東北出身、2006年に結成し都内を中心に活動するオルタナティブロックバンドS.H.E。2015年に今のメンバーとなり、トリプルギターの5人編成となった。そんな彼らのサウンドはそれぞれのパートが主張しつつも、しっかりとVo./G.YUCCIの歌声を支え、重厚かつ繊細に鳴り響く。結成9周年を迎えたS.H.E.が10/14に4thアルバム『ScHrödingEr』をリリースする。メンバー自身が“最強の布陣”と名言する現編成でレコーディングされた最初の1枚。今作のインタビューをきっかけに、彼らの魅力に迫る!
●今作の『ScHrödingEr』ですが、まずタイトルが印象的ですね。
SEIJI:バンドが9周年という事から考えていったんですが、数字の9には猫という意味があるんです。そこから猫をモチーフにしたものにしたいと思っていろいろ探った時に、“シュレディンガーの猫”に行き着いたんですよね。
●名前を付ける時は、意味付けを大切にしている?
RYOSUKE:意味を見い出すのも大事だし、後付けで持たせていくのも面白さだなと思っています。その辺はバンド名にも表れていて。
YUCCI:S.H.Eは“Struggle-Head,Emergence”の略なんです。
●意味としては“もがいている状況からの脱出”という事ですが、それをバンド名につけるというのが、何というか、すごく…。
YUCCI:拗らせちゃってますよね(笑)。
RYOSUKE:東北生まれの人たちは、夜が長いから考え過ぎて拗らせちゃうんです(笑)。最初にYUCCIが作った曲の中にも、その要素がありましたし。
●それだけ“抜け出したい”という想いが当時からあったと。それは、バンドとして曲を出す事やライブをすることによって脱出できるものなんですか?
YUCCI:脱出しようとは言っているけど、結局しないという(笑)。拗れている人って、最終的に拗れてるところも好きなんですよね。でもそれに対するフラストレーションは常にあって…その堂々巡りが逆に心地良くなってしまっている(笑)。
●それは…まさに拗れてますね(笑)。メンバー全員がそうなんですか?
KAZUUMI:いや、俺はもうちょっと明るいっすよ!
一同:アハハハ(笑)!
KAZUKI:リズム隊2人はアウトドア派なので。僕は休みの日はサイクリングに行きたい派です。
●ここで上手くバランスが取れているんだ(笑)。
RYOSUKE:でもずっと“救われたい”と思ってばかりだったんですけど、このところは救う側の曲が多いなと思うんです。最近お客さんから「あの曲はあたし(自分)の曲だ」って言ってもらう機会が増えてきたんですよ。
●代わりに言ってくれているというか。
YUCCI:そういうのを聞くと“ちゃんと歌詞を聴いてくれているんだ”という喜びもあって。
●S.H.Eの曲はサウンドを聴くと音楽的要素を重視しているイメージがあったんですけど、実際に歌詞を見るとストレートなメッセージがありますよね。
KAZUUMI:実はいちばん重きを置いているのは歌詞なんですよ。オケは歌を邪魔しないギリギリの所まで遊ぶという感じ。歌モノハードコアです(笑)。
●なるほど(笑)。お客さんが共感してくれる曲は、今作にも入っていますか?
YUCCI:M-1「marigold」がそうですね。もともと千葉テレビ『応援美女子』のタイアップとして書いた曲で、“頑張っている人を応援する人を応援する”歌です。例えば野球選手がいたとすると、そのファンを応援するっていう感じですね。だからバンドを応援している人たちが、歌詞の意図を汲み取ってくれたのかなと。
SEIJI:頑張ってるところって褒められたいもんね。頑張るのは当たり前でも、それが評価されないとどんどんストレスになっていきますから。
●確かに。じゃあ救ってあげたいという曲になっている?
YUCCI:私としては、救うというより支えるっていう感じです。心って生きていく上で弱くなる時もあるから、そんな時に隣で支えてあげられるようになりたい。
●この歌詞で印象に残っているのが、“例えば 君が他の誰かを想っていても僕は君の為に唄うよ”っていう一節なんです。曲調はポジティブですけど、この一節があるから少し影を落とすというか。この辺りは自然に生まれてきたんですか?
YUCCI:そうですね。実は歌詞を2回書き直しているんですが、このフレーズはずっと残っているんです。
KAZUUMI:最初に作っている時は、もっとストレートな応援歌だったんですけど、“らしくないな”ということで今の形になりました。
●M-4「Proxy」も爽快感のあるサウンドに対し、片思いの切ない歌詞が対照的で。
RYOSUKE:昔からYUCCIは、相反するものをひとつにまとめるのが好きなんですよ。
YUCCI:これで楽曲がおどろおどろしい感じに寄っていたら、本当に辛い歌になっちゃうから…気持ちに合わせて作ったら、全曲バラードになりますよ。
●メンバー5人とも作詞・作曲されるそうですが、歌詞の世界感が共通してそういう風になるって事は…。
KAZUKI:全員報われてないんでしょうね(笑)。
●ハハハ(笑)。メンバーが変わったこともあり、新しい試みをやっていたりするんですか?
KAZUUMI:M-7「boilerplate」では初めて2ビートを入れました。今までもやりたいとは思っていたんですけど、スキル的に出来なかったんですよ。今のメンバーになってからやれる楽曲の幅が広がったんで、頭が柔らかくなった感覚があります。
SEIJI:他にもトリプルギターを活かして、全員でアレンジをしながらフレーズがどういう風に組み合わさっていくかをイメージしながら擦り合わせしました。
YUCCI:言ってみれば“どうすれば全員が最強に見えるか”の追求ですね。「このパートの人は良いな」じゃなくて、全員がカッコいいと思われるものが作れたら良いなと。今の布陣は最強のメンツだなという手応えがあるので、それを伝えたいです。
●なるほど。では最後に、リリースツアーに向けて一言お願いします!
YUCCI:最近は“お客さんがどう感じたか”を感じたい気持ちが出てきたので、いろんな人と触れ合いたい。そこから相手を知ることが出来たらと思うので、私の目標は“友達を作るツアーにする”です。
RYOSUKE:ツアーの1週間前にはリリースしているので、俺としてはじっくり聴き込んで会場で一緒に歌えるようになると良いですね。
SEIJI:是非CDを聴いて、最強な僕らを味わって下さい!
KAZUKI:実は、僕はブログ好きが功を奏してアメーバの公式ブロガーになったんです。そこで食レポ載せているんですよ。本州を回るツアーでいろんなものを味わえると思うので、ぜひブログを見に来て下さい!
Interview:馬渡司
Edit:森下恭子