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メガマソ

夢から生まれた神秘的で聖なるストーリー。 最高の切なさに心がむせび泣く魔法のアルバム

PH_megamassoメガマソが2年ぶりにリリースする、フルアルバム『ニシュタリ』。一見、何の意味があるのか想像できない謎のタイトルを冠した今作は、彼らの魅力をまさに凝縮した作品と言えるだろう。独自の世界観と、人の心にすっと染み入るメロディという強力無比な武器を全ての収録曲に搭載。初回生産限定盤は【ニシュタリ】サイドと【シングルズ】サイドという2枚組CDに加えて、その世界観を絵本で表現した豪華ブックレット付きだ。通常盤は全11曲入りのCD1枚となっているが、どちらで聴いたとしても楽曲の強度は全く揺るがない。さらに、それぞれの楽曲がそれぞれに奏でる物語を通して聴いた時に立ち現れる驚愕の真実も…。数々の謎を秘めた『ニシュタリ』の全貌に迫るべく、メンバー3人に話を訊いた。

 

 

 

●2年ぶりのフルアルバムとなりますが、まずタイトルの『ニシュタリ』というのはいったい何なんだという…?

涼平:結論から言うと、これは人の名前なんですよ。(初回生産限定盤の)ブックレットの最後のほうに“西タリ鎌行”という人物の名前が出てくるんですけど、その名字の“ニシタリ”が訛って“ニシュタリ”になったんです。

●表記が半角カタカナなのにも理由がある?

涼平:昔は(コンピュータのデータで)漢字(※全角)だと2バイトで、半角カタカナだと1バイトしか使わないというのがあったんですよ。今は(コンピュータの容量が増えたので)もうほとんど関係ないんですが、データ量を圧縮したくて半角カタカナで打っているという設定がまず大本にあって。今回の曲タイトルに半角カタカナが多いというのは、そこから広がったことですね。

●今作の世界観の中で、通信する時のデータ容量を減らすために半角カタカナでやりとりするというところからのアイデアだったと。

涼平:「エインシャントソング(ボーナストラック)」(M-6/初回生産限定盤のみ)の歌詞にも出てくるんですけど、最後のほうはもうデータを通信することもできなくなっちゃって、石みたいなものに刻み始めるんですよ。その時も刻むデータを少しでも減らしたくて半角にしているっていう。

●自分の中で、そういったイメージが最初からできあがっていたんでしょうか?

涼平:はい。だから最初にメンバーに曲を投げた時点でも、タイトルは半角カタカナでしたね。

●メンバーは『ニシュタリ』と聞いた時にどう思いました?

Gou:「また何か言っているな…」みたいな(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

涼平:ファンの人たちも基本的にそういう反応だから。意味がわからないほうが、ワクワクするみたいです。簡単にわかっちゃうと、逆につまらないというか(笑)。

●一見、意味不明なものを期待されていると(笑)。

インザーギ:でも曲を受け取った後に物語の内容を説明する文章が送られてきたので、僕らはそれを見て「なるほど」という感じでした。

●ちゃんとメンバーには伝わるようにしていると。この世界観を思い付いたのはいつ頃なんですか?

涼平:『ニシュタリ』という世界観に関してはバンドを始める以前の、15年くらい前に見た夢が最初のキッカケですね。まさに「ザファーストニムバス」(M-1)のイメージなんですけど、足が床に着かないタイプのジェットコースターみたいな乗り物に乗って宇宙から、すごく青々とした緑の草原に突入する夢を見たんですよ。

●それは自分が?

