音楽メディア・フリーマガジン

陰陽座

その唯一無二たる存在感と尽きることのない創造欲求を再認識した

2015/2/22@TOKYO DOME CITY HALL
“陰陽座全国ツアー2015『雷神』”

_LSH9028『風神界逅』『雷神創世』という“本気のアルバム”2枚を同時リリースしたばかりでなく、それに合わせてツアーも2回に分けて実施するという驚愕の試みに挑む陰陽座。昨年12/7にはまず“全国ツアー2014『風神』”のファイナルを終えた彼らが、年明けて2/22に再び同じTOKYO DOME CITY HALLのステージに降り立つ。“全国ツアー2015『雷神』”と銘打ち、セットリストも完全に入れ替えたものになるという本ツアーの千秋楽。だが『雷神創世』に魂を打たれ、前回の『風神』千秋楽を体験した者ならば、今回も名演になることは間違いないと確信していただろう。前回に引き続き会場に詰めかけた大観衆が見つめる中、会場が暗転する。

雷鳴が轟き、「雷神」から厳かにライブの幕は開かれた。ステージ上から放たれる音に、観る側のテンションもじわじわと上昇していく。「天獄の厳霊」へと続く『雷神創世』同様の曲順で2曲をまず奏でた後、本日1回目のMCタイム。Vo.黒猫が今回のツアーを振り返り、各地に「たくさんの雷(いかづち)を落としてきました」と語る。その言葉を証すように「夜歩き骨牡丹」「千早振る」と、魂を激震させる威力を持った雷のごとき楽曲を次々と披露。さらには「今までとは違う、クールでカッコ良い忍法帖」(黒猫)という「神鳴忍法帖」など、前半から『雷神創世』の収録曲を惜しげもなく連打していった。

緊張感あるシリアスな演奏とはうらはらに、MCで垣間見せるユーモアと適度なユルさも陰陽座のライブが持つ大きな魅力だ。G.狩姦のちょっと天然気味なMCに会場が和み、Ba./Vo.瞬火の軽妙なトークにドッと笑いが起こる。G.招鬼と瞬火の兄弟による共作曲「天狗笑い」は、そんな陰陽座のユーモアセンスを堪能できる名曲。イナたくもポップなサウンドに悲哀と滑稽さを込めた歌詞が乗ると、身体が自然に揺れ動いてしまう。そこから一転「これぞ陰陽座と言える曲」(瞬火)という「累(かさね)」では、10分以上にも及ぶ大作の重厚な世界観へと飲み込まれていく。江戸時代に流行した物語『累ヶ淵』を題材にしたという楽曲の歌詞についてMCで語る内に、瞬火が次第に興奮していったのも想いの強さゆえだろう。

続けて「蜩」を演奏した後に、「長い曲、長い話、しっとりした曲」という瞬火のMCで会場は爆笑。そして「青天の三日月」からの後半戦は、アッパーな楽曲を次々と放っていく。「而して動くこと雷霆の如し」に続けて、「雷のように舞え!」という言葉と共に演奏されたのは「雷舞」。オーディエンスが激しく舞い踊る中、本編は幕を閉じた。当然のようなアンコール1回目の2曲だけでは、まだまだ足りないのは自明の理。2回目は“極楽地獄”で激烈な5曲を叩き込まれるも、さらなるアンコールを求める声は止まない。3度目は「喰らいあう」で互いの荒ぶる魂を喰らいあって、遂に完全燃焼を果たした。

MCでは『風神』『雷神』2本のツアー千秋楽を収めた映像作品を、今夏にリリースすることを発表。さらには真夏のツアーも開催するということで、その動きに止まる気配はまるでない。この2本のツアーを観れば明白だが、陰陽座というバンドの唯一無二たる存在感と尽きることのない創造欲求を改めて実感させられた。

TEXT:IMAI
PHOTO:三浦憲治

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