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ラックライフ

うまくは言えなくても、その想いを歌に乗せて

PH_lucklife_main4月に2ndシングル『アイトユウ』をリリースし、なんばHatchでは2回目の開催となる自主企画イベント、ラックライフ presents “GOOD LUCK vol.33”を大成功させたラックライフ。人との出会いを大切にし、人との繋がりを歌に乗せ、ライブハウスで想いを爆発させてきた彼らが、ニューシングル『変わらない空』を完成させた。9月には東名阪でのワンマンツアーも決定しており、創作とライブを貪欲に重ねていく彼らの成長は計り知れない。今月号では、最近歌うことが更に楽しくなったというVo./G.PONに、今作のきっかけとなったその想いを訊いた。

 

「恥ずかしいしダサいけど、言うことで相手に気持ちが伝わるなら絶対に言った方がいいなって」

●4/26になんばHatchで開催した“GOOD LUCK vol.33”はどうでしたか?

PON:めっちゃ楽しかったです。めっちゃ長丁場でしたけど、結局全バンド観てしまって。

●あ、全部観ましたか。

PON:はい。しかもほぼ全曲、客席で。

●え? 客席で? ヘトヘトになったでしょ?

PON:ヘトヘトでしたけど、でも元気になりますよね。すごく印象に残っているのがザ・マスミサイルなんですけど。

●お。先輩ですね。

PON:昔から大好きなバンドで、ライブもよく観ているし、でも歳が離れすぎているし、怖いじゃないですか。

●恐れ多いというか、憧れというか。

PON:はい。僕はそういう先輩と全然しゃべれなくて、ザ・マスミサイルともほとんどしゃべったことがなくて、対バンも3〜4回しかしたことがなくて。でもステージでラックライフのことを語ってくれたりして。客席のめっちゃ前の方で観ていたんですけど、“なんかこれ夢みたいやな〜”って思いながらボロ泣きしてしまって。

●おお。

PON:めっちゃかっこよかったし、ステージがどんなに大きかろうが小さかろうがザ・マスミサイルはザ・マスミサイルだなと。感動してしまいまして。

●心のあるライブをしてくれたんですね。

PON:そうなんですよ。嬉しかったです。そういうこともあって、めっちゃいい1日になりました。

●ということは、また来年もなんばHatchでやるんですね。

PON:やります。このイベントが自分たちの拠り所になっているし、これがあるからこそ“次はなにをしよう”みたいなモチベーションにもなるし、誘いたいバンドもたくさんいるし。お客さんにとっても毎年の楽しみになればいいなと思います。みんなでワクワクしながらやっていけたらいいなと。

●いいですね。ラックライフにとって大事なイベントを経て、8/5にシングル『変わらない空』がリリースとなりますが、この表題曲M-1「変わらない空」は、僕は先に歌詞を読んだんです。

PON:はい。

●「変わらない空」の歌詞は…こういう言い方をするのは悪いと思いますけど…女々しいというか。

PON:アハハハハ(笑)。そうっすね(笑)。

●少し女々しい視点からスタートして、一歩踏み出すまでの心境を綴っている。歌詞だけを読んだとき、バラード調というか、ミドルな楽曲を想像したんです。

PON:ああ〜、そうかもしれないですね。

●でも実際のサウンドはすごく熱量が高くて、テンションも高い。そのギャップというかコントラストが印象的だったんです。

PON:この「変わらない空」はTVアニメ『純情ロマンチカ3』エンディング主題歌なんですけど、最初にタイアップの話がきて、曲を作るにあたってお題をもらったんです。

●ほう。どういうお題だったんですか?

PON:「テンポ速めの駆け抜けるようなラブソング」っていう。そういうお題をもらって曲を作るのは初めての経験だったんですけど、そんな速い感じのラブソングなんて書いたことないし。

●そうですね。だいたい今までのラックライフのラブソングといえば、ミドルな楽曲ばかりで。

PON:そうなんです。だから“ヤバい!”と。時間もなかったし、“どうしよう!”と思いながら作っていたんです。で、0から1にするのはめちゃくちゃ大変だったんですけど、最初の1ができてからはバーッと作ることができたんです。

●はい。

PON:さっきおっしゃっていたように、一歩踏み出すところのスピード感というか。モジモジしたところから一歩踏み出したときの勢いを表現したような曲になればいいなと思って。そこの“気持ちの瞬発力”みたいなものをイメージしながら作ったんです。

●そのイメージが出てくるまでが大変だった?

