2014年1月に渋谷WWWでのワンマンライブをソールドアウトさせ、12月には渋谷CLUB QUATTROワンマンライブを成功させたヒラオコジョー・ザ・グループサウンズ。チャレンジ精神旺盛に、自らの手で道を開いていく彼らは確実に進化を続けている。そんな中でリリースされた1stアルバム『OU-TOTSU』は、「思い出を切り売りしている」というヒラオコジョーの活動のルーツとも言える、自身の深い部分まで曝け出した作品となった。日本語の美しさを活かしつつ、巧みに情景を紡ぐ彼らの音楽は、聴けば聴くほど魅力がにじみ出るような味わい深い作品ばかり。今回は快作『OU-TOTSU』の1曲1曲を、ヒラオコジョーにソロインタビューで語ってもらった。
●去年は、1月に渋谷wwwでのワンマンライブ、12月に『OU-TOTSU』のリリース。そして、渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブ(以下QUATTROワンマン)があって、駆け抜けるように活動をされた印象があります。振り返ってみてどうですか?
ヒラオ:本当に駆け抜けた感じがしますね。今回はQUATTROワンマンという大きな目標を立てることで、無駄にする時間がなかったというか。目標に向かって行くことで、「そのために何かしよう!」って隙間を埋めようとするじゃないですか。そうすることで一昨年より、ギュッと凝縮した活動ができたんじゃないかなと。
●『OU-TOTSU』をリリースされてみて、周りの反応はどうですか?
ヒラオ:CDを買ってくれた人の反応はもちろんあります。さらに買ってくれた人が曲を流していた時に、一緒に聴いていたお母さんが興味を持ってくれたり、買ってくれた人の妹が「良い」って言ってくれてたりして。一対一じゃなくて、その向こう側にいる人達にも届いたっていうのがすごく嬉しいです。
●今回はそんな世代を越えて受け入れられている『OU-TOTSU』を1曲1曲掘り下げていきたいと思います。よろしくお願いします!
【M-1「太陽になりたくて」】
●この曲を作ったきっかけは?
ヒラオ:まず、サビのメロディが浮かんできて「なんか懐かしい感じの曲だな」って思いながら作っていったら、どんどんできていったんですよね。
●曲中に“大きな太陽 小さな太陽”という表現があるんですけど。これはどういう意味なんですか?
ヒラオ:空に浮かんでいる太陽が“大きな太陽”で、“小さな太陽”というのは自分にとっての恋人や友達の例えなんです。その人がいることによって自分が輝ける。そういう自分を照らしてくれる人っていると思うんですよ。そんな意味合いで書きました。
●“命ぐらいはケチらずに”という歌詞も独特な表現ですよね。
ヒラオ:「その人のためだったら“命”っていう、一番大事なものも大したものじゃない」ということを言いたいんです。でも、それを「命を掛けて!」とかじゃなくて、さりげなく伝えたかった。この曲は“命ぐらいはケチらずに”っていう部分に全ての重心をもってきています。だから「これさえ言えればいい!」っていう感じですね。
【M-2「愛はたべもの」】
●「太陽になりたくて」であれだけ出てきた“太陽”が、この曲では“みかん色の陽射し”という言葉に変わるじゃないですか。このギャップが面白いですよね。
ヒラオ:ははは(笑)。
●これはどんなタイミングで作られたんですか?
ヒラオ:昔お世話になったプロデューサーさんに、飲みの席で「愛って何?」って聞かれたことがあって。その時に「愛って、食べ物みたいなものですよね」って、この曲に書いてあるようなことを話たら「それイイよ! 曲にしたら良いんじゃない?」という反応をもらったんです。さっそくその日の帰りに電車の中でメロディを考えたりして作っていきました。
●前半の歌詞では、“蓋をしてみたんだけど また開けるのが恐くなってた”と歌っていたものが、後半は“蓋をして煮詰めてたら 素晴らしい愛の匂いがした”に変化しますよね。
ヒラオ:例えばカレーは、2日目の方が美味しいじゃないですか。作っている最中は食べごろじゃないけど、蓋をしてずっと煮込んでいたら美味しくなる。恋愛もたまに「距離を置こう」っていう時がありますよね。1人になって、考えをコトコト煮込んでいって。それが1つの味になるというところと食べ物を比べて、僕なりの解釈で詞にしたんです。
【M-3「こゝろにタッチ」】
ヒラオ:ちょうど取材前に聴いてきたんですけど、今の自分に一番フィットしている曲ですね。自分で聴いていて「こんな曲は2度と書けないな…」と思っちゃうくらい良い曲だと思っています。
●これは何について歌ったんですか?
