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NIGHTMARE

“今”を全力で闘い続けた15年の結晶が次なる道を照らし出す

Nightmare_AP2015年1月1日にバンド結成から15周年の節目を迎えたNIGHTMAREが、ニューアルバムをリリースした。2000年の結成後、地元の宮城県仙台を拠点に活動をスタート。2003年のメジャーデビュー後は武道館やさいたまスーパーアリーナでのワンマンも成功させるなど、紛れもなく現在のシーンをリードするバンドの1つになったと言えるだろう。そんな彼らが完成させた今作『CARPE DIEM(カルペ・ディエム)』のタイトルは、ラテン語で「その日を摘め(=今この瞬間を楽しめ)」という意味を持つ。過去にすがるわけでもなく、未来に過度な期待をするわけでもなく、常に“今”を全力で闘ってきた15年。その積み重ねが新たなる名作を生み出し、未だ見ぬ高みへと続く道を作ってきたのだ。裸の自分たちを見つめ直す中で作り上げた傑作を手に、NIGHTMAREはもう次の一歩を踏み出している。

 

「“今”っていうのは、過去にも未来にも地続きのものじゃないですか。将来の不安とかについて人それぞれ考えたりすると思うんですけど、結局それって今をどう過ごすかによって変わってくるところで。大事なのは今でしかない」

「やっぱり自分にないものを、それぞれのメンバーが持っていると思うから。そういう新鮮さは毎回欲しいし、必ずどこかにはあって。そこが尽きないのは良いなと思います」

●今年で結成15周年を迎えたということで、やはり感慨があったりするものでしょうか?

咲人:感慨が…というよりも、知らない間に経っていたという感覚のほうが大きいですね。10周年の時もそうだったんですけど、気付けばいつの間にか…という感じで。周りが「周年ですね」と言ってくれることで気付かされるというか、意外と本人たちはそこまで意識していないことが多いんですよ。

Ni~ya:10周年のほうがまだ実感はあったかな。「よっしゃ! 10年やった!」という達成感があったから。それ以降はもう「今、何年目?」みたいな感じで、よくわからないですね(笑)。

●そこまで活動年数を意識しているわけではない。

咲人:そうですね。だからバンド自身は、そんなに肩肘張っていなくて。「よく続いたね」くらいの感覚なんです。正直、このバンドを始めた時点では「すぐ終わるだろうな」という気持ちがどこかにあったので…。逆に「未来はわからないものだな」ということを最近は感じています。

Ni~ya:いずれ終わるものですからね。だから「終わるまでに自分たちがどれだけできるか?」っていうところじゃないかな。

●“終われ”というM-3「TABOO」のサビが顕著ですが、今回は“終わり”に関する言葉が多いですよね。

咲人:特にRUKAの歌詞に多いかもしれないですね。

●とはいえ、咲人さん作詞のM-13「Tao」(通常盤のみ収録)にも“終焉(おわり)”という言葉が出てきますが…。

咲人:確かに。“終わり”とか“終末”を予感させる言葉が好きなんでしょうね。たぶん終わらせたいことがいっぱいあるんじゃないかな…(笑)。

●ハハハ(笑)。でも歌詞をよく読むと、1つのものを終わらせてまた新しいことを始めようという意図のほうが強いのかなと。

咲人:よく言われることなんですけど、創作というのは“壊して作って”の繰り返しだという実感がすごくあって。「ああでもないこうでもない」と言いながら、どんどん新しいものを作っていくわけで。だから一見したら否定的に見える言葉だとしても、そこに含ませた意味は決して否定的な意味だけではないんですよね。

●バンドとしても今まで培ってきたものを伸ばしつつ、古い部分を壊して新しいものを作っていきたいという気持ちもある?

咲人:むしろ、そっちのほうが大事かなと思っているんですよね。

●だからこそM-1「Siva」でも“siva 燃やしてくれ 歪みすぎた この全てを 無にして 産まれ変わろう”と歌っているわけですよね。

咲人:「今のおまえを終わらせろ」っていう感じもあるのかな。それで何か新しいことをやりたいですね。

●そんな想いが今作のタイトル『CARPE DIEM』(=「その日を摘め」という意味のラテン語)にもつながっているのかなと。

咲人:ラテン語の格言で、意訳すると“今この瞬間を楽しめ”みたいな意味なんですよ。“今”っていうのは、過去にも未来にも地続きのものじゃないですか。将来の不安とかについて人それぞれ考えたりすると思うんですけど、結局それって今をどう過ごすかによって変わってくるところで。大事なのは今でしかないというか、そういう意味をタイトルには込めましたね。

