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MELLOWSHiP

革命は受け継がれていく

rerevoメイン2014年7月、初めての全国流通音源となる1stアルバム『CREATE THE WORLD』をリリースしてツアーを成功させたMELLOWSHiP。確固たるグルーヴとラウドかつ表現力豊かなサウンド、シーケンスなどを駆使した奥深い世界観、そしてラップも絡めた魂を感じさせるヴォーカル。次世代を担う彼らのミクスチャーサウンドが、経験を積んで更なる進化を遂げた。流行りに左右されず、ライブハウスで培ってきた皮膚感覚を研ぎ澄ました彼らは、4/22リリースの2ndミニアルバム『Re:revolution』でその感性を爆発させた。5/16から始まる全国ツアーを前に、新作に込められた想いを訊いた。

「音源を聴いて観に来たら衝撃を受けるようなライブが理想なんです。それこそ僕がそうだったように、その人の人生に1つの変化や転機を与えたい」

●2014年7月にリリースした1stアルバム『CREATE THE WORLD』は初の流通音源でしたが、あのツアーはどうでしたか?

$ENKIN:何もかも初めての経験だったんです。全国の人に聴いてもらう機会っていうのが『CREATE THE WORLD』が始めてだったので、新鮮なことだらけでしたね。今まではデモ音源を作って、それを聴いてもらうためにCDを持っていくツアーでしかなかったんですけど、僕らが知らない人なのに僕らの曲を知ってて、その日にその場所で初めて顔を合わせてライブをするっていうのがすごく感動的でした。嬉しかったし、それでテンションが上がってライブにも少なからず影響していたと思います。

Tatsuya:前回のツアーは、自分らのCDを聴いて待っててくれている人がいるっていうことがすごく嬉しかったし、自分たちに足りないものとか課題とかも積み重なっていったんです。それは今回の作品に落とし込めたかなと。実になる経験が多かったです。

$ENKIN:前作は“自分たちがいいと思う音楽はこうだ”みたいな、感覚的な部分が大きかったんです。だからライブでやったときにお客さんが何を求めて、どこで参加してくる、みたいなところまでは考えられていなかったんですね。それを前のツアーではすごく勉強したというか。

●なるほど。

Toshiki:前回のツアーは結構短いスパンでまわったんです。5連チャンもあったりして過酷なスケジュールだったんですけど、それによって精神的にも強くなれた気がします。最初はちょっとビビってたんですよ。疲れもたまってくるだろうし、移動もあるし、ちゃんとライブで力を出せるかな? という不安があったんですけど、いざやってみたら全然大丈夫で、自信に繋がりました。

●tomokiくんはどうでした?

tomoki:うーん、正直に言うと、僕はもっともっとやれるだろうと思っていたんです。お客さんの反応という部分で。でも僕らの力が足りなかった部分もあって、思うようにはいかなくて。そういうツアーの経験は、今作に活かすことができることが多かったですね。

●今の話からすると、バンドだけじゃなくてその場にいる全員で一緒に作り上げるようなライブが理想ということ?

$ENKIN:はい、間違いないです。さっき言ったように、前回のツアーで見えたこととか、自分たちに足りないものを意識して作った曲がほとんどで。M-7「hometown」という曲だけは2012年の結成当時に作った曲なんですけど、それ以外は前作のツアー後、今作のために作ったんです。前作で自分たちの課題を見つけて、「こういう曲が要る」とか「こういうライブがしたい」ということをみんなで話し合ったんですけど、それを形にしていく作業にすごく苦労したんです。前作と比べても、時間も労力も精神的にも、何倍も今作にかけたんです。大げさに言うと「命削った」くらいの感じで。

●おお。

$ENKIN:やっぱりライブバンドでありたいんですよね。僕らはシーケンスとか、バンド以外の音も入っているじゃないですか。そういう音楽は最近でこそ普通になってきましたけど、やっぱりライブとなったら難しいんですよね。そういう表現をしながらも、お客さんと共有できる曲っていうのが、今回のテーマでもあったんです。

●なるほど。曲はどうやって作っているんですか?

