バンド結成10周年を記念して、NoGoDが2枚組ベストアルバムをリリースする。2005年にVo.団長を中心に結成し、2010年にはメジャーデビューを果たした彼ら。昨年には通算6枚目のアルバム『Make A New World』を完成させ、そのツアーファイナルでは品川ステラボール公演も成功させた。確実にステップアップを続けている彼らにとって、この10年間と今回のベスト盤『VOYAGE 〜10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』への想いとは? 団長とG.Kyrieの語る言葉は、ここはまだ1つの通過点にしか過ぎないと確信させるものだった。
●10周年でベストアルバムを出すという構想は元々あったんですか?
Kyrie:そんな話は前からあったんですけど、実際に動き出したのは去年くらいですね。9月に『Make A New World』を出した後に“Follow Your World”ツアーをまわっていく中で、「どういうものにしようか」というところを話し合っていきました。
●最初から2枚組にしようと考えていた?
Kyrie:そこも色々と揺れましたよ。
団長:揉めに揉めました(笑)。
●揉めたんだ(笑)。
Kyrie:メンバーはもちろん、今まで制作に携わってきた人たちの色んな想いもあるので、一筋縄ではいかないというか。リリース形態や収録曲、インディーズ時代の曲をどういう形で収録するか…とか、色んな話がまとまっては消えの繰り返しでギリギリまで悩みましたね。
団長:話がまとまらなさすぎて、一度は「もうベストアルバムを出すのをやめようか」という話にまでなったんです。
●そこまでまとまらなかったのはなぜ?
団長:個人個人で、ベストアルバムに対する見方が違ったんですよ。
●それぞれにやりたいことも違っていた?
Kyrie:新しく曲を書くのであれば“やりたいこと”も見つけられるんですが、(ベストアルバムというのは)“やってきたこと”をどう見せたいのかというところだから。そこはいくらでも見せ方があるので、普通に新作を作るよりも“答え”みたいなものをみんなが強く持っていて。明確に見えている答えがそれぞれ違うことで、見え方の違いが浮き彫りになってしまうんですよね。
●Kyrieさんはどういうものにしたいと思っていたんですか?
Kyrie:僕はそもそも、出したいとも思っていなかったです(苦笑)。
●身も蓋もない…(笑)。
Kyrie:10周年でNoGoDというバンドをヒストリカルに振り返るということに対しても「そういう感じ?」というのがちょっとあったから。「明確な始まりはいつだったんだろう?」というのもあって。最初にライブをやった日もちゃんと覚えていないでしょ?
団長:(2005年の)2月の頭くらいだったかな…?
●プロフィールでは、2005年初頭に結成となっていますね。
Kyrie:僕が最初にサポートで参加したのが7月頃で、10月に正式加入してから本格的に活動開始みたいな感じだったんですけど、だったら「初ライブからの8ヶ月間くらいは何だったんだ?」と(笑)。G.Shinnoくんが入ってからも7年くらい経つし、NoGoDというものの形は色々と変わってきていて。そういう意味では、最初からNoGoDの歴史を全部知っている人は団長しかいないわけですよ。
●そこはメンバー間で、感覚も違う。
Kyrie:だから10周年と言っても、正直あまりピンとこないんですよ。10周年を目指していたわけでもないし、「これまでを振り返ってみましょう」というところに自分たちが今いるのかと考えたら、そんな気も別にしない。ただ「お祝いごとはみんなで楽しんだらいいんじゃないの」とは思うけど、そういったテンションもそれぞれ違ったりする。「たかが10年で色々と振り返っているような場合じゃないだろ!」っていう人もいれば、逆に「10周年だから盛大にドーンとやろうよ!」っていう人もいて。そこのテンションが違えば、ベストアルバムの見せ方も当然違ってくる…という感じですかね。
●団長はどんなテンションだったんですか?
団長:もちろんドーンとやりたいですよ! 創始者なんだから、当たり前でしょ!
●まあ、そうですよね(笑)。
団長:「ベストアルバムが欲しい」という声はお客さんからもあったし、このタイミングしかないだろうと。俺は“お祭り”というよりは、「このチャンスを逃しちゃいけない!」という感覚でしたね。今まで名前は知っていたけど、いまいちNoGoDというものに深入りできなかった人たちに知ってもらう1年にしようと思って。そのためには“10周年”と歌ったほうがそれっぽいわけで(笑)。でも10年って、俺の中でそれほどでもなかったというか…。
●というのは?
団長:満足のいくものではなかったんです。自分の中の未来予想図よりはだいぶ遅れてしまったというのがあって。
●団長の中の未来予想図では、10年目でどのあたりまで…?
団長:10周年は武道館でライブをやっていると思っていましたよ。でもまだ全然できないし、それが悔しくてしょうがない。この悔しさをバネにして、アニバーサリーイヤーで色んな人に協力してもらって色んな場所に出させて頂いて、とにかく世の中にNoGoDを広める1年にしようというビジョンがあって。そのためにはベストアルバムが欠かせなかったんです。
●団長の中では絶対に出したいものだったと。
団長:そしたらメンバー間で温度差があるっていう…。「ちょっと待ってくれよ。そこはドーンとやらせてくれよ!」というワガママをだいぶ飲んでもらいました(笑)。でも最終的にはみんなの折り合いがつかないと出せないので、一緒に考えてもらって。その結果が今回の選曲になったわけです。
●今回はメジャーデビュー以降の作品からの収録曲が多いですよね。
Kyrie:実際、これまでに出した6枚のアルバムの内の4枚はメジャーデビュー以降のものなので、割合的にはどうしてもそうなってしまうんですよ。楽曲自体もインディーズ時代のものは全部で40曲くらいで、メジャーデビュー後は80曲くらいあるので、どうしてもバランス的にそうなってしまう。
団長:かといってインディーズ時代のことを消したいわけではなく、10年前の曲も再録していますし、NoGoDとしてやっていることは変わっていないから。もちろんサウンドの志向や質は年々変わっていっていますけど、根本的な曲の核となる部分は変わっていないので、そこはあまり気にしなくて良いのかなと。
●インディーズ時代の4曲を再録しているのは、今の自分たちを聴いて欲しいからなのかなと。
団長:録り直した4曲はこの10年間で育っているから、10年目のこの曲たちを聴かせたかったというのはありますね。10年間でその曲がどれだけ変わったかというのも聴いて楽しめるだろうし、今回収録したものが現段階でその曲の“正解”だから。それを聴いて頂けたら良いなと思います。
●この4曲を選んだ基準とは?