●“とりあえず今を楽しもう”という快楽主義的な意味ではない。

咲人:でもそれも否定はしないというか。人によって捉え方も違うだろうし、いつも多角的な意味で捉えられるような言葉をタイトルには使うようにしているんです。考える余地を残すというか、言葉そのものの意味だけではないですね。それは歌詞にも共通していて。たとえば“君と僕”という言葉が出てきたとしたら恋愛の歌詞にも捉えられるかもしれないけど、それだけの意味でもない。

●今回は『CARPE DIEM』というタイトルで「Siva」やM-6「入滅-entering nirvana-」という曲名もあったりして、宗教や哲学的な匂いも強い気が…。

Ni~ya:言われてみたら、確かにそういう気もしますね。歳を重ねて、信心深くなっているのかな(笑)。

咲人:そこはかとない宗教感が漂っている…(笑)。

●歌詞は主にRUKAさんと咲人さんによるものですが、テーマを話し合ったわけではない?

咲人:自分以外のメンバーが書いている歌詞(の内容)に関しては、知らなかったりもするんですよ。でも図らずも、共通するワードや似ている表現の仕方があったりして。意識せずに出てきているので、そこはやっぱり同じ釜の飯を食ってきた感じがしますね。

●M-5「Quints」の曲名は“五つ子”という意味ですが、これはメンバー5人のことを指している?

咲人:そうですね。これは自分たちに対する警鐘の意味もあったりして。

●警鐘?

咲人:人間って、自分自身のことが一番わからなかったりするものだと思うんですよ。それをもう1回見つめ直すというか。性格もそうですけど、周りの人間や環境によって作られる部分も大きいと思うんです。長くやってきた中で「元々の純粋な裸の自分たちは何を思っていたのか?」っていうことを最近すごく考えるんですよね。この5人でバンドをやっている意味について考えたりする機会が多くて。

●15年続けてきた今、改めてバンドや自分たち自身を見つめ直している。

咲人:あと、集団で過ごす意味や組織に属している意味というのを考えていて。たとえば仕事に関してもそうなんですけど、「自分が思っていたものと違うから辞める」というのは違うと思うんですよ。理想どおりの場所なんて絶対どこにもないし、それは自分たちで作るものだから。

●自分の中で勝手に思い描いていた理想と現実とは絶対にどこか違うわけですからね。

咲人:そう思いたくないんだったら、やっぱり好きなことを仕事にするべきじゃないなと。嫌な部分は絶対にありますからね。やらないほうが、もしかしたら夢見ていられたかもしれない。

●今作の歌詞はそういう“嫌な部分”にも目を向けて書かれている感じがします。

咲人:きれいなところだけじゃなくて、汚い部分も含めての人間だと思うから。それを否定する必要はないと思うんですよ。基本的に歌詞には自分の中で渦巻いているものが出ちゃうから、そこで鬱憤を吐き出している感じというか(笑)。

●たくさんの文字が重ねられた今回のアーティスト写真も、色んな想いが内面から溢れ出しているかのような…。

咲人:アートワークに関しても今回は自分たちの作ったものを前面に出したいという気持ちがあって、(アーティスト写真に写っているテキストは)どれも収録曲の歌詞なんですよ。小手先の何かカッコ良さそうなものとかじゃなくて、今回はもう少しバンドの内面に突っ込んだ部分を表現したいなと思っていたから。そういう中で歌詞を前面に打ち出すというのは今までやったことがなかったので、「じゃあ、やってみようかな」と。

●ここまでのお話を聴いてみて、今回は特に歌詞へのこだわりが強いのかなと感じたんですが。

咲人:曲を聴いている時に、歌詞は聞き流しちゃう人が多いと思うんですよ。人にもよると思うんですけど、自分もそうだったりするから。でも日本人は特に歌詞を重要視する部分もあると思うので、今回は改めて自分たちの歌詞をもう少し突っ込んで見てみようという感じでした。逆に聴いてくれている人たちにも見て欲しいというところはありましたね。

●そういう中でM-11「the DOOL」とM-12「極上脳震煉獄・弐式」は歌詞のメッセージ性というよりも、ライブでの盛り上がりを重視した曲かなと。

咲人:「曲で何かを伝えよう」ということじゃなくて、「ライブでファンが楽しめるようなものを」というところは意識しましたね。特に「極上脳震煉獄・弐式」に関しては小難しい言葉をいっぱい使っていますけど、中身は何もないですから(笑)。仮タイトルが「ヘドバン天国2」だったんですけど、もうそれだけというか。

Ni~ya:完全に暴れるためだけの曲です(笑)。

●前作に「極上脳震煉獄・弌式」が入っていますが、最初からシリーズものとして考えていた?

咲人:何となく「続けばいいな」とは思っていました。昔は「ジャイアニズム」という曲のシリーズがあって、それを終了させたのでちょっと寂しさがあったというか(笑)。「シリーズものがあれば、1つの楽しみになるよね」というところで始めた新たなシリーズなんです。

●「ジャイアニズム」は10曲まとめて、10周年時にアルバム(『GIANIZM』)にまでなりましたからね。

咲人:「ジャイアニズム」みたいに10曲までは続かないですけど、続けられる限りはやりたいですね。

●この曲のように、あえて意味がない歌詞を書いたりもする。

咲人:そこを逆手に取るのも面白さかなと。「いかに難しい言葉を使って、中身のない歌詞にするか」という言葉遊び的なところはありますね。海外のメタルバンドの歌詞って、実は中身が全くないようなものもあったりするじゃないですか。

Ni~ya:中学校の時に曲を聴いて「カッコ良い! これってどんな歌詞なんだろう?」と思って見てみたら(内容がなくて)「ええ〜!」ってなる感じ(笑)。海外のメタルバンドは特にそういうものが多くて、ああいうのが子どもながらに衝撃だったんですよね。

●それを自分たちでもやってみたと。この曲に続いて通常盤でラストを締める「Tao」は、逆にすごく深い意味を感じられる歌詞ですが。

咲人:この曲は今作の中で一番古い曲かもしれない。だから、わりと真面目なことを歌っていますね(笑)。

●最後に“道は続いていく”というフレーズもあったりするので、てっきり15周年という節目を意識した歌詞だと思ったんですが…。

咲人:図らずもそうなったというか。意識せず、きれいにまとまった感じなんですよ。こういう内容だから(通常盤の)最後に持ってこようと思ったわけでもなくて、何となく曲順の並びを考えていた時に「この曲が最後かな」と。それによって全体の意味合い的にもまとまりましたね。

●作品自体も最初から節目を意識して作ったわけではなく、結果的にそういう意味も含むものになった。

咲人:最終的にちょっと意識したりはするんですけど、作り始めた時点では考えていなくて。そこは15年ずっと変わらないところで、作り始めはコンセプトやテーマを何も意識していないんです。曲が出揃った時に「この曲たちに共通するものは何だろう?」ということを考えてから、大枠を決める作業のほうが多いかもしれない。最後のつじつま合わせでそういうニュアンスを含ませたりもしつつ、作品に関してはもう少しフラットに作っている感じですね。

●今回の作品に向けて、どのくらいの曲数を作ったんでしょうか?

咲人:デモに関しては(収録曲数の)1.5〜2倍くらいはあったんじゃないかな。その中から各々がやりたい曲を選んだ後で、(スタッフなど)メンバー以外の人間も加えて選んでいった感じです。

Ni~ya:(曲ごとのイメージが)大きくズレてはいないにしろ、もちろん1曲1曲のキャラクターは違っていますからね。

●曲調もある程度の統一感を意識したりはする?

咲人:自分たちは昔から様々な曲調があるバンドなので、そのあたりは重視していないんですよ。(先にできた曲とは)真逆に思える曲が出てきても、それ単体で聴いてみて良かったら採用したりしますね。

Ni~ya:「これをやっちゃダメ」というものはないんです。

●「入滅-entering nirvana-」はちょっと童謡的な懐かしい響きもあって、面白いなと思いました。

咲人:昔の日本の曲みたいなイメージはありましたね。全然知らないはずなのにどこか懐かしいと感じることってあると思うんですけど、そういうところはちょっと意識しました。

●曲名の字面だけ見るとハードな曲調かと思いきや、すごく穏やかで…。

咲人:まさに涅槃(ねはん/ニルヴァーナ)ですよね。死を考える時って誰にでもあると思うんですけど、自分はできるだけ穏やかなほうが良いなって。そういうことを色々と考えていたら、ハードな曲調からは遠ざかりましたね。ディスコビートなんですけど、上モノは全然違うっていう。

●ちなみに今回Ni~yaさんが作った曲はないわけですが、作ってはいたんでしょうか?

