およそ3年ぶりの新作『Parallel Universe』を世に放つMiVK(ミンク)。メンバーチェンジを経て「積み重ねてきた」という音楽は、超ド級USラウドサウンドとVo./G.DAI$UKEの甘い歌声が絶妙に絡みあった、「センチメンタルラウド」なる独自の世界観を作り上げた。2012年の『Searching For A StarLand』リリース以降、ひたすらライブを続けて磨き上げた彼らの1stアルバム。ストイックに進化を続ける重厚なサウンドが、邁進する現在の“MiVK”を提示する。
●MiVKの結成は2008年ですよね。きっかけはなんでしたか?
DAI$UKE:元々、僕がやっていたバンドを大森が観に来ていたんですよ。当時ちょうどドラムが辞めることになったので「じゃあ、一緒にやろう」と誘って今に至ります。
●前身のバンドがあったんですね。
DAI$UKE:当時は、MiVKの前ベース(栄桃子)とバンドを組んでいたんです。そのドラムが抜けて、大森がメンバーに入ってからMiVKというバンド名に変えて活動を始めました。
●途中でベースは宮本さんにメンバーチェンジしていますよね。これはいつの話ですか?
DAI$UKE:前作『Searching For A StarLand』を作った後にメンバーが変わりました。でも、新しいメンバーでツアーをまわるのは難しいということで、リリースツアーは一旦保留になってしまったんです。そこからの積み重ねが『Parallel Universe』に入っているんですよ。
●MiVKのサウンドはキャッチーな部分は残しつつ、重厚なラウドロックを鳴らしている印象がありますが。そこは狙ってやっている?
DAI$UKE:元々ラウドロックが好きなので、「昔はこういう音楽が格好良いんじゃないか」って思うものを作っていたんです。でも、ある時期からもっと自分が好きな曲を作ればいいんじゃないかと思って。だから、今回の『Parallel Universe』は何も考えないで作りました。作ったものが俺の曲だから、何も狙わずに作ろうと。
●曲はどうやって作るんですか?
DAI$UKE:大森と一緒にスタジオで遊んで作るか、1人でトイレにいるときにできるかです(笑)。トイレと風呂はメロディが浮かんでくることが多いんですよね。
●トイレですか(笑)。てっきりメロディはスタジオで作り込んでいるものかと思っていました。
DAI$UKE:もちろん細かい部分は変えますけど、最初に歌ったメロディをそのまま使うことが多いです。だいたい自分の頭の中で音源ができあがっているんですよ。
●頭の中で作れちゃうと。
DAI$UKE:でも、自分の発想よりも良いものが出てくることが理想なんです。例えばドラムだと、違う曲を間違えて叩いた時とか、狙ってやっていない瞬間にそういうことが起こりますね。
大森:曲にハマるフレーズができれば良いなと思って、いろいろ狙ってやってみるんですけど、まあそういう時は上手くいかないですね…。
●長年一緒にやっているから、DAI$UKEさんの好みのフレーズとかも分かってきそうですが。
大森:そうなんですけど、そういうフレーズを叩くと「それを超える発想はないのか!」っていう球が飛んできますね(笑)。
●豪速球が飛んでくると(笑)。DAI$UKEさんはスタジオでは厳しい?
DAI$UKE:そうですね。スタジオは楽しむところじゃないっていう(笑)。バンドは部活と同じです。リハに入ったら3〜5時間の間、ずっと休憩なしなんです。
●歌詞に関してはどうですか?
DAI$UKE:歌詞も「こういうことを書こう」と思って書いていないですね。曲を聴いたイメージから作っていきます。例えば、ここで母音は“あ”が良い、っていうことだけ決まるんですよ。そこから条件に合う言葉を探します。自分の声の良い部分が、サビで一番良い感じに鳴るような言葉を持ってくるんです。“あ”とか“お”とか、高い音程で“あ”が良く響くなって感じたら、サビの頭は“あ”で攻める。“明日”だったら、“明日”から始まる一行くらいの歌詞ができれば、それをテーマに1曲できます。
●自分の声が良く響くポイントっていうのは、曲によって違う?
DAI$UKE:違いますね。リズムにもよりますし、声を伸ばすだけのものもあれば、切る場合もある。いろんなパターンで作っています。
●今回の『Parallel Universe』ですが、中でも思い入れのある曲はどれですか?
DAI$UKE:M-10「Call My Name」ですね。この曲は昔からずっとライブでやっていた唯一の曲なんです。「この曲が音源になったら良いな」ってお客さんに言われ続けて3年、やっと音源が出せます。
●逆に、今作で一番新しい曲は?
DAI$UKE:「MEDiCiNE」です。「僕らはこんな感じになりました」っていう、今のMiVKの名刺代わりの曲なんです。
●「Call My Name」から磨きあげたものが、最新の「MEDiCiNE」になったと。この曲の歌詞にはメッセージが込められている気がするんですが、誰かに向けられて作ったんですか?
DAI$UKE:この曲は、世の中の人達に向けていますね。簡単に言うと、この曲を聴いている人たちに「もっとポジティブになった方が良いんじゃないの?」って、荒っぽく言っています。「ネットばかりやっていないで、缶蹴りをしなさい」と(笑)。そういう曲です。
●ははは(笑)。もっと外で遊べと。
DAI$UKE:それもあるし、「口の巧い奴に騙されてばかりいないで、自分で歩いて行きなさい」と。「あの宗教家なんてぶっ飛ばせ!」っていうような曲にしようかとも思ったんですけど、上手いことハマらないなと思って。この曲は歌詞について珍しく考えた曲でしたね。
●どう伝えるかで迷った?
DAI$UKE:“君は自分の足で歩いていけるよ”っていう言い方も違うなと。パンク精神を忘れずにいたかったし、もっと煽るような表現にしたかったんです。結果的に、この曲で今の“MiVK”が出せました。
●今作を作り終えて、次回作についても何か考えていますか?
DAI$UKE:次の作品は「MEDiCiNE」から繋がっていくようなものになると思います。実際に何曲かできているんですけど、メロディーはそのままに、よりラウドな曲に変わってきていますね。
Interview:馬渡司