涼平:自分とそれ以外にも何人かいて。そうやって着いた場所が“ニシュタリ記念宇宙ステーション”という名前だったんですけど、どう見ても惑星なんですよ。「何でこれが“ニシュタリ記念宇宙ステーション”なんだろう?」というところから始まって、断続的にその夢の続きを2〜3回くらい見た中でその世界観をまとめた感じですね。

●何度かに分けて、同じ夢の続きを見たんですね。

涼平:最初に見たのは中高生くらいの時で、そこから5年後くらいにまた見て…そのまた2年後くらいに見て…という感じでした。最近は全く見ていないんですけど、イメージだけは頭の中にすごく残っていて。特に最初の青々とした草原に降りる場面は今でもパッと思い出せるくらいなので、1曲目はそのイメージで書きました。

●続き物の夢を見ることは多い?

涼平:僕は結構あります。たとえば風邪をひいた時に必ず見る夢ってない?

インザーギ:風邪をひいた時は、オバさんがヤカンを投げてくる夢を見ます。僕もこういうファンタジックな夢を見たかったんですけど、いつもうなされるだけで…。

Gou:ファンタジックかどうかはわからないけど、俺も夢は現実味のないものが多いかもしれない。…まあ、ヤカンは投げてこないですけどね。

一同:ハハハ(笑)。

●今回の『ニシュタリ』に関しては、涼平さんの夢を元に物語が描かれていると。

涼平:もちろん夢で全てのストーリーを把握したわけではなくて、自分の創作も付け加えていて。でも大本になっているものは夢で見た設定なので、パッと見では意味がわからないような不思議な設定になっていると思います。

●世界観や構想自体は前からあったわけですよね。

涼平:この“ニシュタリ”というイメージ自体は、ずっと昔からありましたね。実は僕らが結成2年目にリリースした『またたくよる』(2ndアルバム/2007年)に収録されている「ユキココヤシ」という曲も、今回の『ニシュタリ』と同じ世界設定を使っていて。その当時から『ニシュタリ』の世界観にしたくて、その曲の歌詞カードだけ金属の枠みたいなものを付けて差別化していたんです。その時はここまでの作品になるとは思っていなかったんですけど、後々でそれに関連した作品ができた時には「こことつながっているんだな」というのがパッと見でわかるようにしたいなと。

●それを今やっと形にできた。

涼平:僕らが色々と勉強して培ってきた音や曲の作り方を踏まえて、今だったらその世界がちゃんと構築できるかなと思ったのが今回のタイミングだったんです。演奏能力やアレンジ能力的にも、今という感じでしたね。

●初回生産限定盤は2枚組で【ニシュタリ】サイドと【シングルズ】サイドに分かれていますが、M-6「エインシャントソング(ボーナストラック)」までで“ニシュタリ”の世界は完結している?

涼平:完結しています。2枚組に分けるというアイデアは元々あって、それは前半のストーリーを絵本にしたかったからなんです。絵本にする時に、物語がそこで1回途切れるので2枚に分けざるを得なかったというか。

●絵本を付けるというアイデアも最初からあったと。

涼平:歌詞が一見では小難しい感じになっているので、絵で上手く説明したいなっていうのがあって。デザイナーさんとも最初に2〜3時間くらい打ち合わせしたりして、やりとりを結構しましたね。

●音だけなく、絵本を見ることでわかる部分もある?

涼平:絵本を見てもらうとわかるんですけど、この物語には白い服を着た人たちと黒い服を着た人たちが出てくるんですよ。「ザファーストニムバス」と「タイダルピンク」(M-3)と「サイレントガール」(M-5)は白い服の人たちの話で、「スノウィブルー」(M-2)と「とても小さくて、きっともう見えない。」(M-4)が黒い服の人たちの話で。そして絵本では「サイレントガール」の後に、黒い服を着た人たちの死体が流れ出てくるという場面があって。それを見ると、黒い服を着た人たちというのは、実は白い服の人たちからしたら豆粒のような大きさだというのがわかるんですよね。

●それが「とても小さくて、きっともう見えない。」というタイトルにもつながっているんでしょうか?

