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Mellowhead

比類なきポップセンスと妥協なきサウンドメイキングが結実した極上の最新アルバム

PH_MellowheadPLAGUESとGHEEEでのフロントマンとしての活動はもとより、数々の作家/プロデュースワークや超絶ギタリストとしてのサポートワークなどでも八面六臂の活躍を続ける深沼元昭。彼の活動の中核とも言えるソロプロジェクト、Mellowheadが通算5作目となるニューアルバム『Kanata』を完成させた。前回の4thアルバム『Daydream weaver』のリリースからは何と6年ぶりということで、まさしく満を持しての新作と言えるだろう。過去作でも及川光博や佐野元春といった多彩なボーカリストをフィーチャリングに迎えてきたが、今作でも豪華なアーティストたちによる客演が実現。片寄明人(Great 3)、西寺郷太(NONA REEVES)、堀込泰行(ex.キリンジ)という面々を迎え、それぞれの魅力を最大限に引き出すようなサウンドメイキングが施されている。自らの核となるプロジェクトであるからこそ音も歌詞も細部まで徹底的にこだわり抜いて作り上げられた収録曲は、いずれも珠玉の名曲と呼ぶにふさわしい。ファンにとっては6年間待った甲斐のある傑作にして、新たに知るリスナーに向けても最高の入口となるであろう極上の1枚が誕生した。

 

「職業として音楽をやってきた中で本当に“今が一番楽しいな”と思える時期がここ数年はずっと続いていて。予想もつかないことが起こってきたし、これからも何が起こるかわからない。そういう中で“自分が音楽をやっていくということ”そのものが、今回の歌詞にはすごく出てくるなと思いますね」

「Mellowheadに関してはある意味、先が見えていないんですよ。ただ、その時の自分が“こういうものを作りたい!”という気持ちが強すぎて。自分にすごく近いところにあるので、良い意味で客観視できていないんですよね。そこが他のプロジェクトと一番違うところなのかな」

●前作の4thアルバム『Daydream weaver』を出したのが2009年ということで、Mellowheadとしては6年ぶりの新作になりますね。

深沼:随分と長く空きましたよね。毎年がんばって何かは出しているのに、Mellowheadの順番がなかなかまわってこなかったっていう(笑)。GHEEEもPLAGUESも他のメンバーがいるし、(リリースすれば)ツアーもやろうということになるのでどうしてもそっちを優先してしまいがちなんですよ。

●去年の2月に下北沢CLUB Queでやった4年超ぶりのワンマンライブあたりから、今回の『Kanata』に向けて動き始めたんでしょうか?

深沼:そのあたりから「そろそろ新譜に向けて考えようかな」という感じでしたね。でもその後もすごく忙しくて、結局は土壇場で一気に曲を作るような状況になってしまったんですけど(笑)。

●今年の1月にも東京と大阪でワンマンライブをやったわけですが、その時にはもう完成していた?

深沼:その時点では、まだ完成していなかったですね。ただ曲はできていたので、その時のライブでもM-1「逆光のせい」とかはやっていました。

●あのライブは、今年はMellowheadで動くという宣言的なものだったのかなと思ったんですが。

深沼:そういう部分はありましたね。M-2「その予感」も一昨年くらいにはできていたので、その時のライブでもやって。

●曲作り自体はずっとやっていたんですか?

深沼:作り始めては止めて…の繰り返しでした(笑)。「Mellowheadもぼちぼちやらないとな」と思って何曲か作るんですけど、すぐに他のプロジェクトのリリース話やプロデュースの仕事が入ってきて「とりあえず今はここまでにしておこうかな」となるんです。でも次に作業に入った時にはもう自分の中でモードが変わっているので、「また1から始めようかな」という感じになってしまうんですよ(笑)。やっぱりその時のモードで曲を書いているから、あんまり生き残らないですね。

●そういう中でも生き残ったものというと?