PON:はい。どういうメロディがいいのか、どういう内容がいいのかって色々と考えて。初めてのタイアップということで、気負っているところがめっちゃあったんですよ。言ってみたら、制作側から「こういうものをください」というオファーが来るって、めっちゃ仕事感があるじゃないですか。しかもチャンスじゃないですか。

●はい。

PON:“これはええ曲を書かないとあかんわ”と。“ヤバいわ”と。しかも3週間しかなかったんです。それで“うわ! ヤバい!”ってめっちゃ考えながら作ったんです。去年の年末から今年の年明けにかけてのことなんですけど。

●2ndシングル『アイトユウ』(2015年4月)の制作時期と被ってますね。

PON:はい。もう死にそうになりながら曲作りをしていて。“この音からこの音に変わるのがかっこいい”みたいな考え方をしていた時期もあるんですけど、全然いい曲が思い浮かばなくて。

●ちょっと職業作家みたいな感じになっていたんですね。

PON:そうそう。でも「はい、こんなのおもんないー!」って。で、曲作りがうまくいかなくてTwitterで「うわーーーー!!」みたいなツイートをしたんですよ。そしたら「大丈夫か?」「どうしたん?」みたいな温かいリプライがいっぱい来たんです。

●はい。

PON:それがめちゃ嬉しくて。“こんなにたくさんの人が俺のこと気にかけてくれてるんや”って。そのときに思ったんですけど、その人たちは音楽で繋がった人たちばかりなんですよね。その人たちとずっとこの関係を続けていくためには、自分が曲を作り続けていかなければいけないなと。曲を作らなかったら切れちゃう縁やなと。それで気持ちが楽になって、いい曲云々じゃなくて、自分が気持ちいいものを作りたいなと思ったら「変わらない空」ができたんです。で、そのときの気持ちを歌にしたのがM-2「メイキング」なんです。

●「メイキング」の“やみくもにただメロディを 探すお仕事 したい訳じゃないと”という歌詞は、そういうことなんですね。

PON:そのまんまです(笑)。

●ということは、今のPONくんの人との繋がりを改めて自覚したからこそ、今回の2曲が生まれた。

PON:それがなかったら、めっちゃしょうもない曲になっていたのかもしれないです。

●ラックライフの楽曲は全部、PONくんの人生の気付きだったり、日々生きていく上で感じたことが元になっているじゃないですか。ということは、「変わらない空」もタイアップありきでお題があったとはいえ、自分の想い出とか経験が題材になっているわけですか?

PON:そうですね。「ラブソングを」と言われたときに考えたんです。“ラブソングって何やろう?”って。「ラックライフはラブソングが多いよね」と言われることが結構あるんですけど、僕的には全然ないと思っていて。

●ああ〜。“君”とか“あなた”みたいな、歌う対象がハッキリしているからラブソングっぽく聴こえるのかな。

PON:そういうことやと思うんですけど、ラブソングと取れなくもないというか。というか、恋人だけに向けた歌がラブソングじゃなくて、友達とか親とか仲間に対する曲も、ちゃんとラブソングというか“愛”なんじゃないかと思って。そう思ったら、ラックライフはラブソングだらけなんですよね。

●そういう意味ではそうですね。“愛”を歌っている。

PON:“愛”を歌い続けているバンドだなと。そう思ったら「ラブソングを」というオファーも楽になったんです。“じゃあいつも通りやろう”と。でも自分の身のまわりの人たちに「ありがとう」とか「好きだよ」ってなかなか言えないじゃないですか。

●恥ずかしいですよね。

PON:でも言わなあかんなと。言葉にしなくちゃ伝わらないことはたくさんあるし、言ってもらわないとわからへんこともたくさんある。他人やし、自分じゃないから、言わなわからへんことだらけやなと。

●なるほど。男性って、照れくさくてプライドが高いからなかなかそういう心境になれないと思うんですけど。

PON:ラブソングというお題をもらって、そういうアンテナがビンビンで毎日生きていたんです。“愛とはなんぞや?”みたいなことをいつも考えてて、生きていく中でいろんなことを拾い上げてみるようにしたんです。そうしたときに、“自分の気持ちは自分やからわかってるけど、相手はわかってないんやろうな”っていうことをすごく考えて。だから言葉にしてちゃんと伝えるラブソングにしようと思ったんです。

