2015年7月、太陽が丘に集まった2万人は、今年も全員が眩しいばかりの笑顔に包まれていた。8回目の開催となった今回、全力で音楽と“京都大作戦”を楽しむために、一緒に“京都大作戦”を作り上げるために集まったキッズたち。出演者とオーディエンスとスタッフが同じ気持ちになって童心に帰る夏の風物詩。今年も素晴らしいライブと感動をたくさん体験した2日間でした。
今年もまたこの丘に帰ってきた。あいにく空は曇っていて、開演直前からパラパラと雨が降ってきたが、そんなことはお構いなしとばかりに、テンション高めに会場へと足を運ぶ観客たち。10-FEETメンバーや他の出演者によるラジオ体操やMCであるMOBSTYLES田原氏の挨拶を経て、いよいよ開幕。熱くて暑い2日間が始まった。
雨がパラパラと降り始めたが、そんな空のテンションとは裏腹に、オーディエンスのテンションは既にMAX。SHANKがステージに登場して最初の音を鳴らせば、観客は拳を振り上げて前へ前へと殺到し、1曲目の「Long for the Blue moon」からダイバーが打ち上がる。そんな光景を観て、今年も“京都大作戦”に帰ってきたことを実感する。これこれ、この感じ。乱暴な言い方をすれば、出演者も観客も、全員が笑いながらノーガードで殴り合うような、自由で最高な空気感。歌いながら暴れる者、大きなサークルを作って全力で走る者、SHANKが鳴らす最高の音に合わせて手を叩く、丘の向こうまで続いている列。G./Cho.松崎が感謝の気持ちを伝えたあと、「620」のイントロに合わせてまるで秒読みするようにオーディエンスが手を叩いてスカダンスがスタート。SiMのVo.MAHがステージに乱入して会場は興奮状態。そのまま最後まで3人の勢いは一切衰えることなく、全力で駆け抜けた。
あのSEが流れた途端に客席から大きな歓声が沸き起こる。京都大作戦皆勤賞のdustboxがいきなり「Right Now」でテンションを引き上げる。まるで沸騰した鍋の中のような状態になった客席エリア、みんながみんな自分の歌のように歌い、踊る光景は最高のひと言。続く「Bird of Passage」でVo./G.SUGAが「もっとジャンプしろよ!」と叫べば、日本でいちばん大きなライブハウスが揺れる。SUGAの「溜まっているものは全部置いていこうぜ!」という声にみんなが「オオー!」と応え、「Riot」では会場が手拍子で埋め尽くされる。観客が“京都大作戦”の遊び方を知り尽くしているのだ。新メンバー・Dr.YUKIが刻むタイトなリズムが心地よく、高揚した気持ちが宇治の空に吸い込まれていく。最後はJOJIが「俺たちメンバーチェンジしたんだけど、すげー不安だった。けど初ライブ、京都MUSEに10-FEETとROTTENGRAFFTYが観に来てくれた。本当に感謝してる。だから今日はあの曲をやろうと思います!」と言って吠え、マイクを手にする。「Neo Chavez 400」だ。10-FEETのNAOKIがベースを手に取り、JOJIが客の上で歌う。TAKUMAとKOUICHIも再びステージに登場して新しい体制となったdustboxを祝福する。今年も圧巻のアクトだった。
氣志團は我々の度肝を抜いた。登場がSEKAI NO OWARIの「Dragon Night」。そして10-FEETの「goes on」。目がチカチカするほどの黄色い衣装に身を包んだ彼らは、“他人の褌で相撲を取る”を地で行きながらも、そのエンターテインメントには圧倒的なオリジナリティを感じさせるから不思議だ。新曲「Don't Feel, Think!!」中にはライザップのCMよろしく抱腹絶倒のメンバー紹介をはさみつつ、強烈な一体感を作り出すリーゼント集団。綾小路 翔が「“氣志團万博”をやるきっかけになったのは“京都大作戦”です」と最大のリスペクトを告げ、「最大にして最後のヒットシングル!」と「One Night Carnival」で2万人を狂乱の渦に落とし込む。更に最後は「ようかい体操第一」で締めるという、まるで人を喰ったようなそのスタンスに、オーディエンスは大盛り上がり。氣志團の圧倒的なバイタリティと底力に舌を巻く。
