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Nothing’s Carved In Stone

内面から溢れる衝動を吐き出し、禍々しいほどの確かな感触を手に、新しい未来を構築する

PHOTO_NICS2015年3月、4月、5月と渋谷CLUB QUATTROにて開催されたNothing's Carved In Stoneの“Monthly Live at QUATTRO”は、彼らのバンドとしての成長過程をリアルに感じたイベントだった。類まれなるアンサンブルとライブハウスで鍛え抜かれたタフな楽曲、感情を露わにするVo./G.村松の歌。ステージでの彼らの姿は頼もしく、生々しく、人間が持つ根源的な力を沸々と感じさせるものだった。バンドの集大成とも言える同公演の音源を収録したライブアルバム『円環 -ENCORE-』は、そんな彼らの“過去”と“未来”を繋ぐキラーチューン揃い。リリースを目前に控えた今月号では、村松拓に想いを訊いた。

「“じゃあ俺は来てくれた人たちにNothing's Carved In Stoneの未来として何を提示できるのか?”と。それを表現として昇華させていくこと自体に挑んでいた3ヶ月だったし、ライブだった」

●今回ライブアルバム『円環 -ENCORE-』がリリースとなりますが、今作の元となった3ヶ月連続の渋谷CLUB QUATTRO公演“Monthly Live at QUATTRO Vol.1 衝動”、“Vol.2 感触”、“Vol.3構築”ですが、拓さんのテンションが3回とも違っていたのが印象的で。

村松:はい。

●“Vol.1 衝動”が終わった直後、楽屋に挨拶に行って「すごく良かった」と言ったら「全然ダメだった!」と落ち込んでて。

村松:フフフ(笑)。うん、落ち込んでた。

●“Vol.2 感触”については、僕的にはVol.1より良くて、楽屋に入ってすぐチーフマネージャーの石谷さんと「今日良かったっすよね?」と言い合ったことを覚えてて。

村松:あ、そんなこと言ってたんだ。

●と思ったら“Vol.3構築”は、今までのNothing's Carved In Stoneのライブでいちばん良くて。拓さんのテンションがそれまでと全然違ってて、感情が溢れているのが新鮮で衝撃だった。

村松:バイオリズムがありましたね。3〜5月っていうのは浮き沈みが激しい時期で。

●それも言ってましたね。「メジャーじゃなくなったのが、自分で想像していた以上にショックだったみたい」って。

村松:言ってましたね(笑)。それね、最近わかったんです。俺が落ち込んでいた理由が。

●ほう。

村松:やっぱりメジャーでやっていたときって、俺の感覚的にはインディーズで活動していたときとなにも違いはなかったんですよ。要は、人に対してバンドとしてアプローチして、“1対1で人間として付き合いましょう”という感覚。だから、バンドに関わっている人たちみんながみんな、自分と同じ熱量でやっていると信じたかったというか。

●はい。

村松:でもメジャーのレコード会社は大きいが故に、自分と同じだけ熱量を持っている人たちばかりじゃなくて。それは俺が勝手に感じていたことなんでしょうけど、そういう人たちが高い熱量を持てないのは、バンドが力不足だからという結論に至っていたんです。

●ああ〜。

村松:それはメジャーに限った話ではなくて、なんでもそうなんですけど複数の人間が集まって一緒に何かを作り出そうとしたときに、越えちゃいけない方向の一線を越える人って中には居るじゃないですか。そういう人を、俺たちの魅力的なバンドの力でプラスの方向に流していけるもんだと思っていたんです。変えていけるって。

●なるほど。

村松:でも変えられなかったんです。だから俺たちは結局メジャーと一緒に続けることをやめたっていうか。さっきの理論でいくと、それができないということは“バンドの魅力がない”という結論になるんですよね。それがすごくショックだった。

●だから落ち込んでたのか。

村松:3月とかはすごい落ち込んでた。でもね、今Nothing's Carved In Stoneってライブが少ないじゃないですか。俺たちが見せたいものって、Instagramじゃないし。

●Instagramじゃない。

村松:FacebookでもTwitterでもブログでもないんですよ。

●違う違う。

村松:ライブなんですよ。

●そうだそうだ!

