昨年9月にシングル『きゅるきゅる』をエイベックスからリリースし、まさしく衝撃のメジャーデビューを飾った大森靖子。“FUJI ROCK FESTIVAL”や“ROCK IN JAPAN FES.”から“夏の魔物”や“TOKYO IDOL FESTIVAL”まで多種多様なフェスの舞台で縦横無尽に活躍できるのは、その才能が単に音楽シーンだけにとどまるものではないことの証明と言えるだろう。そんな大森靖子の世界観を橋本愛×蒼波純のW主演で、松居大悟監督が映画×音楽のエンターテインメント作品として仕上げた映画DVD『ワンダフルワールドエンド』が3/4に発売される。また、同日には大森靖子&THEピンクトカレフの1stフルアルバム『トカレフ』もリリースされるというのだから驚きだ。ソロ名義でのメジャー1stアルバム『洗脳』を発表したのが、2014年12月のこと。別名義とはいえ、そこからわずか3ヶ月足らずでの新作発売に驚かずにいられようか。破竹の快進撃で注目と認知度を飛躍的に高め続けている中でもなお、見る者たちの予想を遥かに超えて突き進む彼女。JUNGLE☆LIFEではこの機会に2号連続での大特集を展開し、“大森靖子”の鮮烈なる魅力に迫っていく。第1弾ではまずメールインタビューで、メジャーデビューを果たした2014年から今回のアルバム/DVDリリースに至るまでの思いを回答してもらった。次号のロングインタビューではさらに深いところにまで迫る予定なので、そちらも楽しみに待っていて欲しい。
Q1:まずは2014年の活動について振り返るような質問から、始めさせて頂きます。昨年9月にシングル『きゅるきゅる』でメジャーデビューを果たされたわけですが、当初はメジャーで活動することに対して、どのようなイメージを持たれていましたか?
大森:もっと早くできると思ってました。デビューが27歳になってしまったので、自信がなかったことが理由でまわりくどいことをしたぶんを取り戻さなければという気持ちと、それを活かせればなという気持ちがありました。
Q2:実際にデビューしたことで、“メジャー”というものに対する印象は変わりましたか? 以前とのイメージの違いなどがあれば、教えて下さい。
大森:メジャーだろうがインディーだろうが、仕事というのは人と人とでしっかり対話して何かをつくることだと思うので、そこは関わる人数が増えてもきちんとやらなければならないと思いました。なるべくしっかり顔を覚えて、短い時間で中の方をまさぐりあえる関係になれるよう探っているうちに、人の特性を愛せるようになったし、全く使えなかった敬語も少しはマシになった気がします。円滑な関係でいるための道具なんて要らないと思っていたので故意的に避けていたのですが、心から敬意をもつことができる人にたくさん会えてよかったです。あとは、やはり会って話すことに嘘はないなと思います。
Q3:ブログやTwitterでの発言を見る限り、大森さんは自分をとても客観的に見つめられているように思うのですが、メジャーデビュー以前/以後で「大森靖子」に対する周囲の見方は変わったと思いますか? また、意識的に「見せ方」を変えた部分もあるのでしょうか?
大森:売れるっていうのは多かれ少なかれ、自分を蹴り上げて、それが私とどれだけ乖離していても、上へ上へ何度でも蹴ることで達成されることだと思います。スターの先天性がない人間の最初の一蹴をロックと呼ぶのだとも思います。昔と今、メジャー以前と以降というよりは、毎回、毎日大森靖子を殺して1からやり直すつもりでライブや曲づくりをしているので、意識的に変えたなっていうタイミングは自分にはないですが、ただ、録音技術や、みんなの音楽を聴く環境を考えると、ライブをそのままラッピングしてプレゼントすることは音源では不可能だということはわかってきたので、そこを完全に分離させる作業をしたことによって、ライブに来ない所謂在宅の方には、変わったというようにうつるのだと思います。
Q4:ブログでは「メジャーで社会に目を剥けて、ぶっ壊すためにはノスタルジックやJ-popを必ず利用しなければならない」という発言がありましたが、“音楽”や自分が表現すべきものに対する考え方は、以前と変わった部分もあるのでしょうか?
大森:メジャーにいってこういうアルバムをつくろうというのは、2枚前のアルバムをつくったときから構想していました。既にある価値観や、人の評価でしか判断できない方向に、日本はどんどん向かっていると思ったので、最初に広がるときはそうすることがはやいと思いました。もっと足元すくわれないやり方のほうが本当はよいかもしれませんが、年齢や気持ちの問題で、私にはあまりじっくりやる時間がなかったので、そうするべきだったと思います。
Q5:昨年12月にはメジャー1stアルバム『洗脳』をリリースされたわけですが、この1枚を通して「大森靖子」が表現したかったこととは?
