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Kidori Kidori

確信を持って生み出された革新的名作が彼らの真骨頂を見せつける

main2月にリリースした前作EP『El Urbano』ではカバー3曲を除く新曲3曲がいずれも日本語詞ということで、これまでの彼らを知る者に驚きをもたらしたKidori Kidori。エッジィな英詞のロックというイメージが強かったところに起きた変化は、まだまだその序章に過ぎなかった。フルアルバムとしては実に3年ぶりとなる今作『![雨だれ]』は、何と全曲が日本語詞によるものだ。さらにサウンド面でも鋭くハードなギタープレイはいったん鳴りを潜め、シティポップやラテンの要素も昇華したものへと変貌を遂げている。だが過去に発表されてライブでも好評を博している「ホームパーティ」や「テキーラと熱帯夜」といった楽曲を知るリスナーであれば、何の心配もなく今作も受け入れられることだろう。リード曲「なんだかもう」に代表されるようなどこかユーモア漂う印象的な歌詞とメロディに、自然と身体が揺れるサウンドは今作でも遺憾なく発揮。独自のスパイスの分量と中毒性を増した楽曲たちは、まさしくKidori Kidoriというバンドの真骨頂を見せつけるものとなっている。問題作とも言える新たな名作を作り上げた首謀者・マッシュ(Vo./G.)に迫る、巻頭ロングインタビュー!

マッシュ・SPECIAL INTERVIEW #1

「“これで良いのか?”ではなく、“これで良いのだ!”のスタンスで行こうと。しっかり確信を持ってやっていれば、それが一番良いんじゃないかなという気がしたんですよ」

●今回は全曲日本語詞なわけですが、すごく肩の力が抜けたように感じられて。今振り返ると、こういう自然体な感じの曲ができるキッカケになったのはM-2「テキーラと熱帯夜」(ミニアルバム『El Blanco 2』にも収録/2014年)からじゃないかなと思うんです。

マッシュ:昔から日本語詞では脈絡のないことを書いたりしていて、強いメッセージ性を出してはいなかったんです。初めての日本語詞の曲(※「5/10」)が1stアルバム『El Primero』(2011年)に入っているんですけど、それも日記のような内容をつらつらと歌うもので。その次に出したのが「◯◯病院」(ミニアルバム『El Blanco』収録/2013年)で、“病院に行ったら、色んな人がいたよ”というだけの曲なんですよね(笑)。

●まさに日記的な(笑)。「5/10」も日常を歌っていたんですね。

マッシュ:あれも日常です。大学の授業をあてもなくサボって…というところから始まるんですけど、本当に5/10にあったことをその日の内に書いた曲で。そういう意味では、昔から肩の力を抜いているところはあったんですよね。でも確かに英語の曲の場合、たとえば「NUKE?」(2ndアルバム『La Primera』収録/2012年)や「Watch Out!!!」(『El Blanco』収録)なんかは、ちょっと見えないというか。

●見えないというのは?

マッシュ:「(この曲は)何を言っているんだろう?」というのをすごく考えた先に出てくるのは“思想”であって、それって見えるものじゃないなと。でも日本語の場合、見えるもののほうがすごく多い気がする。本当に身のまわりのことを歌っているので、自然な感じがするのかなと思います。

●「5/10」や「◯◯病院」の歌詞は、今よりも言葉がトガッていた気もするんですが。

マッシュ:そこは若さも多少あったと思うんですよ。まだ20歳そこそこだったし、特に「NUKE?」を作っていた時期は精神的にトゲトゲしていたところもあって。不平等であることに対して、すごく不満があったというか。でも今は「不平等さもあった上で、頑張らなきゃいけないんじゃない?」という思想に少しずつ変わってきたんです。「不満を訴えかけるだけではいけないな」というところに今は落ち着いているんですけど、当時はそういうところでガチガチになってしまっていたんだと思いますね。

●初期の日本語曲は、まだ言葉が固い感じもして。

マッシュ:ずっと英語でやっていたから、単にまだ作り慣れていないところもあったんだと思います(笑)。自分の音楽キャリアで初めて作った日本語の曲が「5/10」だったんですよ。ライブでもお客さんから「日本語の曲も作って下さいよ」とよく言われていたので作ってみようとした曲で、本当に処女作という感じですね。それゆえの固さもあるんだろうなと。