$ENKIN:最初に僕が全部作ってくるんです。アレンジも、シーケンスも含めて。それをメンバーに渡して、そこからもう1度みんなでアレンジを詰める。今回は、僕が曲を作る段階から既に次の課題が見えていたので、まずは自分の中の闘いがあって。そのハードルを越えたものだけをメンバーに聴かせて、更にメンバーがOKしたものだけを詰めるっていう。

Tatsuya:デモのレベルでは40曲くらいあったよな。

$ENKIN:うん。ボツになった曲も合わせたらそれくらいあったな。

●すごいな。MELLOWSHiPの曲は、結構ややこしいことをやっているように感じるんですよね。音が多かったり、展開も複雑だし。

$ENKIN:僕自身はややこしいことをやっているという感覚はなくて、ある意味自然なんです。逆に、詰め込みすぎてわけがわからなくなって削ったりすることが多くて。引き算が多いですね。前は出てきたものから作っていたんですよ。例えばイントロのリフから作ったり、ラップから広げたり。でもさっき言ったように、お客さんと共有するということやライブでの一体感がテーマだったので、今回はサビから作るようにしたんです。やっぱりライブ中にお客さんがドーン! とテンションを上げるのはサビなんですよね。

●なるほど。

Toshiki:例えばタイトル曲のM-2「Re:revolution」とかは、最初に$ENKINから送られてきたときに満場一致で「これめっちゃええやん!」ってなったんです。僕ら、そういうことはあまりないんですけど。

Tatsuya:だいたいは一度しっかりと聴いてみて、構成を練ってみたり、場合によってはガラッと変えてみてからOKになるんですけど、「Re:revolution」の場合はいちばんバキッとハマった感じがあったし、ほぼ構成も変わらなかったんです。特別でしたね。

Toshiki:今回の中でいちばん最初にできたし。

●作品タイトルになっているように、「Re:revolution」は今作の大きなきっかけになったと。

4人:そうですね。

●その「Re:revolution」なんですけど、歌詞がめちゃくちゃ直接的というか、リアルというか。このバンドをやっている意味みたいな核の部分に結びついていますよね。

$ENKIN:「Re:revolution」はなんでできたかというと、前作のツアーをまわった後に“今こうやってバンドをやっているのはなんでかな?”ということを考えたんですよ。僕の場合は、この曲で歌っているようにDragon Ashを聴いて「僕もバンドをやりたい」と思ったんです。それは僕の人生の転機でもあったし、大げさかもしれないけど僕にとっての革命なんです。

●はい。

$ENKIN:それがあったから今もバンドをやっているんですよ。就職したり、いろんな選択肢が今まであったと思うんですけど、なんかわからへんけど今はこの道を選んでいて、他のものを捨てる覚悟ももちろんありますし。だから自分が不特定多数の人に音楽を聴いてもらう環境に恵まれた今、自分が聴いてくれる人にそういう革命を起こす曲を書きたいなと思ったんです。

●それが原点だと。

$ENKIN:原点ですよね。自分が今、MELLOWSHiPのヴォーカル・$ENKINとしてやっているきっかけというか理由について歌っていて、それを歌うことによって他の人に影響を与えることができたらいいなって。

●「Re:revolution」は早かったということですが、他の曲で苦労したんですか?

$ENKIN:そうですね。アレンジを詰める作業とかも、連日スタジオに10時間くらい入って。その時に思いついたパターンやアイディアを全部やってみて、それで判断したくて。

Tatsuya:だから難産とか煮詰まったとかじゃなくて、一切妥協しなかったということなんです。

$ENKIN:曲があって、その曲をいちばん良く聴かせるパターンをみんなで見つけるっていう。そこにめちゃくちゃ時間がかかりました。

●それ、出口が見えなくなったことはなかったんですか?

