2014年7月からVo.犬神凶子の先天性股関節脱臼の手術のために活動を休止していた犬神サアカス團。その後も残されたメンバーで結成された犬神サアカス團Zでの活動や、“命”をテーマにした問題作『玉椿姫』のリリースなどを行い、粘り強く生き抜いてきた。そんな彼らが4/25から開催される“凶子復帰!比丘尼遊行2015”で、遂に本格的に活動を再開させる。今回、JUNGLE LIFEではそれを記念して、メンバーへのインタビューと同志からの祝福コメントを掲載。結成20周年というタイミングに突如現れた壁をも乗り越え、逆風を追い風に変え突き進む。唯一無二のアングラロックシーンの求道者に、休止の裏側から『玉椿姫』に込めた思い、そして今後の活動について訊いた。
●まずは凶子さん、復帰おめでとうございます。体調はいかがですか?
凶子:ありがとうございます。体調はすごく良いですね。今まで休みなく活動していたので、声帯にもタコができている状態でずっと活動していたんです。タコ自体は完全になくなっていないんですけど、それがだいぶ小さくなりました。休んだ分、良いこともありましたね。
●活動休止を発表されたのが2013年の年末ですが、このタイミングは前から決めていたんですか?
凶子:2013年の9月に(足が)痛いからって病院に行ったんです。そこで「すぐに手術しなきゃいけない」って医者に言われて、活動休止が決まったんですよね。
ジン:「すぐに」と言っても、病院自体がその病気の権威みたいな所で、予約をしても手術は数ヶ月後だったんです。「年末に(活動休止を)発表しても予約が取れるのは夏くらいだろう」ということで、夏までは変わらずに活動を続けたんです。
●痛みを押して活動をしていたと。
凶子:すごく痛かったですよ。でも、ツアーは車で移動するので「腰が痛い」とか「足が痛い」って。
情次:まあ、よくある話だからね。
凶子:ライブをたくさんやっていると、メンバー全員どこかしら痛いわけですよ。だからそのくらいで考えていたんですけど、シップを貼っても治らない。2時間のワンマンだと、終盤は立っているのがめちゃくちゃ辛くなってくるんですよね。足全体が辛くなってくるから「何かおかしい」と思って病院に行ったら、先天性股関節脱臼だったっていう。
●凶子さんは去年の12月に“「約束のあの場所で」〜玉椿姫先行発売興行〜”(以下“約束のあの場所で”)で、一時的に復帰をされましたよね。あの時はどうでしたか?
凶子:とっくに退院もして体調も良かったんですけど、何しろ歌うのが久しぶりだったんですよね。スタジオで何回もリハーサルをしていたんですけど、本番前のリハーサルでは全曲むせちゃって、一曲もまともに歌えなかったんですよ。「これ、大丈夫かね?」なんてメンバーと笑っていたんですけど。
情次:そこは理由があるし、まあ「ダメならしょうがないだろう」ですから。あの時は車いすに座って歌ったので、それも慣れていなかったでしょうし。でも本番は全然大丈夫だったんですよね。やっぱりプロだよね〜(笑)。
一同:ハハハハハ(爆笑)。
●情次さんはあの日のMCでもそんな絡み方をされていましたよね(笑)。やっぱり犬神サアカス團Z(以下Z)のボーカルをやっていらっしゃるということで…。
情次:凶子の活動休止中にメインボーカルで歌わせていただいていますから。まあ、ボーカルのことも分かるっつーかね。ハハハ(笑)。
凶子:ジョニーちゃん(情次)の歌がどんどん上手くなっていますね。もう独り立ちしようとしているでしょ?
情次:そうだね。ソロアルバム出すよ(笑)。
●ははは(笑)。去年12/17には『玉椿姫』のリリースがありましたね。あえてこのタイミングでお話を聞きたいと思いますが。
明:人魚の肉を食べて800歳まで生きた八百比丘尼(別名・玉椿姫)という伝説の尼さんがいて。彼女の悲劇は「自分は生きているんだけど、周りがどんどん衰退していってしまう」という。それでも八百比丘尼は生き残って、この先も生きなきゃいけない。そういうところをテーマにしました。
●八百比丘尼をテーマにしたのは何故なんですか?
明:去年結成20周年を迎えて、まず『青少年のための犬神入門』というベスト盤をリリースしました。その中に「絆」という新曲を収録したんですけど、それは「僕らが20年も続けてこれたのは、4人の絆があったからだね」という曲で。「絆」は、“陰と陽”で言うところの“陽”の部分なんですよ。“陰”の部分で言うと、20年やってきたことで多くのライバルを失ったり、死んでしまった人もいれば、別れてしまった人もいる。でも、そういう別れがあっても僕らは死ぬわけにはいかないんです。
●休止中にリリースされたこともあって、強いメッセージ性を感じました。例えばM-2「逃げろ!」の冒頭で“さあウジウジしてるヒマなんてないよ! せっかくこの世に生まれてきたんだ 桁はずれに生きてやるさ”という歌詞があったりして、心をグッと掴まれるというか。
凶子:実際、私が入院するって分かって、どうだった?
