今年2月に1stシングル『GLITTER DAYS』でメジャーデビューを果たした、Fo'xTails。表題曲がTVアニメ『黒子のバスケ』第3期エンディング主題歌に抜擢されたことで大きな注目を集める中でも浮かれることなく、4月からのレコ発ツアーではバンドとしての力を貪欲に高めてきた。そんな彼らの2ndシングル『Innocent Graffiti』が、7/22にリリースされる。TVアニメ『純情ロマンチカ3』オープニング主題歌となっているタイトル曲は、アニメの世界観に寄り添いつつピュアな恋心を描いたドラマチックなラブソング。持ち味のアグレッシヴなライブパフォーマンスを想像させる「RUSH」と、ダークかつヘヴィなサウンドが印象的な「ALIVE」というカップリング2曲と合わせて聴くと、その振れ幅の広さが明白に伝わるだろう。いくつもの壁にぶつかりながらも前進を止めず、常に次なる進化を求める5人の未来はまだまだ果てが見えない。
●前作の1stシングル『GLITTER DAYS』でメジャーデビューを果たしたわけですが、反響は感じられましたか?
takao:『GLITTER DAYS』を出してからはTwitterやSNSでコメントをもらったり、「ライブには行けないけど応援しています」という手紙をもらったりもして、すごく勇気をもらいましたね。リリースをキッカケに、すごくたくさんの人に知ってもらえたんだなというのは実感しています。
●リリース後にはツアーにも出たわけですが。
takao:色んなことがありましたね。やっぱり楽しいこともあれば、ちょっと悔しい想いをすることもあって。色んな出会いもあって、刺激をすごく受けたツアーでした。
テラ:今回のツアーでは、初めて対バンするようなバンドも多くて。自分たちにはない一体感を出しているようなライブを見て、“自分たちもこういう空気感が出せたらな…”と感じたりもしましたね。自分たちに足りないものをより実感したというか。
●課題も見えたわけですね。
takao:“もっとこういうことができたらな”というものが見えましたね。各地の対バンを見ていると、色んなタイプのボーカリストがいて。“こういう見せ方もあるんだな”という発見もあったりして、気付けた部分もたくさんあったんです。そういう意味でも、すごく成長できたツアーだなと思いました。
坂本:ウチのメンバーは貪欲なんですよね。もっと上に行きたいという気持ちが強くて。“僕たちはいつ満足できるんだろう?”というくらい、常にハングリーなんだなと改めて感じたツアーでした。ライブが終わって1人でも満足していないメンバーがいたら、みんなでその理由を突き詰めたりするんですよ。そういうのがすごく良いなと思います。
●ずっと一緒にいたことで、バンドの結束力も高まったのでは?
坂本:自分たちでは気付かなかったんですけど、ツアーから帰ってきた後のライブを観た人に言われましたね。ライブ感やステージングも変わったし、よくメンバーを見るようになったというか。鳴風と僕がステージ上で目を合わせることが増えました。
峻洋:今はライブ中に目で会話したりもしています。takaoもこっちを振り返っている時に笑顔で見合ったり、みんなで楽しもうという感じが増してきて。ツアーだと連泊することが多い中で、一緒にいても嫌気が差さないメンバーだなというのはかなり良い発見だったんじゃないかな。
鳴風:単純に一緒にいて楽しいっていう。メンバーの良いところも悪いところもよく見えたツアーだと思います。
●メンバー間の理解も深まったと。
坂本:もっとメンバーに寄り添って、何を欲しているのかを考えるようになりましたね。悩みも増えましたけど、それが良い意味での深い悩みになっていて。
鳴風:より深いところを目指すようになった気がします。
●そんなツアーもあった中で今回のM-1「Innocent Graffiti」は、いつ頃に制作していたんでしょうか?
takao:ツアーが始まる少し前くらいには曲の形ができあがっていて、今年3月の時点ではこの曲で行くと決まっていたかな。制作の時期的には、ツアーとも重なっていたと思います。カップリングの曲はツアー中に作りましたね。
●「Innocent Graffiti」はTVアニメ『純情ロマンチカ3』オープニング主題歌なわけですが、どんなイメージで曲を書いたんでしょうか?
テラ:最初にアニメの資料やシナリオを頂いたり、過去の映像も見させて頂いてから作りました。
●何か方向性の指定があったわけではない?