ゴリッとした力強くストレートなロックで頭をガツンと揺さぶるのはACIDMAN。巨大なコールにのって始まった「造花が笑う」、曇天を撃ち抜くような歌声で魅せた「アイソトープ」。この日のACIDMANは、音1つ1つの重みが凄まじい。琴線を揺さぶるベース、脳天まで突き抜けるドラム、熱量の高い歌。「これぞロックバンド」というステージは惚れ惚れする。Vo./G.大木が「共にこの世で生きていく以上、最後まで手を伸ばして生きましょう」と言って「Stay in my hand」が始まれば、数えきれない程の手が挙げられる。更に大木が「どうかこの瞬間を心から楽しんでください。この瞬間は二度と戻って来ないし、俺たちも、人も、地球も、いつかは死んでしまうし、無くなってしまう。だからこの瞬間を、心から楽しんでください」と告げ「世界が終わる夜」で終演。エモーショナルなその歌が、会場の前から後ろまでを包み込むような感覚。4年ぶりにこの舞台へと戻ってきたACIDMANは、今まで以上にACIDMANだった。
「陽はまたのぼりくりかえす」というDragon Ashの幕開けは、太陽が丘をクラップで埋め尽くした。京都大作戦皆勤賞の彼らは、最初から圧倒的な存在感で源氏ノ舞台に君臨する。Vo./G.Kjは眼光鋭く、その表情からは並々ならぬ気迫が感じ取れる。オーディエンス全員が無敵状態へと突入する珠玉のキラーチューン「Fantasista」、2万人全員をヴォーカリストにさせた「Life goes on」、Ba.KenKenのえげつないプレイでスタートした「The Live」、イントロだけで無数の巨大サークルを生み出した「百合の咲く場所で」、そして最後は10-FEETのTAKUMAが乱入した「SHOES」。1秒も1ミリも隙がない。Dragon Ashという類まれなるミクスチャーバンドの全身全霊のステージに、身体がぶるぶると震える想いがする。
まさかこの日が来るとは思っていなかった。あの神々しいSEが鳴り、客が頭上で手を合わせる。BRAHMAN、“京都大作戦”に降臨。「The only way」から怒涛の連続、泥にまみれて暴れる観客、吠えるVo.TOSHI-LOW。1秒も休む間ナシ、アドレナリンが全開。TOSHI-LOWが客の上で「警醒」を歌い、「バンド仲間、ライブ、京都大作戦。こんな光景があるなんて、あいつにも見せたかったな」と言って始まった「PLACEBO」では細美武士も乱入して興奮は最高潮。そして最後の曲「鼎の問」を始める前に、TOSHI-LOWは10-FEETのTAKUMAの悪口を散々言った後、「ここ何年かあいつは少し元気がなかったように見えていた。たぶん色んな人に“今年の京都大作戦はどう楽しませてくれるんですか?”とかいろんなことを言われて、俺みたいなガサツな性格じゃなくて優しい性格だから、1つ1つ考えてきたんだと思う。でも“京都大作戦でどう楽しませてくれるんですか?”と言われて考えるんじゃなくて、自分がここで何をするのかを、そろそろ考えてもいいんじゃないのかな。そのはじめの年にしてほしい」と言った。TOSHI-LOWなりの愛のこもった言葉は、10-FEETへの最大のエールになったに違いない。
振り続ける雨に、2万人は全身をぐしょぐしょにしながらも、眼はらんらんと輝き、次のアクトを心待ちにする。期待が溢れる中で登場したサンボマスターは、Vo./G.山口が「アホミラクルを起こしたいんです!」と叫んで「ミラクルをキミとおこしたいんです」で音と感情を爆発させる。「世界をかえさせておくれよ」、新曲「可能性」と続ける彼らのライブは、それまでのバンドと比べてダイバーが圧倒的に少ないのに、めちゃくちゃ盛り上がっている。ライブ会場で、こんな短時間で、ここまで人を気持ちよくさせるバンドは稀有だ。しかもこの流れはヤバい。トップバッターのSHANKからこのサンボマスターまで、全組が全身全霊で今日しかできないライブをしている。目に見えない大きくて強い流れができていることを実感する。これは何かが起きる…そう予感させる雰囲気に包まれたまま、トリの10-FEETの出番を待った。