●今は本当にオリジナリティのある日本語詞になったというか。

マッシュ:英語で作っていた時は、自分の中で「韻を踏む」というルールみたいなものがあって。でも日本語になると、そういう部分が一気に弱まってしまうなと。単に自分が好きだというのもあって、韻をどうにかして使いたいなというところがあったんです。ラップみたいに語尾で韻を踏むとダジャレ的になってしまうから、文の頭で韻を踏むという技法を使っていけば、我々らしいものになるんじゃないかなという感じで書いてみました。

●前作のEP『El Urbano』では日本語詞のものが3曲入っていたりと、ホップ・ステップ・(今回が)ジャンプという感じで来られているのかなと。

マッシュ:まさにそのとおりですね。「テキーラと熱帯夜」をキッカケにして、日本語で作るとどういうものになるかというイメージを掴んで。「テキーラと熱帯夜」があって、M-1「ホームパーティ」(『El Urbano』にも収録)があって…というホップ・ステップ・ジャンプの“ジャンプ”がまさに今回の作品なんです。

●ここまで英詞メインで来て、今回まさかの全日本語詞という。

マッシュ:「全部を日本語詞にするというのは冒険すぎるんじゃないか?」と人からも言われたけど、やっぱり自分で聴いて「良い」と思えたから。(日本語詞の曲を)ライブでやってもリアクションがすごくあったので、「絶対にイケる」という気がしたというか。

●自分の中では確信があった。

マッシュ:完全にありましたね。世の中にどう思われるかというのはまだわからないけれど、自分の中では「日本語でイケるな」という確信めいたものがあったから、そのままの流れで今作に至るという感じです。

●今回のリード曲はM-6「なんだかもう」ですが、この曲にも確信めいたものがあったんでしょうか?

マッシュ:今回は“都会”と“田舎”のちょうど真ん中にいるという状況を歌っているようなアルバムで。今現在の自分の位置から見るとまだ郷愁を感じるというのは、どっちつかずにいるからだなと。「なんだかもう」は都会側の目線で作っていたので、都会感をどうにか出したいなと思ったんです。最初にこの曲のプロトタイプみたいなものを作った時はどこか面白みに欠けるなと感じていたんですけど、そこで4つ打ちだけど3拍子というアイデアが浮かんだんですよ。

●「なんだかもう」は、4つ打ちで3拍子の曲なんですよね。

マッシュ:「3拍子じゃ踊れない」と言われる日本人、でもそんな日本人でもノリノリになれる4つ打ち。その(相反する2つの)矛盾を1つの曲で形にできたら、すごく面白いんじゃないかと思って。「実際に踊れるのかな?」という実験でもあるから、これがリード曲になるのは必然だったのかなと思います。

●自分たちの中でも新たな挑戦をしていることを象徴するような曲だから、リード曲にもふさわしい。

マッシュ:そうです。単に日本語詞で4つ打ちの「売れ線を狙っている」ような曲を作ったところで、それで売れるかどうかなんてわからないじゃないですか。(そんなことをしたら)根無し草になっちゃうし、僕らはちゃんと音楽をやりたいから。そう考えたら、「これで良いのだ!」と思って。「これで良いのか?」ではなく、「これで良いのだ!」のスタンスで行こうと。しっかり確信を持ってやっていれば、それが一番良いんじゃないかなという気がしたんですよ。

●「なんだかもう」ができたことで、そういう自信を持てるようになったのでは?

マッシュ:(今までは自分の曲が)心のどこかで「難しいのかな?」と思っていたところがあったんですよ。ずっと他人から「難しい」とか「音楽偏差値が高い」とか言われ続けてきたのもあって。でも日本語で、3拍子だけど4つ打ちでもあって、色々と芸を凝らしているし…この曲って実はすごいんじゃないかなと思えたので自信にはなりました。

●作ったのは最近なんですか?

マッシュ:「なんだかもう」は今作の収録曲の中ではちょうど真ん中くらいの時期にできた曲ですね。一番古いのは「テキーラと熱帯夜」で、その次にM-4「コラソン」と「ホームパーティ」が同時にできて、M-3「あなぼこ」を作った後に「なんだかもう」という感じでしたね。

●前半の曲から先にできていると。昔からストックとしてあった曲はない?

