2003年の解散以来、沈黙を続けてきたCURIOが、2012年Vo./Sax.NOBとG.AJが行ったライブをきっかけに活動を再開した。今年9/20にはDr.BRITAINを迎えて、ワンマンライブ“LIFETIME BEGINS AT THIS POP MUSIC”を下北沢GARDENで開催。ブランクを全く感じさせない、熱く鮮度の高いステージを行った彼らは10/29に12年ぶりとなる新作『VIVID』をリリースし、変わらぬ音楽性とこれからの可能性について示した。新作を引っさげ、バンドとしての旅を再開したCURIO。今回は9/20のワンマンを終えたばかりの彼らに再開のきっかけや新作のこと、そしてBRITAIN合流後の初ワンマンについて訊いた。
●まず、NOBさんとAJさんで活動を再開したきっかけはなんだったんですか?
AJ:「あいつ(NOB)、今何してるんだろうな」って小松市(石川県、NOBの地元)まで遊びに行ったんですよね。それがきっかけでした。
NOB:小松市にも共通の友達がいっぱいいるから、みんなを集めてBBQをしたんです。このタイミングで会うっていうことは、バンドのことを話したいテンションだったと思うし、実際そういうムードにもなったんですよ。
●その後、小松市で再結成ライブを行ったんですよね。
AJ:友達が仕切っているイベントに誘われて、出演することになったんです。その後もいろんな人の後押しがあって、東京でファンミーティングをやってみようかっていう話になって。その後でワンマンツアーをまわったんですけど、そこにBRITAINが観に来てくれたんですよね。
BRITAIN:その時に「これは観ている場合じゃないな」って思ったんですよね。会場に来ているお客さんはもっと純度の高いCURIOを観たいんじゃないのかって思った時に、少し責任を感じたんですよ。それから僕も混ぜてもらうことになったんです。
AJ:そうやって3人が集まることになったので「これはしっかりやらないとダメだな」って、本格的に再始動しました。
●今回、12年ぶりの新作『VIVID』が発売されましたが、収録曲(ライブテイク)でもある「GOOD MORNING BLUES」(1999年リリース 3rdアルバム『PAWKY』収録曲)、「ときめき」(1997年リリース 1stシングル)と聴き比べても全くブランクを感じさせないものとなっていますよね。そういったところは何か意識されたことはありますか?
BRITAIN:AJが曲を書いたんですけど、聴いた第一印象は「CURIOの曲来た!」って感じでしたね。デモで聴く段階で、すでにCURIOの曲として聴けるので、そこから組み上げていくのは楽ですよね。
NOB:この作品に関してはCURIOというよりもAJの中の話なんですよ。AJが(CURIO以外でも)たくさん曲を作っている中で、その経過をデモテープとしてもらうんです。それを聴くと、AJの中で一つCURIOっていう枠があるんですよね。そこでチャレンジしたい曲が何曲かあって、そこをまず試しているところがすごく大きいと思う。そうやってCURIOに合うものをプロデュースして提示してくれるので、僕らはすごくやりやすいですね。
●AJさんの中でCURIOの曲として昇華されていくと。
NOB:そう思うと、昔の感じでやっていたことを自然と意識していると思うし、そういう良いムードっていうのをちゃんと再確認できて「ああ、こういう感じだったね!」っていうのがありましたね。「ときめき」や「GOOD MORNING BLUES」に近いところがあったりとか、それが発展したものだったりとか。そういうところが今出せているんじゃないかなって。
BRITAIN:活動していない期間が長かったんですけど、その間みんながちゃんと修行してきたんだなって感じがありますね。
●活動の中で若手のバンドと触れ合う機会も多いと思うんですけど、そこで影響を受けたりしますか?
