メジャーデビュー5周年イヤーということで、現在も47都道府県ツアー(nano.RIPE TOUR 2015「47.186」)を敢行中のnano.RIPE。2010年9月22日にデビューを果たした彼らが、メジャーフィールドでの6年目の幕を開ける9月23日にシングルコレクション『シアワセのクツ』をリリースする。TVアニメ『花咲くいろは』OP主題歌となった「ハナノイロ」や「面影ワープ」をはじめ、TVアニメ「人類は衰退しました」OP主題歌の「リアルワールド」やTVアニメ「のんのんびより」OP主題歌の「なないろびより」など、ヒット曲の数々が並ぶラインナップはまさに壮観。そういった中でもインディーズ時代の名曲を再録した「色彩」で始まり、最後は新曲の「地球に針」で終わるという流れはまるで1本のライブを観ているかのよう。ライブバンドとしての“nano.RIPE”というものを軸にしっかりと据えながらも、楽曲と支持層の幅を常に広げ続けている4人の軌跡をパッケージした珠玉のアイテムが完成した。
●9/23にシングルコレクション『シアワセのクツ』をリリースされるわけですが、このタイミングを選んだ理由とは?
きみコ:元々「これまでにシングルをたくさん出してきたし、シングルコレクションを作ってみても良いかもね」という話は出ていたんです。最初はメジャーデビュー5周年イヤーでもある今年の頭に出そうかと言っていたんですけど、4月にオリジナルアルバム(『七色眼鏡のヒミツ』)も出るし、今回のリリース日の9/23というのがちょうどデビューした日(9/22)の翌日だということもあって。デビューから丸5年経って、6年目に入る1日目というタイミングが美しいんじゃないかということで、ここになりました。
●ここから新しいスタートみたいな感覚というか。
きみコ:そうですね。5周年というところで1つの節目があって、そこからまた心機一転スタートっていう感じで。“ここまでの5年間をパッケージしました”というものを今回は作りました。
●ベストアルバムではなく、シングルコレクションにした理由とは?
きみコ:シングルはタイアップが多いので、(リスナーも)自分が見ていないアニメの曲は知らないという人が多かったりして。そういう方に他の曲も聴いてもらいたいし、やっぱりnano.RIPEはライブバンドなのでライブの定番曲というものがあるんですよ。ベストアルバムを作るとなるとライブの定番曲がたくさん入ってくると思うんですけど、それはそれでライブDVDも出しているから。そういうものよりもTVやCMとかで“あ! どこかで聴いたことがある”という曲たちを全部まとめて入れるのが“名刺代わり”として良いんじゃないかということで、今回はシングルコレクションにしました。
●曲目リストを見ると、全15曲中11曲に何らかのタイアップが付いているというのがすごいなと。
青山:こうやって見ると、自分でもすごいなって思いました(笑)。
●しかも終盤の11曲目〜14曲目はどれも『花咲くいろは』関連の曲という。
きみコ:そうなんですよ。このあたりに、たたみかけるように入っていて(笑)。聴いてくれている人も“やっぱり『花咲くいろは』といえばnano.RIPEだし、nano.RIPEといえば『花咲くいろは』だな”と思ってもらえたら良いなと思って並べてみました。
●自分たちで1枚通して聴いてみた印象は?
青山:ライブのセットリストみたいになっているなと。きみコが曲順を組んだんですけど、これもnano.RIPEらしいなって思います。このままの曲順で、ライブができそうですからね。
アベ:僕もそういう感じがしました。今も47都道府県ツアー中なんですけど、ツアーのセットリストはきみコが組んでいるのでそういう流れもよく出ているのかなと。曲順を見ただけでも「このへんでMCが入って、ここはこういうブロックで…」みたいなライブの流れが反映されているなって思います。
●実際、きみコさんもセットリストを意識していた?
きみコ:まさにセットリストですね。M-1「色彩」からライブが始まって前半戦はみんながワッと盛り上がる感じで、M-4「なないろびより」あたりでみんながジャンプして、M-5「月花」で手拍子を煽って、M-6「細胞キオク」とM-7「ゆきのせい」でしっとりして。その後に長めのMCを入れて「後半戦、行けるか!?」と叫んで、M-8「フラッシュキーパー」からたたみかけるっていう(笑)。最後はM-13「影踏み」からのM-14「パトリシア」で泣かせて、M-15「地球に針」をアンコールでやる…っていう流れです。
●そこまでイメージしているんだ(笑)。
きみコ:「ここでお客さんと合唱して」とかも考えて(笑)。本当にライブのセットリストというつもりで、曲順を組みました。
●普通は、ここまでシングル曲ばかりでライブのセットリストを組むことはないですよね?