Toshiki:ありました。M-8「Tomorrow」とか特にそうだった。

tomoki:「Tomorrow」は最初サビが日本語詞だったんです。

Tatsuya:そうそう。

●「Tomorrow」は今作の中でいちばんキャッチーというか、メロディの抜けがいいですよね。

$ENKIN:日本語か英語かの選択とか、メロディとかも色々と考えて、最後の最後まで悩んだんです。

Tatsuya:メロディは最初と全然ちゃうもんな。

●メロディも変わったんですね。

$ENKIN:この曲をスタジオで練っているとき、レーベルの先輩であるROTTENGRAFFTYのVo.NOBUYAさんがたまたまスタジオに用事があっていらっしゃったんです。そこで、せっかくだから1回相談してみようと思って、そのときのバージョンの「Tomorrow」を聴いてもらったんです。そしたら「ちょっと歌わせてや」って。

●え? 嘘?

$ENKIN:その場でNOBUYAさんにサビの部分をバーッ! と歌ってもらったんですけど、そのメロディをヒントに「Tomorrow」が完成したんです。

●ええっ!? 権利関係大丈夫?

一同:アハハハハハ(笑)。

$ENKIN:もちろんその時にNOBUYAさんにはOKもらってます(笑)。裁判でも勝てます。

●ハハハ(笑)。

$ENKIN:そんなこと初めてだったし、タイミングもよかったんですよ。敢えてNOBUYAさんのところに行って曲のことを相談することもきっとなかっただろうし。NOBUYAさんも「別に使わなくてもいいからな」って言ってくれて、そのメロディを1つのヒントとしてもう1度みんなで練ったんです。結局NOBUYAさんに頂いたメロディとは形は変わりましたけどね。

●確かに他の曲と比べて、メロディの肌触りが少し違う。

Tatsuya:サビで突き抜けている感じっていうか。それが俺らにとって新しかったんですよね。

●いいきっかけをもらったんですね。

$ENKIN:おもしろいなって思いました。僕が曲を作ってますけど、やっぱり1つ思い詰めたらそこから抜け出せなくなっていたんだなって思いました。

●前作で見えた課題を乗り越えて、妥協もなく、リスペクトしている先輩にきっかけももらったという。いろんなものが繋がった、いいアルバムになりましたね。

Tatsuya:そうですね。それに今回は、$ENKINが作ってきたものをちゃんと他の3人が補ってあげることができたっていう実感があって。$ENKIN自身がまだふわっとしている部分を、お互いが持っている武器で埋めることができるっていうか、そういう流れができたような気がします。

Toshiki:音の1つ1つにこだわって、曲によって機材も色々と変えてやったんです。だから満足度はすごく高いです。

●5/16からはツアーが始まりますが、ライブ仕様の楽曲が揃った作品になったということもあって、楽しみですね。

4人:めちゃくちゃ楽しみですね。

Tatsuya:今作はライブを意識した曲ばかりだから、お客さんもノッてくれるだろうし、自分たちも演奏するのが楽しいし。だからライブを重ねる毎にどんどん輪を大きくできるんちゃうかなって思うし、それによって自分たちがどう変わっていくのかも楽しみですね。

$ENKIN:ファイナルでどういう景色が見えるのかっていうのは、ツアー中の僕ら次第だと思うんです。たぶんこのツアーが終わったらまた見える景色も変わるだろうし。

Toshiki:ツアー前から、いくつか新曲をライブでやったりしているんですけど、お客さんの反応もめちゃくちゃよくて。楽しみですね。

●音源は繊細な部分も含めての表現という印象があるんですが、MELLOWSHiPのライブはすごくパワフルですよね。エネルギーに満ちているというか。

$ENKIN:音源を聴いてもらって、本来であればそれで終わりかもしれないけど、それで観に来たらさらに衝撃を受けるようなライブが理想なんです。それこそ僕がそうだったように、その人の人生に1つの変化や転機を与えたい。それが今回の“Re:revolution”というテーマなんです。このツアーでは1つ1つ革命を起こしていって、最後には自分たちにも革命を起こしたいです。

Interview:Takeshi.Yamanaka

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