ヒラオ:この曲は、ただ手を繋ぎたいだけの話なんです。初めて手を繋ぐ瞬間って、すごく緊張するじゃないですか。慣れれば大したことじゃなくなるんですけど、あの最初の緊張感をいかに大げさに言えるかっていう。
●あぁ〜。なるほど!
ヒラオ:それを突き詰めた言葉が、“こゝろにタッチ できたなら”なんです。もう、この曲はこの言葉が全てですね。
●じゃあ冒頭の歌詞は、例えば学生の頃、近くの席に座っている好きな子をただ観ているだけ、みたいなヤキモキした状況?
ヒラオ:そうですね。片思いの状況というか。やっぱり学校を思い浮かべますよね?僕もそういう情景を思い浮かべながら書いたんです。
【M-4「クラップスクラップ」】
●そんなピュアな男の頭の中が爆発したのが「クラップスクラップ」ということですよね。
ヒラオ:ははは(笑)。これは単純に「自分が小人になれたら」って妄想することから始まる曲なんですけど、いろいろある妄想の中で一番エロくないものというか。小人に対してはみんな「可愛い」とか良いイメージを持っているし、「KOBITO」に「 I 」を入れると「KOIBITO」になる。そういう言葉遊びもできるワードだったし。
●確かに、言葉遊びが巧みですよね。メンバーはどういう反応でした?
ヒラオ:めっちゃ喜んでましたね。「すげえな!」みたいな感じで。
●「胸の谷間を山に例えた辺りがヤバいな!」みたいな?
ヒラオ:ははは(笑)。“洞窟探検”とか、本当だったら絶対言えない(笑)。下ネタって敬遠されがちじゃないですか。でも、そういう下ネタを受け入れない人に聴かれてこそ、この曲は真価を発揮するというか。その人たちが「この曲イイね!」って言ったら、僕の勝利ですね(笑)。
●ちなみに、こういう妄想は常に考えていらっしゃるんですか?
ヒラオ:う〜ん…。だって街を歩けば綺麗な人はたくさんいるじゃないですか。「僕でも小人だったら家に連れて帰ってもらえるんじゃないのかな」みたいな(笑)。でも…こういう妄想、しないですか?
●しますします。この歌詞の内容はよく分かりますもん。
ヒラオ:しますよね? ただそれを言っちゃうかどうかっていう(笑)。
●なるほど。この気持ちをみんなと分かち合いたいと。
ヒラオ:そう、分かち合いたい。「それ分かるわ〜」っていう共感の嵐を呼びたい(笑)。
●ハハハハハ(爆笑)。
【M-5「幸せの近道」】
●今作は悶々としていたり、モヤモヤしている歌詞が多い印象ですけど、この曲はストレートな気持ちを歌っていますよね。
ヒラオ:ちょうど去年の今頃、大事な友人から「結婚するから1曲書いてほしい」って頼まれて作り始めた曲なんですね。その矢先に「NISSAY MAKE HAPPYNING」のキャンペーンソングのオファーがきたんです。その企画書に目を通していくと、どう考えてもこの曲がフィットするので、この曲を仕上げました。誰かのために書いた曲だから、これだけストレートに書けたんだと思います。
●なるほど。
ヒラオ:その友人の結婚式が来週あるんですけど、彼にはまだ「幸せの近道」が、彼のために作られた曲って言っていないんですよ。式の当日に「実は…」って話をしようと思っています。反応が楽しみですね。
●いやあ、その友達はきっと泣いちゃいますよ。
ヒラオ:たぶん…。逆に泣かないとがっかりします(笑)。
【M-6「ファンデーション」】
●この曲は、地元に住んでいた頃の思い出を書いたものでしたよね。
ヒラオ:そうですね。でも曲を作った時には東京で暮らしていたので、“規則的に映る自分の影に 問いかけてみる”っていうのは今住んでいるマンションの近くで起こったことなんです。僕が終電で帰った時に、近所の黄色い点滅信号のところで何故か分からないけど待っちゃっていたんですよね。それに気づかないくらい考え事をしていたみたいなんです。その時に信号が点滅するたびに自分の影がパッて道路に映っていくのを見て、パッと情景が浮かました。
●この曲も言葉の使い方が巧みですよね。“僕のファンデーション”と曲中にでてきますけど、これは?