アベ:ないですね。強いて言えば、2015年1月3日のZepp DiverCityワンマンではリリース順をさかのぼっていくようなセットリストにしたんですけど、その時くらいです。
きみコ:あの日は(その時点での)最新シングルから(メジャーデビュー曲の)「パトリシア」までやりました。
●「パトリシア」はメジャーデビューシングルということで、思い入れも深いのでは?
きみコ:それはありますね。「パトリシア」をメジャーデビューシングルとしてリリースしたというのが今思えば、すごいことだなと思って。nano.RIPEといえばM-10「リアルワールド」やM-11「面影ワープ」みたいにアッパーで速くて明るい曲というイメージが今ではあるんですけど、「パトリシア」をあえてデビュー曲にしたというのはすごいなと思って。
●確かに「パトリシア」のようなミドルテンポ〜バラード調よりも、「フラッシュキーパー」みたいな疾走感のある曲のイメージのほうが強いですよね。
きみコ:「フラッシュキーパー」は2ndシングルとして出したんですけど、ノンタイアップだったんですよ。それによって、アニメから知った方の中には“nano.RIPEは好きだけど「フラッシュキーパー」は知らない”という人も多かったんです。あたしは大好きな曲なので、今回のアルバムに収録されることでやっとそういう人たちにもこの曲を届けられるのが嬉しいなという気持ちはありますね。
●タイアップが付いていなかったことで、意外と知られていない。
きみコ:そうなんです。シングルなのに、超マイナーな曲みたいな感じで。
青山:不遇の1曲ですね。
●「ゆきのせい」もノンタイアップなので、初めて聴く人がいるのかなと。
アベ:この曲は会場限定リリースだったんですよね。
きみコ:nano.RIPEの中ではあんまりないタイプの曲なんですけど、すごく良い曲で。ちょうど作ったのが冬だったので、「これは今年(2012年)の冬の間に出したいね」ということで急遽、会場限定でリリースしたんです。
●「ゆきのせい」はライブでやったりもするんですか?
きみコ:時々ですね。季節になると、やります。最近は47都道府県ツアーでリクエストを募って毎回違うセットリストでやっているので、時々その中に入ってきたりもしていて。
●今回の収録曲は、基本的にライブでやっている曲が多い?
きみコ:今ツアーをまわっている中でも、やっている曲が多いんですよ。「細胞キオク」がレアなくらいで、あとはだいたいよくやっている曲です。
●「細胞キオク」はレアなんですね。
きみコ:元々、ライブにバラードをそんなにたくさん入れないというのがあって。入れるとなっても、今作の中では「パトリシア」や「月花」を選んでしまうことが多いんです。メンバーもみんな好きな曲ではあるんですけどね。
●「月花」はトリプルA面シングル『サンカクep』に入っていた曲ですが、3曲の中からこれを選んだのは?
きみコ:3曲ともTVアニメ「はたらく魔王さま!」で使って頂いたんですけど、その中でもメインのED主題歌が「月花」だったんです。あと、バランス的な部分で(同作に収録の)「スターチャート」みたいな曲は他にも結構あって。逆に「月花」みたいな曲はあまりなかったので、1枚のアルバムを作る上ではフックになるんじゃないかということで選びました。もう1曲の「ツマビクヒトリ」は、(初回限定盤の)MV集のほうに入っていますね。
青山:僕が正式加入してから一番最初にリリースしたのが(この曲が入っている)『サンカクep』だったんですよ。だから思い入れもあるし、アニメも観ていたのですごく好きな曲ですね。
●思い入れもあるし、全体のバランスを見て曲調的にもハマったと。曲調で言うと、「リアルワールド」はアッパーな曲が多い中でも特に振り切った曲ですよね。
きみコ:これは本当に転機でした。この曲がなかったら、その後に生まれていないだろうなっていう曲もいっぱいあって。「リアルワールド」ができたことによって、色々と変わりましたね。明るい曲は明るい方向に振り切って、暗い曲は暗い方向により一層振り切れたから。明るいほうだけじゃなくて、バンドの幅が両方に広がったという感覚はあります。
●どの曲もnano.RIPEらしいけれど、こうやって並べて聴くことでそれぞれの楽曲の持つ個性が際立つというか。
きみコ:そうかもしれないですね。1曲ずつバラバラに聴くと、「これって新曲? それとも昔の曲?」みたいな感覚になるんです。「これって、いつの曲だろう? 前もこういう曲があったような…」っていう。でも並べて聴くと、確かに違うんですよね。
●自分たちでも改めて聴くことで、新鮮さを感じられている?