村松:ライブとCDじゃないですか。だから一生懸命CDも作るし。届けたいものがあるから。答えは自分たちの中にしかないんだけど、“色んな人に観てもらいたい”と考えたらライブをやるしかなくて。

●うん。

村松:だからそのライブでは、今の自分の状態を表現しなきゃいけないと思うんですよ。俺はそういうタイプだと思うし。例えば「Spirit Inspiration」という曲があります。それを、いつも同じ気持ちで歌うわけにはいかないタイプなんですよ俺は。その日の気持ちで、ちゃんと伝わる形で歌う。それじゃないと俺はダメなタイプなんですよ。メジャーじゃなくなることが決まって、理由はわからずにもやもやして、急に不安になって。その中で、先に繋がていくための大切な“Monthly Live at QUATTRO”があって。“じゃあ俺は来てくれた人たちにNothing's Carved In Stoneの未来として何を提示できるのか?”と。それを表現として昇華させていくこと自体に挑んでいた3ヶ月だったし、ライブだった。

●ああ〜。その話を訊いて思いつくのは、“Vol.3構築”の拓さんがそれまでと全然違うステージだったということで。感情が溢れていて、MC云々じゃなくて、歌から“今のバンドの状態”がわかるというか。それは今までにないことだったんですよね。

村松:それはね、俺自身も手応えがありました。あの3ヶ月で、お客さんが何を観に来てるのかっていうのがすごくわかったんですよ。

●ほう。

村松:相当濃かったんですよね。“Nothing's Carved In Stoneがどこに向かうべきか?”ということをこの3ヶ月で見極めたかったというのが俺の中であって。だから色んな意味合いがあったライブだった。曲に込めているものをちゃんと今の自分が表現して、それをパッケージできたっていうことは先に進むいいきっかけになったんですよね。すごく成長できた。対バンの30分のライブの意味合いもまったく変わったし。

●うんうん。

村松:だからよかったですね。そういう時期を経て、やっぱり自然体で、普通にしているのがいいんだなって最近は思います。なんて言われようとステージに立って歌っているのは俺だから、“今日の気持ちで1分1秒を表現して帰ります”っていう気持ちでライブができています。

●“生きている”っていう感じですね。ところで今回ライブアルバムがリリースとなりますが、これは既発曲すべてを演奏するという“Monthly Live at QUATTRO”と連動して、リスナーから5曲ずつ収録希望曲を投票してもらって、票が集まった順番通りにアルバムに入れるという企画で。

村松:これね、俺も実は投票したんです。1曲しか入らなかったんですけど…。

●アハハハ(笑)。5曲は何に投票したんですか?

村松:入っているのは「Red Light」で、あとは「Seasons of Me」と「Terminal」、「Words That Bind Us」、あとは「(as if it's) A Warning」です。

●お、なるほど。

村松:実際にこの17曲を見て思ったんですけど、もうベストですよね。もっとマニアックなものに入るのかなと思ってたんだけど。

●うんうん。それも“何のベストか?”と考えたら、ライブで聴きたいかどうかっていう基準になっているのかなって。

村松:あ、そうかもしれないですね。

●でも「November 15th」が1位というのは個人的にちょっと意外だったんです。5位くらいまでの他の曲って、アッパーな勢いがある曲だと思うんですけど、その中で「November 15th」は“哀しみ”があるというか。

村松:ちょっと湿度がありますよね。やっぱりノリがいいのは好きだけど、でもウチのお客さんはバンドサウンドを聴いている人が多いっていうのは感じました。「November 15th」はわかりやすいけど結構凝って作ってるし、バンドで表現できる“静と動”みたいなものがあって。「November 15th」もそうだけど「Diachronic」や「Isolation」って、ウチのバンドの大元になっているコード進行というか、ここからNothing's Carved In Stoneが派生していったという、最初の核みたいな曲なんです。それをお客さんもわかってるんだろうな。

●「Red Light」に投票したのは、何か理由があるんですか?

村松:大好きな曲なんです…これはもう時間が経ったから言っちゃいますけど…すごく身近なところで、2人の人が同じ時期に亡くなったことがあったんです。

●はい。

村松:すごく悲しかったんですよね。大人になってからそういうことは初めてで。“こういう出来事を、人はどうやって乗り越えていくんだろう?”、“どうやって忘れずに乗り越えていくんだろう”って、それを書いた曲なんです。すごく側に居る人も悲しんでいたし、自分もそうだったし。だから自分にもその人にも“ちゃんと明日を教えてあげたい”と思ったんです。やっぱり居なくなっちゃった人を忘れたくないじゃないですか。ぶっちゃけて言うと、アルバム『Silver Sun』ではそのときにしか出せない気持ちで歌っているので、あのときの「Red Light」には勝てない。同じ気持ちで歌ってますけどね、でもたぶん一生勝てない。

●なるほど。

村松:「Red Light」はそういう気持ちで書いた曲なので、他の曲とは少し気持ちが違いますけど、でも全部の曲に想い入れはありますよね。そういう意味では、3ヶ月で全曲演って、ちゃんとみんなに伝えることができたっていうのはよかったですよね。本当にいろんな気持ちが渦巻いている3ヶ月間をパッケージしたかったという想いがあって、それをちゃんとみんなが選曲で悩んでくれて。

●この3ヶ月のライブというのは、Nothing's Carved In Stoneというバンドの歴史の中でポイントになっていますね。

村松:間違いなく。意図していたわけではなく、でも結果的にすごく大きなものになった。だから運命ですよね。この時期に俺は確実に変わったから。

interview:Takeshi.Yamanaka

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