ヒラオ:“本当の事は その少し先で 見えなくしてしまったよ”という部分が、男にとってのファンデーションというか、ちょっと隠しているっていうことなんですよ。自分の服についたファンデーションを見るたびに、あの時に言えなかった気持ちを曲の後半で言っちゃうというか。
●なるほど。ヒラオさんはこの曲を書くことでスッキリしましたか?
ヒラオ:この曲はスッキリしましたね。前回のインタビューでも言いましたが、ウンチと同じなので(笑)。言いたいことが言えたっていう実感がすごくありますね。
【M-7「グレイトDJ」】
●ワンマンで、クロマティーゆうやさん(以下クロマティー)に宛てた曲だと仰っていましたが「DJに衝撃を受けた」とも言っていましたよね。
ヒラオ:DJイベントって、そもそも偏見があったんですよ。「人の曲を掛けて、簡単に盛り上げているだけのヤツだ」と思っていたんです。でも、クロマティーと知り合って初めて「コイツらもそこまで考えてやっているんだな」と思えたんですよね。音楽に対する気持ちは、ミュージシャンもDJもリスナーもみんな一緒なんだなっていうことに気付いたんです。
●クロマティーさんに影響を受けた部分があるんですね。
ヒラオ:しゃくに障るので影響を受けているとは言わないですけど(笑)。「もっと自分の音楽を大事にしないとな」って、気付かされたりしましたね。
●人に影響されたり、支えられている実感って、活動の中でどんどん湧いてくるんじゃないですか?
ヒラオ:そうですね。音楽業界の方からよく「音楽は、まずは続けないと何もないよ」って言われるんですけど、結成して間もない頃は、その言葉の意味が分からなかったんです。続ける上でいろんな人と知り合って、過ごしていく時間の密度を高めると、ようやくその意味が分かる。だから、長く続けないとなって思います。
●QUATTROワンマンの時に、MCで「上京を決心した日に登山をした」と言っていましたよね。それくらい自分の中で、上京は大きな決断だったんですか?
ヒラオ:もう大決意でしたね。その頃すでに20代の半ばだったので「今から東京で一旗揚げるぞ!」って言うには、けっこう微妙な年齢だったと思うんですよ。でも「今しかない!」って思ったんです。そこで、自分が東京に行って挫けそうになった時に思い出したいものが欲しかったというか。すごく悩んだ時に、決心をして山に登って、山頂で音楽を聴いていた景色を思い出す。そうすることで、もう一度頑張れるんじゃないかなっていう気持ちがあって、山に登ったんですよね。
●登山が自分の中でひとつ印になったんですね。
ヒラオ:「ここからが俺のスタートラインや!」って旗をバンッと刺してきたというか。そうやって思い出せるものが欲しかったんです。
【M-8「凸凹」】
ヒラオ:この曲は、上京を決めた過去の自分の決心を歌ったんです。幼い頃から「自分はビッグになる! 」と思って過ごしてきて、その中で愛と決別して「夢に向かう」っていうことを歌えたらなって。ハッキリした夢に向かって行くわけではないんですけど、「好きなものは好きだ」っていう。
●最後の“君が好き”の部分で、男心を見事に描いていますよね。前回のインタビューでお話しされていましたが、タナカさんとハラさんの3人で地元に帰った時に、舞台になった無人駅に行って全員が泣いたっていう。
ヒラオ:もうバカすぎでしょ(笑)。でも、みんなそれなりの決意で東京に出てバンドをやっているので、この曲に何か思うことがあるんでしょうね。
●ちなみに「凸凹」が上京するタイミングの1つの節目を歌った曲じゃないですか。「その後」みたいな歌はあるんですか?
