Drop’sにとっての2014年は、5月のEP『コール・ミー』リリース、7月のアルバム『HELLO』リリースとワンマン公演3箇所を含むレコ発ツアーやフェスへの出演、そして12月のEP『さらば青春』リリースや2回目となる自主企画イベント“アイスクリーム・シアター 2”の開催など、非常に慌ただしく駆け抜けてきた1年だった。様々な経験を重ねる中で、彼女たちの表情は活き活きと輝きを増し、硬質なロックサウンド・心地よいグルーヴ・破壊力のあるアンサンブル・体温を感じさせる唯一無二の歌が一体となり、Drop'sにしか作り得ない音楽とステージは一層吸引力を強くして、シーンの支持を大きくしていった。2014年3月にリリースしたEP『LOCKING FOR』以来となる、5人全員でのインタビューとなった今回は、EP『さらば青春』に関することはもちろんのこと、それぞれの心境の変化や3月に控える“Drop’s Presents SHOWCASE LIVE TOUR”について訊いた。
●5人揃ってのインタビューは久々なので、改めて各メンバーに訊きたいことがあるんです。ここ1〜2年くらいのバンドの経緯として、ステージとか表情がどんどん開けてきている印象があって。中野さんにはそういう話をしたことがあるんですが、自分たちの変化の自覚はありますか?
石橋:変わってきたかな。ライブを楽しもうという感じになってきていると思います。今から考えたら、前は“楽しもう”という感じではなかったのかもしれないです。楽しかったんですけど、今の方がより楽しい。
●ライブの石橋さんを観ていると、メンバーだけじゃなくて客席とか、結構周りを見ているというか、気を配っている印象があるんですが…。
石橋:うーん、どうだろう? ライブ中の私はレイカをめちゃめちゃ見てますけど(笑)。
●え? そうなの?
石橋:はい。レイカを見ていないとズレちゃうっていうか。最初はリズムを合わせるために見ていたんですけど、レイカはなんか安心感があるんです(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
●奥山さんは気づいてました?
奥山:はい、知ってました(笑)。私を見てるんじゃなくてスネアを見てると思ってたんですけど(笑)。
●安心感が増して、更に楽しめるようになってきたと。
石橋:はい。だから楽しいです。なんか気持ち悪い話ですけど(笑)。
●ハハハ(笑)。奥山さんはどうですか?
奥山:前からライブは楽しかったんです。でもだんだんお客さんが増えてきて、他のメンバーが楽しんでやっているのが目に見えてわかって、それでより自分も楽しくなってきたというか。
●あ、なるほど。ステージのいちばん奥からメンバーを見ていて、変化を感じていたと。
奥山:うん、そうですね。ステージ上での動きも増えてきたし、表情も笑顔が増えたり、良くなってきたというか。それを見ていて私の気持ちもあがって。フェスとか大きいステージに立たせてもらう機会が増えて、よりみんなが楽しんでいるのがわかるようになりました。
●いいことですね。小田さんはどうですか?
小田:お客さんが増えたっていうこともあると思うんですけど、いちばんのきっかけは2013年の“JOIN ALIVE”に出たときにやった「太陽」という曲で。そこで“楽しい気持ちをもっと出していいんだ”ということに気づけたんです。そこから“楽しさ”をもっとステージに出すようになったんじゃないかな。
●その発言からすると、それまでは“楽しさ”をステージに出すものではないと考えていたということ?
小田:はい。もっとかっこつけるっていうか、ロックっぽいものを出した方がいいんじゃないかって。
●でも「太陽」という曲がお客さんに受け入れられて、そこで“いいんだ”と。
小田:そうですね。自分たちのもっと“素”の部分を出してもいいんだって気づいたというか。その延長線上で、今もどんどんライブが楽しくなってます。
●なるほど。荒谷さんはどうですか?
荒谷:「太陽」という曲を作ったり、その後2014年7月にアルバム『HELLO』を出したり…リリースを重ねて、色んな曲を作ってきた中で、曲の力によってバンドに自信が付いたというか。“こういうのも出していいんだな”っていう。自信が付いたことで“もっとやってやろう”という気持ちにもなるし。大きく意識を変えていったという感じではなくて、徐々にそうなっていった感じですね。
●なるほど。ライブなんかを観ていると、荒谷さんはいちばん変わった感じがするんですよね。今のライブ、荒谷さんグイグイ来ますもんね(笑)。
一同:アハハ(笑)。
荒谷:そうですね。グイグイ行くとグイグイ来てくれるっていうか(笑)。
●コミュニケーションが取れていると。しかも1人1人が好き勝手やっている感じではなくて、Drop'sというバンドとしてのバランスが取れているような気がするんですよね。今まで何度かそういう話はしてきましたが、中野さんはどうですか?