「大切な1番バッターを任されました。こんなチャンスをくれた10-FEET、ありがとうございます!」。そう語った04 Limited Sazabysは、「monolith」で勢い良くスタートし、すかさず「fiction」と繋げて加速していく。透明感溢れるパンクナンバー「Do it Do it」では、サビのシンガロングが爽快だ。「ヤバいライブしか出来る気がしない。良い音しか出さないので気ままに踊って下さい」と話すVo./Ba.GEN。心意気に応えようとするバンドはいつだってとてつもない力を発揮するものだ。終了後、フロアから「ありがとう!」という声が聞こえてきた事に、そのすべてが凝縮されているように思った。
tricotはいきなり代表曲「爆裂パニエさん」でフロアの熱を爆発的に上昇させる。どちらかというと、音源ではその演奏レベルやセンスの良さに聴き入ってしまう類いのバンドだが、ライブではVo./G.イッキュウがお客さんとワンフレーズごと交互に歌ったり、G./Cho.キダとBa./Cho.ヒロミが前へ出て見せつけるように弾く姿で煽る等、パフォーマンス含めて超一流だ。更にオーディエンスもすごい。矢継ぎ早に繰り出されるセリフパートの合いの手が完璧なのだ。カッコいいバンドのお客さんは、やはりそれに負けないくらいカッコいい。
もしかすると、この日牛若ノ舞台でもっとも人入りが多かったのは細美武士のステージかもしれない。アコギ1本を持って登場した細美は、まず「夏が近付いてきたので、夏っぽい曲をやります」と言ってELLEGARDENの「BBQ Riot Song」を披露する。その後「BRAHMANの映画が今日公開されるのを祝って、BRAHMANの歌を歌いたい。お前らの頑張り次第で伝説になるかもしれない」と全員でTOSHI-LOWコールをすれば、なんと本人が登場! TOSHI-LOWと細美の2人でBRAHMANの「PLACEBO」やTHE BLUE HEARTSの「青空」などを熱唱! 「17時にも(BRAHMANのステージで)同じ光景が見れるかな? 今度はお前が来いよ!」と約束を交わした2人。源氏ノ舞台がどうなったのか楽しみだ。
NAMBA69のライブ中、会場から発せられるパワーはすさまじかった。前列が人波で物理的に盛り上がっているように見えたほどだ。次いでミッドなグッドメロディが心地良い「SUMMERTIME」や、英詞でもなお真っ直ぐにメッセージが突き刺さる「THE WORLD IS YOURS」でキッズ達を魅了。「LET IT ROCK」ではJESSE(RIZE / The BONEZ)がゲストとして登場! ライブ後に誰かが「今日1のライブだった!」と楽しげに話しているのが聞こえてくるほど最高のステージだった。気持ちは分かるが、まだ初日の半分しか終わっていない。ここからも素晴らしいライブが観られるはずだ。
第一声に「夢が叶ったぞー!」と叫んだBACK LIFT。「with you all the time」「NEVER SAY DIE」などBPM激速の正統派メロディックパンクを差し込み、オーディエンスを盛り上げていく。冒頭の一言に対する返答なのか、曲間にフロアから「おめでとー!」という声が聴こえたときは何とも心温まる心地がした。徐々に雨足が強くなってきたこともあり、場のコンディションは良くなかっただろう。だがそれをものともせずに、オーディエンスと気持ちをぶつけ合うような熱いライブを見せつけた。
このステージからテントが急設されたほど激しくなる雨の中、The BONEZが現れた。質の高いメロディラインに重厚感のあるサウンドが乗る事で、えも言えない高揚感に包まれる。そしてVo./G.JESSEの言葉もアツい。「お前達が来るから、雨が降って雪が降ってもやらせてもらいますよ!」なんて言われたら、アガらない訳がない。テントよりも更に前へと乗り出し、濡れる事も厭わずにステージも降りてほど違い距離で歌われたら、嬉しくないわけがない。10-FEETをはじめスタッフやメンバー達に感謝を告げて、最後は一礼して去っていった彼ら。曲は言うまでもなく、その人間にもとことん惚れ込んでしまう。
初日の牛若を締めるのは関西インディー界きっての愛されバンド、我らがSUNSET BUS! 指笛やら口笛やら「待ってましたー!」という歓声やら、彼らを出迎える雰囲気といったらここはハワイなんじゃないかと思うくらいにあったかい。ステージにはヤシの木の飾りがあったり、先日リリースされたアルバム『ALOHA』にちなんでか、G./Vo.TEPPEIが「アロハ〜」と挨拶するものだから、ますますそんな気がしてくる。始終酒を酌み交わしたくなるようなハッピーな楽曲を鳴らし続けた彼ら。それは、ずっと親指と小指を立てた腕かしこから上がっているような、どこまでもピースフルなステージ。
数えきれないほどのタオルが頭上に掲げられる。京都大作戦、10-FEET。これだけでライブハウスキッズ垂涎ものだが、朝からの素晴らしい流れが10-FEETのライブにとって最高のバトンつなぎになることは間違いない。ずっと雨が降っている初日だったが、心の中は晴れ晴れとしている。1曲目はDragon Ashが“京都大作戦”に出演している日はマストの「RIVER」。Kjがステージに登場し、「10-FEETがやっているわけじゃないんだよ! お前らがやっているんだよ!」「お前ら毎日、下げたくない頭下げてんだろ? 俺だってそうだよ!」とオーディエンスを更に鼓舞し、バンドサウンドがまったく無い中での大合唱に鳥肌が立つ。“京都大作戦”で観る10-FEETは最高に違いないのだが、この時にふと思ったのは、出演者もお客さんも含めて10-FEETであるということ。“京都大作戦”というフェスは、10-FEETというバンドのすべてが表現されているということ。熱気が水蒸気となってもうもうと立ち込める中、数えきれない笑顔が飛び交う中、ステージの上で最高の時間を作り出す3人のすごさを改めて痛感する。TAKUMAが「悔しかったこと、悲しかったこと、忘れたくても忘れられへんこと、これから意味合いを変えていこうぜ」と言って始まった「その向こうへ」。2万人が全力で歌い抜いた同曲で本編終了。そして興奮冷めやらぬ中で始まったアンコール、懐かしい「BE FRIENDS AGAIN」と未完成の新曲を披露し、最後は太陽が丘の森をひとつにした「4REST」。毎年参戦しているのに、期待以上、想像以上の初日が終わる。楽しくて、色んな感情が全開ダダ漏れになった1日。よし、明日も楽しもう。
2日目は、昨日とはうってかわって過ごしやすい気候に恵まれた。下はぬかるんでいるものの、頬を撫でる風が心地いい。昨日1日の並びは、近年稀にみる豪華さだったというか、1分の隙もないものだったが、2日目もラインナップは超豪華。本日も観客のテンション高く、体調万全、気合十分。“京都大作戦”を全力で楽しむ準備は万端だ。
観客が彼らを待ちわびていたことは、開演前の大きな大きな歓声が物語っていた。新体制となったHEY-SMITH、事実上一発目のライブ。G./Vo.猪狩が「始めるかー!」と高らかに宣言し、ライブがスタートした。1曲目の「Endless Sorrow」のホーンが鳴り響いた瞬間から客席エリアのテンションはめちゃくちゃ高い。「俺たちは今日という日を待ちわびていた。お前らもそうやろ? 悲しいことがあっても、上司に怒られても、今日という日のためにがんばってきたんやろ? 思い切り楽しめよ!」と猪狩が叫び、「Living In My Skin」で大盛り上がり。新メンバーのBa./Vo.YUJI、そしてサポートメンバーのホーン2人(猪狩は「チンコ&マンコ」と紹介)との一体感はすばらしく、全員が一丸となって“思い切り楽しませよう”とするそのステージは迫力満点。「今、マジでバンドやってて良かったと思ってます。バンドは最高、バンドは人生のすべてを教えてくれる。バンドに興味がある人、音楽に興味がある人、今すぐ楽器を手にしてこの“京都大作戦”を目指せ! “DEAD POP FESTiVAL”を目指せ! “HAZIKETEMAZARE”を目指せ! その時に対バンしようぜ!」と叫ぶ。ダイバーが泣きながら宙を舞う。最後の「Come Back My Dog」まで、実にHEY-SMITHらしい、でも新しい大きな可能性を感じさせるステージで魅せてくれた。
