2/4には5thアルバム『HANDWINK』を、3/4には田中美里とのコラボシングル『アカリ』を相次いでリリースしたCHERRY NADE 169。6/24には更に2ndミニアルバムの再録盤『ADAGIO MIND STALKER+』をリリースすることを発表し、その勢いを加速させている。今作は、前回のインタビューで歌詞と向き合うきっかけを語った滝澤の転機となった1作。サウンドも打ち込み音源を取り入れたものからバンドサウンドのみで構成されたシンプルなものへとリアレンジされ、よりライブ感のある作品に仕上がっている。リリース後の6/26、27には渋谷O-Crestで2デイズ企画“祭のあとのつくりかた’15”を開催する彼ら。今回のインタビューで『ADAGIO MIND STALKER+』について、そして“祭のあとのつくりかた’15について訊いた。
「今まで考えていたことを極端に変えたんですよ。そうしたら、歌の感情の入り方が断然変わったんですよね」(滝澤大地)
●前作『HANDWINK』が発売されて、その後も田中美里さんとのコラボシングル『アカリ』のリリースがありましたよね。そして今回6/24に『ADAGIO MIND STALKER+』をリリース。タイミングとしてはかなり早いと思うんですが。
滝澤:そうですね。超急ピッチですね(笑)。
秋山:もともと「このタイミングで何かリリースをしようか?」っていう話はあったんですよ。ちょうど2011年にリリースした2ndミニアルバム『ADAGIO MIND STALKER』が売り切れていて、「欲しい!」と言ってくれる人も結構いたんです。なので急ピッチでしたけど、リリースすることにしました。
●前回のインタビューで「歌詞に力を持たせたい」と思ったきっかけの本を紹介してくれましたよね。『ADAGIO MIND STALKER』ではその影響は出ていますか?
滝澤:そうですね。1stミニアルバム『11回目の心呼吸』の時は「意味が分からない言葉が格好良い」くらいに思っていて。すごく抽象的な言葉を使って歌詞を書いていたんです。そこから3年の間でいろいろ思うことがあって、今まで考えていたことを極端に変えたんですよ。そうしたら、歌の感情の入り方が断然変わったんですよね。『ADAGIO MIND STALKER』はライブで初めて観てくれた人にも意味が通じるというか。言いたいことが聴いてくれた人にも伝わるようになったんです。
●では、今回はそんな転機になった作品の再録盤『ADAGIO MIND STALKER+』について1曲1曲聞いていこうと思います。よろしくお願いします!
【1・Monitor Mind Stalker】
滝澤:この曲は今作の中で一番自分の内側に目を向けています。
●この歌詞は、かなり批判的な内容ですね。
滝澤:当時思ったことを書き殴りましたね(笑)。これは最終的に自分に対して言っているんです。この歌詞を書く時に「嫌がる人もいるかな」と思ったんですけど、「それはそれだろう」と思って、自分のことを書こうと思ったんです。
●何かに気を使っていた部分というか、抑えていたものをあえて出したと。
滝澤:今も気にする部分はあるんですけど、作品に影響しない部分で考えているというか。それまでは言葉の使い方も歌詞のテーマすらも気を使って変えていたくらいだったんですよ。でも「Monitor Mind Stalker」を作った時に吹っ切れることができました。この曲ができたから今がありますね。自分にとって大きな一歩になった歌詞です。
●この歌詞の中で、重点に置いている部分はありますか?
滝澤:「答え」という部分では、一番最後の“四畳半 空っぽの心が無限の可能性を作る”っていう部分です。冒頭の“評論家ごっこ”をしているのは僕自身のことなんですよ。自分が空っぽだから相手との間に壁を作らないとって思ってしまっていたんです。
●最後の一節“四畳半 空っぽの心が無限の可能性を作る”にはポジティブな意味合いを込めているんですか?
