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NOVELS

「死んだ方が楽だった」苦難を経て提示する、新たな扉を開くための本

AP_NOVELS前作『PROTOCOL』からおよそ1年。メンバーの脱退を経て、Vo./G.竹内とG.楠本の2人編成で活動を再スタートさせたNOVELS。そんな彼らが、5/20にレンタル限定盤『RENTAL BOOK』、6/10にはアルバム『KICK BOOK』を立て続けにリリースした。アグレッシブなギターサウンドがうねる「バタフライエフェクト」やダブステップの要素を取り入れた「死神ダンス」でバンドの新境地を見せつつ、「東京メランコリック」では叙情的なギターロックで涙腺を刺激する。バラエティ豊かな楽曲が詰め込まれた最新作は、バンドの限りないポテンシャルを感じる作品に仕上がった。リリースツアーでは東名阪に加え、2度目の韓国公演を予定している彼ら。装いも新たに、NOVELSの物語の第3章が幕を開ける。

●去年の2月に『PROTOCOL』をリリースして、およそ1年。2人編成という新体制で活動が再スタートしましたが、振り返ってみてどんな1年でしたか?

竹内:この1年は濃すぎましたね。何をやったか覚えていないくらいです。
楠本:今までは「4人でバンドをやる」っていう認識しかなかったので、どう活動していくのかが本当に分からなかったんですよ。だから、2人で模索しながら活動していて。

●模索するところから始まった。

竹内:バンドが空中分解しないために必死でしたね。ユニットとしてではなく、あくまでバンドの形態でライブができるように続けるっていうことに1年間をかけました。今、サポートメンバーを入れて4人でやっているんですが、リズム隊が変わるとグルーヴも変わっちゃんです。だから、もう一度NOVELSのサウンドに引き戻して、そこから新しくするっていう作業をやっていましたね。

●NOVELSという軸は変えずに新しいことをしようと。

竹内:まず、今までやっていたことを形にして、そこから新しいものにしていくっていう。基本的に楠本と2人でいろいろ決めていくんですけど、サポートメンバーにもアレンジから参加してもらっているんです。だから今は、バンドというより、スタッフの方も含めて「チームでやっている」という感覚です。

●2人が核になって、1つのチームとして動くようになった。

竹内:昔と違って、みんなで意見を出し合うようになりました。どういうコンセプトでアルバムを作っていくかを会議して、「じゃあこういう曲が必要だね」って僕が曲を書いたりしています。

●では、今作はコンセプトがあった上で作ったんですね。

楠本:『RENTAL BOOK』と『KICK BOOK』をセットで考えていて、『RENTAL BOOK』には「NOVELSは止まらずに活動しているぜ!」っていうメッセージを、『KICK BOOK』には「新体制になった新しいNOVELSを感じてほしい」という想いを込めたんです。
竹内:まず第1部が『RENTAL BOOK』と『KICK BOOK』なんですが、次の作品、その次の作品くらいまでは構想としてあります。今、それに向かって進んでいますね。

●最新作『KICK BOOK』というタイトルには何か意味があるんですか?

竹内:タイトルの「KICK」という言葉は“キック”と“聴く”のダブルミーニングなんです。「キックして破壊する」という意味と、「聴く(KICK)本」という意味で、今までのNOVELSのイメージを壊して、新しいものを提示するっていう。ここから続く連作の一歩目として、最初の扉を開くための本、それが『KICK BOOK』なんです。

●このジャケットの写真はかなりインパクトがありますよね。『PROTOCOL』のテイストとも違うし、見た印象で“死”がテーマにあるのかと感じたんですが。

竹内:ポップなイメージと死を連想させるようなイメージを掛け合わせたら、このヴィジュアルができたんです。『KICK BOOK』に収録する曲が集まって、最後にM-8「死神ダンス」ができた時に「あ、もうこれで行こう」と。

●これはすごく深読みしたくなっちゃう写真だと思うんです。バンドの編成が変わって、体制を新たに再出発をしたわけじゃないですか。そういう部分で“一度死ぬ”っていう感覚があったのかなとか。

竹内:そうですね。ある意味死にました(笑)。

●え?

竹内:むしろ死んだ方が楽だったかな。

●そこまでですか?

竹内:(メンバーが脱退してから)NOVELSを続けるか、1人になるか、もう辞めるかを悩んでいたんです。ピリピリしているっていうよりは、2人とも「これからどうするの?」っていう空気でしたね。あの頃は、本当にダメだったな。
楠本:あの空気はヤバかった(笑)。そこで、今後どうしていくかを話し合ったんですよ。
竹内:その時に楠本が「2人でもNOVELSの形態を崩さずにやっていこう」って言ってくれて、1〜2年先のことじゃなくて、お互いの人生のこととか「この先どうなっていたいか?」っていうことを話しました。

●そうしてNOVELSを続けることを選択した。決め手は何だったんですか?

竹内:「良い意味でバカになる」ことだったんですよね。バカな発想で予想を裏切っていくというか。そういうことがドラマや夢を生むと思うんです。
楠本:2人になったから「今までやりたかったけど、できなかったことをやろう」って。海外でライブをやったりとか、音源にバンドサウンド以外の音を入れてみたりして、実験的にいろいろやっています。

●その新しい試みは『KICK BOOK』にも詰め込まれていますね。

竹内:そうですね。『KICK BOOK』でNOVELSの印象はだいぶ変わったと思います。NOVELSの中でもバカな2人が残っちゃったので(笑)。
楠本:俺はそっち寄りだったんだ? 薄々は感じていたけど…。

●ハハハ(笑)。

楠本:アレンジに関しても、どちらかというとブッ飛んだ2人だったので。
竹内:誰も止めなくなったね(笑)。

●じゃあ今、自分たちがやりたいことができていると。

竹内:NOVELSはギターロックっていうイメージが強かったと思うんですよ。でも、僕たちはあくまでポップスをやっているっていう風に捉えていて。ポップスは間口が広いじゃないですか。その中だったらルールはいらないんじゃないかって思うんです。だから、NOVELSの音楽の幅は広がっていると思います。

●そんな今作を引っさげたリリースツアーがこれから始まりますね。どんなツアーにしたいですか?

竹内:この『KICK BOOK』を「生の状態で届けに行く」っていう…。まあとにかく、楽しい夏にしたいです(笑)。

●はい(笑)。

楠本:1年以上ぶりの作品で、そのリリースツアー…。みんなで、楽しい夏にしたいね(笑)。

●結局そこか!(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

Interview:馬渡司

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