マッシュ:書き貯めるということができないんですよ。そこに美学を持っているわけでもなくて、単純にやる気が起きないんですよね(笑)。

●ただのダメな人じゃないですか(笑)。

マッシュ:試験前にならないと勉強しないというのがクセになっているのかもしれないけど、逆にそのほうが集中力がとんでもなく高まるんです。それでガッと作るというやり方をずっとやってきたから。今回のM-7「住めば都」からM-10「アフターパーティ」までは、そういう感じで作りましたね。あと、M-5「Tristeza」は昔からこういう遊びをよくやっていたので、すぐにできました。

●「Tristeza」はインターリュード的な感じなのかなと。

マッシュ:そういうものを作ろうというのは頭にあって。でも作ったのは一番最後なんですよ。1日あればできると思っていたから。

●この曲が間に入っていることで、良い流れになっているのでは?

マッシュ:ここでシーンが切り替わる感じですよね。この作品の中での時系列も考えながら作っているんです。晴れているところに雨が降り始めて、最後はまた晴れに戻るという流れになっていて。「コラソン」以降はしばらく降り続いた雨がM-9「傘を閉じれば」で止んで、最後の「アフターパーティ」につながるという作りになっています。

●リリースタイミングも6月ですが、今作は音の質感的に梅雨っぽい感じがしました。

マッシュ:確かに、音の質感はどれもジメッとしていますね(笑)。

●ただ、過去の作品はもう少しダークな雰囲気が強かったのに比べると、どこか明るくなった気もしていて。

マッシュ:確かにそうですね。不満や感情の高ぶりを曲にするというのが、一番やりやすい作り方で。これまではずっとイライラした状態の中で曲を作ってきたので、ああいう空気感になっていたんです。それに対して今回は本当に“素(す)”というか、歌詞も曲も自然体で作ったのでイライラとかはなくて。だから、ダークさや取っ付きにくさみたいなものがなくなったんじゃないかな。まだ自分では今作を客観的には見られていないんですけど、とにかく楽しく作れたなという感じがするんですよ。

●素の自分に近いものを出しているから、楽しく作れたんでしょうね。

マッシュ:そうですね。「これをやらなきゃいけない」というものはなかったから。本当にありのままの自分を出したんです。エンジニアの方にも「日本語で全部やると聴いた時は驚いたけど、できたものを聴いてみると、こっちが(本当の)マッシュくんなんだね」と言われました(笑)。

●本当の自分の姿が映し出されている。

マッシュ:「今までは感情をブーストして曲を作っていたんだね」と言われて、そこで自分も「あ〜なるほど!」と思ったんです。本当に“素”であるがゆえに、一番Kidori Kidoriらしい作品なんだろうなって思います。

マッシュ・SPECIAL INTERVIEW #2

「本当にアレンジ1つ、歌詞1つについても確信を持って作れたというか。必然性のあるものになっているように、自分では感じていて。そういう意味で、隙のないものになったかなと思います」

●前作『El Urbano』のインタビュー時にも実は既に次のテーマが“サウダージ”になるという話もありましたが、それを具現化したのが今作なんでしょうか?

マッシュ:前作は“伏線”みたいなもので、その実体となるものがまさに今作なんですよ。(前作は)都会を眺めながらもなぜあんなに悲しげなジャケットになっていたかというと、やはり故郷を懐かしむ心があるからで。それが今作のテーマになるということは、『El Urbano』を作っている時から考えていました。

●“サウダージ”は歌詞のテーマとして一貫している?

マッシュ:どこかしらにチラつくようなものにはなっているというか。“サウダージ”が中心にあって、その周りをぐるぐる回っているような感じにはなっているんじゃないかと思います。

●“サウダージ”はボサノヴァでよく使われる言葉で、“郷愁”に近い意味なんですよね。今回はボサノヴァや南米音楽の匂いを今まで以上に感じます。

マッシュ:“コラソン”という言葉も、ボサノヴァでは“サウダージ”と同じくらいよく使われる言葉なんですよ。(スペイン語で)“心”という意味で、「私の心は〜」とか「あなたの心は〜」という感じでよく出てくるんです。さっき話した「ぐるぐる回っている」というのは何かといえば、心がぐるぐる回っているんだろうなと。そういうところで「コラソン」という曲があって。

●「住めば都」のイントロもラテンやサンバっぽいノリがあるなと思ったんですが。

マッシュ:この曲の冒頭の“迷路みたいな住宅街”という歌詞にどうにかつなげようと思った時に、ジャングルが浮かんで。道に迷っちゃうと言えば、ジャングルだと相場が決まっているじゃないですか(笑)。それでああいうビートから始めることにしました。ただ、あくまでもこれは東京の歌で「東京には怖い奴らがいっぱいいる」というところも上手い具合に表現したいなということで一瞬、昔のKidori Kidoriに戻る瞬間もあったりして…何か面白い曲ですよね(笑)。

