精力的なライブツアーを敢行しながら、約8ヶ月のタームでアルバムをドロップし続けているGalapagosS。今年2枚目となるニューアルバムはその勢いをまさに体現するかのごとく、“疾風怒濤”を意味する『Storm And Stress』というタイトルが冠されている。活動を共にするごとに結束を強め、バンドとしての一体感を増していることはサウンドを聴けば明白だろう。チップチューンを大胆に取り入れつつ、よりアグレッシブで強靭なパンクロックを作り上げた彼ら。唯一無二の“チップ・パンク”に乗り、3人は恐ろしいほどのスピードでブッ飛ばしていく。
●今回は新作リリースに合わせて城DVD『Road To Castle』も会場限定で発売するそうですが、これはツアーで各地をまわる中でお城の魅力に目覚めたということなんでしょうか…?
ゴキミ。:最初は写楽さんが言い出したんですけど、僕らも「それ良いッスね」となって。さらには、お客さんから『日本100名城』っていう本をもらったんですよね。それにスタンプ帳が付いていて「これは集めたいな」というところから、どんどん盛り上がっていきました(笑)。
●ツアー中にお城のスタンプラリーをしている(笑)。
写楽:スタンプを全部押すと、“日本城郭協会"のホームページに名前が載るらしくて。そこにGalapagosSの名前が載せられたら面白いなと(笑)。元々メンバーはライブの日も行動を共にすることが多くて、ツアー先でお城を見に行ったりしていたんですよ。最初は特に目的もなく映像を撮っていたんですけど、全てを上手く合体させて今回の形になりましたね。
●本DVDには、ゴキミ。さんによる城の採点“ゴキミシュラン”も収録されているそうですが。
ゴキミ。:これは僕がそれぞれの城へ行った時に現場で感じる空気だったり、石段を上がった時の疲れ具合とかが反映されていて。石段がキツ過ぎたら点数が低かったりして(笑)、あくまでも僕の個人的な観点から3つ星で採点しています。
●石段がキツ過ぎたら…って、完全に主観じゃないですか(笑)。
新太郎:雨が降っていると、点数も低いよね?
ゴキミ。:気分なんです(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
写楽:ゴキミ。くんは視点が面白くて、「なんで?」っていうところに注目することが多いんですよ。それを面白く映像化できたら良いなと思ってたので、“ゴキミシュラン”はまさにそういう感じになりましたね。
●バンドの状態が良いからこそ、ツアー中にも3人で一緒に楽しめているのでは?
ゴキミ。:そうですね。昨日も3人で釣りに行って、相当楽しんできました。
●普通はバンド歴が長くなるとメンバー同士で遊んだりする時間がなくなったりするものですが、全く逆なんですね。
ゴキミ。:そういうのがなくなっていくことで、日々の生活が年々つらくなってきたりするわけじゃないですか。だったら、たまにそうやってバカみたいに遊ぶ日を作ったほうが良いなと思いますね。
●だからこそなのか今作『Storm And Stress』には、初期衝動感があるというか。
ゴキミ。:自然とそうなりましたね。
●どういうものを作ろうと話し合ったわけではない?
写楽:一応ざっくりと“速い感じで、早く聴き終わるような感覚になるものを”という話はしましたけどね。
●曲を作り始めたのは、前作のツアー終了後?
ゴキミ。:長いツアーが終わってからですね。
新太郎:1ヶ月間くらいで作ったと思います。
●わりと短い期間で一気に作ったんですね。
新太郎:前作のリリース(2014年3月)から6月のツアー開始までに時間があったので、そこでもやれたはずなんですよ。…でもなぜかやらない。
ゴキミ。:危機感がないんだよね(笑)。
●ハハハ(笑)。でも8ヶ月というタームで新作を出そうとは決めていたんでしょう?
新太郎:そうですね。年間スケジュールに組み込んであったから…。
ゴキミ。:やっぱり僕らは夏休みが終わる3日前くらいから(宿題をやっていなくて)焦り出すタイプなので、いつもそんな感じになりますね(笑)。
●反省しないと(笑)。ツアーで得たものも楽曲に反映されているんじゃないですか?