テラ:“明るくてキャッチーなもの”というくらいのテーマは頂いていました。自分は元々そういう曲調を作るのが好きだったので、過去の映像を見たらイメージがポンと湧いてきたところがあって。わりとサクッとできた感じではありますね。
takao:『GLITTER DAYS』の時はすごく時間がかかったんですけど、今回はわりと早く曲が決まったなという印象があって。今回はテラが作品を見てから曲を作ったというのもあって、俺らも聴いた時に“この曲が選ばれそうだな”と感じていたんですよ。そしたら案の定、この曲が選ばれたという。そこからすぐに歌詞を書き始めましたね。
●歌詞もすぐに書けた?
takao:いや、歌詞に時間が一番かかりました。すぐに書き始めたんですけど、何回も何回も書き直して。自分の中で満足いかない部分もあったし、壁に1回ぶち当たって。でもそこですごく考えたことで、歌詞の面でもちょっと成長できたなと思っています。
●歌詞の内容的には、takaoくんの中学生時代の恋愛経験を元にしている?
takao:やっぱり自分自身が感じることを書きたいから。結果的に、俺が中学生くらいの時に思ったことを書きましたね。学生って、真っ直ぐじゃないですか。その時もすごく純粋な自分がいたんですよね。片思いしている相手がいて、その子と付き合えた時の気持ちをこの曲では歌っているんです。
●それはMVのイメージに近い感じでしょうか?
takao:元々、MVをそういうイメージで作りたいと思っていたんですよ。そしたらMVの監督さんが提案してくれたものが、まさに自分が考えていたイメージのものでビックリして。撮影場所も学校ということで、メチャクチャ嬉しかったですね。
●自分のイメージ通りだった。
takao:打ち合わせでイメージを聞いた瞬間に、「最高です!」となって。「こういうのがやりたかったんです!」と言ったら、監督さんもすごく喜んでくれましたね。
●「Innocent Graffiti」というタイトルのイメージはどういうところから?
takao:歌詞で俺がすごく悩んでいる時に、鳴風が「じゃあ、俺も書く」と言ってくれて。それで書いてもらった歌詞を試しに歌ってみた時に、その中に“Graffiti”という言葉があったんです。その言葉がすごく良いなと思ったので、“Innocent”を加えて「Innocent Graffiti」にしました。タイトルが決まってから、歌詞もイチからまた書き直したんですよ。
●鳴風くんの手助けが大きかった。
takao:鳴風が(メンバーの中で)一番、歌詞に関してアドバイスをくれますね。
鳴風:基本的にtakaoは歌詞をすぐに書けるほうなんですけど、今回は本当につまづいていて。takaoらしくない言葉もいっぱい書いていたので、“これはまずい方向に向かっているんじゃないか”と思ったんです。“こういう言葉遣いのほうがtakaoには合っているよ”という感じで歌詞を書いて渡して、色々とディスカッションしながら詰めていきましたね。
●作品に寄り添わせようと思うあまり、自分らしくない言葉になってしまっていたというか。
takao:そうですね。自分には合っていない言葉遣いのテクニックを選んでしまっていたところがあって。でも最終的には自分らしい言葉で書けたと思います。
●歌詞だけじゃなく、曲も作品のイメージに寄り添うものになっている?
テラ:作品を見た時に、登場人物が好きな人に寄せる気持ちやお互いの気持ちがすれ違う様だったり、素直になれない主人公の気持ちとかは自分の恋愛経験の中でも同じようなことがあったなと感じて。そういう葛藤する気持ちも、曲の中に入れたかったんですよ。だから明るいだけじゃなく、ちょっと違う部分も見せられるような構成にできたかなと思っています。
●『GLITTER DAYS』の時に比べて、この曲は同期やバンド以外の音も多く入っている感じがします。
takao:増えていますね。鍵盤やストリングも入っていたりして。
坂本:インディーズ時代によく使っていた同期はエレクトロやダンスビート的な音が多かったんですけど、今回はストリングスが多いですね。
テラ:今回の曲はピアノの音色やストリングスがすごくマッチしそうだなと思って。アニメを見た時の印象から、インスピレーションがあったんです。
●カップリングの2曲に関してはヘヴィだったりダークだったりしますが、そこは全体のバランスを考えて選んだんでしょうか?