涼平:絵本を読んでいる人に、ちょっと予感させたくて。普通に前から読み進めていくと、白い服の人たちも黒い服の人たちも同じように“人間”みたいなイメージだと思うんですよ。でも実は黒い服の人たちというのは、5曲目に出てくる“サイレントガール”という人が管理しているミラーボールの中にある小さな世界に住んでいる人たちという設定なんです。それが“本当に小さな世界なんだよ”というのを予感させたくて、「とても小さくて、きっともう見えない。」というタイトルにしました。

●そんな意味があったんですね。「エインシャントソング」はどういう内容なんですか?

涼平:「とても小さくて、きっともう見えない。」の歌詞には、女の人が歌を歌って世界を滅ぼすという設定があって。「エインシャントソング」はその歌のことで、物語の中で歌われている劇中歌なんですよ。

●「エインシャントソング」は女性ボーカルも入っていますが。

涼平:そこは「とても小さくて、きっともう見えない。」との対比にしたいというのがあって。「とても小さくて、きっともう見えない。」は、男の子の視点で歌っているわけなんですよ。でも歌詞の中に出てくる“エインシャントソング”を歌うのは女の子なわけだから、そこを際立たせるために女の子に歌わせたら面白いかなと。でもこれはちょっとメインの“メガマソ”からは離れているから、ボーナストラックにしようということでしたね。

●すごくしっかりとした設定があるわけですが、メンバーはそれをちゃんと飲み込めた?

インザーギ:逆に設定がしっかりしているので、やりやすかったですね。メガマソは設定が細かいものをやることが多いので、慣れたというのもあって。最初よりは理解する速度が早くなったかなという気はします。

Gou:俺も飲み込みますけど…あんまりよくわかっていないですね(笑)。

涼平:彼は飲み込んだものをそのまま吐き出す感じです(笑)。

●ハハハ(笑)。

涼平:でもファンの中には、Gouみたいな人ももちろんいると思うんですよ。全部は理解できないけれど、何となく雰囲気や曲が好きだったりして。僕だって初めてレッド・ツェッペリンを聴いた時に、歌詞が良いと思ったりはしなかったから。そう考えると、そういう楽しみ方も全然間違っていないというか。色んな楽しみ方ができるのは良いかなと思います。

●ちなみに【シングルズ】サイドには、シングルに入っていない曲も収録されていますが…。

涼平:【シングルズ】サイドに新しく収録されている「shooting St.arz」(M-7)と「リフレイン」(M-8)はそれぞれ1曲ずつが物語として完結している形になっているので、“1つ”という意味での“シングル”でもあるんですよ。

●【ニシュタリ】サイドの6曲もこの曲順通りでなく、単体としても成り立つものになっているのでは?

涼平:そこに関しても、曲作りの時からイメージしていました。去年の年末に行ったツアー(MEGAMASSO TOUR「'SALVATION' #2〜空虚の百合が咲く怪物〜」)では映像とかも含めて完全に構築されたライブをやって、その後に逆にそういうことを全くやらずに曲だけを聴かせるツアー(MEGAMASSO 2015 Spring Oneman Tour「MISS WAVES meets VIPER」)をやったんです。その2つをやった時に自分たちの中で、メガマソとしてのちょうど良いポイントが見えてきて。だから次のツアーでは曲だけでも楽しめるし、ストーリーも追えるっていうバランスの一番良いところを突けるんじゃないかなと思っているんですよ。今回の曲はそういうことも考えて作ったので、それぞれでも成立するようになっていますね。

●だから初回生産限定盤で2枚に分けたものとしても聴けるし、通常盤で1枚のフルアルバムとして聴いても成立するものになっている。

涼平:そうですね。バラエティに富んでいて、1曲ずつでも完結しているから。1曲ごとに伝えたいメッセージもあったりするので、そういうものもちゃんと伝わるんじゃないかなと思います。

インザーギ:自分たちの中でも、良い作品ができたなと思っていて。サラッと聞き流してしまうような曲が1つもない、すごく濃いアルバムになりましたね。

Interview:IMAI

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