●おとぼけ感が出ているというか(笑)。今回は今まで以上に、おとぼけ感も出ている気がします。

マッシュ:とぼけた人間なので、素であるがゆえにそうなっているんだと思います。とぼけてやろうとかは特に思っていなかったんですよ。真面目に作って「どうだ! 良い曲だろう!?」という感じで全てを終えて確認した時に、自分でも「とぼけてんな〜」と思って(笑)。

●とはいえ、「あなぼこ」や「コラソン」は深みのある歌詞にもなっているなと。

マッシュ:そういう含みも持たせつつですね。「とぼけてばっかりじゃないのよ!」っていう(笑)。「コラソン」は一番悲しい響きがあるかなと。悲しくて、どこか温かいという、東京のフォークシンガーの生活感みたいなものがあるなと思います。「あなぼこ」は一見、中身がないようで実はあると思っていて。この歌詞は良いなと自分でも思っているんですよ。

●英詞の頃に比べて、歌詞もシンプルで短くなった気がします。

マッシュ:日本語になると、どうしても音数が減るというのはあって。それでも日本人には察する文化があるので、ちゃんとわかってもらえる。意図や「これはどういうことなんだろう?」というのも伝わるようにはしているから、あえて説明する必要もないんじゃないかなと。これまで英詞の曲に関しては韻の関係上、日本語に訳した時にちょっと変な言い回しになっていたりもしたんですよね。

●今回は言い回しも含めて、伝わりやすいものになっている。

マッシュ:たとえばアルバムタイトル曲のM-8「!」では、ニューオリンズ・ファンクの「Iko Iko」という曲で有名な(原曲の)「Jock-A-Mo」のビートを使っているんですよ。でも「Jock-A-Mo」のビートと言っても、「誰がわかるんだ?」という話で。そういうものじゃなくて、今回は曲なんだと。マニアックな部分もいっぱい入れたけど、聴いて欲しいのは曲やメロディ、歌詞であるというのが頭にあって。だから(歌詞で)余計なことをベラベラ話す必要もないなと思ったし、ちゃんと意図がわかるようなものにはできたかなと思います。

●マニアックな要素も入りつつ、音楽に詳しくない人にも聴きやすい作品になっていると思います。

マッシュ:何でもおおっぴろげにすれば良いというものじゃないなとわかったんですよね。今までは聴いて欲しいところがいっぱいありすぎたから。メロディも聴いて欲しいし、マニアックな部分も聴いて欲しい。…言ってしまえば、お子様だったところもあるんだなと。もちろん全部聴いて欲しいんですけど、今回は聴いてもらいたい部分が明確にあるから、そこをちゃんと聴いてもらえるようにしたいと考えていました。

●何を伝えたいかというのが明確にある。

マッシュ:アルバムを通して1つのことを伝えていると言ってしまっても、過言ではなくて。大きなコンセプトを10曲に分けるという感じで作りました。

●だからシンプルなんだけど、どれも濃いものになっているんでしょうね。

マッシュ:手を抜きたくなかったし、1曲1曲に対して100%の力で向かっていきましたね。元々がパンク上がりなので、今までにやっていた曲もテンポの速いものばかりで。そのクセが残っているのか、長ったらしい曲は作りたくないなと。「コラソン」はゆっくりめの曲なんですけど、これでも4分くらいなんですよ。

●最初から最後まで1枚を通してスッと聴ける感覚があるのは、そういうところにも理由がある。あとは流れがきちんとあるのも大きいかなと。

マッシュ:(アルバム全体で)時系列を作ろうと思っていたから。「“郷愁”の先はどうなるんだろう?」と考えた時に、それを表現するためのものとして“天気”が浮かんで。晴れっぽい雰囲気からだんだん雨になっていって、9曲目の「傘を閉じれば」でまた晴れるんですよ。その後で「アフターパーティ」をやるっていう。流れがつながって、ちゃんと最後も落とせたことでハッピーエンドになりましたね。

●「ホームパーティ」を1曲目にするというのは決めていたんですか?

マッシュ:『El Urbano』を作った時から、これがアルバムの1曲目だなとは思っていました。

●この曲と同じく既発曲の「テキーラと熱帯夜」も最初から入れるつもりだった?