深沼:M-5「スパムの森」やM-6「Come together」、M-9「乾いた涙無駄にならないように」やM-12「手の温度」あたりは古い曲ですね。「乾いた涙〜」が一番古くて、『Daydream weaver』よりもずっと前からあったと思います。

●「スパムの森」は古くからあるんですね。

深沼:この曲は、ストラト(※フェンダー・ストラトキャスター)を買った時に書いたんです。僕はこれまでストラトを持っていなかったんですけど、一度使ってみたいなと思って。ミュージシャンというのは新しい楽器を買うと、必ず曲ができるものなんですよ。せっかく買ったのでよく弾くからだと思うんですけど(笑)、その時に何曲か作ったうちの1曲ですね。だから「スパムの森」のギターは、基本的に全部ストラトで録っています。

●「手の温度」は、いつ頃にできた曲?

深沼:これは3年前くらいですね。鍵盤で作った曲なんですけど、最初はピアノ弾き語りでやれたらいいなと思いながら作っていたんです。元々はCのキーで書いていたんですけど、それだとすごくPLAGUESっぽかったんですよ。だから途中で半音落として、Bにして。実際に弾き語りのライブでもやっていたのでファンの方はよく知っている曲で、次のアルバムには絶対入れようと思っていましたね。

●そして「乾いた涙〜」が一番古いとのことですが。

深沼:「乾いた涙〜」は元々「コーラフロート」というタイトルで、歌詞も違っていたんです。ファンの方からはライブですごく人気があったんですけど、自分としてはいまひとつ納得いかない出来だったんですよね。歌詞が適当というかナンセンスな感じで、書き換えようとは思いつつ(歌詞とメロディの)ハマりだけは良かったから「別の言葉だとハマらないんだよな〜」と思いながら9年が経過して(笑)。

●それが今回、入ることになったのは?

深沼:今回はもう1から考え直そうと思って、歌詞を書き直したんです。打ち込みのソフト音源も変わっているので、音も全部作り直して。わりと1から構築し直した結果、今回のものになったという感じですね。元から生き残っているのはギターソロだけで、あとは全部新しくしました。

●9年前に作った曲ということは、まだ打ち込み主体のプロジェクトとして動いていた頃ですよね?

深沼:そうですね。だから今回もこの曲を生音に翻訳しようかとも思ったんですけど、せっかくがんばって作ったものだからこれは打ち込みのままで行こうと思って。

●「乾いた涙無駄にならないように」というストレートな感じのタイトルは、深沼さんの曲では珍しい気がします。

深沼:そうなんですよね。でもMellowheadに関しては、自分自身に一番近いプロジェクトじゃないですか。“自分そのもの”みたいなものなので、歌詞に関しても今回はなるべくストレートなものを出していこうという想いがあって。

●PLAGUESやGHEEEとは歌詞の書き方が違う?

深沼:そっちでは、バンドのコンセプトに対して歌詞を書き下ろしているという感覚があるんですよ。自分がそのバンドの3分の1や4分の1であるという役目をしっかり果たすというところが、楽しさだと思っているから。でもMellowheadの場合はそれがないので、歌詞を書くのにも意外と時間がかかるんです。何かに合わせるという明確なテーマがないと、自分そのものだという想いのほうがどうしても強くなって…。

●自分自身を歌詞に投影するというか。

深沼:最初から意図していたわけではないんですけど、今回は歌詞の中に共通するテーマがあるなと思って。昔思い描いていた自分の未来や「こうなりたい」と思っていたこと、そして今現在があって、今の時点から考える未来がある。そういったことに対する自分の想いをテーマにしたような歌詞がすごく多いんですよ。だから、ある種の憂いを持ちつつも最終的には前を向けるようなアルバムにしたいなっていうのは自分の中で漠然と考えていましたね。

●ちょうど、そういうことを考えているタイミングだったんでしょうか?

