2000年に結成以来、ザ・シックスブリッツはたびたび編成を変えながらも足を止めることなく進み続けてきた。昨年9月以降には他のメンバーが全員抜け、西島のみになるという一見危機的状況にも打ちひしがれることなく、現在も一人バンドとして精力的に活動している。そんなザ・シックスブリッツが1月に初の全国流通版『frien-D-anke』をリリース! 既存曲のリアレンジからアルバムに向け作成されたものまで計8曲が収録されたこの作品には、日常の中にある“ワクワク”が独自の表現で描き出されている。本インタビューではアルバムの詳細を伺いつつ、ザ・シックスブリッツが中心となって行っている京都のサーキットイベント“いつまでも世界は…”について西島の本心を訊いた。
●現在は西島さんがソロで活動されているザ・シックスブリッツですが、バンドを始められた経緯は?
西島:2000年頃、精華大学で結成しました。友達が音楽サークルに入っていて、そこで3ピースバンドを組んだのが原型です。
●今とは編成がまったく違ったんですね。
西島:メンバーは結構変わりましたね。去年の9月にずっと一緒にやっていたベースが抜けてソロになりました。メンバーを探そうかとも思ったんですけど、ひとりになった瞬間に“これなら、誰にも相談せずに自分で決めていいんだ!”と思って(笑)。
●アハハ! ひとりである気楽さが出てきた。
西島:一人で決められるという意味では気楽です。でも全部自分の責任なので、それはとても怖いです。でもやっぱり目立つのも自分だから楽しいですね(笑)。
●目立ちたいんですね(笑)。今作はソロで活動するようになってからリリースする初めての作品なんですか?
西島:一人バンドとしての1枚目ですけど、元々はベースが辞めることが決まったとき「最後に1枚作ろう」っていうのがキッカケでした。だから基本的に曲は今までに作ったものだし、ベースは1曲を除いて全部そいつが弾いています。
●M-1「舟を漕ぐ、心臓の川」から始まりますが、キラキラしたメロディが始まりを予感させるような、1曲目に相応しい曲だと思いました。
西島:曲順はすごく迷ったんですよ。最初からアルバムのコンセプトがあったわけじゃないから、何度も順番が変わって。懐の深いアルバムにしたかったから、1曲目はテンションで押すんじゃなくこういう曲で始めたかったんです。
●なるほど。リード曲はM-2「荒野鉄道」ですが、これはエフエム京都でパワープレイされているそうですね。
西島:「この曲をかけてもらえませんか?」って交渉に行ったんですよ。自分でやってみて“事務所の人がやってくれている作業ってすごいんだな”って改めて思いました(笑)。歌詞については友達のことを歌った歌なんです。京都以外にも色んな場所で頑張っていい音楽を作っている奴を見ていて“みんな見えないところでも頑張っているんだな”っていう。そういう音楽家達の旅の歌です。
●イントロで列車の汽笛が聴こえるあたりでは、まるで映画のように情景が浮かんできます。今作はそういう情景が見える曲がいくつかあったのですが、曲によっては映画のオマージュも盛り込まれているんですか?
西島:映画や小説が好きなので、ときどきそういう作品がありますね。例えば「舟を漕ぐ、心臓の川」は『トム・ソーヤーの冒険』のつもりで作りました。子供の頃のワクワクした気持ちと不安な気持ちの混在した、アレです。
●ワクワク感がありますよね。テーマでいうとM-5「ジョンオブザデッド」は映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』をモチーフにしている?
西島:「ドーン」じゃなくて「ショーン」の方なんですね(笑)。なかなか良い所つきますね!! 僕はゾンビ映画が大好きなので。ただ、これは本当は戦争についての歌なんです。正直に言うと直接的に歌うのが少し怖かったので、ゾンビ映画のオマージュという形で表現しました。もし戦争になったら平気で人が死んでしまうだろうし、すごく怖いじゃないですか。でも現実に起きかねないということを想像しながら書いていたら、歌詞がめちゃくちゃ暗い感じになって。
●他の曲にも共通しているところですが、死や退屈に対する恐怖が端々から出ているように思います。
西島:“退屈なくらいなら死んだ方がマシだ!”っていうロックンロールな考え方っていうのもあるじゃないですか。確かに昔はそう思っていたんですけど、絶対に死ぬ方が怖いですから。いつ死んでしまうような状況になりうるかわからないし、そうなるとは思いたくないですけど戦争になったりしてしまうかもしれない。それくらいなら退屈な方がマシだなと、最近は考えるようになりました。
●M-3「夜とダンス」はダンス規制のことを歌った曲ですし、改めて見ると風刺の効いた要素もありますよね。それは自然と出てくるものなんでしょうか?