中野:観られることが快感っていうか、楽しくなってきて。前は、お客さんとか…こんなこと言ったらあれですけど…関係ないっていうか。
●お。
中野:自分たちっていうか、私は完全に自分100%の自己中心でやっていたんです。でも、極端に言えばライブを楽しみにして1週間仕事をがんばる人とか居るじゃないですか。私もそうだったし。
●うんうん。
中野:そういう風にしてDrop'sを観に来てくれる人が居るんだなっていうことに、改めて気づいたというか。お客さんが増えてきたのもそうですし。自分たちは楽しんでやってきたけど、楽しんでいる私たちを観て“明日からがんばろう”と思ってくれる人が居るんだったら、だったらこっちも思い切り楽しんで好き勝手やってやろうという気持ちが強くなりました。
●あ、なるほど。お客さんが居てくれることを意識し始めたことによって、そこに寄せるんじゃなくて、だからこそより好き勝手やろうと。
中野:そうですそうです。
●しめしめと。
中野:はい(笑)。
●それは今作を聴けばよくわかります。今作2nd EP『さらば⻘春』は、好き勝手やってますよね。
中野:フフフ(笑)。そうですね(笑)。
●さっきの話にあったように、音源でもDrop'sはどんどん開けてきている印象があるんです。前作『HELLO』はアルバムなのでもちろんバラエティに富んでいましたが、例えば「かもめのBaby」なんて今までのDrop'sからしたら考えられないくらいポップな曲で。対して今作は、バンドの個性やルーツ、自分たちが好きなものを色濃く出している作品ですよね。
中野:そうですね。
●しかも表題曲のM-1「さらば青春」は高校3年生のときに作ったらしいですが、なぜこのタイミングで作品に収録したんでしょうか?
中野:冬にリリースしたいっていうのがもともとあったんです。だから今までもタイミングを見ていたというか。この曲は、メンバーの受験とかでライブをしていなかった時期が少しあるんですけど、その時に私は弾き語りでライブをしていたんです。
●はい。
中野:その弾き語り用で作ったんです。でもバンドでやりたいなと思って、Drop'sでもやるようになって。確か、この曲を作った冬が明けた春に初めてライブでやったんです。自分たちにとっても大切な時期に作った曲で、やっぱり想い入れも強くて。だからアルバムの中の1曲というより、曲自体をドーンと出したかったので、今回のEPの表題曲にしようという話になって。
●なるほど。
中野:そう考えて、アレンジもテンポを速くしてみたり、曲自体を短くしてみたり、色々と試行錯誤してきた結果、ゆっくりしたテンポのアレンジで完成して、冬のタイミングにリリースすることが決まって、しかも今回アナログレコーディングさせてもらえる機会に恵まれて。いろんな条件が整って形にできた感じがありますね。
●アナログレコーディングというのは、「さらば青春」と録るからそうしたというより、たまたま今回のタイミングで実現したということ?
中野:そうですね。前からアナログで録ってみたいという話はしていたんです。それで今回、条件が整ってできることになったんです。
●実際アナログレコーディングはどうでしたか?
奥山:デジタルレコーディングの時は何度も録りながら聴き比べとかできたんですけど、アナログレコーディングではなかなか聴き比べもできないし、ある程度いいなと思ったテイクを残しておくのもなかなかできなくて。だから一発勝負というか、そういう緊張感みたいなものはずっとありましたね。
小田:デジタルで録ってるときも一発録りだったので、その部分はあまり苦労はなかったんです。ギターや鍵盤を重ねたりとかの部分では、デジタルよりは制約があったかな。でも一発録りの空気感をいちばんうまくパッケージできるのがアナログレコーディングだったから、結果的にすごく満足がいく仕上がりになりました。
●そしてカップリングですが、M-2「メトロ・ランデブー」は荒谷さん作曲ということで。やっぱり荒谷さんの曲って、聴いたらわかりますよね。
荒谷:ですよね(笑)。この曲はEPに合わせて書き下ろしたんですけど、もともとは他に候補曲があったんです。でも全体のバランスを見た時に、勢いがある曲があった方がいいという話になって、この曲を作ったんです。
●荒谷さんは曲を作るとき、どういうものをイメージするんですか?