きみコ:どの曲をいつ出したかというのを自分たちでも忘れるくらい、昔の曲という感じがどれもしないんです。それって、nano.RIPEが変わっていないことの証だなって。“nano.RIPE”というものがしっかりある上で成り立っている曲たちだから、時系列がバラバラになっても違和感が少しもないというのは強みかなと思っています。
●「色彩」はインディーズ時代の楽曲の再録になるわけですが、知らずに聴けば新曲と言われてもわからないんじゃないかなと。
きみコ:「新しい曲を作りました」と言って聴いてもらっても、違和感が全然ないんですよね。7年も前の曲なのに、本当にすごいなと思いました。
●この曲を作った当時は、現リズム隊の2人はまだいなかったわけですからね。
青山:僕からしたら、もう新曲みたいな感覚ですね。
アベ:自分が入ってからのライブでも、数えるくらいしかやっていないと思います。
きみコ:元々は『空飛ぶクツ』(ミニアルバム/2008年)のリード曲だったので、ライブでよくやる定番曲だったんですよ。でもメジャーデビューしてから他にも色んな曲が生まれたことで、あまりやらなくなっていって。これまでも色んな曲を再録してきた中でこれをまだやっていなかったのは、あたしの中で考えがあったからなんです。この曲をリリースしたらドラマチックになるタイミングがきっとあるだろうと思って温めに温めていたものが、やっとここにハマったという感じですね。
●歌詞もまるで今の気持ちを書いているのかなと思えるようなものになっている。
きみコ:予言みたいな歌になりました。自分でも歌詞を読んでいて、ビックリしましたね。
●この歌詞を書いた当時は、どんなイメージだったんですか?
きみコ:書いた当時はすごく苦しかったんですよ。メンバーチェンジがあったりもして、バンドがなかなか思うようにいっていなくて…。でもバンドがやりたいからやり続けるし、いつかそれ(※苦しかった日々)を笑い飛ばしてやるっていう反骨精神で書いたものだったんです。“こうなりたい”とその時に思っていたものが“今(の姿)”なので、今は“勝ち組”感を持って歌えています(笑)。
●思い描いていたイメージを形にできた。そして「色彩」のアンサーソングとして書いたのが、『七色眼鏡のヒミツ』収録の「空飛ぶクツ」だったんですよね。
きみコ:あれが伏線になっているというか。まだnano.RIPEを知って間もない人は(昔の)「色彩」を聴いたことがないと思うので、そういう人がこれを新曲として聴いた時に今度は「色彩」のほうが「空飛ぶクツ」のアンサーソングに聞こえたりするんじゃないかなと思うんですよ。そういうふうに考えると、色々と広がる曲だなと思います。
●当時からいる(ササキ)ジュンくんにとっても、思い入れの深い曲なのでは?
ササキ:インディーズ時代からやっている「色彩」や「影踏み」は色んな苦労もあった中で生まれた曲なので、本当に大切に思っていて。今回レコーディングするとなった時に、久々に「色彩」をスタジオで合わせてみたらすごく懐かしい感じがしたんですよ。でもやっぱり今のメンバーなので、新鮮な気持ちもあったんです。昔のことも思い出せたし、今のメンバーと一緒に音を出せる喜びも感じられて、すごく良い機会になりましたね。5周年を締めて、これから6年目に入る上ですごく良い機会になったというか。振り返ることもできて良かったなと思います。
●この他に、ジュンくんの中で思い入れの深い曲というと?
ササキ:メジャーデビュー以降だと、M-3「もしもの話」ですね。これはきみコが声帯結節の手術をする前に作った曲なんです。病気が発覚する前に作った曲なんですけど、“声が出なくなったなら歌えなくなるんだ”という歌詞がその時の心境にすごく合っているというか…。
きみコ:言霊ってあるのかもしれないなと思いましたね。そんな曲を書いちゃったから、(本当に)声が出なくなったりして(笑)。
●ハハハ(笑)。
ササキ:でもこの曲があったからきみコもすごく成長できたし、自分たちも“きみコをもっと支えていかないといけない”というバンド愛みたいなものが生まれたりして。成長できたポイントかなとは思いますね。
●これも1つの転機だったと。ラストの「地球に針」は新曲ですが、今作に向けて作ったものなんですか?
きみコ:新曲を入れようということで今作に向けて曲作りもしていたんですけど、実はこの曲に関してはストックとして埋もれていたもので。これまで作ったストックの中で何か良いものはないかと掘り起こしていた時にたまたま見つけて、「こんな良い曲が眠っていたんだ」と思って歌詞を乗せたんです。他にも候補曲はいくつかあった中でも歌詞のテーマやアレンジだったり、色んな意味でこの曲が一番シングルコレクションにハマるということで選びました。今作のために書き下ろしたわけではないけれど、結果的にすごく美しい形でハマりましたね。
●この曲を作曲したのはジュンくんですが、自分の中では自信のある曲だった?