西島:僕は音楽だけで食っているわけではなくて、仕事と同等に音楽をやっている人間なんですよ。だから日常生活がどうしても関係してくるんです。自分が納得いかないものや普段からそこにあるものを歌っているので、自然とにじみ出るんだと思います。どうしても社会の中にいる自分を考えてしまう。
●歌詞表現としてはファンタジー要素がありつつも、内容はすごく日常的なのはそういうことだったんですね。また、アルバムを通して聴くと最後のM-8「パーティー」が“夜はいつか終わるから 朝は旅立ちの時さ”という言葉で終わるじゃないですか。そこからリピートして1曲目を聴いたとき、ストーリーが繋がっていくのが面白いですよね。
西島:お! ありがとうございます。実は僕も思いました(笑)。“リピートして聴いたらまた朝に戻るな”と。
●歌詞から読み取れる内容だけじゃなく、アルバムの流れからもストーリーが考えられるのが面白いと思いました。
西島:どんなものでもそうでしょうけど、聴く人次第で感じ方も全然違いますからね。特にロックンロールは“自分で想像する”っていうのが大事で、かっこいいものに影響を受けて自分もスターになるぞっていう音楽だと思うんですよ。自転車に乗りながらでも電車で座りながらでも、それを聴いていればひとりひとりが“スーパースターである自分”を描けるんです。
●人によっていろいろな解釈が膨らむのも、楽しみのひとつですね。今作『frien-D-anke』には、どういう意味が込められているんですか?
西島:“Friend”と“Danke(ドイツ語で“ありがとう”の意)”をくっつけた造語で、簡単に言うと友達への感謝です。自分の作品を作ったというよりは、手伝ってくれた連中と一緒に作ったものだという感覚があるんですよ。そう思うと“ありがとう”っていう言葉がピッタリだなと。
●仲間たちと作り上げるというのは、西島さんが運営されているイベント“いつまでも世界は…(以下いつせか)”にも共通していることだと思ったんです。印象的なタイトルですが、何かテーマやコンセプトを込めてつけられたんですか?
西島:単純に“○○ロック”とか“○○フェス”みたいな、それっぽい名前をつけたくなかったんですよ。ひねくれてるので(笑)。お客さんがイベントから感じてくれたものがあったときに、タイトルがよくわからないものだったら“どういう意味なんだろう?”って考えるじゃないですか。
●確かに! きっと疑問に思うでしょうね。
西島:それが狙いですね。ひとりひとりが意味を考えてくれたらいいなと思うんです。
●さらに2017年には、より大きな仕掛けをしたいとイメージをされているそうですが。
西島:さっきも言ったように、僕は仕事をしながら音楽をやっている音楽家なので。だから日常生活を送りながら音楽をやっていく以上、もっと社会や行政と関わることが必要だと思っていて。今のライブハウスって一部の人だけの特別な空間だけど、僕はそこにもっと人が遊びに来てほしいんです。 “音楽をやる場所は、社会の一部として存在しているんだ”っていうことを示すために、飲食店や商店街にも協力してもらいながらやっているんですけど、その延長線上で行政にも協力を得て開催できればと思っています。
●行政が応援していると、その地域の文化として定着しているんだなという気がします。
西島:きっと普段はライブハウスに行かない人でも来てくれるようになると思うんですよ。そういう場所がもっとたくさん増えて、いずれライブハウスに普段から遊びに来てくれるようになったらいいなと。そのためにも2017年には、より広がっていけるような内容を企画をしたいと思っています。「カラオケ行こうぜ!」の代わりに「ライブハウス行こうぜ!」って言われるようになったら最高ですね。
●より気軽に参加できるような環境を作りたいと。
西島:たくさんの人がライブハウスを遊びの場に選んでくれる、そういう仕組みを作っていきたいと思ってます。
Interview:森下恭子