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lynch.

初のホールツアーで得た新たな感覚はその先の果てしなき未来を予感させる

2015/5/8@渋谷公会堂
HALL TOUR '15「THE DECADE OF GREED」

PH_main今年3月に結成10周年を記念したベストアルバム『10th ANNIVERSARY 2004-2014 THE BEST』をリリースして以降、まずはライブハウスをまわるTOUR'15「GAZE ME GATHER ME」を敢行してきたlynch.。その後に約1ヶ月を空けて開催されたのが、彼らにとって初めての試みとなる今回のHALL TOUR '15「THE DECADE OF GREED」だ。これまでライブハウスをヘッドバンギングやモッシュ等で狂乱状態にしてきた5人がホールという舞台でどのようなライブを展開するのか、観る側としても想像がつかない部分はあった。最終公演となる渋谷公会堂に集まった大観衆も少なからず、そんな想いがあったのではないだろうか。

場内が暗転し、lynch.の大きなロゴマークが入った幕が落とされると、ステージ上にはメンバー5人の姿が。「EXODUS」からライブが始まると、会場のボルテージは一気に高まっていく。2曲目の「GREED」からは、バックのスクリーンに映像が流される。目の前で躍動するメンバーの姿をリアルタイムで大きく映し出し、時にはエフェクトも加えられた映像は生の演奏と融合し、かつてない興奮をもたらす。レーザーや照明による演出も含めて、ホールならではの設備と環境がlynch.のライブに今まで以上の強度を与えるアンプリファイアーとなったことは間違いないだろう。

「DEVIL」「-273.15℃」「NEW PSYCHO PARALYZE」など激しくヘヴィなナンバーが、序盤から次々と放たれていく。そんな中でホールという舞台が浮かび上がらせた、lynch.というバンドのもう1つの側面…。美しいメロディと歌を軸にした楽曲をかつてないボリュームで披露した、中盤からの流れがそれだ。「an illusion」「THIS COMA」など最近のライブではお馴染みの楽曲から、「矛盾と空」や「ラティンメリア」など初期の楽曲に至るまで、じっくりと奏でられる名曲たちに浸るオーディエンス。苛烈で重厚なサウンドとグルーヴで身体を揺さぶるだけではなく、心の奥底へと浸透するメロディと“歌心”もこのバンドの魅力なのだと再認識した。

「そろそろ暴れちゃいましょうか?」というVo.葉月の呼びかけから「the universe」で、観客の中でいったん落ち着いていた衝動に再び着火。「THE FATAL HOUR HAS COME」ではオーディエンスが席から立ち上がり、飛び跳ねる。「死にたいヤツはかかってこい!」という掛け声からの「ALL THIS I'LL GIVE YOU」や、代表曲「ADORE」でのフロアの大合唱も経て、「CULTIC MY EXECUTION」で本編の幕を閉じた。アンコールではまず葉月が1人でステージに登場して、堀田建志によるピアノのみをバックに「ANEMONE」をしっとりと情緒的に歌い上げたのもホールならではだろう。

この日だけの演出を数々と味わったオーディエンス同様に、彼ら自身の充実度も相当だったようだ。ホールでのライブについて、「超楽しい!」と満面の笑みで語った葉月。銀テープ舞う中の「LIGHTNING」で一度目のアンコールを締めくくった後、会場に流された「ADORE」に合わせてライブ本編同様にノッていた観客たちも同じ気持ちだっただろう。8月からの3ヶ月連続リリースも発表し、渋谷公会堂をさらなる歓喜で包み込んだlynch.。ダブルアンコールの「GALLOWS」まで全28曲にわたるホールライブで初めての景色を我々に見せてくれた5人の進む先には、まだ誰も知らない景色が広がっている。

TEXT:IMAI / PHOTO:江隈麗志

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