●そこの葛藤も含めて曲にしていると。

PON:はい。例えばですけど、「ありがとう」と言うことはめちゃくちゃ大事ですけど、でも関係が続けば続くほど言わなくなっていくじゃないですか。

●そうですね。

PON:僕はもともと“自分もそう思っているから相手も当然そう思っているだろうし、だから言わなくてもいいや”という考え方で。メンバーとかにも「ありがとう」とかは絶対に言わないし。

●でも「ありがとう」と思っている。

PON:だって10年も一緒にバンドをやっているんですよ? 「ありがとう」以外のなにものでもない。自分が作った歌を、10年間信じて一緒にバンドをやってくれてるって、そんなに「ありがとう」なことはないなって。

●うんうん。

PON:でも10年も一緒にやってると不安にもなるんですよね。“この人たち、俺の歌ほんまにいいと思ってるんかな?”って。リアクションもないし(笑)。そういう風に自分が思うということは、やっぱりみんなも不安になってるんじゃないかなって。

●なるほど。

PON:10年一緒に居たとしても、気持ちが全然わからへんこととかたくさんあるし、だから“やっぱり言わなわからへんのやな”って。恥ずかしいしダサいけど、言うことで相手に気持ちが伝わるなら絶対に言った方がいいなって。

●いい話ですね。ということは、これからはメンバーには「ありがとう」を言うと。

PON:言わないです(笑)。

●さっき言っていたように、「メイキング」は今作に至る心の動きを綴った楽曲なんですね。

PON:はい。この曲は僕の根っこの話なんですよね。“なんで音楽をやっているか?”とか“なんのためにバンドをやっているか?”みたいな。でも歌詞は後から乗せたんですけど、こういうことを気張って歌うものでもないかなと思ったんです。内容的に、ラフに歌いたいなと。自分の話だし。

●だからグルーヴィーでアッパーなサウンドになっていると。こういう少しブラックミュージックっぽいテイストは、この曲だけじゃなくて今までもちょこちょこあったと思うんです。メンバーの誰かのルーツなんですか?

PON:いや。ルーツとかは無いです。

●え?

PON:基本的にはノリなんです。僕が「こういうノリでいきたいからこういうリズム叩いて」みたいな話をするんですけど、アバウトに伝えてメンバーで「せーの!」で合わせるというか。メンバーそれぞれはいろんな音楽を聴いていると思うんですけど、でもルーツを意識して曲を作るようなことはないというか、僕自身に特別なルーツはないというか。

●なるほど。今回は2曲ともライブ映えする楽曲だと思うんですけど、「変わらない空」を聴いたとき、PONくんのヴォーカリストとしての幅がひろがったような気がしたんです。情緒というか奥行きがあるというか。

PON:それは嬉しいですね(笑)。最近になって、めっちゃ歌がおもしろいと思うようになったんです。前から歌うのはおもしろいと思ってましたけど、更に輪をかけて“こんなにおもしろいんや!”と思うことがあって。

●そう思うことがあった?

PON:抜くことを覚えたというか。それだけなんですけど、それだけでこんなにおもしろくなるんやなって。

●ほう。抜くだけで?

PON:きっかけは何やったかな? …スタジオでふと真面目にやろうと思ったらすごく気持ちよく歌えて。それで“なんで気持ちよく歌えたんやろう?”と、自分の歌の分析をしたんです。ライブやったら出にくい音とかもスタジオだったら出ることとか。そういうことは昔からやっていたんですけど、ふと抜き方に気づいたんです。それを試してやってみたらすごくおもしろくて、“まだまだ表現の幅が広がるやん!”と。だからライブもめっちゃおもしろいんです。

●いいことですね。

PON:抜くことによって逆に映える部分も出てくるし、相対的にパワーが出るようになるし。めっちゃいいんですよね。ひとつ大人になりました。

●ということは、今作のリリースツアーも楽しみですね。

PON:楽しみです。今回のツアーはタイアップの話もあるので、初めての人も来てくれると思うんです。だからラックライフというバンドをよくわかってもらえるような、熱もあって、ゆるくもあるワンマンにしたいですね。昔の曲もやりたいし、「変わらない空」の先の曲…未発表の新曲とかもできたらいいなと思ってます。

Interview:Takeshi.Yamanaka

 

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