鳴風:1曲目がすごく爽やかだから、そこと差を付けたいという気持ちはありました。
テラ:2枚目のシングルということで、もっと自分たちの色んな面を見せていきたいという気持ちはメンバー全員に共通していて。
峻洋:カップリングの候補曲をいくつか作ってきた中で「1枚のシングルにまとめるなら、これとこれが良いんじゃないか」という感じで、バランスを取りには行きましたね。あと、その時に自分たちが好きな感じというのもあって。
坂本:M-2「RUSH」みたいな曲調が、その時ちょうど僕らの間で流行っていたんです。それもあって、候補の中から“今これを出したいよね”という感じで選びました。
●作っていた当時、メンバー間で流行っていた感じというのは?
takao:すごくガツガツしている感じの音というか。今回は攻めまくった曲が欲しいなと思っていた時にちょうど鳴風が「RUSH」を作ってくれたので、これをやりたいと思って。こっちは俺が歌詞として書きたかったことをすぐに書けた曲なんですよ。だから、すごく入れたかったんです。
●攻めている曲をやりたかったのは自分たちの心境も関係している?
takao:生き方としてもどんどん攻めて行きたいという気持ちはメンバー全員、一緒だと思うんです。色んな壁に今ぶちあたっているけれど、そこを乗り越えるためには攻めて攻めて攻めまくるしかないだろうということで「RUSH」という曲名になって。今、俺たちが一番やりたかったものを形にしたのが「RUSH」ですね。
●「RUSH」の歌詞は攻撃的でありつつ、自分自身に向かって言っているような感じもします。
takao:俺は歌詞に関して、わりと自分自身に言い聞かせるようなものを書くクセがあって。“俺ができているからお前らもこうしろ”と言うんじゃなくて、“俺もやるから一緒にやろう”という姿勢なんですよ。「RUSH」は、まさにそういう姿勢の曲ですね。
●“RUSHらしく決めろ渾身のコンボ”とシャウトしている部分もすごくアグレッシヴですよね。
takao:そこは元々、鳴風が作っていたんですよ。歌っているのも鳴風です。
鳴風:ギターだけじゃなくて、言葉でも吐き出さないと前に進めない感じがしたので…。
●そんなに吐き出したい気持ちが自分の中に溜まっていたんだ(笑)。
鳴風:両極端なんですよ。良い時と悪い時が両方ありますね。
●精神的な浮き沈みがあるんですね。
takao:わけもなくイライラしていたかと思えば、その後で急にヘヘッて笑ったりもしています(笑)。
鳴風:不安定なんです(笑)。
●もしかしたら、そういうところが曲の振り幅につながっているのかも…?
takao:そこは音楽にも出ているなと思います。鳴風は感情が沸き上がってきたら曲がすぐできるというのが良さだと思っていて。感情の浮き沈みが多いほど、曲もどんどん増えていくから良いなと(笑)。
●感情の浮き沈みがあったほうが曲も生まれる。
takao:やっぱり悔しい想いをしたほうが前に進めるものだから。今は色んな感情が形になって出てきているなと思います。
●M-3「ALIVE」はどんなイメージで作ったんですか?
takao:「ALIVE」に関しては、最初にイントロを聴いた瞬間から引き込まれて。雰囲気ですごく持って行かれたというか、“歌いたい”と思ったんです。歌詞では今まで出したことがなかった、俺の中のダークな部分を書いてみました。
峻洋:今までにないタイプの曲だなと思いますね。
●takaoくんのダークな内面を描いているわけですね。ラストも“それでも僕らは生きる 自分を殺して”となっていて…。
takao:これはFo'xTailsを組む前の自分がすごく思っていたことで。本当にどうして良いのかわからない時期があって、それを吐き出す場所もなかった。そういう時に“自分を殺して生きていくしかないんだな”と思っていたんです。いつの時代もそうだと思うんですけど、我慢している人はいると思うから。その時の俺がちょうどそういう感じだったので、ネガティブな歌詞になりましたね。
●当時のリアルな心境を歌詞に表現していると。
takao:誰でもこういうことを思うんじゃないかなって。俺は高校を卒業してから長い期間、暗い時期があったんですよ。希望を持ちつつやってはいたんですけど、それとは反対の自分もいるから。そういう面は誰しもが持っているんじゃないかなと思って、今回は書いてみました。
●楽曲的にもダークなイメージで作った?
