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INKYMAP

何をいちばん大事にしているかで、そのバンドの真価がわかる

INKYMAP_ap(S)2012年8月八王子にて結成したINKYMAP。2014年自主制作のシングル及びミニアルバムを会場及びWEB限定でリリースし、レコ発ツアーファイナル(NECOKICKSとの2マン)を見事ソールドアウトさせた彼らが、初の全国流通音源となる1stミニアルバム『MAKE BELIEVER?』をリリースした。彼らが大切にしているものは、繋がりと信頼、そして嘘偽りのないこと。雲ひとつなく晴れ渡る青空のような愛すべき人柄と繊細な内面性、ライブハウスで培った極上のグルーヴを是非体感してほしい。

「同世代の仲間とかをすごく大事にしていきたいし、INKYMAPは大事にしているバンドなんですよね。人としていちばん大事にすべきところっていうのは、信頼とか嘘偽りのないところ」

●約3年前、18歳の夏に結成ということですが、高校の頃からバンドをやっていたんですか?

Kazuma:はい。高1の終わり頃からやっていました。当時バイクが流行っていたんですよ。変型学生服とか、セミタンとかを着て。

●え? この時代に?

Kazuma:長野県の田舎なので(笑)。たまたま自分の周りにいたヤツがそういうの多くて。中学生のときにそういうのに興味を持って、みんなで同じ高校に行ったんです。でもみんな高校を辞めちゃって。一緒にいた友達がいなくなって、中学生の頃からギターは弾いていたので“バンドやろうかな”っていう感覚で。学校には軽音部もなかったので、ライブハウスでやっているヤツらのところに行ってみたんです。その頃から作曲を始めて。

●そこからバンドにのめり込んでいくんですか?

Kazuma:そうですね。ずっとバンドのことばっか考えてました。放課後とか、別にライブもないけどライブハウスに行って店長さんと話したり。高校を卒業してから、ギターのJunと東京の音楽専門学校に行ったんです。東京でもバンドをやるかどうか最初はすごく迷っていたんですよ。レコーディングとか裏方の方に進もうと思っていたんですけど、上京して「やっぱりバンドやるか」となって、メンバーを見つけたんです。ドラムのTetsuoは同じ学校で、ベースのRyosukeは新宿ACBで出会ったんです。

●バンドの面白さって何なんですか?

Kazuma:そもそも音楽自体が好きなんです。例えば小学生のときに音楽会があるじゃないですか。その練習とか好きだったんですよ。ちゃんと勉強をしていたわけではないんですけど、合唱とかが好きで。それに、ちょっと似ているというか。

●何と似ているんですか?

Kazuma:バイクとかに乗って友達とワーワーやってる感覚と、バンドは似ているところがあるんです。

●確かにそれはあるかも。

Kazuma:当時も礼儀とかをすごく大事にしていたんです。先輩にしっかり挨拶しないといけないとか、自分たちが愛している地元だからポイ捨てはダメとか。

●いいやつらですね(笑)。

Kazuma:大事なところはちゃんと大事にして。だけど、ずっとやんちゃしてるよりも、わからないけど音楽でならちゃんと階段を上っていけるというか。

●それで上京し、3年間バンドをずっとがんばってきたと。

Kazuma:そうですね。バンドしかがんばれないんです。不器用なのかもわからないけど、自分は常にバンドのことばかりで。友達と遊ぶとかも、俺はあまりないんです。ギターを弾いていた方がいいなという感じでした。

●今回リリースとなるアルバム『MAKE BELIEVER?』は、その3年間の集大成であり、バンドのスタートという感じ?

Kazuma:そうですね。でもかなり挑戦もしたんです。今までリリースしていた会場限定CDの曲とかは、自分の中にあるものを出していくという感覚だったんですけど、今回はもう一歩進んだところに行ったというか。

●曲調やメロディも今までとはちょっと違うんですか?

Kazuma:そうですね。今までよりもっとエモーショナルになったと思います。

●さっき「友達と遊ぶよりもギターを弾いている方がいい」とおっしゃっていましたけど、そういうパーソナリティみたいなものがすごく歌詞やメロディに出ている気がするんです。

Kazuma:人間って、みんな落ちて上がっていくの繰り返しじゃないですか。それを曲にしているというか。最終的に“でも負けない”というところを書いている。

●ただ、歌っていることが21歳とは思えないというか。挫折とかいろいろ経験したからこそ出せる感情みたいな描写が多いと思うんです。

Kazuma:何なんでしょうね(笑)。でも同年代のやつらに比べてひとりで考えている時間ってめちゃくちゃ長いかもしれないです。道を歩いていても、何か考えながら歩いていたり。だから俺すげぇ方向音痴なんですよ。考えてるから道を覚えられないんですよね(笑)。例えば誰かと話した後に、“さっきあの人はこういうことを言っていたけど、これを自分的に考えたらどうだろう?”とか。何を言われても鵜呑みにはしたくないんです。

●自分なりに噛み砕きたい。

Kazuma:気になることがあるとすぐに調べますし。知りたがりなんですよ。だから家にいたいっていうのはあるかもしれない。

●歌詞で1つ気になったところがあるんです。M-4「Moment」という曲に“汚れた紙切れももう必要ないな かけがえのないものだけがいいや”というフレーズがありますが、ここでいう“かけがえのないもの”というのは何を指しているのかなと。

Kazuma:うーん。同世代の仲間とかをすごく大事にしていきたいし、INKYMAPは大事にしているバンドなんですよね。自分もそういうところで熱くなるところがあって。人としていちばん大事にすべきところっていうのは、信頼とか嘘偽りのないところかなと。

●かっこいいな。僕が21歳の頃なんて、いちばん大切なものは金だと思ってましたからね。

Kazuma:アハハハ(笑)。音楽もそうですけど、中身がいちばん大事だと思うんです。繋がりだとかそういうものがいちばん。だから歌詞にも“ひとりじゃないよ”みたいなことがかなり多いと思います。

●どういうシチュエーションで曲を書くんですか?