滝澤:そうです。自分は空っぽだけど、「空っぽだからこそできることもあるよね」と歌っているんです。
【2・アンサーマーチ】
滝澤:『ADAGIO MIND STALKER』が自分にとって歌詞の書き方が変わったアルバムで、その書き方を変えようと思って作った初めての曲が「アンサーマーチ」なんですよ。
●詞について向き合って作った最初の1曲だと。
滝澤:昔、業界のとある人に「歌詞の意味が分からないから、曲が全然面白くない」ってケチョンケチョンに言われたことがあったんです。そこで「なんやねん!」って思った部分もあったんですけど、図星だからグサッと刺さる部分があったんですよね。その時に「ナニクソ!」の勢いで書いたんです。
●歌詞の雰囲気は「Monitor Mind Stalker」と似ている部分がある気がします。“他人の目を気にしている”っていう共通点もあったりして。
滝澤:「アンサーマーチ」は自分も見つめつつ、誰かの背中を押せる曲だと考えています。それで行進曲(マーチ)っていう名前も付けたんです。
●この曲は元々打ち込みが入ったエレクトロな感じがありましたけど、今回はシンプルなアレンジになりましたよね。やってみてどうでしたか?
秋山:やってみて違和感は全くなかったですね。その時は打ち込みを使うことでできていた部分が、今はバンドの音だけで出せるようになったんだなと感じます。
【3・かくれんぼ】
●この曲もリアレンジ前は打ち込みが入っていて、曲の作りも複雑な印象ですね。
秋山:「かくれんぼ」は、サビまで打ち込みで曲の雰囲気を作っていたので、いざリアレンジするとなるとすごく時間がかかりましたね。この曲が一番時間がかかったかもしれないです。
●この歌詞なんですが、もしかして「シナリオライター」(『HANDWINK』収録曲)の歌詞の“あのさよなら”というワードと繋がっているのかなと思ったんですが。この曲はきっと別れがテーマですよね?
滝澤:確かに「シナリオライター」とリンクする部分はありますね。実は、この曲は父親が死んだ時に書いたんです。
●なるほど…。そうだったんですね。
滝澤:あの時は「なんで? なんで?」っていう感情だけで書いていて。初めて身近な人がいなくなったこともそうだけど、その人がいなくなった時でも「世界は何も変わらないんだな」って思ったんです。当たり前のことなんですけど、当時は「なんでなんだろう?」ってすごく考えていて。それが分からなかったから、とりあえず歌詞を書こうと思って。
●それを形として残しておきたかった?
滝澤:そうですね。「残さなきゃ」という想いがありました。
【4・欲張りロボット】
●「欲張りロボット」は杉田さんの作詞作曲ですよね。これは何について歌ったんですか?
杉田:簡単に言うと、「人って欲張りだな」っていう曲です。“欲”は、あればやる気にも繋がるし、原動力にも繋がる大事なものなんですけど、それが大きすぎると周りが見えなくなるじゃないですか。そういうところを書いたんです。あとは言葉の語感をこだわって作りましたね。
●確かに後半の“未練タラタラ〜”からの一節は特にリズミカルですよね。
杉田:そうですね。歌詞のリズムを大事にしました。
【5・オルタネイト】
杉田:これは運命について書いたんですけど、自分が日々過ごしている日常も、これから来ることも、言ってしまえば運命っていう一言で表せるじゃないですか。そういうところに違和感があって、「それは本人が切り開いていくべきだ」と書いたんです。
●運命は切り開くものだと。
杉田:この歌詞を書いていた時に、幼稚園の昼寝の時間を思い出したんですよね。僕は昼寝が大っ嫌いだったんですよ。全然眠たくなかったし、むしろその1時間は遊びに行きたかったんです。そんな昼寝の時にふと「ここから立ち上がったらどうなるのか?」って思って立ち上がったんですよ。そこで、自分の運命みたいなものを感じたんですよね。
●習慣を自分で意識して変えことが記憶に残っていて、自分の中の当たり前のことを壊せたっていう感覚を思い出したと。
杉田:そうですね。そういう気持ちで書きました。
●今回再録するにあたって昔の歌詞を読み返してみて、何か思ったことはありましたか?