明:良いタイミングだと思いましたよ。何もなく活動休止するよりはドーンと打ち出せたし。活動再開のツアーだったり、そういうことってパワーになるじゃないですか。そういうタイミングとしても、テーマにピッタリ合ったと思います。自分の中でシナリオがあったわけではないんですけど。「これが良い」と思ってやっていくと偶然が重なって、どんどんそっちに寄っていってしまうんですよね。
●自然とそうなっていったと。現在、すでに新作の制作に入っていると聞きましたが。
明:そうですね。今レコーディングの真っ最中です。次回のアルバムはミディアムテンポの楽曲が多いんですよ。今までは攻撃一本で表現してきたものを違う尺度や方向性から表現して、それによってまた違うお客さんが聴いてくれる可能性もある。ライブに関しても、例えばお客さんが「立ち観が辛い」っていうことなら座って観れるライブハウスでやっていくとか。僕らがそういう選択してみたら面白いのかなっていう。
凶子:お客さんを見ていると10〜20代のお客さんもずっと来てくれているんですよ。そういう子たちは踊りたいけど、うちは50〜60代の方もいらっしゃいますから。
情次:僕らは芝居小屋でやっても良いと思うんですよね。そういうことを考えても良いですし。我々にしかできないことっていうのはいっぱいあると思う。
●あと、お客さんがみんな優しいですよね。“約束のあの場所で”では、お客さんがMCで凶子さんのために座ってくれていたりして、温かい空気が伝わってきました。
情次:こちらが提示したことを素直に受け止めてくださるというか。ありがたいなと思っています。これからもいろんな年齢層の方に楽しんでいただけるような企画を考えていきたいですね。
Interview:馬渡司
凶子さんの体調のことを慮れば手放しで「おめでたい」というのは無責任な気もしますが、「身体のほうが大切だから無理のない活動を!」と言うほうがいらぬお節介だと思いますので、とにかく活動再開おめでとうございます! ロックバンドがロックバンドらしく存続することが極めて困難な世の中になって参りましたが、お互い、最後の瞬間まで信念を曲げずに憚り続けましょう!
(瞬火/陰陽座)
先日、万有引力の『身毒丸』を観に行って感動したんですが、観ながら「ああ犬神凶子の歌を聴きたい姿を見たい」と、舞台上のおどろおどろしくもポップな光景に思わず凶子さんを連想。復帰を熱望したものです。そしたらついにカムバック決定とのこと。ウェルカム! おめでとう! やっぱり日本ロック界には彼女のあの独特な世界観が全体必要。無理せずジワジワとがんばってくださいね。また一緒になんかやろう!
(大槻ケンヂ)
犬神サアカス團は2つの顔を持つ。アングラとエンタメ。アングラのどぎつさは、観ていて心をナタで叩き割られるよう。けど、もう一度自分自身を考え直したくなる哲学がある。エンタメの愉しさは、ライヴ巧者って言葉がピッタリはまるくらいの盛り上げ上手。けど、笑顔のメンバーの内ポケットにはナイフが見え隠れしてる気がしてきて、ドキッとする。本来、真逆にあるその2つが同居する事で、中毒性を与えるバンドです。
(KIBA/Gargoyle)
凶子さん、復帰おめでとうございます! 自分も股関節が痛くてライブでの動きがぎこちない今日この頃ですが、なんとかやっています。お互い無理をせず、少しずつ動きを小さくしていこうじゃありませんか。長〜く活動することが一番大事、杖をついてでもロック漬けの人生を続けていきましょう。
(鈴木研一/人間椅子)
お帰りなさい 凶子ちゃん何時頃からでしょうか? 犬神サアカス團とtest-No.がご一緒する様になったのは、、楽屋でのあの雰囲気は自分の人生の中でも大切なひと時です。クソ下らない出口の無い会話…。そしてあまりの下らなさに、高らかに笑う 凶子ちゃん。良いんです。あの空気が。好きなんです、はい。これからもヨロシクぅぅ!
(岡本竜治 (RYO)/test-No. 夷狄 ZIGZO)
犬神サアカス團、そして凶子さん復活本当におめでとうございます!初めてご一緒させて頂いてからかれこれ8年くらい経ちますが、未だにこの方達の底が知れません。凶子さんの性癖。明さんのサブカルへの造詣の深さ。ジンさんの食への渇望。楽屋賑やかしおじさんこと情次さんの笑いへ探究心。濃すぎます。白塗り界だけではなく、日本のロックシーンに一際異才を放ち続ける犬神サアカス團を、我々NoGoD一同、心から敬愛しております。今後とも、末永く宜しくお願いいたします。
(団長/NoGoD)