Kyrie:ライブでよくやる曲というのはまずあって。M-1「ノーゴッド」(DISC-1/M-1)はこのバンドを組んでから一番最初にちゃんと作った曲で、「愚蓮」(同/M-2)は初めてちゃんと流通したシングルのタイトル曲で、「最高の世界」(同/M-3)と「万国深層大サァカス」(同/M-4)に関してはそれぞれがアルバムのリードトラックというところですね。
団長:「愚蓮」に関しては、Shinnoさんが弾いているバージョンがまだ一度も作品に収録されていなかったというのもありましたね。あとは、今の良さを出せる曲というのを重視して選びました。
●この4曲をDISC-1の冒頭にまとめて並べている意図とは?
Kyrie:基本的にDISC-1はシングル曲やリード曲を集めているんですよ。
団長:“シングル・コレクション”風ですね。
●では、DISC-2のほうは?
Kyrie:こっちにもリード曲は入っているんですけど、DISC-1の収録曲にはないエッセンスを持った曲をまとめた感じですね。
団長:バランスを取りたかったというのもありますね。DISC-1がクドいので(笑)、DISC-2には優しい感じの曲やDISC-1にはないパターンの曲を入れようと。
●DISC-2の最後を「この世界に見放されても」にした理由とは?
Kyrie:これは単純に時系列ですね。DISC-1の曲は最古から最新に向かっていくのと逆で、DISC-2は最新から最古に向かっていく感じなんです。
●そういう流れになっていたんですね。
団長:「この世界に見放されても」なんて、18歳くらいの時に作った曲ですからね。前のバンドをやっていた頃に、ずっと応援してくれている人がいて。これはそういう人たちに向けた曲だったんです。当時と今とでは、自分の解釈や歌い方も変わるだろうなと思います。
●今歌うと、当時とは違う想いも込められるんじゃないですか?
団長:この曲は当時まだ1年くらいしかバンドをやっていなかった自分が、お客さんに対して「ありがとう」という気持ちを歌っていて。でもその時から数えるともう12年くらいバンドをやってきたら、「ありがとう」の重みが違いますよね。そういうものがライブで歌う時には出てくると思います。
●“歩いて行けるよ どんな道も”という歌詞もあったりして、[DISC-1]の最後の「walk」にもつながっている感じがします。
団長:「walk」ではちょっと突き放したような表現もありますけど、「この世界に見放されても」はキレイごとが多いなと思いますね。「こうありたい。こういう歌を歌いたい」っていう理想というか。バンドをほとんどやった経験がない自分が作った曲と、このバンドを10年やってきた今しか書けない歌詞というものはやっぱり全然違うなと。「walk」でも支えてくれた人への感謝とかを歌ってはいますけど、それ以上に言いたいことが多くて。今の現状に納得できない自分とか、いなくなった戦友たちに対する悲しみとか、「キレイごとだけじゃ済まないんだぞ」という気持ちが「walk」には出ているんです。
●10年やってきたからこそわかる感覚がある。
団長:初期の頃は音楽というものに対して「美しくありたいな」と思っていた自分がいたわけで、そういう意味では皮肉な感じがしますよね(笑)。でも、どっちも必要だなと思うんです。今だったら当時やりたかったキレイごとを自分なりに消化して歌えるし、逆に10年前だったら「walk」の歌詞は書けないはずだから。仲間もいなくなっていないし、たいして傷も負っていないので、想像できないんですよ。夢と希望に溢れていたら、こんな歌詞は絶対に書けない。そういう意味で、この2曲の違いは大きいなと思います。
●実際に団長は色々と傷ついてきた?
団長:バンドを10年もやっていたら、傷つくことしかないですよ…。社会からは信頼されず、家族には白い目で見られ…。
●そんなネガティブな心境が込められていたなんて…(笑)。
団長:「それでも歩いていける」っていう、ある意味での決意ですよね。本当にまだ何も残せていないので「ここで終われない」という、自分への檄というか。最初にも言いましたけど、10周年の現状が俺は悔しいんです。時代のせいにするわけにもいかないし、自分のせいにするとへこむし(笑)。何が良くて何が悪いかもわからないので、だったら今できることや今信じていることを続けるしかない。そのための決意をこの節目にしたという感じですね。
●まだまだやりたいこともあるからこそ、続けられているのでは?
Kyrie:普段の生活をしている中でも「次はこういうことをやってみよう」とか「こういうものを作ったら面白いことができそうだな」とか、そういうことは常々考えているから。言い方は悪いですけど“排泄”みたいなもので、出てこないと困るわけですよ(笑)。
●確かに(笑)。それを出せる場所がNoGoDなんですよね。
Kyrie:こういう場所があるからできていることなので、そこはすごく大切にしたいなと思います。こうやって10年間、NoGoDというものと一緒に自分は生きてきて。何故かはわからないけどそうやって歩いてきたわけだし、これからもきっと歩いて行くんだろうなと思いますね。
Interview:IMAI