“京都大作戦”の女番長ことMINMIは、その強烈なバイタリティで今年も存分に楽しませてくれた。「私が連れてきたのは太陽です!!」と「サマータイム!!」をスタートさせ、太陽が丘に色とりどりのタオルが舞う。今年初のバンドセッションというそのステージは贅沢で、更に彼女の人柄が溢れまくるライブに思わず笑みがこぼれてしまう。彼女がこの“京都大作戦”をきっかけにサンボマスターと繋がったように、ここは“ジャンルレス”という言葉だけでは説明できない大きな包容力がある。「真夏のオリオン」ではTAKUMAとの夢のコラボレーションで魅せ、沸かせに沸かせた後、最後はキラーアンセム「シャナナ☆」。1秒も客を静止させない強烈なレゲエ界の女王のエンターテインメントは今年も素晴らしかった。
広大な客席エリアに、前から後ろまで客がギュウギュウに詰めかける。人力車に乗ってステージに現れたMAN WITH A MISSIONに、ライブ前からオーディエンスは大興奮。「ヨウコソ京都ヘオコシヤス!! We are MAN WITH A MISSION!!」というG./Vo./Rap.Jean-Ken Johnnyの号令を皮切りに、興奮は一気にピークへ。「Emotions」「Dive」「Take What U Want」「Get Off of My Way」と、すべての楽曲が4番打者のような破壊力で鳴り響き、歌う者、ダイヴする者、両親に肩車されながら歌う小さな女の子と、彼らのライブは全方位で攻めまくる。DJサンタモニカが客席エリアに突入し、興奮はカオス。TAKUMAとのコラボ「Database」で楽しませ、そして最後は全員が飛び跳ねながら踊りまくる「FLY AGAIN」。海外ツアーから帰ってきたばかりというオオカミたちのタフで強烈なポピュラリティは、ライブハウスで鍛え抜かれてきたキッズたちを120%満足させた。
彼らが“京都大作戦”に参戦するというのはびっくりした。10-FEETと同じく、数多くのフェスやイベントに引っ張りだこの[Alexandros]。「Burger Queen」でスタートしたそのステージは、曲を重ねる毎に熱量を帯びていき、「オオカミもいいけど俺たちは犬になります!」と「Dog 3」で興奮をスパークさせる。Vo./G.川上が「暴れませんかー!?」と煽り、観客は腕を振り上げて彼らのエッヂィなロックサウンドに身を任せる。「やっと出ることができました。ありがとうございます。みなさんにとっても大事な日であるように、俺たちにとっても今日は大事な日になりました」と言う川上の言葉は、その場に居た全員の胸に響くものだった。
ステージにもうもうとスモークが立ちこめる。まさか“京都大作戦”で彼らを観ることができるとは。この日の出演者だけではなく、たくさんのバンドマンがステージ袖で見守る中、ユニコーンのライブが始まった。結論から言えば、彼らはどこまでも破天荒なバンドだった。大御所ぶることなど一切なく、Key.ABEDONが何度も大人のおもちゃ(おそらく大きめのピンクローター)をポケットから取り出しては電源を入れたまま客席に投げ入れるという型破りさ加減、次から次へとヴォーカルを変えて表現するロックンロールの振れ幅、「大迷惑」はもちろんのこと、「あなたが太陽」や「Feel So Moon」などキラーチューンでオーディエンスを沸かせる様。程よい力の抜け具合と、どこまでも音に真摯な姿勢、ステージで放つ強烈なカリスマ。ユニコーンが他の誰よりもバンドらしいバンドだったことに、思わず嬉しくなってしまった。
ステージに登場したKen Yokoyamaも、いきなり我々の度肝を抜いた。Tシャツを脱ぎ、ズボンを下ろし、パンツを下げるという強烈な悪ガキっぷり(チンコを太ももの間に挟んでいたのでギリギリセーフ)。Ken曰く「10-FEETとのツアーでストリップしたらファンがめちゃくちゃ怒ったから、“こういうこともありますよ”ということをご周知いただきたい」とのこと。その後は「Let The Beat Carry On」「This is Your land」と、1本も2本も筋が通ったパンクでガツンと魅せる。ダイバーの数が半端ない。Kenの偉大なるパンクスピリッツに触れ、観客は居てもたってもいられなくなっているのだ。白いマイクを客席に投げ入れてみんなで大合唱した「Believer」、そして最後はダイバーの数が本日最高数を記録(筆者調べ)した「Save Us」。Ken Yokoyamaのステージはいつもそうだが、彼ら自身の“生き様”溢れる姿と歌に、魂をぐらぐらと揺さぶられる想いがする。
