音楽メディア・フリーマガジン

メンテナンス13

2ピースというミニマル編成が生み出す、無限の可能性。

メンテナンス13アー写個々のルーツにある日本のインディーロックを下地に、ポストロック、エモ、マスロックなどの様々な要素を独自の解釈で混ぜ合わせる。2ピースという最小構成で放つメンテナンス13の音楽は、その複雑なバックグラウンドを感じさせない美しい“間”の活きた、しなやかな楽曲ばかりだ。9/24に全国へ向けた初のEP『My Sensation』をリリースし、新たな一歩を踏み出す彼ら。今回はKouhei Arisakaを迎え、結成の経緯から制作のスタンス、そして活動に対する彼らの美学について迫った。

 

 

 

●2011年から本格的に2ピース編成で活動を始めたんですよね。

Arisaka:元々高校生の時にやっていた前身のバンドがあったんですけど、音楽性の違いでベースが抜けたんです。そこで新しいメンバーを入れずに「あえて2人でやってみよう」っていうスタンスで2011年からやり始めました。

●前作『現実=空想』(2011年リリース)から、今作をリリースするまでの3年間はどんな活動をされていたんですか?

Arisaka:とにかくライブを沢山やっていました。その間も音源を作るタイミングはあったんですけど、なんとなくライブ優先になってしまうというか、なかなか作る期間が持てなかったんですよね。

●どちらかというとライブに重きを置いている?

Arisaka:もちろん曲を作るのも楽しいんですけど、やっぱりライブなんですよね。あの非現実的な空間の中でやっている雰囲気が好きなのかも知れないです。ステージに立つ人じゃないと分からないと思うんですけど、本番の5〜10分前って押しつぶされそうな緊張感があるんです。あの雰囲気がすごく大事というか、好きなんですよね。

●演奏するまではすごくプレッシャーがあるんだけど、ステージに上がって音を鳴らすと開放される、みたいな。

Arisaka:そうなんですよ。一歩踏み出す前のあの感覚がなんとも言えないというか。あの緊張感って「ウォォ!」ってスタートするためのタメみたいなものだと思うんですよ。それを味わって放つライブっていうのは、一回やってしまうと虜になってしまうというか。

●そういう緊張感ってフロアにも伝わったりすると思うんですけど。受け手がどう感じているかとか考えたりする?

Arisaka:僕は受信者目線ではあまり考えていないかもしれないです。自分たちが出したものに「こういう人達に聴いてほしい」っていう縛りはないんですよ。それはメールにパスワードを付けて送るようなことだと思うんです。

●パスワード?

Arisaka:受信する人はパスワード番号が分からないとメッセージが読めないじゃないですか。でもそれを付けなかったらいろんな人に飛ばせるわけで、だから「どういう人に観てほしい、感じてほしい」っていうのはあまり持っていないです。自由に受け取ってほしいっていうことだけ考えて発信していますね。

●そういうスタンスは曲作りにも通じるものがある?

Arisaka:曲に関しても縛りたくはなくて、例えば海外の好きなバンドって本当にフリーダムに作って、それを発信している。僕らもあまり固定概念を持たないようにしていて、曲作りに関しても「こういうお客さんに作ろう」みたいなものはなくて、基本的にセッションで作っていますね。

●今回の表題曲にもなっているM-1「My Sensation」ですが、“連続”するっていうテーマが歌詞やMVにリンクしていますよね。

Arisaka:歌詞を書いている時に、ふと「これは前も見たな」って思うことがよくあって。繰り返すっていう感覚はそういうデジャヴに限らず、生活の中で会社に行って、仕事をして、家に帰って、また会社に行って、みたいなルーティーンの感覚というか、そういうところを歌にしたいと思って作ったんです。何か抜け出せない、結局答えも見つかっていなくて、連続して終わるっていう。MVもそういう感じで作ってもらいました。

●大袈裟に言うと輪廻というか、ループする感覚を持っていらっしゃるんですかね。

Arisaka:ああ、それはあるかもしれないですね。

●ブログでは「繰り返す中で変化を待つのではなく 変化を探すのが本来のあり方だと思いました」と書かれていましたね。

Arisaka:「これは昨日と全く同じだ…」、「いつになったら終わるんだろう?」みたいな、自分と同じようなことを考えている人はいると思うんですよ。そういう「嫌だな…」っていう繰り返しの中でどうなっていくかは、その人に作ってほしい。終わりを作ってしまったら可能性っていうものがなくなると考えていて、だから歌詞に終わりを作りたくないんです。その先のストーリーは、それぞれのエンドロールがあると思うので。

●ジャケットも地下鉄の扉の写真だったりして“反復する”、“連続する”っていう場所から抜け出すという意味で、今作のテーマにも合っている気がしました。

Arisaka:これはNYの地下鉄の扉を撮ったものなんですけど、たまたま友人のカメラマンがアメリカに行く機会があって、その時の写真を見せてもらったんです。そこでこの写真を見た時に「これだっ!!」って思ったんですよね。

●そういう自分たちの持っているセンスや世界観を大事にしている?

Arisaka:そこは絶対にブレたくないっていうところがありますね。昔から顔もあまり出していなかったり、少しミステリアスな感じだったり、そういう2人で作ってきた世界観が軸になっています。それができ上がってからは、何をやってもその軸がちゃんと付いてきてくれるんですよね。

●これからリリースツアーが始まりますが、どういうツアーにしたいですか?

Arisaka:ツアーという形でまわるのは久しぶりなんですけど、前は力みすぎて周りが見えていなかったと思うんですよ。今は肩の力がだいぶ抜けて余裕がでてきたので、だからこそ1公演ずつしっかり伝えていって、感覚でみんなに聴いてもらえるようなツアーにしたいなと思います。

Interview:馬渡司

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj