小さな頃から音楽に対する想いを募らせてきたYU-NAを中心に、バンドへの憧れをずっと抱いてきたAKARI、類まれなる技術とそのキャラクターで周りを支えるKEITA、まるで息をするように歌う天性のヴォーカリスト・ERIが集い、2014年2月から活動を本格的にスタートさせたガールズヴォーカルロックバンド・Chu's day.。そんな彼女たちの記念すべき1stアルバム『Have a nice Chu's day.』は、ロックを基調としながらも多彩な表現と豊かな感情が存分に詰め込まれており、無限の可能性を感じさせる。3度目となるワンマンライブも決定し、ますます勢いを増す4人に注目だ。
「真ん中に歌っているERIが居て、横を見たらAKARIが居て、後ろを見たらKEITAが居て、前を見たらすごく楽しそうに盛り上がっているお客さんが居て。その景色を見るのがいちばん楽しいです」
●2014年2月に本格始動したとのことですが、どういう経緯で集まった4人なんですか?
YU-NA:もともとこの4人は、あるレコード会社のオーディションで集まった育成メンバーなんです。その育成期間は3ヶ月で、楽器を教わったりライブをしたりする企画だったんですけど、私は子供の頃からずっとバンドがやりたかったので、そこで“いいな”と思った人に声をかけたのがきっかけです。
●他の方もバンドがやりたかったんですか?
ERI:いや、私はバンドというよりは、子供の頃からヴォーカルスクールに通って歌やダンスを習っていて。
AKARI:私は高校のときに軽音楽部でちょっと噛ったくらいでした。だからバンドはChu's day.が初めてなんですけど、バンドをやりたいと思っていたので、YU-NAに誘われたのがすごく嬉しくて。
KEITA:僕は少しだけバンドの経験がありました。
●ふむふむ。
YU-NA:育成期間の3ヶ月が終わって、“やっぱりバンドがやりたいな”と思って、1人1人のライブを観に行ったんです。でもERIは、誘っても誘っても1年間くらいずっと断られ続けたんですけど。
●え? 1年間も?
ERI:バンドが怖かったんです。育成期間にバンドをやってみたんですけど、それまでずっと私はバンドじゃなくてオケを流しながらでしか歌ったことがなくて、バンドサウンドに慣れていなかったんです。だから自分の声が全然聴こえなくて歌えないし、ステージでもどう動いたらいいのかわかんないし。
●ほう、なるほど。
ERI:すごく怖くて、“私には向いてないのかもしれない”と思って。でもYU-NAはずーっと誘ってくれていて。毎日のように熱心に誘ってくれて、1年くらい経った頃に「そこまで言ってくれるなら」ってOKしたんです。
●KEITAくんとAKARIさんは?
YU-NA:ERIをいちばん最初に誘ったんですけどOKしてくれなくて、その次にAKARIを誘ったら「やりたい」と即答してくれたんです。で、KEITAは育成期間にも全然話したことがなくて、私が一方的に知っているという状態だったんです。“すごく上手だな”と思っていて、バンドを組もうと思ったときにKEITAのライブを何本か観に行って、やっぱり上手いなと思って。それにKEITAはキャラ的に、女の子の中に居ても全然違和感がないし(笑)。それで声をかけたんです。
KEITA:でも最初はやっぱり女の子のバンドっていうことで断ったんですよ。でもYU-NAの熱意に負けたというか。
●YU-NAさんは熱意の人なんですね。さっきYU-NAさんが言ってましたけど、ERIさんのどこに惹かれたんですか?
YU-NA:歌声ですね。初めて会ったのはオーディションの最終選考で、その場には20人くらい居たんですけど、私はERIのことしか覚えていなくて。とにかく印象がすごく強くて、しかも歌声にビビッ! ときたんですよ。“この子とバンドやる!”って。
AKARI:私もそのときに居たんですけど、歌を聴いたわけじゃないのにERIの印象がすごくて。私もERIのことしか覚えていなくて。
●同じやん(笑)。
YU-NA:でもそうだったよね。
AKARI:うん。光ってた。
YU-NA:でもERIは全然OKしてくれなくて、“SCANDALコピーバンド/ボーカリストコンテスト vol.4”というのがあったので、「じゃあとりあえずこれに出るためにやってみない?」って誘ったんです。
●実際にバンドでライブをやってみたら楽しかった?