鳴風:その時はちょうどネガティブモードに入っていたから…。悲観的なモードの時期だったので、そういう感じが出たのかもしれない。「ALIVE」を書いたのは自分に負けそうな時期で、「RUSH」はそれに勝とうとあがいているような曲です。
takao:確かに「ALIVE」のほうが先にできましたね。
●鳴風くんの心境変化が2曲で見て取れる(笑)。この2曲はそこまで同期が多くないですよね?
takao:今回の曲に関しては鳴風の感情がすごく出ている曲なので、ギターを活かしたほうが良いということになって。テラもそこをわかっていて、プログラミングの音を極力減らしたりしているんじゃないかな。だから1曲目より同期の音が少ないんだと思います。
テラ:でも“この曲はこういうものだから”みたいな決め付けをあまりしたくなくて。たとえば曲を作ってきた鳴風が思い付かないようなアレンジを試して、それがハマる可能性もあるわけで。自分から「こういうアレンジはどうかな?」と提案することはありますね。最初から“同期の音を少なくしよう”という感じで進めるんじゃなくて、色々と吟味して試しつつ最終的にこういう形に収まったという感じです。
●前作の経験を経て、レコーディングや制作のスキルも上がっているのでは?
takao:前回と比べて、時間的にもスムーズにいきましたね。あと、レコーディングに対する意識が変わってきたなと、自分では思っていて。前は少し気を遣っていた部分もあったんですけど、今回は自分から「こういう音を入れたい」という提案もしていったんですよ。たとえば「RUSH」では全員で歌うことで曲に感情をもっと込めたいなと思って、実際にやってみたんです。
●自分のアイデアを積極的に提案するようになった。
takao:俺も元々やりたいことがあるので、そういうのをどんどん出していこうと思って。そういったところでの意識が、前とは全然違いますね。
峻洋:『GLITTER DAYS』の時に比べて、録る時に気持ちを乗せるというのは前よりも意識したかな。まだ自分に足りていないところがいっぱいあるなと思っていて。その中でも、現状で自分のできる最大のところまで持って行く努力はしましたね。
●課題を見据えつつ、どんどん進化しようとしている。
takao:今回のレコーディングで、自分たちのダメなところもちゃんとわかったから。自分たちに何が足りないのかがよくわかった期間でしたね。Fo'xTailsを始めてから一番、刺激があった期間なんじゃないかな。
●これからやりたいことも出てきているのでは?
takao:これから先、こういうのもやっていきたいなというものはあります。自分たちの良さをもっと引き出すというか。Fo'xTailsは“こういう曲調が強い”というわけじゃなくて、幅の広さが武器だと思っているんです。それこそ今回の3曲はそれぞれ色の違う良さが出ているというところでは、すごく満足のできるものになっていて。
●まだまだ見せていない部分もたくさんあるわけですよね。
takao:ありますね。Fo'xTailsの良さである個々の強さとか技術だったり、そういう部分も次作以降で出せたらなと思っています。リリースの予定にかかわらず、今は“こういう曲をやりたいな”というものをどんどん作っているところなんですよ。
●鳴風くんも精神的に浮き沈みしながら、どんどん曲を作っていくと(笑)。
鳴風:そうですね。最近はまた違う感情もあったので、色んな曲を書きながら生きています。
●ちなみに今はどんな精神状況なんですか?
鳴風:今は底辺にちょっと慣れたっていう感じです。
●あっ、まだ底辺なんだ…。
一同:ハハハハハ(笑)。
●それはさておき(笑)、8/14には自主企画も予定されていますが。
峻洋:メジャーデビューしてから初めての自主企画になるので、今までやってきたことやこれから自分たちがやっていきたいものを詰め込めたら良いなと思います。
テラ:今回は“キツネ祭り”というイベント名なんですけど、8月という季節もあって“祭り”という名前をつけていて。タイトルどおりのお祭り騒ぎをみんなで一緒にやりたいなと。今まで僕らのライブを観たことがないという人たちにも、ぜひ遊びに来て欲しいですね。
坂本:夏なのでイベントが目白押しなんですけど、他のイベントに負けないくらいハッピーな空間を作りたいと思います!
Interview:IMAI