リハで10-FEETの「その向こうへ」を演奏するということ自体に、彼らがこのステージにかける想いの強さを知る。京都のROTTENGRAFFTY。昨年の彼らのライブが素晴らしかったが故に、今年の彼らのライブへの期待も半端ない。そんな我々の期待をぶった斬るかのようにVo.N∀OKIが叫び、「This World」でライブスタート。狂気を秘めたギタリスト・KAZUOMIが「いくぜ!」と叫び、会場は前から後ろまでノリノリ。Vo.NOBUYAが客席に身を投じ、KAZUOMIも客席へ。NOBUYAが「去年の俺達に負けたくありません。俺たちの後に出てくるバンドに負けたくねぇんだよ!」と最初から半端ない気合いを見せる彼らに、オーディエンスは負けじと暴れまくる。そこからはステージの上も下も、全員が感情のリミッターを切ったような形相でROTTENGRAFFTYの音楽に意識を突入させる。N∀OKIが「京都! いっ祭、がっ祭、感じな祭! 限りない故郷に愛を込めて!」と言って始まった「響く都」、NOBUYAとKAZUOMIがオーディエンスを煽りまくった「D.A.N.C.E.」、そして最後は「金色グラフティー」。“京都大作戦2015”・2日目・トリ前という大役は、ROTTENGRAFFTY以外には考えられないと心の底から思える素晴らしいステージだった。
巷で話題沸騰中のWANIMAが、遂に京都大作戦に登場! 「Hey Lady」で始まりの合図を鳴らせば、朝イチから詰めかけたオーディエンスのシンガロングが響き渡る。10-FEETの「その向こうへ」、JITTERIN'JINNの「夏祭り」を挟み込むと、またまた巻き起こる大合唱! ラストはセルフアンコールをかけて(笑)、もう一度「Hey Lady」を披露しフィニッシュ。あまりにもライブの持っていき方が上手いものだから、初めて観た時は10年選手かと思っていたが、その実まだ結成5年の若手だというから末恐ろしい。
「ここを選んでくれてありがとう。2015年に、牛若ノ舞台に来た事を自慢できるようなライブをします」。最初にそう告げてスタートしたのは、兵庫の4ピースロックバンド、bacho。彼らのライブにはエネルギーが満ちあふれていた。決して完璧じゃない、弱さを持つ人間が人生を信じて突き進んできた中で生まれるエネルギー。切なさ、悔しさ、やりきれなさ…そんな苦悩があったからこそ絞り出された本音。それがバンドを通じて伝播していく感覚に鳥肌が立った。これは、すごいバンドと出会ってしまった。
LABRETのステージではSEが鳴る前からファンの歓声が聞こえていた。それほど期待度が高いのだろう、満を持して登場すれば歓声が雄叫びに変わっていく! Vo./Ba.10-9の「ラストの1秒まで駆け抜けて!」という言葉を皮切りに、疾走感抜群の「Last Blink」でスタートダッシュを切ったのち、めまぐるしく変わる展開が面白い「Abyss」へ。「今日は屋根がないから、ジャンプしたら気持ち良いかもしれない。やってみようぜ!」と煽れば、オーディエンスがあたりを震わせるほどの勢いで飛び跳ねる! 宣言どおり最後まで駆け抜けた彼らに、止む事のない拍手が送られた。
お次のBET DA FARMは、韻シストBAND & KenKen(RIZE) & DAG FORCEと実力派が集ったドリームバンド。体を揺らす極上の音楽を味わいながら「僕らはお酒が大好きなんで、昼間だけど乾杯していいですか?」というDAG FORCEの素敵な提案を受け、会場にいる全員で乾杯! 手元にビールがないことが悔やまれる。そのままジャジーなアレンジからゴキゲンなラップまで、東西の一流ミュージシャンが入り乱れて大騒ぎ! 心だけでなく空までが晴れ渡った、爽快な時間。
過去に源氏ノ舞台に出演していたものの、“自分たちが出る代わりに若手を出してほしい”との想いで牛若ノ舞台のスペシャリストになることを選んだというG-FREAK FACTORY。「SOUL CONNECTION」「日はまだ高く」など、ロックとレゲエが融合したトライバルなナンバーでオーディエンスを揺らしていく。そして、アカペラで語りを入れた「島生民」。その言葉には聴く者の胸を打ち、目を釘付けにする圧倒的な求心力があった。彼らは“牛若ノ舞台のスペシャリスト”というに恥じない神懸かり的なアクトを見せ、その存在をオーディエンスの記憶に刻み込んだ。