ヒラオ:あぁ…この曲に関してはないですね。「凸凹」だから、今度は「凹凸」でも作ろうかな(笑)。
●ははは(笑)。次回作も楽しみですね。
ヒラオ:エモいものができると思います。「凸凹」に対してのアンサーソング、次回作に入れます!
●7月にはバンドとして初めてライブを行った、三軒茶屋 GRAPEFRUIT MOONでのワンマンが予定されていますよね。どういったイベントにしたいですか?
ヒラオ:この1〜2年でグッと大きく成長できた反面、今観てくれているファンの中で、結成当初から観てくれている人は本当に少ないんです。だから、そこで僕たちが5年間かけて築き上げてきたものを少しでも感じてもらいたい。セットリストも工夫して、昔の曲や昔の話もしたいなと思っています。
●そこがまた1つ旗を立てるタイミングなのかもしれないですね。
ヒラオ:そうですね。何かがきっかけでこの記事を読んでくれた人もいると思うんです。興味を持ってもらったら、ホームページやYouTubeも見ていただけたらなと。そうやって気になってくれた人たちを離さないようにしたいです。
Interview:馬渡司
何の変哲もない、と書き出せばやや語弊があるでしょうか。
英米の音楽を充分に咀嚼消化吸収したうえでの、極めてスタンダードなJ-POP。
聴き手の価値観が多様化する昨今の音楽シーンに於いて、スタンダードな楽曲を作り、変哲なさげなスタイルで勝負することは、ある意味・逆に・ある反面、かなりの変哲の裏返しなのかも知れません。
歌詞を見ながら熟聴すると、語の選択や丁寧な韻の踏み具合などの変哲さ加減は個性と呼ぶに充分です。
でもやっぱり、感触としてはスタンダード。
無理のない歌の音域設定、その歌メロを熟知してのギターフレーズも洗練されています。
とくに音量を上げる必要もなく聴ける、そんな感じが心地よいのです。
リリースおめでとう。
今作もいいですね。
(でもやっぱバンド名は長いね!)
ヒラオコジョーみたいな
いいバンドにも
ちゃんと光が当たるように
音楽シーンに穴ボコを開けようと
何年も前からがんばってきたけど
なかなか開きません。
もし先に穴ボコ開けたら
ぜひボクらのことも
ひっぱってください。
こっそり期待して待ってます。
たとえば、朝目が覚めるような、食事をするような、
愛する人と笑い合うような、時折涙するような、夜になれば眠るような、
極端に言えば、いや、極端ではないかな、息を吸って息を吐くような、
そんな当たり前のことがこの作品には詰まっていると感じました。
ぼくらが呼吸をするのとおなじくらいに当たり前に、
この作品はこれからの人生、ぼくらの側に寄り添っていてくれると思います。
ヒラオコって地元の仲間だからってのもあるかもしれないけど、曲を聴くたび、LIVEを観るたびに無条件でグッときてしまう。
柄にもなく昔を思い出して泣きそうになる事もある。
アルバム聴いたのが実家に帰省してる時で、たまたま母親も隣で聞いてて、”いいね〜。”って言ってて、年齢・性別問わず受け入れられる作品作ったんやなぁと俺も嬉しくなったよ。
改めてリリースおめでとう!!
これからも一緒にROCKしてこうぜ!!
ちなみに俺個人的にタナケンのファンになりかけてる笑
ニューアルバム完成おめでとうございます。
見えました、田舎の畦道が。
見えました、午後3時くらいの海岸線が。
想いを馳せるような情景を思い浮かべさせてくれる音っていいよね。
見えました、平尾孤城が。
凸凹は高まります。君が好きーー!!