荒谷:アレンジのアイディアというか。“こういうアレンジやってみたいな”という。例えば今回の「メトロ・ランデブー」だと、ドラムのリズムを最初に“こういうリズムやってみたい”と思いついて、そこから広げていったんです。
●あ、ギターだけじゃないんですね。
荒谷:そうですね。もちろんギターのコードから膨らませることもありますけど。
●そこに自分の感情や風景や思い出は乗せない?
荒谷:うーん、ないですね。その時にハマっているアーティストの雰囲気とかからはめっちゃ影響を受けますけど(笑)。
●あくまでも音楽的な部分だと。前に中野さんがおっしゃっていましたが、荒谷さんが作ってきた曲の歌詞を書くために荒谷さんに「どういうイメージ?」と訊いても、何も出てこないらしいですね。
荒谷:そうですね(笑)。特になく、お任せしてます。
●でも「メトロ・ランデブー」を聴けば、なんとなく荒谷さんの人柄みたいなものが伝わってくるというか。ステージからグイグイくる感じが音楽にも出てますね。
一同:ハハハハハ(笑)。
●あと、M-3「ちっちゃな時から」というカバーには驚いたんですよね。浅川マキさんの曲ですが、当然リアルタイムで知っていたわけじゃないですよね?
中野:そうですね。今回もカバーを入れようという話になって、色々と候補があったんです。その中で、私と石橋が浅川マキさんを聴いていて、「これバンドでやってみたらかっこいいんじゃないの?」という話になって、やってみたんです。
●EP『コール・ミー』(2014年5月)では荒井由実さんの「卒業写真」をカバーしていましたよね。こういう日本のブルースや歌謡曲はよく聴いてるんですか?
石橋:私は荒井由実さんが好きで良く聴くんですけど、浅川マキさんは中野から結構前に教えてもらったんです。そのときに「いいな」と思って。
●Drop'sはロックバンドですけど、こういう歌謡曲っぽさというか、日本独特のメロディがハマっていますよね。
石橋:もともとは中野が弾き語りで荒井由実さんの「あの日にかえりたい」をやっていて、それを聴いて“バンドでもやってみたい”と思ったところから、カバーをするようになったんです。「卒業写真」も、自分たちでもハマった感じがあって、じゃあ今回もカバーをやってみようと。
小田:でも演奏がすごく難しかったんです。
奥山:うんうん。
小田:いかに自分たちらしさを出すかという部分で。「ちっちゃな時から」の独特なグルーヴ感を出すところとかがいちばん苦労したかな。
●特にリズム隊は苦労しそうですね。
奥山:そうですね。ワチャワチャしてる感じ。何が正解かもよくわからなくなってしまったというか(笑)。
●でもすごくDrop'sらしさが出ていると思います。カバーなのに、中野さんのヴォーカルの太さや質感とか、単に乾いたロックだけではないグルーヴの奥深さとか、Drop'sというバンドが持っている独特な個性が際立ってますよね。今後もカバーはやっていきたい?
中野:そうですね。色々とやりたい候補はあります。
●でも、今までカバーした曲は、決してオンタイムじゃないですよね? どこで知るんですか?
中野:作られた時期とか関係なく、自分が知っている歌の中で歌ってみたい曲をカバーしたいという感覚なんです。例えば浅川マキさんは、2010年に亡くなられたときに話題になって知ったんですけど、私の好きな映画に使われていたりとか。
●あ、そういうことか。自分たちが生まれる以前に発表された音楽を集めたり聴いたりする趣味があるわけではなく、自分の琴線に触れるものが、たまたま少し前の時代に作られたものが多いと。
中野:あ、そうですね。そういう感じです。
●あともう1曲はM-4「テキサスの雨」ですが、まずテキサスを舞台にしているところに驚いて。テキサス、行ったことないんですよね?
中野:ないです(笑)。もともとギターのリフができて、そこから膨らませた曲なんです。でも、私は今まで見たことがないものは書かなかったんですよ。
●見たり経験したものしか書いてこなかったと。
中野:でもテキサスにはすごく憧れがあって。漠然とですけど。
●え? 例えば映画とか観て?