写楽:毎回ツアーをやる中で“もっとこういう曲があったら良いな”って浮かんだイメージから、曲作りに取り組むことが多いんです。だから、(楽曲が)だんだんライブ向きになっているというか。昔は“小難しいことをやってカッコ良いポジションの俺”みたいなものに憧れていたんですけど(笑)、最近はそれがライブで伝わらないと思うのならもっとわかりやすいものをやりたいなっていう。
新太郎:作品を出すごとに、アレンジはシンプルになっているかもしれないですね。複雑なことを全然やらなくなってきたというか。
ゴキミ。:あとは、みんなで歌う機会がかなり増えてきていますね。
●今回は1曲目の「134」から、いきなりシンガロング感がありますよね。これは新太郎さんの作曲ですが、何かイメージはあったんですか?
新太郎:アルバムのタイトルが先に決まっていたので、そのイメージから作ってみようかなと思って。当時は激しい感じの曲を色々と聴いていて、そういうものを参考にした部分もありますね。とにかくライブ映えしそうな感じの曲になったかなと。
●この曲の歌詞は、バイクで国道134号をブッ飛ばしているイメージ?
写楽:そうですね。“速い=バイク”みたいな印象が自分の中にあって。「環七フィーバー」(ギターウルフ)的なイメージから、“じゃあ、道の名前だ!”という感じでした。僕は地元が横須賀なんですけど、そこから江ノ島とかへ行く時によく使う道なんですよ。歌詞の中で“片道20分"とあるんですけど、普通は40分くらいかかる距離なので絶対20分では行けないんです。
●そのくらいブッ飛ばしていると(笑)。曲自体のイメージになったアルバムタイトル『Storm And Stress』はどんな意味で使っている?
写楽:これは“疾風怒濤なアルバムにしたい”っていうところからですね。“疾風怒濤”の正確な意味とは違うかもしれないけど、言葉のイメージどおり“速くて怒涛のように去っていく”という意味です。
●バイクも好きだし、スピード感のあるものが好き?
写楽:そこまでスピードに特別な何かを求めたりはしていないですけど、速いに越したことはないですね。
●ゴキミ。さんは?
ゴキミ。:自分はできればゆっくり景色を見ながら、たまに休憩をして…というほうが良いですね。
●真逆ですね(笑)。
ゴキミ。:人生で言えば…ということですよ。音楽的にはこっちも人生を削ってやっていますから、すごいスピード感ですよ。それこそ遺書ではないけれど、そういうものをぶつけているというか。
●M-4「緩慢なる死」の“あと何年生きれるのかあと何曲作れるのか いつまでこの気持ちを保てるのか"という歌詞には、そういう心境が出ているかなと。
写楽:やっぱり年齢を経てくると、だんだん歌詞が遺書じみたものになってくるんですよ。何が起きるかわからないじゃないですか。急にバイクで転ぶかもしれないし、本当にいつどうなるかわからない。だから年々、今できることや思い付いたことはとりあえず全てやっておこうと思うようにはなりました。
●悔いを残さないようにというか。そういう意味では、今作でも新しいチャレンジをしていたりする?
写楽:今回は「緩慢なる死」や「疾風怒濤」で、前々からちょっとやってみたかったことをしていて。今回のアルバムでは生の音を重視しながら、打ち込みもしっかり大事にしたいなと思ったんですよ。ここ最近はオートチューンをできるだけ使わないようにしているんですけど、そういう部分も残しておきたいなと。
●生音重視の方向に変わりつつ、本来の持ち味であるチップチューン的なサウンドもバランス良く取り入れたと。ゴキミ。さん作曲のM-6「路傍の石」は、さわやかな曲調ですよね。
ゴキミ。:そこにちょっと切なさも入れたという感じですね。
写楽:“取るに足らない存在だけど、応援くらいはできるよ”みたいなイメージで、このタイトルにしました。
ゴキミ。:まさに自分はそんな感じというか、“路傍の石”や“雑草“みたいな気持ちで生きているから。踏まれても踏まれても、僕はずっと雑草みたいにしぶとい感じなんです。だから歌詞も曲にすごく合っていて、本当に良いと思います。
●ありのままを歌った歌詞になっている。
写楽:変な言い方になっちゃうんですけど、(写楽が別でやっている)FLOPPYでは“作品”を作ろうとしているんですよ。自分の思っていることをそのまま歌詞にしたら(楽曲を)私物化することになってしまうので、あえてきれいな言葉を選んだりしていて。でもGalapagosSでは、思っていることをそのまま歌っているというか。…だから、私物化しているんですよね(笑)。
●だからこそ、歌詞には今の心境がダイレクトに現れているわけですよね?