大森:孤独と自由が財産であることです。それらをはらす、見返す、といった復讐のようなもののためなんかじゃなくて、それらは生きていく上でとてもキラキラした大切なものだということに気づいてほしいなという思いでした。
Q6:「ライブとかメジャーデビューとか卒業とか夏フェスとかミスiDとか色々あった」とブログに書かれていましたが、大森さんにとっての2014年はどんな1年でしたか?
大森:ロジックで吟味する前にからだを動かすことを愉しみました。とにかく感情的な人はやさの美しさを表現したかったからです。それは時に人や、今まで大事につくってきた大森靖子を傷つけてしまうことがあったので、理性というのはだから必要なのだなあということが身をもって感じられました。
Q7:その2014年を経て、3/4には「大森靖子&THEピンクトカレフ」名義でのニューアルバム『トカレフ』が発売されます。『洗脳』からわずかな期間でのリリースとなりますが、当初から考えられていたことなのでしょうか? また、このタイミングでリリースすることに込めた意味とは?
大森:今年やるべきことがこの先わかっているので、それをやるにあたって、ピンクトカレフを仕上げて終わらせる必要があったから今なのだと思います。
Q8:「大森靖子」名義と「大森靖子&THEピンクトカレフ」名義での活動を分けていることについて、それぞれで表現したいこと/役割にはどんな違いがあるのでしょうか?
大森:人が違うから音が違うから私が出す私と音が変わる、単純にそれで別の顔になるので、役割分担というか、自然にそうなってるというかんじです。パジャマ着てる時と制服着てるときのモードの違いくらいのものだと思います。
Q9:M-1「hayatochiri」、M-3「少女3号」、M-5「ミッドナイト清純異性交遊」はソロ名義でも演奏されている楽曲ですよね。ソロで歌っている時とピンクトカレフで歌っている時とでは、やはり感覚が違うものですか?
大森:違います。というか、ソロで歌うときも歌うたびに違います。ライブだとその日いるお客さんによっても違うし、あった出来事によっても違うし、一回も同じ感覚で歌ったことないです。
Q10:ちなみに、バンド名も「THEピンクトカレフ」で今作のタイトルも『トカレフ』ですが、“トカレフ”という言葉は何に由来するものなのでしょうか?
大森:ハミングバードというずっと使用しているギターを買うきっかけになった加地等さんの作品からの引用です。
Q11:今作『トカレフ』を制作するにあたって、作品全体のイメージは当初から思い描いていましたか?
大森:一曲ごとにイメージはありましたが、作品としては、そんな器用なバンドではないので、ただメンバーの全部を注ごうというだけでした。
Q12:完成した今、『トカレフ』はご自身の目から見て、どのような作品になったと思いますか?
大森:拙い美しさですが私にはとても愛しい作品です。
Q13:『トカレフ』と同日に、橋本愛さんと蒼波純さんのW主演による映画『ワンダフルワールドエンド』(松居大悟監督)のDVDも発売されますね。“大森靖子”の世界観をもとにした映画×音楽のエンターテインメント作品となっていますが、その制作にあたって受けた刺激も大きかったのでは? また、そこで受けた刺激が楽曲にもフィードバックされていたりしますか?
大森:仕上がった映画に切り取られた橋本愛ちゃん、蒼波純ちゃんの一瞬一瞬がとても尊かったので、そこに対する敬意とか、時間が経って人が変わって、ダイレクトに身長や髪が伸びるとか、そういうのがすごく音楽っぽかったので、今なんだなあというものを込めて、音を添えたり、「ワンダフルワールドエンド」という曲を当てがいてみたりしました。
Q14:映画『ワンダフルワールドエンド』の世界観と、大森さんの表現したい世界観はやはり通じるところが多いのでしょうか? 非常にシンプルな質問で恐縮ですが、完成した作品を観られた感想も教えて頂けると幸いです。
大森:世界観というか、単純に最近ハマっていることとか、こんなクソみたいなやつと付き合っていたとかのエピソードをそのまま監督が脚本にしていくので、まあ見苦しいといえば見苦しいし、それでもやっぱりダサくてかわいいなあと思います。
Q15:最後に、2015年現在の心境や心象風景を、イラスト/メッセージを用いて自由に描いて頂けないでしょうか? 『トカレフ』に込めた想いや弊誌JUNGLE☆LIFEのイメージ/読者へのメッセージなども含めて、自由に描いて頂けましたら幸いです。