今まで別の道を歩んできた4人が集い、志を共にしてスタートさせたTHE WASTED。洋楽を起点としたポップなパンクサウンド、憂いを帯びつつもポジティブな生命力に溢れる歌、それぞれのバックボーンを感じさせる音、表現に奥行きと幅を持たせるプログラミング。2013年に活動をスタートさせた彼らが、待望となる1stアルバム『DEAR DORK』を完成させた。既に始まっているレコ発ツアーでは全国各地でキッズを熱狂させているであろう彼らは、唯一無二の音で自らの人生に新しい物語を刻んでいく。
「音楽以外のことがあまり考えられないんです。“このまま音楽で成功せずに年を取ったらどうなっちゃうんだろう?”みたいな。そこが自分の核に常にあるので、そういうことしか書けない」
●TE2YAさんとCASTLEさんはそれぞれ以前やっていたバンドを存じ上げているんですが、THE WASTEDはどういう経緯で結成したバンドなんですか?
TE2YA:前にやっていたバンドが2012年に解散して、まだバンドをやりたくてメンバーを集めていたんですけど、決まりかけてはダメになりっていうのが1年くらい続いて。2012年の終わりくらいにドラマーの先輩に「バンドやりたいからドラム叩いてくれませんか?」ってお願いしたら「忙しいから無理だけど、上手いやついるよ」ということでZACKを紹介してもらったんです。
●はい。
TE2YA:で、その次に初代のベースが入るんですけど、そいつは地元の後輩だったんです。昔からよく一緒にスケボーやっていて、ギターからベースに変わったと聞いたから誘ったら「やります!」って軽いノリで決まって。その段階で初ライブが決まっちゃったんですよ。曲もない状態で。
●曲もなかったのか(笑)。
TE2YA:で、「ギターどうする?」となったんですけど、ZACKを紹介してくれた先輩がCASTLEも紹介してくれたんです。
●CASTLEさんはそのとき、バンドが決まっていなかったんですか?
CASTLE:そうですね。俺は出身が豊橋で、前にやっていたバンドも名古屋を拠点に活動していたんですけど解散して、東京に出てきていたんです。サポートとかはやっていましたけど、メインでやるバンドはなくて。それで先輩から話をもらったんです。
●前のバンドが解散してから東京に出てきたんですか?
CASTLE:そうです。前のバンドが解散して、でももっとバンドがやりたかったんですよ。地元で「これからバンドをやろう」っていう人もあまりいなかったし。田舎ってみんなすぐ就職とかするじゃないですか。だからバンドをやるにしても趣味程度になっちゃうような感じがあったので、東京には知り合いもいるし、幅が拡がるかなと。
●で、そのあとにChemieさんが加入する。
TE2YA:最初のベースが抜けた後、しばらく別の人にサポートでやってもらっていたんです。俺が働いているバーにChemieは客として来ていたんですけど、彼女はインストバンドでベースを弾いていたんですよ。それでベースを弾いてるのを聴かせてもらったら「上手いな」と思って、サポートから入ってもらったんです。
Chemie:私はそれまでインストバンドをがんばっていたんですけど、ちょっとグラついてきたんです。ちょうどそんな頃にTHE WASTEDのサポートを始めて、その後インストバンドが解散して。正式メンバーになったのは今年の2月なんです。
●かなり最近なんですね。このバンドではどういう音楽をしようと思っていたんですか?
TE2YA:俺の中では、10代で憧れて“バンドやりたいな”と思った海外のポップパンクというか。“西海岸系”と呼ばれたような音楽を日本語でやりたいなと。
●日本語で歌うイメージが明確にあった?
TE2YA:そうですね。英語でやっているバンドは他にもたくさんいると思うんですけど、洋楽的なサウンドを日本語で表現するっていうのはなかなかいないと思うし、実際に難しいんですよね。そういう音楽をちゃんと表現できるバンドになりたいなと思ってTHE WASTEDを始めたんです。
●なるほど。
TE2YA:今作もほとんどがそうやって作ったんですけど、曲は基本的に俺が全パートを作ってからバンドで合わせるんです。でもCASTLEがメンバーになってから、ギターのパートだけは作らないようにしたんです。CASTLEは超絶なギタリストなので、それを出してもらえればいいかなと。ポップパンクを主体としつつ、いろんなテイストを出したくて。
●今回のアルバム『DEAR DORK』は、今まで書き貯めてきた曲を収録したんですか?
TE2YA:だいたいの曲は最初のライブのために書いたものなんですけど、さっき言ったように構成まで俺1人でほぼ作ってからバンドに持ってきた曲で。ただ、いちばん最近作ったM-5「曖昧 MIND」とかは違っていて、みんなでセッションしながら作ったんです。最初の頃は俺1人で作ることが多かったんですけど、今後はもっとそれぞれの個性を出した方がいいと思っているので。
●ということは、今後のTHE WASTEDの方向を暗示する曲が「曖昧 MIND」だと。
TE2YA:そうですね。「曖昧 MIND」とM-8「Never Let You Go」が比較的最近の曲で、みんなの個性が出ているかな。セッション的に作ったら個人的に納得出来ないポイントも出てくるんですよ。でも逆に他のメンバーは「そこがいい」と言うことも多くて。自分の感性じゃない部分…他のメンバーの感性も曲に入るので、おもしろいですよね。自分が正解かどうかなんてわからないし。
●うんうん。そういう意味では、これからはよりメンバーが個性を色濃く出して、バンドが成長していくんでしょうね。
CASTLE:俺は前のバンドを7〜8年やっていた経験もあるから、まだTHE WASTEDではグルーヴが固まっていないという感じがするんですよね。それは別に悪いことではなくて、ライブでも音源でももっともっと伸びしろがあるという意味で。そういう呼吸感みたいなものが、曲を作ったりライブをしていく中で、少しずつ合ってきている感覚があるんです。
Chemie:さっき言ったように、私は前にインストバンドをやっていたのでジャンルも全然違うし、他のメンバーとも年齢がすごく離れているんですよ。だから私が入る以前からすごいものが出来上がっていたから、そこに追いつくのに必死なんです。自分にとってはすごく勉強させてもらえる場ですね。
ZACK:確かにChemieは最初苦労したんです。でもChemieが入ることによって、バンドの雰囲気が丸くなったというか。女性ならではっていうか、空気が変わった気がしますね。
●アルバム『DEAR DORK』はバンド初音源となりますが、レコーディングはどうだったんですか?