Ni~ya:別にサボったわけじゃないんですけど、自分の納得するものができなくて…。(制作していた)2014年はダメでしたね(笑)。

咲人:逆に俺は自分の中で納得していなくても、どんどん持って行っちゃうんですよ。他のメンバーが何とかしてくれるだろうと思っているから。もちろんスタジオに持っていくまでに、ボツになっている曲も山ほどあるんですけどね。

●全体の制作はスムーズだったんですか?

咲人:歌の録り直しとかが多かったりして、ギリギリでした。1回録ったけど、「もうちょっと良いニュアンスで」とか「違った表現方法で」というのが結構あったんです。

●歌にすごくこだわっていた?

咲人:やっぱり歌はバンドにとって窓口みたいなものなので、一番こだわらなきゃいけない部分かなと。特に作曲者は、なるべく自分がイメージする表現どおりに歌って欲しいというところがあるから。もう1回録ってグレードアップできるなら、そこに時間は惜しまないんです。

●自分の中で「こういうふうに歌って欲しい」というイメージが明確にある?

咲人:そこは明確に決まっている場合と、意外性で来て欲しい場合の両方があるんです。イメージを固定しすぎると自由度がなくなっちゃう場合もあるので、曲にもよりますね。

●逆にイメージが自分の中で固まっていないからこそ、良いアイデアを出して欲しい場合もあるのでは?

咲人:それもあります。基本的に制作って、そういうものだと思うんですよ。デモの段階では自分でベースを弾いていますけど、「あ、こうきたか!」というものがやっぱり欲しいから。基本的に、全部を決めてしまうことはないですね。

Ni~ya:昔からそういうものを求めるような空気があるんですよ。何か1つでも良いので、変化球を求められている感じというか。もちろんデモのとおりに弾くのが良い時もありますけど、1クセ2クセあったほうが曲としては絶対に良くなるから。

●デモのとおりに弾くのが良いとは限らない。

咲人:ヒドい時には、レコーディングでドラムのキメが変わっていたりしますからね。そこで被害を一番被るのはNi~yaなんですけど(笑)。

Ni~ya:「(デモと)違うんかい!」っていう(笑)。昔はそういうのになかなか対応できなかったんですけど、今はもう何が来ても大丈夫ですね。やっぱり15年やってきたわけで、それくらいできないと「今まで何をやっていたんだ?」っていうことにもなりますから。

●実際に今作の楽曲にも変化球的な仕掛けがいくつも入っている?

Ni~ya:結構ありますよ。どの曲でも「何かやらないと」っていう気持ちがあるから。

咲人:自分はベーシストじゃないので、(ベースラインを考える上でも)ギタリスト的なアプローチになっちゃったりするんです。だからメンバーに任せた部分に関しては、やっぱり新鮮味がありますね。

●15年やってきた今でも、メンバーから出るアイデアやフレーズに新鮮味を感じられているわけですね。

咲人:やっぱり自分にないものを、それぞれのメンバーが持っていると思うから。そういう新鮮さは毎回欲しいし、必ずどこかにはあって。そこが尽きないのは良いなと思います。でも音に関しては、小手先のことはしなくなってきているというか。飛び道具系のエフェクターを使わなくなっているし、Ni~yaに関してはエフェクターを全然使っていないんですよ。そこも「この5人が裸になった時に何ができるか?」みたいな感じで、シンプルになっているところがあるのかもしれない。

●サウンド面でも自分たちを見つめ直していると。

咲人:今回のアルバムは、バンドに立ち返っている部分が今までより大きいんです。自分たちの過去作へのオマージュも散りばめられていたりするので、ずっと聴いてきた人たちはすごく楽しめるんじゃないかな。なおかつ新しいチャレンジもあったりして、自分たち的にも新鮮な部分があるんですよね。聴きどころは本当に色々ある作品になったと思います。

●今回の作品を聴き込んで来れば、ツアーもより一層楽しめそうですね。

Ni~ya:今回のアルバムは内容的にもすごくライブ向きだなと感じているんですよ。自分がライブでやるのも楽しみですし、これを聴いてライブに来てくれた人たちにも楽しんで欲しい。とにかくしっかり聴き込んで、ライブに来て欲しいですね。

Interview:IMAI

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