2011年に活動を再開したオルタードシステム。再開後、2作目となる本作は「オルタードシステムの奏でる新たな設計図」というコンセプトのもと作り上げられた意欲作となった。ハードエッジなギターロックサウンドから、叙情感溢れる切ないバラードまで、バラエティ豊かな楽曲で彼らの魅力を余すことなく詰め込んだ『neo master plan』。M-6「2020」の“描いた未来を イメージの向こう側へ”という歌詞が示すように、オルタードシステムは新たな設計図を携え、自らの未来を切り開く。
●オルタードシステムは2010年から1年ほど活動を休止していたんですよね?
鈴木:はい。もともとDr.栗原が「一旦活動を休止したい」と言ったことがきっかけで。バンドとしても、モチベーションが落ちている時期だったので「そういうことなら活動休止をしよう」っていう話になったんですよ。その時に「たぶんバンドはもうやらないだろうな…」と思ってーー。
●再開させる気はなかった?
鈴木:再開させる気はなかったんです。でも、その後に起こった3.11の震災が僕の中で大きかったんでしょうね。あの時みんな「自分にとって一番大事なことは何なのか?」っていうことを考えたと思うんですけど、僕にとっては、それがオルタードシステムだったんです。
●大事なものだと再確認したんですね。
鈴木:だから、メンバーに「(もう一度バンドを)始めるか!」って誘ったんです。
●活動を再開する時には、みんなが同じ方向を向いていた?
鈴木:そうですね。みんな同じことを考えていたみたいです。いざ再開してみたら、今度は終わらせる理由がないっていう(笑)。逆に「どうすれば続けられるだろう?」って考えるようになったんですよね。
●今回の『neo master plan』ですが、タイトルについて、鈴木さんが「昭和34年に行われた「産業計画会議」の計画図面から着想を得た」とブログで書かれていますよね。そういう図面だったり、街が好きなんですか?
鈴木:僕は昔から地図が好きなんですよ。「どこを通って、ここまで来たんだろう?」とか「実はこの道を行くとここに行くんだ」とか。そういうことが好きなんです。だいたい初めて言った場所は、帰った後にネットの地図でもう一度調べちゃうんですよね。
●へぇ〜面白い! どこに興味が湧くんですか?
鈴木:そう言われると、何なんだろうな〜…。もともと昔の地図と今の地図を見比べることが好きだったんですよ。「ここの道路は昔はなかったんだ」とか、そういうのを見て、ノスタルジーを感じていたんです。
●ジャケットのデザインも設計図が使われていたり、マスタープランという言葉も建築用語だったりしますよね。その辺りが全部リンクしているような気がするんですが。
鈴木:そうなんです。ジャケットは、しんのすけが担当しているんですけど、今回の「産業計画会議」の地図とか、今作のイメージが伝わる写真を全部送ったんです。そこから、このジャケットが作られました。
●今作の楽曲はどうやって作ったんですか?
鈴木:メンバーがそれぞれ曲のネタを持ってきて、みんなでそれに味付けをしていくんです。
しんのすけ:最初から曲の構成が全部決まっているというよりは、全体的になんとなくできたものが合体していって、みんなの納得のいったところで曲になるような感じですね。
●だから今作は作曲者のクレジットがオルタードシステムになっているんですね。今作の中でも、特に思い入れのある曲は?
鈴木:M-5「lost time advance」ですね。曲の雰囲気と歌詞が、今作の中で一番リンクしている曲だと思います。これは3.11のことを歌っているんですけど、それだけじゃなく「こういうことって、あるよね」っていう歌詞になっています。
●全体的に暗い部分を映している歌詞な気がするんですけど、最後の一節、“もう君に会えないよ 歩いて行けるかな?”で前向きになろうとしている印象がありますね。
鈴木:そう。でも、わざと前向きに終わらせていないんです。「でも、“行ける”と思わなきゃいけないんだよ」っていう意味も込めています。明るい曲と暗い歌詞がハマった時って一番嬉しいんですよね。真逆のものが組み合わさることで、より楽曲のパワーが出ると思うんですよ。
●そういう部分では、M-3「手紙」もすごく力を感じる曲ですよね。誰かに宛てた曲だと思うんですが。
鈴木:これは妹が結婚した時に書いた曲なんですけど、単純に「おめでとう!」と言っているだけではないんですよね。
●確かに、曲調は切ない印象もありますね。
鈴木:ずっと小さいままのイメージがあるんですけど、いつの間にか大人になっていて。それに対して「自分は大人になれているのか?」と思ったんです。そういう切ない部分が曲に入っているんでしょうね。
●今作の中で、制作に苦労した曲はありましたか?
鈴木:M-2「サーチライト」ですね。これは昔からあった曲で、活動休止前のワンマンライブで一回だけ演奏していたんです。その曲のサビ以外のパートを分解して組み立て直したんですよね。
しんのすけ:この曲は前作『colors of mindgraph』に収録しようと思って、何ヶ月も曲を煮詰めたんですけど、結局完成しなかったんです。
鈴木:もともとのイメージがあったので制作に苦労して、それ以来ずっと寝かしていたんですよ。ようやく納得の行くものとして出せるようになりました。
●最後の曲、M-6「2020」ですが、これはオリンピックが決まる前からできあがっていた?
鈴木:できていましたね(笑)。ちょうど決まった時に「こんな感じにしようかな」って歌詞ができたんです。「2020」は、今までの自分たちの中でもあまりない曲調で、アレンジも今までにない感じになっています。
●今回のパッケージの帯の書かれている、“描いた未来を イメージの向こう側へ”はこの曲の歌詞ですよね?
鈴木:そうです。「2020」が、このアルバムのテーマにもなっているんですよ。僕は今作の中で、一番良い曲だと思っています。
●『neo master plan』がリリースされて少し経ちますが、この後のイベントは何か考えていますか?
鈴木:3月にレコ発イベントがあります。この作品は、自分たちの中でもしっくりものになったので、まずはそれを披露したいです。『neo master plan』が僕らなりの設計図になるので、「これからのオルタードシステムはこんな感じだよ」っていうことを、音だけじゃなくて、内面から出せるようなレコ発にしたいなと思っています。
Interview:馬渡司