中野:あ、そうです。この曲の音を聴いて、乾いた何もない場所を舞台にしたらおもしろいかなと思って、色々と想像して。でもなかなか難しかったです。
●難しいでしょうね。他のメンバーにアレンジの雰囲気を伝えるにしても、みんなテキサス行ったこと無いですよね?
4人:ないです(笑)。
●僕も行ったことないから、「テキサス」と聞いたら荒野とサボテンくらいのイメージしか出てこないし。
中野:実際私もその程度のイメージしかなかったんです(笑)。でも曲も、「ウワーッ!」とテンションが上がる感じでもないし、かといって「いい曲だな〜」って聴き入るような感じでもないし。
●うん、確かに。
中野:だから伝えにくいですよね。でも雰囲気としては自分の中にすごくイメージがあって、サビで拡がる感じとかをメンバーに伝えたんです。
●先ほど中野さんもおっしゃっていましたが、今回の4曲は自分たちのやりたいことをより色濃く出そうと思って作ったんでしょうか?
中野:そうですね。フルアルバム『HELLO』がやっぱり、自分たち的にはすごくポップで明るくて、それはそれで本当に気持ちいいし、“こういうのもできるんだ”って発見もあって、ライブでやってもすごく楽しかったし気持ちよかったんです。
●はい。
中野:でも「さらば青春」という曲があったということもあり、今回はDrop'sの重い面というか…それだけが私たちのやりたいことっていうわけじゃないんですけど…波があるとしたら、前回はポップになった分、今回は少し重い方に振れたかなっていう。
●なるほど。
中野:これからもずっとこれだけが好きなことっていうわけでもないし、EPだからこそ振り切れた部分もあります。
●このEPのリリースがDrop'sの2014年を締め括るわけですが、2014年は慌ただしかったですか?
荒谷:濃い1年でしたね。リリースが多かったということもあるんですけど、アルバム『HELLO』を出してツアーをまわった経験もすごく濃くて、楽しかったし。色々とできたなっていう実感があります。
石橋:曲をいっぱい作ったね。だから濃かったし、忙しかった。
奥山:私個人的には、今作のアナログレコーディングもそうなんですけど、ドラムに関して2014年は新しいことに色々と挑戦させてもらったんです。
●ほう。
奥山:それによって色んな経験をさせてもらえて。EP『コール・ミー』のときからドラムテックの方に入ってもらって、チューニングだったり、ドラムの色んなことを勉強させてもらって。今作『さらば青春』では、ノンホールっていう、穴が開いていないヘッドをバスドラムに張ったりしたんです。ちょっとマニアックな話なんですけど、でもDrop'sの音作りに関してすごく経験値を積むことができた1年だったと思います。
●なるほど。小田さんはどうでした?
小田:曲もたくさん作ったし、ライブでも色んな場所に行くことができて。着実に成長できているなっていう実感があるというか。ワンマンライブに慣れてきて、自分をもっと出せるようになってきた。
●確かに最近のライブは、緊張している感じがまったくない。
小田:はい。そういう部分でも、バンドが着実に成長できているなっていうのを実感できました。
●そんな充実した2014年を経て、2015年は札幌、東京、大阪での完全招待制ライブがありますよね。この3会場は今までのワンマンよりも規模が大きくなっていますよね?
荒谷:そうなんです。東京キネマ倶楽部以外は、ライブはやったことがある会場なんですけど。
●キネマ倶楽部はもともとキャバレーだった会場で、すごく雰囲気のあるライブハウスですが、行ったことはあるんですか?
5人:いや、ないです。
中野:どういう会場かは聞いたり見たりして知っていたんですけど、ずっとやりたかったんです。
●Drop'sは絶対に合うと思います。
中野:楽しみですね。
●どういうライブにしたいですか?
荒谷:ガッツリやりたいですね。どんなライブにするかはまだ決めてないですけど、「ガッツリやる以外になにをやる?」っていうくらい気合いが入ってます(笑)。
interview:Takeshi.Yamanaka
●2015年3月13日(金)
札幌 CUBE GARDEN OPEN 18:30 / START 19:30
●2015年3月20日(金)
心斎橋 Music Club JANUS OPEN 18:30 / START 19:30
●2015年3月27日(金)
鶯⾕ 東京キネマ倶楽部 OPEN 18:30 / START 19:30
※全会場DRINK代別、完全招待制/入場無料、Opening Actアリ(予定)
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