マッシュ:最初はどうしようかと悩んだんですけど、やっぱり入れようと決めました。良い曲だし、今作にもピッタリ合うから入れようと思って。

●3年ぶりのフルアルバムだからこそ、良い曲は全て入れたいというのもあったのかなと。

マッシュ:すごく久しぶりなんですよね。だからしょうもないものは作りたくなかったし、絶対に「良い」と思えるものを作りたかった。そういう意味でも「テキーラと熱帯夜」は良い曲だから、力を借りようということで収録するに至りました。

●もちろん力は入っているんでしょうけど、音を聴くと肩肘が全然張っていない感じがするのが良いなと思いました。

マッシュ:そうなんですよ(笑)。結局、「なるようになるさ」というか。今回、日本語詞でやるようになったキッカケでもある藤原(寛/サポートベース)さんが、いつも「なるようになるよ」と言っていたんです。それを自分の中でもどこか飲み込めた部分もあってか、そういう空気がすごく出たなという感じはしますね。

●先日(4/12)のライブで卒業されるまでの間に、藤原さんから受けた刺激もすごく大きかったのでは?

マッシュ:大きかったですね。バンド自体のモチベーションがすごく高まった気がしていて。正直、僕らは今まで「恵比寿LIQUIDROOMを満員にできたら万々歳じゃない?」くらいのイメージで、意識がちょっと低いところにあったんです。でもandymoriの武道館(ラストライブ/2014年10月15日)を観させて頂いた時に、本気で「すごいな!」と思ったんですよ。

●藤原さんが所属するandymoriのラストライブを見たことも大きかった。

マッシュ:「あれよりも先を目指さないとダメだな」というか。変に制限を作らずに、もっと色んな人に聴いてもらえるバンドになろうというふうに思って。そう思えたのは自分たちを手伝ってくれている人がベースを弾いているバンドだからだろうなと考えると、藤原さんの影響力は凄まじかったですね。

●一緒にやる中で学んだことも多い?

マッシュ:僕は元々andymoriが好きだし、そういう尊敬するミュージシャンが手伝ってくれるということで、ちゃんと学ぼうとしたんですよ。(サポートのため)時間は限られているわけで、その中で1つでも多くの技を盗めるようにしようと。藤原さんの言うことは抽象的な表現が多くて、その意味をちゃんと察するだけの頭と理解できる次元に行くことが僕らには必要になってくる。最初は「この人は詩人なのか?」と思うくらい何を言っているのか全然わからなかったんですけど(笑)、だんだんわかってきたんです。なぜそんな抽象的な言い方をする必要があるのかということもわかるようになってきたし、本当にすごく成長した1年だったなと思います。

●サポートで参加してもらった1年での、自分たちの成長を感じられている。

マッシュ:今回のアルバムはその1年の間で作ったものなので、久しぶりに聴いた人はビックリするくらいに成長できているんじゃないかな。本当にアレンジ1つ、歌詞1つについても確信を持って作れたというか。必然性のあるものになっているように、自分では感じていて。そういう意味で、隙のないものになったかなと思います。

●アルバムタイトルの『![雨だれ]』には、どんな意味を込めているんでしょうか?

マッシュ:“![雨だれ]”というのは印刷用語なんですよ。普通は“ビックリマーク”とかいうじゃないですか。リリース月も梅雨だから“雨だれ”でまず作品の空気感が伝わって、日本語のアルバムだということで“ビックリ”もあって、「日本語でもできるんだ」という“ひらめき”でもある…という感じですね。

●新たな挑戦もしつつ、今まで以上に聴きやすい作品になったと思います。初めての人でも入り込みやすいんじゃないかなと。

マッシュ:こっちからの変な“壁”はいらないなと。昔から壁を作っているつもりもなかったんですけど、今振り返ると「壁だったのかな?」とも思うから。今は本当におおっぴろげにしていこうという気持ちでいっぱいだし、それゆえに素を出せた。今までも素を出そうと思ってはいたけど、出そうとして出るものでもないなと思っていたんです。今回は「楽しくやれればいいや」と思って作ったから、良い空気が出せたのかなと思っています。

●そういう空気感はライブでもきっと感じられるんでしょうね。リリース後のワンマンツアーファイナルでは、代官山UNITを予定していますが。

マッシュ:今までで一番大きな会場でのワンマンではあるんですけど、これから先はもっと大きな会場でもやっていきたいんです。(今回が)そういうふうに考え始めた第一歩だなというのはすごく感じていて。ここから始まる話が絶対にあると思っているので、たくさんの人に遊びに来て欲しい。今のKidori Kidoriというものをすごく観て欲しいなと思っています。

Interview:IMAI

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