Kazuma:机の角をじっと見ているようなときの方ができますね(笑)。だからバンドのみんなとセッション的に曲を作るのは嫌なんですよね。ひとりになって1回作りたい。

●そうしないと自分の奥にあるものが見えて来ないんでしょうね。歌詞とメロディだけじゃなくて、サウンドでいうと特にギターが歌詞で表現している“憂い”みたいなものとリンクしているというか。

Kazuma:ギターは基本的にJunに任せているんです。「ここだけはこうして」っていうのがあって、1回任せて、それを聴かせてもらってOKかどうか決める、みたいな。だから結構やり直しも多いですね。

●今作の収録曲6曲で苦労したことはあったんですか?

Kazuma:M-5「Let Me Go Away」がいちばん最後にできたんですけど、これはこねくり回しましたね。完成するまでかなり苦労しました。

●かなりキャッチーで耳に残る曲だと思うんですけど、どこで苦労したんですか?

Kazuma:いろいろと変えたりしてこねくり回して、最初に作ってきたデモとは全然違うんですよ。雰囲気的には似ているかもしれないんですけど、なかなか歌いまわしが納得いかなくて「これでいきたい」っていう状態に持っていけなかったんですよ。本当にギリギリの段階で完成した曲。

●歌いまわしというと、アレンジ云々ではなくて作曲の段階でいろいろと迷いがあったということ?

Kazuma:そうですね。曲作りの段階でかなり苦労したんです。出口がなかなか見えなかった。

●それとINKYMAPは日本語がメインのバンドですが、M-6「Glimmer」は英語詞が比較的多いですよね?

Kazuma:実は、英語のところも最初は日本語で歌っていたんです。でもかなり前に、同じようなメロディで曲を作ってみんなで合わせたことがあったんですけど、その曲は未完成のまま保留にしていて。「Glimmer」を作っているときに、「サビをあのメロディにしたらどうなるかな?」っていうのをやってみて「いいね!」と。

●昔作っていた曲のメロディが「Glimmer」にマッチしたんですね。

Kazuma:そうです。英語詞の譜割りって勢いがあるじゃないですか。「Glimmer」はサビでパーン! と行きたかったんですけど、もともとのメロディだとちょっとしっくり来ていなくて、昔作ったメロディをハメてみたらピンときたというか。それに意味的にはわかりやすい英語だから、日本語じゃなくても意味的にも伝わるし。「これはこれでいいんじゃないか」という話になったんです。

●曲にいちばんマッチする方法を探したら、英語詞だったと。

Kazuma:勢いのいい爽快な曲にしたいというのがあったので、いいかなと。

●3年間の集大成でもあり、新しい挑戦もしたアルバムが完成しましたが、既にレコ発ツアーが始まっていますよね。ファイナルは9月ということですが、何本の予定なんですか?

Kazuma:まだ追加もあると思うから全部で何本になるかはわからないんですけど、メンバー的にはバンバンやりたいんです。今までも、ツアーじゃなくても同じペースくらいでライブをやってきたので、ライブのペースは変わらないんですよ。呼ばれたらすぐに「行きます!」っていう。「ライブやりすぎじゃない?」って言われるくらいなんです(笑)。

●ライブのペースは今までと変わらないけど、ツアーだから明確なゴールというか目標があるという。

Kazuma:そうですね。それに今回のツアーは遠いところまで行くし、行ったことのない場所もあるんです。だから楽しみですね。

●4/18からツアーが始まりましたが、感触はどうですか?

Kazuma:ツアーって修行みたいなものだと思っているんです。「昨日よりいいものを」っていうのをメンバーで話し合って、次のライブに活かす…というサイクルが楽しいですね。

●いいですね。1本1本にしっかりと向き合って無駄にせず、積み上げていく作業というか。

Kazuma:打ち上げでベロンベロンになっているんですけど、帰りの車でちゃんと話して。だからまだ始まったばかりですけど、いいツアーになりそうな予感はありますね。“どこまでいけるんだろう?”ってワクワクしながらやっています。

●充実したツアーになりそうですね。

Kazuma:そうですね。今作が初の全国流通ということもあって、環境も前のツアーとはちょっと違うじゃないですか。CDを聴いてくれている人がいるっていう。だからライブ1本1本への気持ちも違うんですよね。プレッシャーもありますし、もちろんそれ以上にワクワクもあるんです。みんなで足並みを揃えて、どうにか無駄にしないようにという感じです。

●きっとツアーが終わったらバンドが変わっているでしょうね。

Kazuma:変わっていたいですね。“昨日よりいいものを”ということを積み重ねて、“どこまで行けるんだろう?”っていうのがすごく楽しみです。

interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子

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