滝澤:改めてレコーディングした時に「歌詞も変えた方がいいんじゃないか?」って思ったりもしたんです。でも、その歌詞って当時の自分にしか書けないものじゃないですか。今の自分とは違うけど嘘ではないから。こういうことを経て、今の自分があるんだと思うので面白いですね。
「僕の次の夢はカードダスみたいにその辺で売られることです」(秋山貴英)
●『ADAGIO MIND STALKER+』のリリース後には渋谷O-Crestで“祭のあとのつくりかた’15”が開催されますね。秋山さんは過去に「アンコールの際、赤ふんどしでステージに上がったら会場から悲鳴が上がった」というエピソードを持っているそうですが。
秋山:赤ふんどしをやった頃は、まだ「脱ぐことしかできなかった」みたいなところがあって…。
●そうなんだ(笑)。
滝澤:もはや芸人さんみたいになってる…。
●秋山さんは人を笑わせることが好きなんですか?
秋山:普段人を笑わせることが好きかっていうと、そうでもないです(笑)。ライブで曲だけをやって成立するバンドもいますけど、僕はお客さんとの距離を縮めた方が僕らの歌がより相手の心に響くんじゃないかと思っているんですよね。
●なるほど。
滝澤:アッキーはMCのために一時期お笑いのDVDをずっと観ていましたからね。
秋山:昔、自分のMCが長すぎてライブが押しちゃうことがあったんですよ。それで「もっとMCを勉強しなきゃ!」と思って勉強の一環で漫才を録画して、一組一組ストップウォッチで時間を測って観ていた時期がありましたね。「この尺で、こういう流れで笑いを生んでいるんだな」っていう見方をしていたら全然笑えなくなっちゃって(笑)。
●そんな秋山さんに聞きますが、笑いが生まれる共通点ってあるんですか?
秋山:ボケてからツッコミまでの間というか。そこが一番大事な部分なのかなっていうのを…。
滝澤:…これ何の取材?
一同:ははは(笑)。
●今回は待望のアキヤマダス(カードダスのような秋山氏のブロマイド)復活ということですが、これはいつから始めていたんですか?
秋山:構想はずっと前からあって。小さい頃、カードダスや駄菓子屋さんのくじ引きカードが好きで、そういうことをやりたいと中高生の頃から思っていたんです。そこからバンドを始めて、グッズや物販を作っていく内に「カードダスみたいなことができたらいいな」と思って始めたのがきっかけですね。初めて実現した時に「あ、やっと夢がかなったんだな」って。僕の次の夢はカードダスみたいにその辺で売られることです。
●妖怪ウォッチみたいな立ち位置に行きたい?
秋山:そうです。ジバニャン、ガチャピン、アキヤマ、みたいな(笑)。
一同:ハハハハハ(爆笑)。
●分かりました(笑)。最後に、イベントに向けて一言いただければと思います。
滝澤:イベントが終わった後、みんながO-Crestの階段を降りて帰る時に「あ〜、楽しかった!」って笑顔が溢れるような。そういうものをライブ当日までに作っていきたいと思っていますので、みなさん是非遊びに来て下さい。
杉田:お祭りなので全員巻き込んで、楽しみを作り上げていきます。
秋山:お祭り実行委員の代表としては、2人が言っていた「楽しい!」っていうのはもちろん。「あ〜、楽しかったな!」と思って、会場を出た後すぐに「寂しい」と感じるような。それが生まれたらもう、本当に楽しんでいただけた証拠だと思うんです。対バンだったり、ライブじゃない部分でもいろいろ楽しみを作っておもてなしをしようと思っています。心ゆくまで楽しんでいただけたら良いなと思いますので、よろしくお願いします!
Interview:馬渡司