深沼:元々、自分の歌詞に共通する1つの作風ではあるんですけど、今回は素直に書こうと思ったことでより強く出たんじゃないかな。自分としても25年以上も音楽をやってきて、世の中に出てからでも20年を超えてしまっている。これだけ長くやることをイメージしていなかったので、「こういう人生になったか…ちょっとビックリだな」みたいな想いが常にあって(笑)。

●想像していなかったことだけれども、前向きには捉えられている。

深沼:音楽業界自体はすごく大変なんですけど、職業として音楽をやってきた中で本当に「今が一番楽しいな」と思える時期がここ数年はずっと続いていて。(東日本大)震災もあったので、人が生きていく上でそこまで不可欠ではないものをやって飯を食っていることに対して色々と考えつつも「これで生きていけるのなら、これが自分にとって一番の生き方なんだな」とより強く思うようになってきたんです。予想もつかないことが起こってきたし、これからも何が起こるかわからない。そういう中で“自分が音楽をやっていくということ”そのものが、今回の歌詞にはすごく出てくるなと思いますね。

●今までGHEEEやPLAGUESの作品についてインタビューさせて頂いた時は、歌詞については直接的に自分の心境や想いを反映させていないという答えが多かった印象なので、ちょっと意外な気がします。

深沼:そういうところは(他の関わっているバンドとは)すごく違うなと思います。あと、古い曲を除いては短期間で一気にまとめて書いたというのもあって。去年の12月に歌詞も含めて一気に仕上げたから、そういうスピード感はあるのかもしれない。ほんの数カ月前にまとめて書いたものだから。

●その時の心境がどの曲にも反映されているぶん、歌詞に一貫性が出ているというか。そういう意味ではM-3「Silent bliss」は竹内宏美さんが作詞を担当しているので、ちょっとニュアンスが違いますよね。

深沼:「Silent bliss」は元々、MUSEE PLATINUMのCMソングのお話を頂いて作った曲で。最初は歌も竹内さんに頼んで女性ボーカルで作っていたんですけど、後から「やっぱり男の声にしようか」という話になったんです。でもその頃には僕が他の仕事で忙しくなっていて、全然対応できなくて…。それでAPOGEEのVo./G.永野(亮)くんを紹介してもらって、(CMソングのほうは)歌ってもらったんです。今回はアルバムに入るということで、本来は30秒くらいの作品だったものをアレンジし直して長くして、歌詞も書き足してもらいました。

●M-8「残像の部屋 (feat.西寺郷太)」は、歌詞も共作になっていますが。

深沼:(西寺)郷太くんの弟がやっていたSUNKINGというバーがあって、僕らはそこによく集まっていて。そこで色んな人と出会ったりもして、“大人の部室”的な感じの良いバーだったんですよ。でも事情があって閉店することになったので「そういう場所がなくなっちゃったな」みたいな想いで書いてみたらどうだろうかという話が、郷太くんとテーマを話し合っている中で出てきたんです。まず最初に僕がちょっと書いて、そこに郷太くんが書き足して、最終的に2人でまた話し合って…という感じでガッツリ合作して書いた歌詞ですね。

●“残像の部屋”というのは、そのお店のことだったんですね。

深沼:そんな感じで自分たちが青春を過ごした象徴になるような場所が、みんなにもあると思うんですよね。そういう場所を思う歌というか。

●この曲もそうですが基本的に作曲はどれも深沼さんなのに、フィーチャリングしている人のオリジナル曲かと思うくらいイメージに合っていて。

深沼:郷太くんや片寄(明人)くん、(堀込)泰行くんの曲をとにかく聴きまくって、一番良い声が出ている場所とか良い節回しとかを自分なりにがんばって研究したんです。彼らが歌って一番光るような曲ということをすごく考えて作りましたね。彼らに合わせて曲を書くことで僕自身も、自分の殻の中にきっちり収まらないようなものを出せるかなと思って。

●他の人のイメージを想定して曲を作ることで、自分という枠を超えたものを生み出せる。

深沼:あと、僕は人(の色)に合わせることに喜びを感じるほうなんですよ。自分の色をどう出すかというよりも、彼らが歌った時に光るためにはどういった曲調や音で、どういうアンサンブルにしたら良いのかなと考えるのがすごく楽しいんですよね。

●M-7「Memory man (feat.片寄明人)」も片寄さんらしさが光る曲というか。

深沼:元々はコンピレーション盤(『無限35』2009年)に入っていたもので、“片寄明人 with 深沼元昭”名義で1回リリースしているんですよ。その時は完全に打ち込みのトラックを僕が作っていたんですけど、今回はそれを生バンドで全部録り直してアレンジも少し変えていて。2回目なので、完成度はより追求できたかなとは思いますね。