TE2YA:そこまでの苦労はなかったんですけど、今回のレコーディングは一発録りだったんですよ。そこが結構不安だったんです。でも実際にやってみればそこまでの苦労はなかったかな。
ZACK:やっていくうちに要領がわかってきたよね。メンバー間もそうだし、エンジニアさんとのやり取りも含めて。
●サウンド的に言うと、さっきTE2YAさんがおっしゃっていたようにポップパンクを基調としながらも、少しだけ打ち込み系の音が入っていますよね。
TE2YA:生バンドってやっぱりかっこいいと思うんですが、打ち込みの拡がりが欲しかったというか、足りないものは足していこうと思っていて。そこは音源ならではの表現にこだわりたかったんです。
●なるほど。あと歌詞の部分ですが、音楽を続けることに関していたり、もっと言うと生きていく上で感じること。そういう視点がどの曲にも共通してありますよね。
TE2YA:確かに。今は音楽以外のことがあまり考えられないんです。“このまま音楽で成功せずに年を取ったらどうなっちゃうんだろう?”みたいな。恋愛のこととかを曲にする気が起きないというか。そこが自分の核に常にあるので、そういうことしか書けないですよね。バンド、人生…それだけ(笑)。
●前のバンドが解散したとき、焦りみたいな感情もあったから?
TE2YA:はい。バンド活動が1年くらいできなくて、正直に言うと焦りがあって。でもそのときにシーンを客観的に見ることができたんですよ。止まったことによって気づいたこともあったから、それはそれでよかったんですけど。
●TE2YAさんもCASTLEさんもそうですが、前のバンドが解散して、それでも音楽から離れることなく、またバンドを始めて。THE WASTEDが歌っていることは、そういう“音楽を続けること”や“バンドを続けること”というところがスタート地点というか、大前提なような気がするんです。音楽に魅了されているからこそ、バンドをやることに魅了されているからこそっていう。
TE2YA:まさにそうですね。今の自分の人生=バンドっていうか。音楽がなければ、バンドがなければ、友達もいないし。やることがなくなってたぶんダメになるだけなんですよね。生活がすべてバンドっていうものを中心にして10年以上生きてきて。だからバンドがなくなったらヤバいですよね。引き篭もりになるかも(笑)。
●CASTLEさんはどうですか?
CASTLE:俺はたぶん、音楽とかバンドっていう以前に、ギターが好きなんですよ。だから「こういうことを伝えたいんだ」というより、ギターを弾きたい。常にギターを弾ける環境でいたいなと思っているんです。だから前のバンドが解散してバンドをやるために東京にでてきましたけど、今こうやってギターを弾けているTHE WASTEDという場所があるのはありがたいですよね。
●でも例えば今作の楽曲を聴いていると、ぐいぐいと主張するようなギターではないですよね。
CASTLE:そうですね。THE WASTEDではやりすぎちゃいけないっていうのがあります。たぶん若い頃だったら曲の流れをぶった斬るようなギターを弾いちゃうと思うんです。
●ハハハ(笑)。
CASTLE:でもそういうところじゃないかなって思うようになってきたんですよね。ギタリストとしての視野が拡がったというか、そこで主張するんじゃなくて、バンドとして、曲としてどういうギターがいいのかっていうことを考えてます。結局は歌だと思うんですよ。だからTE2YAの歌を殺さないアレンジにしたり、逆に曲が活きるようなギターを心がけるようになりました。バンドですからね。
ZACK:やっぱりバンドは楽しいんですよね。僕はがっつりとやるのはこのバンドが初めてなんですけど、普段と違う自分になれているような感覚があるんです。ステージに立つとスイッチが入るというか。もちろん音楽が好きで、ドラムを叩くのが好きっていうのはありますけど。
●Chemieさんは?
Chemie:私はこのバンドに入るまで、ポップパンクとか全然知らなかったんですよ。Green Dayも有名な曲しか知らない程度で。だからすごく刺激が多くて。もともとやっていたインストバンドは音数が多かったんですけど、THE WASTEDで音数が少ないロックのかっこよさみたいなものも知ることができたし、今までずっと指弾きだったのでピックで弾くことも覚えたし。
●なるほど。そう考えたらChemieさんがきっかけになって今後このバンドの幅が拡がるかもしれない。
TE2YA:そうなんですよ。指弾きができるっていうのは強みですよね。だから今後が楽しみなんです。
●楽しみですね。4月末からツアーが始まりますが、どういうツアーにしようと思っていますか?
TE2YA:このバンドではツアーをまわるのが初めてなので、初めて観る人も多いと思うんです。そういう人たちに知ってもらって、お客さんとちゃんと繋がっていけるようなツアーにしたいですね。俺とCASTLEは年間100本くらいやるような世代で育っているんですけど、ZACKとChemieに関してはこういうツアーは初めてなんですよ。だからさっきCASTLEが言っていたような、このバンドならではのグルーヴや呼吸感が生まれると思うんです。だから、楽しみですよね。
Interview:Takeshi.Yamanaka