My Hair is Badのライブで特に衝撃的だったシーンがある。それは、Vo./G.椎木の弾き語り。歌うのではなく、文字通り“語り”だ。高校生の時にバンドを組んだ事、“君”がエルレのコピバンを良いねと言ってくれた事、My Hair is Badを好きだと言ってくれた事…こんこんと1メートル以内を綴る彼らの音楽は、あまりにも現実。どうしようもないくらい景色が浮かぶ現実に、剥き出しの感情が乗っていた。その言葉を聞いて泣いている人がいた。唇を噛み締めてこらえている人もいた。胸の内を露にする姿には、きっと理屈を飛び越えて伝わるものがあるのだろう。
泣いても笑っても、牛若ノ舞台はこれが最後の1組。その大舞台を任されたのは、過去にもこのステージに出演したNUBOだ。「憧れの人たちのライブをいっぱい観て来たから…今年の大トリは俺たちに任せとけ! 遊ぼうぜ!」。そんなVo.tommyの力強い発言で幕を開けると「Such one」「ナイモノバカリ」「Present changes past」を繰り出していく。全身で感情を表現するように腕を突き上げ、感情を受け止めるように両腕を開き、熱唱するメンバー達。メンバーと共に歌い、知らない人同士で肩を組んでサークルを作り、ダイブする度にハイタッチをしたりしているオーディエンス。そんな光景を観ているうちに、自然と涙が出てきた。始終フロアとステージの熱が行き交っていて、それに感化されて笑顔になったり涙が出てきたりする。ここはなんと良い場所なんだろう。まったくの他人が一瞬で仲間に変わる、それがNUBOの、音楽の力なのだ。
空が暗くなり、ステージには照明が灯される。SEが鳴り、2万人がタオルを掲げ、3人がステージに登場する。10-FEETのライブは「風」ではじまった。この曲を“京都大作戦”で聴くのは感慨深い。まだ音源になる前、初めてこの曲を聴いたのもこの丘だった…そんな感慨にふける暇もなく「VIBES BY VIBES」、そしてMAN WITH A MISSIONのVo.Tokyo TanakaとJean-Ken Johnnyが乱入しての「super stomper」と、会場はまるで大輪の花火が何発も同時に打ち上がったときのような盛り上がり。2万人が自分の歌として「RIVER」「蜃気楼」を歌い、TAKUMAが「ライブでサークルモッシュ、ダイヴ、周りの歌声がうるさいとか、、、色んな楽しみ方があるけど、俺らの願いはひとつ。仲良く楽しくやってほしい。だから今日は楽しもう。とことん楽しもう」と笑う。「その向こうへ」ではROTTENGRAFFTYのNOBUYA・N∀OKIとのコラボで魅せ、「1つだけお願い。サークル嫌いな人も今日だけは許して」と言ってサンボマスター・山口の真似で煽りに煽った本編最後の「goes on」は、オーディエンスがぐちゃぐちゃになるまで全力で暴れまくる。そしてアンコールでは、まるで友達に聴かせるような気軽さで未完成の新曲を披露し、最後はHi-STANDARDの「Stay Gold」で大団円。
2日間通して感じたことは、出演者全員が自分のフェスのことのように全力で楽しみ、観客全員が自分の歌のように全力で歌い、10-FEETのステージにはそういうことが全部表れていたということ。きっと今までの“京都大作戦”もそうだったのかもしれないけれど、TOSHI-LOWが言ったように、今年は何か大きな一歩を踏み出したような感覚があった。8年間という蓄積は、たくさんのドラマを生んできた。次の週に川崎市で開催されるSiM主催の“DEAD POP FESTiVAL”、HEY-SMITHの復活、10-FEETがHi-STANDARDから受け継いだロックの血は、“京都大作戦”を軸にしていろんな世代のアーティストの心を動かしている。終演後、出演者に向けてTAKUMAが「バンド主催のフェスが増えてきてるけど、もっともっと増えたらいいと思います」と言ったように、きっと来年の“京都大作戦”は、そしてこれからの音楽シーンは、もっともっとおもしろいものになるだろう。
TEXT:山中毅 / 森下恭子
PHOTO:HayachiN / みやざきまゆみ