●こういうアダルトな感じの歌詞も片寄さんならではという感じがします。

深沼:さすが片寄くんという感じですよね。でも面白いのは、郷太くんも片寄くんもMellowheadに合わせて歌詞を書いているんですよね。それは彼ら自身が言っていて。僕の作る音はソフトサウンディングでも、わりと無骨でハードボイルドらしいんですよ。甘さよりも苦さが勝つというか。彼らはそういうところを意識して、歌詞を書いているそうなんです。

●深沼さんがそれぞれの色を意識したように、2人も深沼さんのイメージを意識して歌詞を書いている。

深沼:それぞれにキャリアがあって、お互いを見てきた時間も長いですからね。今までにたくさんの人たちを相手にして音楽をやってきたからこそ、一生懸命になって自分の色を出すというよりも溶け合った時の面白さというものを楽しめる。大人のミュージシャン同士なので、合わせていくことが楽しいというか。そのせめぎ合いが楽しいというところもあって、やっていると思いますね。だから“いかにも片寄くん”という歌詞に僕からは見えるんだけど、片寄くん本人は“Mellowhead的な自分の歌詞”だと思って書いていると思うんですよ。

●お互いの色を理解した上で融け合うという、本当の意味での“コラボレーション”になっている。

深沼:そういうところはあると思いますね。

●M-4「未完成 (feat.堀込泰行)」に関しては、作詞/作曲共に深沼さんですが。

深沼:これに関しては泰行くんから「歌詞も曲も全部お任せして、それを歌います」という話があったんです。キリンジや馬の骨(※堀込泰行によるソロプロジェクト)の音源も聴いていて、声の感じとかが自分には絶対にないものなのですごく魅力を感じていて。色んな集まりで会う度に「今度、Mellowheadでも歌ってもらいたいんだけど」という話はしていて、今回は満を持して歌ってもらった感じなんですよ。だから、ここはビシッと良い曲を作らないといけないなということで作ったのが「未完成」で。実は他にもたくさん書いたんですけど、生き残ったのがこれでしたね。

●他にも候補曲は作っていたんですね。

深沼:自分で書いて「これはちょっと違うだろう?」とか、すごく悩んで。

●声の特徴が最も活きるものを選んだ?

深沼:そうですね。泰行くんのモノマネで歌ったりしながら作りました(笑)。

●ハハハ(笑)。でも確かに、特別な声ですよね。この曲の歌が始まった瞬間に空気が変わるというか、すごくドリーミーな感じがします。

深沼:こういう声って、他にいないですよね。僕も「何なんだろう、これは!?」っていう感じで、あの声にすごく魅力を感じていて。その声が自分の曲で使えるということで、作曲に関してはすごく考えました。「泰行くんならこういう歌い回しのほうが良い」とか考えて、発音や発語の感じでどんどん直していったんですよ。だから彼に聴かせるまでに作った、ものすごい数のボツバージョンがあるんです(笑)。

●今回はdisc 2のほうで同じ曲を深沼さん自身が歌っているバージョンも収録されているので、声の違いを聴き比べる楽しさもあるかなと。

深沼:今回は色んなゲストに歌ってもらったので「自分で歌うとこんな感じですよ」というのを見せたくてdisc 2に入れてみたんですけど、本家のボーカルにはまるで及ばないですね(笑)。でも逆に、それだけ彼らに合わせた良いものを作れたんだなと思っているんです。彼らの声とか今まで培ってきたアーティストイメージに合わせたものを作ったわけなので、自分で歌っても及ばないのは当たり前だなと。そういう想いもあって、あえて(自分のバージョンを)入れました。

●それぞれのアーティストをイメージして作った楽曲として、その完成度の高さがわかる。

深沼:そうですね。僕が歌った「Memory man」なんて片寄くんのモノマネみたいな感じになっているんですけど(笑)、それで良いんだなと。それだけ彼が書いた歌詞や節回しだったり、「未完成」でパッと泰行くんの声が出てきた時のインパクトとかが上回っているということだから。そういう指標として、聴いてもらえれば良いかなって思います。

