20th Anniversary Beginning of the Story EXTRA in 東寺
2019/12/14(土)京都・東寺
世界遺産に指定されている京都の真言宗総本山・東寺(https://toji.or.jp/)で開催されたROTTENGRAFFTYのワンマンライブ“20th Anniversary Beginning of the Story EXTRA in 東寺”。京都で20年間活動を続けてきた5人にとって、創建から約1200年を誇る東寺でのライブは感慨深いものがあるだろう。
このライブは、ROTTENGRAFFTY結成20周年の一貫として、地元京都の歴史と伝統のある場所でのライブを希望していたメンバーの想いに、東寺が賛同して実現したというもの。開催の発表は先月だったにも関わらず多くの募集が殺到し、チケットはすぐにソールドアウト。東寺の中心堂宇である国宝・金堂を背に組み上げられた特設ライブ会場には、ROTTENGRAFFTYが刻む歴史の目撃者になるべく多くのオーディエンスが詰めかけた。
19時ちょうどにSEの「610行進曲」が流れ、大きな歓声と手拍子が沸き起こる。興奮が高まった中でメンバーが登場。HIROSHI(Dr.)はオーディエンスと一緒に手を叩き、侑威地(Ba.)は手を合わせて深々と頭を下げ、KAZUOMI(G./Programming.)は叫び声をあげて喜びをあらわにする。そしてNOBUYA(Vo.)とN∀OKI(Vo.)が勢いよく飛び出し、「20th Anniversary Beginning of the Story EXTRA in 東寺!! 1200年の歴史に一石を投じに来ました! 俺らが京都、ROTTENGRAFFTY!!」と叫ぶ。
幕開けは「金色グラフティー」の大合唱。特別な場所での記念すべきワンマンを、オーディエンスと一緒に始めるというのがなんとも彼ららしくて心憎い。5人の気迫がビシビシと迫り、興奮が感情を一瞬で塗りつぶす。
N∀OKIが「20年の想いを全部ぶつけてこい!」と「THIS WORLD」で巨大な一体感を作り出し、NOBUYAが「お前らの世界一かっこいいヘッドバンキング見せてくれ!」と「STAY REAL」で興奮を高めていく。次から次へと投下されるキラーチューンに、客席からあがる歓喜の声は途切れない。
N∀OKIが「1秒1秒を、まぶたを閉じるのはもったいないくらい焼き付けてくれ!」「瞬間を生き延びろ!」と叫んで始まった「世界の終わり」でライブはヒートアップ。一瞬もスキを与えることなく、5人はステージを所狭しと暴れまわり、観客に檄を飛ばす。ライブハウスで鍛え上げてきた彼らの音が、1200年に渡って古都を護ってきた東寺に共鳴する。
オーディエンスが頭上に掲げた携帯のライトで照らされる中、5人が始めたのは「今夜はブギー・バック」。ラップパートではNOBUYAが「五重塔めっちゃ綺麗」と歌詞を替えて歌ったように、照明に浮かび上がる金堂と五重塔はとても美しく、そして何より、そこで鳴り響くROTTENGRAFFTYのロックサウンドは最高でしかない。まるで夢のような時間。
そして新曲「ハレルヤ」。KAZUOMIの鋭いギターが炸裂し、HIROSHIと侑威地が繰り出す重厚なビートに心が震え、NOBUYAとN∀OKIの掛け合いで更に興奮が加速。同曲はダイナミックかつ目まぐるしい流れが絶妙で、気持ちの高まりがピークになったところでエモーショナルなサビに胸を焦がされる、「これぞROTTENGRAFFTY!」という極上な展開。リリース前にもかかわらず観客への浸透度は抜群で、オーディエンスは腕を振り上げ、身を乗り出して全力でライブに没頭する。NOBUYAが「東寺ありがとう!」と言い、KAZUOMIが「ハレルヤー!」と感謝の気持ちを叫ぶ。ステージ上で無邪気にはしゃぐ5人に気持ちが奪われる。
かと思えば息をつく暇もなくサイレンが鳴り響き、赤いサーチライトが金堂を照らす。KAZUOMIが「嬉しすぎるぞオイ! 1人残らず音で殺す!」と「零戦SOUNDSYSTEM」。牙をむいた5人は容赦なく攻め立て、あのゾクゾクするライブハウスの感触が全身を襲う。
次から次へと繰り出される曲はすべて強烈に刻まれたが、MCもとても印象的だった。「京都でこんなヤンチャなバンドが20年もバンド続けていて、これからまだまだやるってことを今日見せつけたかった」とNOBUYA、そして「最高の20年です。ありがとうございます。堕ちるときも上がるときもこの5人でした」とN∀OKI。彼らの人間性と内なる想いが伝わってくる言葉に、胸がぐっと熱くなる。
“和”を感じさせるエモーショナルなメロディの「e for 20」では、金堂に曼荼羅をモチーフにしたような模様の照明が当てられ、めくるめく幻想的な情景に魅了される。そして和太鼓から始まったスペシャルバージョンの「響く都」でライブは佳境に。“ロットンの日”や“ポルノ超特急”など、京都で聴く「響く都」はいつも格別だが、とにかく今日のライブで絶対に聴きたかった1曲。無意識的に気持ちが高揚する祭り囃子に身を任せた観客は声をあげ、身体を揺らし、両手を振り上げて盛り上がる。まるで、冬の寺の境内で繰り広げられるお祭りのような光景だ。
KAZUOMIが「おい! もう終わりやぞ! ブチ切れろ!」と叫び、時間を惜しむように「D.A.N.C.E.」を全力で踊り狂った後、最後はN∀OKIのブルースハープが胸に沁みる「切り札」で終幕。古都のドブネズミは、京都が世界に誇る舞台で素晴らしいライブを見せつけた。
「ロックバンドが寺でライブをする」とだけ聞けば違和感を感じるかもしれないが、ROTTENGRAFFTYというバンドには古都の仏閣がとてつもなく似合っていた。この日のワンマンは、シーンに迎合することなく、自分たちが生まれ育った街と人を愛し、不器用なほどまっすぐに20年間活動を積み重ねてきたロックバンドが起こしたひとつの奇跡なのかもしれない。ライトアップされた五重塔とその隣に浮かぶ月を眺めながら、大好きなバンドの特別なライブの余韻に浸りながら、東寺を後にした。
セットリスト
01. 金色グラフティー
02. THIS WORLD
03. STAY REAL
04. 世界の終わり
05. 今夜はブギー・バック
06. ハレルヤ
07. 零戦SOUNDSYSTEM
08. e for 20
09. 響く都
10. D.A.N.C.E.
11. 切り札
text:Takeshi. Yamanaka
photo:Yukihide”JON...”Takimoto