AJ:意識して変えようとは思わないけど、影響は受けているでしょうね。例えば音楽に限らず、新しい洋服のブランドができたからって自分に合うとは限らないから、影響を受けたとしても似合うかどうかはまた違う話なんです。でも、より自分の作っている音楽に対して自信が持てる材料になっているのかもしれない。だから俺が出すデモの段階で他のメンバーが「CURIOの曲だ」って思うのであれば、それは若手からの刺激が磨いてくれた結果だと思う。影響はもちろん受けているし、新しい音楽もよく聴くけど、だからといって「今これが格好良いから、これをやってみよう」みたいなことにはならないです。
●今作はM-2「DAY DREAM」の“愛し合うひとときだけ 燃え上がる情事”みたいな、大人というか成熟した印象の歌詞が多いように感じますが。
AJ:メンバーがみんな40代になったんですけど、今自分が実感している40代っていうのは、初々しい中高生が感じるような青い感情がまだ混在しているんですよね。そこは今の40代のリアルなところじゃないかなと思うんです。例えば、新しい仕事を始めようっていうことになった時にM-1「BABY BEAT IT !」の歌詞みたいな感情ってあると思うんですよ。それと「DAY DREAM」みたいな不倫もののドラマみたいな感情。そういったものが同居していて、矛盾も抱えているから人間っぽいというか。
●40代のリアルな感情だと。
AJ:これを20代の頃のCURIOでやろうとすると無理があると思うんですけど、今縛られてやるのもおかしな話だし、再スタートはもっと希望に満ちたものであってほしい。そういうところもひっくるめて「こういうものなんじゃないの?」って思います。解釈は受け手に任せるところがあるので「DAY DREAM」は、いやらしく聴こえることもあれば、純愛の曲に聴こえることもあるだろうし。俺としては純愛の曲として捉えてほしいですけどね…。不倫はアカン!(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
●「こう聴いて欲しい」というよりも、受け手に解釈を委ねていらっしゃるんですね。
AJ:音楽自体はコミュニケーションの道具だと思っていて。皆と繋がれる要素があるとすれば、それは音楽だと思うから。たまたま居酒屋でばったり会った人と一緒に飲むことはないと思うんですけど、間に音楽があれば話が盛り上がったりしますよね。ビートルズを聴くにしても20代の感じ方と40代、60代の感じ方って全然違うから、それだけでも盛り上がれるって、コミュニケーションのツールとしてすごく良いと思うんですよ。
●確かに。
AJ:改めて考えると、今自分がやっていることは「俺はこういうことやっているよ」っていう1つの名刺みたいな言い方もするけど、こっちが発信するっていう一方的な感じというよりは、コミュニケーションをとるためって感じているのかな…。後輩のやっている音楽を聴いて、感想を言ったりアドバイスしていく中で感じていることも全部一体化しているというか。振り返ってみると、それがCURIO再始動の理由に十分なっていたような気もします。俺はコミュニケーション自体そんなに上手い方じゃないので、誰にでも人当たり良くできないから、間に音楽がいるのかなって。同じアーティストが好きだったらすぐに仲良くなったりするもんね。
●9/20にBRITAINさんが加わって初のワンマン“LIFETIME BEGINS AT THIS POP MUSIC”が行われましたよね。今回のセットリストで印象的だったのが「粉雪」(1998年リリース 4thシングル)を演奏してから新曲を立て続けにやっていらっしゃったことなんです。これからの活動を見据えたセットリストだったのかなと思ったんですけど。
BRITAIN:新曲がかなりまとまっていたから、レパートリーの中にあるのは当然っていう感覚だったんです。まだライブでやっている曲は少なかったんですけど、僕たちとしては「いつでも行けるぜ!」って感じだったんですよ。
NOB:新曲をたくさんやるってコンセプトを分かってくれる関係性が本当にありがたいし、ちゃんと受け入れてくれているって感じがしましたね。何より、あれだけのお客さんが来てくれたことが本当に嬉しかったです。
●新しい部分もしっかり受け止めてくれるんですね。
AJ:特別「ライブ最高!! 」って言うわけでもないけど、今この規模でやれることがあると思うんですよね。その中で、新曲も含めて曲をたくさんやろうって思ったんです。俺は人のライブに行くと、昔の曲をやってくれないのは寂しいと思うんですよ。だから個人的な考え方で言うと、そういう曲は必ずやっておきたいかなって思うかな。もしかしたら興味のない人は1回しか来てくれないかもしれないので、その1回で知っている曲をやってくれないとがっかりするだろうなと。自然と活動歴が長くなったらライブの時間も長くなっていいのになって思いますね。
NOB:あ、それ分かる! でも、そうすると24時間とかになっちゃうのよ(笑)。
●ははは(笑)。
NOB:リスナーとして観に行った時に、その曲のイントロが始まった時に「あぁー! これだ!!」ってなる、その瞬間が一番嬉しいですもんね。
●確かに聴き覚えのある曲は盛り上がります。
AJ:だから、今の曲も聴いてほしいし、昔の代表曲「ひまわり」(1997年リリース 2ndシングル)だったり「粉雪」、「君に触れるだけで」(1998年リリース 5thシングル)もやりたいなって思うんです。そういうことを考えていたら、自然とあの曲順になったんですよね。
●BRITAINさんは久々のワンマンをやってみてどうでした?
BRITAIN:去年の秋くらいから僕が加入して、対バンライブとかやってきたんですけど、やるからにはめっちゃ良いものを観せたいなっていう欲があったんです。僕らが活動していた20代の頃っていうのは、怖いもの知らずというか、無敵な感じだったんですよね。やっぱりそうじゃないとCURIOじゃないと思っているから、圧巻のライブを常にやりたいなって。そういう思いがあったので、とてもまじめに練習しました(笑)。
●今作には“LIFETIME BEGINS AT THIS POP MUSIC”で演奏した「GOOD MORNING BLUES」、「ときめき」も収録されていますよね。なぜこの選曲にしたんですか?
NOB:サウンド的に“CURIOのできること”っていうのが凝縮されている感じが2曲ともあるんですよね。あの頃の入れたいものを全部入れたっていう曲なんです。
BRITAIN:ライブ録音というのが大変でしたよね。演奏にも若干緊張が走りました(笑)。
●やっていて、録音するっていう意識はあった?
NOB:僕はあえて意識しないようにしました。自分の好きなスタイルがあって、そこに対して挑戦したいっていうのがあるんですよね。ちゃんとこなそうって気持ちも大事なんですけど…。
BRITAIN:心の盛り上がり、みたいな。
NOB:そう。それに対して自分がどれだけ行けるか、ということが一本一本すごく大事なんです。
nterview:馬渡司