写楽:そうですね。たとえば“1年後のことは考えられるけど、5年後はどうなっているんだろう?”と思ったら、それをそのまま歌詞にしちゃったりする。そういうものも普通に歌詞にできちゃうというか。
●M-8「酒呑童子抄」の“ちょっとで済ますつもりが何故か 限界超えて割とヘロヘロ"という歌詞も、写楽さんのリアルな日常なのかなと思ったんですが…。
写楽:本当にリアルな感じですね。昔の自分だったら、お酒に関する歌詞はナシだったと思うんですよ。プライベートすぎるというか。でも最近はそういうのもあまり気にしなくなって、どんどん表に出して行くのが本当なんじゃないかなと思っているんです。
●素の自分を出せるようになった?
写楽:昔はそういうのを出しちゃいけない雰囲気の時期があったんですけど、自分ではそれがずっと嫌で。“写楽”というパブリックイメージからハミ出さないようにしなきゃいけないというところから、ここ何年かで上手く切り替われたかなと。
●そういった部分が「酒呑童子抄」には、よく出ているわけですね。
写楽:でも“お酒をテーマに”というよりは、すごくロックな感じの曲だったのであまりナヨナヨした悩みは似合わないなと思った部分が大きくて。カラッとお酒に溺れている感じの方が、この曲には合っているなと思ったんです。
●これは新太郎さん作曲ですが、どんなイメージで?
新太郎:この曲は一番最後に作ったんです。あと1曲でアルバムが完成するというところで、誰からも出てこなくて…。その時に自分の中でネタが1つパッと思いついたから、そのまま録ってやろうという感じでした。
●瞬発的に作ったものが、アルバムの最後を飾る曲になったと。
新太郎:これはたまたまですね。メンバーには「入れるところがない!」って言われました(笑)。
ゴキミ。:たとえばアルバムの真ん中で“乾杯!"というのは、ちょっと違うなと思って。やっぱり最後は“お疲れさま、乾杯!"で終わって、次につなげるっていう。
●次の作品やリリース後のツアーにもつながるわけですよね。よりライブ感のある作品になったので、今回もツアーが楽しみなんじゃないですか?
新太郎:ライブでどうなるかっていうのは、早く試してみたいですね。
写楽:今までと違う部分もわりと多いので会場に来てくれるお客さんに聴いてもらうのも楽しみなんですけど、対バンする友だちに「今回はこんな感じなんだよね」っていう感じで見てもらうのも楽しみなんです。
●音楽性の変化に合わせて、対バンも変わってきているのでは?
写楽:ここ何年かは意識的に、自分が普段聴いているようなバンドと対バンしたいと思っていますね。
●たとえばどういう相手と対バンしたい?
ゴキミ。:言っておけば誰か見ているかもしれないから、具体的に名前を出します! えっと…エリック・クラプトンさん、一緒にライブやりましょう!
●エリック・クラプトンさんは『JUNGLE☆LIFE』をたぶん読んでいないと思いますけど(笑)、対バンに関してもジャンルを問わず色んな相手とガンガンやりたいということですね。
ゴキミ。:(対バンの)お話を頂ければ、どんどんなぎ倒して行きますよ。エリック・クラプトン、挑戦待ってるぞ!
一同:ハハハ(笑)。
Interview:IMAI
Assistant:馬渡司