアレンジし直したら面白いんじゃないかと思ったんです。そしたら3曲全部が激しい曲になるし、統一感も出るなと。

●元々の「wildcard」からは大きく変わっている?

三島:よりハードコアっぽくなりましたね。速くなっている感じというか。

久野:ほぼ別の曲です。だから「wildcard“2”」というタイトルになっているんですよ。

●「wildcard」は、いつか録り直したいと思っていたんですか?

三島:最初は全然思っていなかったです。

久野:僕も全然思っていなかったんですけど、トイレで急に「そういえば“wildcard”と“切り札”って意味は同じだな」って思いついて(笑)。あと、コンピの時は急に新曲を収録することになって急いで作ったので、色々と忙しくて時間がなかったんです。勢いで作ったから、納得がいっていない部分とかもあったんですよね。そこをもう一度塗り替えたいという気持ちはありました。それに最近はライブでもやらなくなっていたし、ちょっともったいなと。コンピに入っている曲だから、知らない人もいると思うんですよ。

●ライブでもあまりやっていなかったんですね。

飯田:「お客さんが知らないかもな」という気持ちが強いので、セットリストに入れづらいんですよね。コンピを聴いていなかったら、「何の曲なんだろう?」と思われちゃうかなっていう。でも今作に収録したことで、今後はライブでもやれますね。

●歌詞はどんなことを歌っているんですか?

三島:わりと“Hate”的な言葉を歌っているっていう、僕にとっては珍しい歌詞で。酔っ払って、バーッと勢いのまま書いたから(笑)。でも自分では気に入っているんですよね。だから歌詞とメロディは原曲と同じで、展開がちょっと変わっているだけなんです。

●ちなみに「deadman」の歌詞はどういう内容?

三島:この歌詞は深夜の歌舞伎町にいるような、夜の街の人々をゾンビにたとえた感じですね。夜も眠らない人々のことを歌っていて。

●そういうテーマがあったんですね。今作のタイトルを『SOLUTION E.P.』にしたのはどこから?

三島:WAYPOINT(分岐点)を経た後に来るようなワードが何かないかと探していた時に、この言葉を思いついて。この先のアルバムまでを逆算した上で、言葉を考えている時に出てきた感じですね。分岐点(WAYPOINT)があって、解決法(SOLUTION)があって、次は何にしようかなとまだ考えているところなんですけど、今までのキャリアの流れに沿った一連のタイトルにはしたいなと思っています。

●「YOUR SONG」では飯田くんの歌の魅力を前面に押し出していたわけですが、バンドにとって1つの分岐点的なものにもなっている?

飯田:ライブという面で考えても「YOUR SONG」が入ることで、逆にもっと激しい方向にも振り切ることができるのが面白いなと思っていて。あの1曲があればどう動いたって、ちゃんとシメられるというか。歌詞の内容も含めて、すごく伝わるものだと思うから。他でちょっと遊び心がある曲をやっても、cinema staffとしての魅力が出せるというところでは本当に大きな存在ですね。

●ある意味、バンドの軸になるものというか。

飯田:歌詞も元々はドラマありきの言葉ではあるんですけど、今の気持ちをそのまま歌っている曲でもあるから。昔からバラードは自分の歌声に合っていると思っていたので、このタイミングでやれたことはすごく良かったですね。

三島:でもあの方向だけが、全ての魅力でないと思っていて。今回『SOLUTION E.P.』のレコーディングをしてみて、ハードな曲でもまだまだやれることはいっぱいあるなと思ったんですよ。魅力のあるところはどれも消さずに、これからもやっていきたいなと思いますね。

●『WAYPOINT E.P.』を先に出していたからこそ、今回の『SOLUTION E.P.』では逆にハードな方向に振り切ることができたのかなと。

三島:幅を見せられるというか。今までついてきてくれたお客さんに対して「別に方針転換があったわけじゃなくて、ちゃんと今までと地続きで『WAYPOINT E.P.』もあるし、今回みたいな感じもあるんだよ」というのは提示したかったですね。

飯田:辻くんのライブのやり方と似ているなと思うんですよ。ちゃんと弾けるところを先に1回見せておいてから、あえて弾かないところもあるっていう。振り切れるところやポイントになる部分を1回見せておいてから、逆に弾かないカッコ良さみたいなものもあるのかなと思いますね。

辻:なるほど…。

久野:自覚はないみたいです(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

●ちなみに、今回は「切り札」と「deadman」の両方でMVを撮ったんですよね。2曲ともリード曲くらいの気持ちがある?

三島:もちろんあります。

飯田:だからEPという形にしたんですよ。本当に「切り札」に引けをとらないな…と昨日の夜10時くらいに録り終えて思いました(※取材は11月中旬)。

久野:まだ完成してから、24時間も経っていないですからね(笑)。

●本当にお疲れさまでした(笑)。すごくタイトなスケジュールの中でも自分たちでも満足のいく作品ができたのでは?

三島:…とは思いますね。まだTD(トラックダウン)が終わっていなくて、ミックス後のものを聴いていないので最終的にどうなったかはわからないんです(笑)。

飯田:でも昨日レコーディングが終わった時点の状態を聴いても、すごくカッコ良いものができたと思いました。

辻:メッチャ良いと思います。

久野:「切り札」という絶対的な曲が決まっていたから、あとの2曲はわりと遊べたというか。「wildcard2」は“面白ければ良いや”みたいな曲だし、「deadman」は「切り札」で得たものを活かして、以前は納得いっていなかったものをいかにカッコ良くできるかという点では最高の結果を出せたと思っていて。メチャクチャ良いものができたと思いますね。

●結果的に自分たちでも納得のいく、すごく良い作品ができた。

三島:自分の中でも特に「deadman」は納得できているんです。最近のモードも入っているし、昔みたいに振り切っているところも見せられていて。キャッチーだけど展開も面白いような曲を作れたので、すごく良いものができたなと。そういうものをこのタイトな日程でも作れたということが自信にもなったし、今後もこの調子で行けそうだなという雰囲気は感じています。

Interview:IMAI

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