ERI:はい。最初の頃は怖さがありましたけど、1人でライブをやっているときとは全然違う楽しさがあったというか。ステージに立っていて、自分の横や後ろにメンバーが居て、みんなで一緒にライブをやるというのが楽しかったんです。
●ライブを重ねていくにしたがって、怖さもなくなっていった?
ERI:そうですね。最初の頃は全然怖くて、1曲目からアタフタすることも多かったんですよ。でもみんなでリハをしたり、ライブを重ねていく中で少しずつ変わってきた感じですね。
KEITA:このメンバーでライブをやったら、最初はあまり興味がなさそうなお客さんでも、最後にはみんなが一緒にライブを楽しんでくれているように変わるんです。音楽の力を実感するというか。それによって自分たちもどんどん変わってきた感じがありますね。
YU-NA:ライブをするようになってから1年半くらい経つんですけど、最初は私もERIもライブ経験が無くて、どうやったらいいのかわからなかったんです。やり方もわからないし、どうやって盛り上げたらいいかもわからない。でもこの4人で1本1本ライブをやってきて、最近やっとお客さんとの会話っていうか、コミュニケーションの取り方がわかってきたというか。真ん中に歌っているERIが居て、横を見たらAKARIが居て、後ろを見たらKEITAが居て、前を見たらすごく楽しそうに盛り上がっているお客さんが居て。その景色を見るのがいちばん楽しいですね。
●自分たちなりのライブのやり方を見つけてきたんですね。
ERI:そうですね。今でもずっとそうなんですけど、ライブが終わった後は反省会をやるんです。
YU-NA:ライブの日の夜は寝ないで反省会です。
AKARI:夜通しね。
●気合い入ってますね。
YU-NA:ライブの映像をみんなで観ながら、1回1回止めて「ここはこうだ」「あれはこうした方がいい」って朝になるまで話すんです。気に入らなかったときは夜中でもライブ後にスタジオに入ったりもしたし。
●ライブで初めてお客さんと一体感が生まれたときのことは覚えてます?
ERI:2014年10月に会場限定で出した自主制作CDに収録したM-5「ねぇ」という曲があるんですけど、この曲で初めて振り付けをしたんです。曲中にお客さんと一緒に踊れるように。そしたらお客さんも楽しそうに一緒にやってくれて、それを見て私たちもすごく嬉しくなって。会場がちょっと温かくなったというか、一体感が出てきて…あれ? 質問なんだったっけ?
●え?
YU-NA:いつもこんな感じなんです(笑)。
●がんばれ!
ERI:お客さんとちゃんと向き合った…なんて言えばいいのかな…一体感を感じられるライブをしたいなと思うようになった…あれ? なってない! うわー!
●ハハハ(笑)。
YU-NA:お客さんとの距離が縮まったんだよね。MCでもそうなんですけど、ERIは話がまとまらなくなるんです。
ERI:ちゃんと練習してきたのに。
●え? インタビューの練習したんですか?
ERI:はい。夜通し。言いたいことがいっぱい出てきて、整理できないから紙に書いて練習してきたんです。
●それでこれか…(苦笑)。
YU-NA:ERIは「MCがずっと苦手だ」と言ってて、ライブの前日は寝ずに何時間もかけてMCで言うことを紙に書いてるんです。書いては「違う!」書いては「違う!」って、何十枚も書き直してるんですよ。夜中にもクラクラしながらやってるから私たちが「もう寝た方がいいよ」と言っても「私はこれをやらないと絶対に寝れないから」って。でも次の日のライブ、紙に書いた通りに言ったことは一度もないんです。ライブ前も楽屋でずーっと書いてるんですけど。
●ハハハハ(笑)。すごいな(笑)。
ERI:悲しいな〜(苦笑)。
YU-NA:でも私たちはこのままのERIが大好きで、お客さんもこのERIが大好きなんですよね。
●話を戻すと、「ねぇ」が今のライブのきっかけになったと。
AKARI:はい。お客さんの巻き込み方がわかって、「お客さんにノッてもらうためにはこうした方がいい」とか「ああした方がいい」ってみんなで話し合って。
ERI:お客さんが居て、私たちが居て、その空間を作ることができるのが楽しいんです。そうやっていくうちに声を出し方も変わってきて、怖さもなくなったんです。
●そういった経緯を経て、今回1stアルバム『Have a nice Chu's day.』がリリースとなりますが、基本的にはロックチューンでありながら、かなりバラエティに富んだ楽曲ですよね。ライブで表現するのが難しい曲もあると思うんですが。
AKARI:だからすごく練習します。曲を身体に叩き込まないと、ライブも楽しめないというか。
YU-NA:私とAKARIとERIの3人は、合宿で共同生活をしているんですよ。だから毎日個人でも練習しているし、私とAKARIの2人で練習もして、その上で4人でリハーサルするんです。
●要するに毎日練習していると。ERIさんはどうなんですか?