●対比でいう意味では、ラストがM-13「逆光のせい (reprise / feat.堀込泰行)」で終わるというのも面白いですよね。

深沼:これは最初から2人でそれぞれ歌おうと思っていたんですよ。今回はようやく泰行くんに歌ってもらえるというのもあって、あえて同じ曲を2人でそれぞれ歌おうと。この曲に関してはdisc 2のセルフカバーとは違って、自分バージョンは自分なりに歌っていて。逆に泰行くんバージョンは、泰行くんに合わせたアレンジをするっていうのに挑戦してみたかったんです。というのもあって、この曲をアルバムの1曲目とラストにするというのは最初から決めていましたね。

●この曲が今作のキーになっていると思うんですが、歌詞も『Kanata』というアルバムタイトルにつながる内容かなと。

深沼:このアルバムのジャケットで使っている写真は、『Daydream weaver』の時には既にあったんですよ。写真家の方からアートワークで使えるような写真を色々ともらっていた中でこの写真は特に好きだったので、いずれ何かのジャケットで使いたいなと思っていたんです。アルバムタイトルも、この写真から導かれたようなところがあって。さっきも話した“憂いを持ちつつも前に進んでいきたい”というテーマが今回はあって、「逆光のせい」はまさにそういう歌詞なんですよね。そういう意味でもアルバムの冒頭はこの曲にしたいなと思っていたし、それを最後に泰行くんにも歌ってもらおうというイメージはありました。

●今回は色んなコラボレーションも含めて、すごくバラエティ豊かな感じがします。

深沼:でも僕自身は普段から色々な仕事をやっているので、このくらいだとそんなにバラエティに富んでいるとは感じないんですよ。突然ダブステップが出てきたり、突然メタルになったりするわけではないから(笑)。そのへんはちょっと感覚が麻痺しているところがあるので、自分の中ではそこまで幅は広くないなという感じですね。

●とはいえ、disc 2のM-5「Leviathan」は異色じゃないですか?

深沼:この曲は全体的にめちゃくちゃ不気味なんですよね。ヴォコーダーで歌っているし、自分でも「気味の悪い曲を作っていたな…」っていう(笑)。これは2ndアルバムの『Untitled』(2004年)の未発表曲で、その時のデモを使っているんですよ。1stアルバム『Mellowhead』(2003年)を作った直後にできたんですけど、そこからもう少し歌モノ寄りになっていったので『Untitled』には結局入らなかったという感じですね。

●曲として完成はしていたと。

深沼:完成はしていたけど、「これはちょっと入れられないな」っていう感じだった(笑)。今リメイクしたら面白そうなものはないかなと思って過去のデモを探していたら、これが見つかって。でもリメイクするよりもこのままがいいなと思ったので、ミックスだけは全部やり直して収録したんです。

●そういう曲も入っているというところで、disc 2のほうはまさに“bonus disc”なわけですね。

深沼:そうですね。bonus discのほうに関しては、さすがにここまでくるとバラエティに富んでいるなって思います(笑)。「Convertible (feat.片寄明人 2015 New mix)」(disc 2/M-2)みたいな4つ打ちの感じも10年前くらいはよく作っていたんですけど、今は作らないですからね。

●“2015 New mix”と表記されている曲に関しては、ミックスだけをやり直した感じでしょうか?

深沼:ミックスだけ変えました。あとは打ち込みのデータが残っているものが多かったので、音色は今のソフトを使って全部差し替えましたね。

●これまでのコラボレーション曲を今作で再録した理由とは?

深沼:今までに色んな人たちが歌ってくれたので、あえてそういうものを集めてみたという感じですね。単純に久しぶりのリリースということもあって、こういったものも入れられたらなと。あとは今回の作品で初めて知ってライブに来る人もいると思うので、最初の1枚として良いものになるかなと思って。

●以前のインタビューで『Daydream weaver』からが第2期Mellowheadということを話されていましたが、今作はどういう位置付けなんでしょうか?