ササキ:それが…なかったんですよね(笑)。むしろボツ曲くらいに思っていて…。当時からアレンジもほぼ固めていたんですけど、しっくりこない部分がすごく多かったんですよ。だからもう「やらなくてもいいや」くらいに思っていた曲を、きみコが発掘してきたんです。
●作曲者としては意外だった。
ササキ:持ってきてくれた時は嬉しかったんですけど、それをシングルコレクションに入れるとなった時に「大丈夫かな?」という不安がすごくあって…。アレンジもすごく迷走したんですよ。
青山:過去最高に迷走しました(笑)。
●そんなに迷走したんだ(笑)。
青山:最初は今のアレンジに近い形だったんですけど、プロデューサーさんに相談したら「ドラマチックさが足りないね」という話になって。そこでみんな、悩んでしまったんです。
ササキ:最初に「こういう感じで」と決めたものを自分でも「やっぱり違うかも?」と思って、またアレンジを作り直してみんなのところに持ってきて。でもメンバーから「これは違うよ」と言われて、また方向性を元に戻してアレンジも変えて…っていう。
●二転三転したと。
青山:ジュンさんが持ってきたアレンジはわりとロックでカッコ良い方向だったんですよ。これはこれでカッコ良いんだけど、壮大な感じがしないし、違うんじゃないかとなって。色々と悩んだ結果、今の形に落ち着いたんです。
ササキ:最終的にレコーディング当日になって、ようやくアレンジが決まったので本当にメンバーがいて良かったなと思いましたね。みんながいなかったらこの曲は埋もれたままで世に出ていないだろうし、ここまで壮大なアレンジの曲にはなっていなかったと思うから。
●壮大なイメージは最初からあったんですか?
きみコ:あたしは発掘してきた時から、サビのメロディに広がりがあるなと思っていたんです。だから、サビには“広がる”という言葉しか乗らなかったんですよ(笑)。歌詞を乗せて、みんなのところに持って行った時も「壮大な感じに」ということだけは言っていて。詳しいイメージまでは浮かんでいなかったので、そこからみんなと一緒に考えていきました。
●その中でメンバーからのアイデアが出てきた?
きみコ:リズムを録った後に「もっと壮大な感じが出せないかな」という話をジュンとしている中で、「じゃあ、コーラスで広がりを出そう」となって。そのあたりからジュンの中でも自分がどういうギターを乗せたら良いかというのが見えてきて、こういう形に何とか仕上がったという感じです。
●こんなにコーラスを重ねている曲は、今までになかったかなと。
きみコ:ギターソロの部分にコーラスを入れるなんて初めてですね。
●そういう新たな試みもしている。歌詞も6年目の新たなスタートを感じさせる内容になっているかなと。
きみコ:今作のために書いたわけじゃないんですけど、結果的にそうなったんですよね。あたしは常に今の気持ちを書いているだけなんです。今がちょうど5周年イヤーで47都道府県ツアーをやっていて、もうすぐシングルコレクションが出るなという頭になっているので、自然とそういう言葉が出てきたんだろうなと思います。
●ちなみに曲名の「地球に針を刺す」というのは、どういうイメージなんですか?
きみコ:これはすごくわかりやすく言うと、“Google マップ”です。
アベ:Google マップ上にピンをドロップするイメージですね(笑)。
●ああ〜、なるほど。
きみコ:歌詞でも“ぼくはもうココに居よう”と歌っているんですけど、「あたしは今ここにいるよ」っていう意味ですね。そして、ここからまた旅に出るっていう。
●これからもずっと続けていくイメージがある。
きみコ:終わるイメージがむしろないんですよ。何だかんだで続けていける気がするんですよね。環境が変わったとしてもnano.RIPEをやりたいと思っていれば、できないことはないじゃないですか。最悪、あたし1人になっても「nano.RIPEだ」と言い続ければ良いわけだし(笑)。もちろん今の形でずっとやれるのが一番幸せなんですけど、“nano.RIPE”というものを終わらせるつもりは全然ないです。
●メンバーも同じ気持ち?
青山:終わるイメージはないですね。
アベ:実際、僕にとっても今までで一番長くやっているバンドがnano.RIPEなんですよ。こんなに長くやってきたバンドは他にないし、本当に居心地が良いですね。
ササキ:これまでに辞めようと思ったこともあったんですけど、きみコに付いてきて良かったなと。
きみコ:でしょ?
ササキ:は〜い…。
きみコ:「は〜い…」って(笑)。
●何か無理やり言わされている感じが…(笑)。
一同:ハハハハハ(笑)。
Interview:IMAI