ERI:私も毎日…というか、頭の中では24時間ずっと音楽が鳴っているんです。
●え?
YU-NA:ずっと歌ってるんです。
AKARI:歩きながら歌ってます。だんだん声が大きくなるから「ERI、ちょっと声を抑えて」とか言って。このインタビューに来るときも歩きながら歌ってました。
●マジか。歌うのが大好きなんですね。
ERI:大好きです。生きるように歌います。人の曲もそうだし、自分たちの曲も歌います。
YU-NA:私たちはYouTubeで「◯◯の△△を演奏してみた!」というカヴァー動画をいくつかアップしているんですけど、ERIは邦楽も洋楽もすごく上手に歌うんです。
ERI:子供の頃から歌うことが大好きなんです。夜中にお風呂入りながら歌ってて怒られたりすることも多かったし、1人で歩いてるときも歌います。
●天然のヴォーカリストなんだな。
ERI:歌うと自分の世界に入れるんですよ。
●今作はライブ映えするような勢いのある曲が多い中で、M-8「雨」は雰囲気が大切というか、表現が難しいと想像するんですが。
YU-NA:めちゃくちゃ難しいです。この曲だけじゃなくて、どの曲もすごく難しくて。私たちの楽曲はプロデューサーのオダクラユウさんと一緒に作っていってるんですが、私は昔からオダクラさんの曲が大好きで。大好きだからこそ、どんなに難しくても乗り越えられるっていうか。「雨」はアコースティックな楽曲じゃないですか。こないだやったアコースティックライブで初めて披露したんですけど、ERIはどんな曲も自分色に染めるんですよね。
●確かに、ERIさんは曲によって歌い方がガラッと変わりますよね。
YU-NA:すごく表現力があって。まったくタイプの違う曲でも、全部ERI色になる。だから私たちはERIの歌を聴きながら、その歌を活かすためのアプローチを考えるんです。
●なるほど。ところでERIさんは帰国子女なんですか? ずっと話を聞いてて思ったんですけど、しゃべるイントネーションが独特ですよね。
ERI:いや、違います。ジャパンです。
●ジャパンて…。
ERI:私、クリスティーナ・アギレラが主演した映画『バーレスク』が大好きで、英語が全然わからないなりに全部真似したんです。音楽の道に進みたいと思ったきっかけでもあるんですけど、動きも歌い方も、息遣いも全部真似して。
●あ、そういうことか。それが今の発音や表現方法に繋がっていると。
ERI:はい。知らないうちに身に付いたのかもしれないですね。
●24時間歌ってることとか、英語的な歌い方もそうですけど、ERIさんはしゃべりが苦手だけど、自分の考えていることや感情を歌で表現しているのかもしれないですね。ジェスチャーも多いし。
3人:うんうん。
AKARI:歌がいちばんだよね。
ERI:うん。全部歌だったらいいなって思うけど〜。
YU-NA:それいつも言ってるよね(笑)。
ERI:歌は自分の気持ちも全部表現できるんですよ。
●話すのは言葉を並べて全部キチンと説明しないといけないけど、歌だとメロディや抑揚で表現できるんですね。
ERI:そうなんですよ〜、難しいですよね、日本語〜。っていうか、言葉。
一同:アハハハ(笑)。
interview:Takeshi.Yamanaka