深沼:随分と間は空いたんですが、今回も『Daydream weaver』の流れですね。(リズム隊の)メンバーも同じだから。それ以前のアルバムに関しては、個人でのサウンドプロダクトを前面に出していたわけじゃないですか。そことは違って(バンドとしての)メンバーがいる上で、なおかつソロプロジェクトとしての音作りをするというのが第2期というか。そういうMellowheadの続きだとは思っていますね。音作り的には『Daydream weaver』の延長線上で作っているという意識はありました。

●特にBa.林(幸治/TRICERATOPS)さんとDr.小松(シゲル/NONA REEVES)さんとはもう長くやっているのも、良い方向に出ているのでは?

深沼:林くんはPLAGUESでも一緒にやっていますからね。小松くんも佐野(元春)さんのツアーを一緒にまわったりしていて。この2人は、僕が考える国内で最高のリズムセクションなんですよ。彼らがいるからこそ、「がんばって曲を作って、良いものに仕上げよう」と思える。作っている時にもう(2人が演奏することを)想像するので、最初から小松くんが叩きそうなオカズでデモを作っちゃったりするんです。そういうのがモチベーションにつながっているところはありますね。

●2人の存在が、良い曲を作るためのモチベーションにもなっている。

深沼:バンドの力ってすごいなと思うのが、たとえば今回の「Come together」みたいな曲で。これはすごく簡単な曲を作ろうと意識して、コードも3つくらいで作ったものなんですよ。それが今でもちゃんと残っていてライブでもやっているというのは、メンバーがこういう曲があることの意図を理解して、すごく魅力的なプレイをしてくれているというのが大きいんですよね。まだリリース前にもかかわらずライブでやっても盛り上がっているので、やっぱりバンドの力というのは感じますね。

●そういう曲も含めて、結果的にはこの5年間のベストアルバム的なものにはなっているのかなと。

深沼:自分の中では完全にそういう感じですね。ただ、リスナーはここで初めて聴くわけなので、Mellowheadとして良いアルバムに仕上げないといけないなというところで音作りや曲の並べ方はすごく考えました。今回はマスタリングに手間暇をかけすぎてしまって、結局3回ボツにしているんですよ。4回もマスタリングをするって、周りから見たらもう完全に狂人だと思います(笑)。

●ハハハ(笑)。

深沼:Mellowheadが一番、狂うんです。ものすごく理想が上がってしまうから…。自分でレーベルをやっている立場から見ても、Mellowheadが一番面倒くさいアーティストなんですよね(笑)。

●自分のことだからこそ、すごくこだわってしまう。

深沼:作っていると、良い意味で“我を忘れる”んですよ。すごく自分に近いところを出しているという意識があるから。一番面倒くさいけども、作っている時の心血の注ぎ度合いが他とはちょっとベクトルが違うんですよね。他も一生懸命やっているんだけど、やっぱりそのバンドのイメージとかを総合的に考えてやっているところがあるから。

●他のバンドでは、もう少し客観的に全体を見ているというか。

深沼:良い意味で、もっと先まで見えているんでしょうね。Mellowheadに関してはある意味、先が見えていないんですよ。ただ、その時の自分が「こういうものを作りたい!」という気持ちが強すぎて。自分にすごく近いところにあるので、良い意味で客観視できていないんですよね。そこが他のプロジェクトと一番違うところなのかなと思っています。

●ちなみに、次作までにはまたしばらく間が空きそうな感じでしょうか?

深沼:それはどうなるかわからないですね。「すぐ作ります!」と言っておいて結局、また間が空くのかもしれないし(笑)。たとえば「PLAGUESも『CLOUD CUTTER』(2012年)からは期間が大分空いている」とか言われたら「じゃあ作るか」となるし、それを作り終える頃には今度はGHEEEも「前作から大分空いている」という話になるから…。そういうのを繰り返している中で結局、間が空いているだけなんですよね(笑)。

●順番待ちになっている(笑)。しかも他にプロデュースワークもたくさんやっているわけで…。

深沼:それに加えて、佐野さんと長いツアーに出たりもしますからね。だからそんなに休んだ記憶はないけど、結果として5年空いたというだけなんですよ。

●Mellowheadに関してはあくまでもソロプロジェクトなので、もはやライフワーク的な感じというか。

深沼:そうなんですよ。だから、死ぬまでやるという感じですね。

Interview:IMAI

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