昨年結成10周年を迎え、10周年ツアーを大成功させたJ-METALの旗手・GALNERYUS。同ツアーファイナルの渋谷公会堂公演では壮大な表現力と最強のアンサンブル、エモーショナルなステージと唯一無二のヴォーカルでオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだ彼らが、待望となる9枚目のアルバム『VETELGYUS』を完成させた。Vo.Masatoshi “SHO” Onoが加入して4枚目となる今作は、バンドとしてより進化を遂げた彼らの熱量と感情がパッケージされた珠玉の12曲を収録。11年目に突入し、更に加速し続けるJ-METALの旗手に恐れるものはない。
「バッキングとか、サウンドが簡単になっているところもあるんですよね。だからライブをやっていてめちゃくちゃ気持ちいいものになったと思うんです。お客さんも僕らも」
●昨年は10周年アニバーサリーイヤーで精力的に活動されつつ、今年の夏はヨーロッパでの初のワンマンツアーがありましたよね。
Syu:はい。ヨーロッパツアーはすごくいい経験でした。行く前は不安ばかりだったんですよ。どれだけ事前にプロモーションしていただいたとしてもどれだけお客さんが入るかわからなかったし、向こうでちゃんとしたリリースもしたことがなかったので。
●ヨーロッパでのライブ自体が初めてでしたっけ?
Syu:そうです。今まで海外は香港とか台湾に行ったことがあったんですけど、ヨーロッパは今回が初めてで、とにかく不安しかなくて。Youtubeのオフィシャルチャンネルの視聴数やfacebookのアクセスを見ていると、ヨーロッパの人たちが多いから期待はしていたんですよ。“リリースはしていないけど来てくれるんじゃないかな”って。
●うんうん。
Syu:ツアーはドイツから始まったんですけど、初日のドイツからたくさん来てくれて、フランスは更にたくさんの人が来てくれて。「HUNTING FOR YOUR DREAM」(アルバム『ANGEL OF SALVATION』及びシングル『HUNTING FOR YOUR DREAM』収録)や「BASH OUT !」(7thアルバム『PHOENIX RISING』収録)でモッシュが起きたんです。GALNERYUS史上初のモッシュ。
●史上初!
Syu:日本でも起こったことがないんですよ。というか、もともとモッシュが起きるような音楽でもないし(笑)。
Ono:ハハハハハ(笑)。
Syu:なかなか生で聴けないっていうのもあったと思うんですけど、素直に楽しんでくれている感じがあって、感銘を受けましたね。日本人の民族性として恥ずかしがり屋というか、みんなが盛り上がったら自分も盛り上がるという部分が多少なりともあると思うんですけど、ヨーロッパの人たちって1人でも何の気も使わずに楽しむだけっていう。ライブを観るところも、テクニック的なものとかじゃなくて、全体として楽しんでくれてるというか。
●なるほど。
Syu:クラブに飲みに来て好きな音楽がかかったから踊る、みたいな。
Ono:うん、そうだったね。
●今後も海外でやろうと思っているんですか?
Syu:そうですね。来年も同じような形でやることを目標に入れつつ、今回各ライブハウスのキャパはいい感じでクリアできたので、規模も少しずつ大きくできていければいいなと思っています。GALNERYUSは、結成当時から海外でやることを視野に入れていたというか、海外でもやっていけるバンドになることがひとつの目標だったんです。
●世界標準のバンドになりたいと。
Syu:そうそう。OnoさんやTAKAさんが入ってくれて今の布陣になってから、心の底から胸を張れるバンドになったというか。日本語であろうが英語であろうが、日本のメタルバンドとして色んな所に発信していきたいですね。
●今後も楽しみですね。今年は“SUMMER SONIC”にも出演されましたが、フェスもヨーロッパも、言ってみれば初めて観る人が多いじゃないですか。そういう現場をリリース前に経験したことは、バンドにとって大きいでしょうね。
Syu:そうですね。“SUMMER SONIC”も、昔から僕がずっとやってきたような対バン形式のライブっていうか、“限られた時間の中でお客さんの心を掴むんだ!”みたいな、新鮮な気持ちで挑むことができたんです。セッティングも時間がなかったし、リハーサルもなかったし。ワンマンとはまったく違う、真逆の性質を持った現場で。僕はそういう現場が大好きなんです。燃える。
●ドMですね。
Ono:そうそう(笑)。
Syu:ワンマンも、もちろん来ていただいたお客さんに思い切り楽しんでいただくんだっていう気持ちはありますけど、考え方はまったく違いますね。その時々に見せる姿がその人にとっての全てじゃないですか。30分なら30分の中で如何にかっこいいことをするのかっていうのが勝負なので、“もう1回観たい”と思わせることはすごく難しいと思うんです。そういうことを色々と考えながらやりましたね。
●そして今回9枚目…Onoさんが入ってからはオリジナル4枚目となるアルバム『VETELGYUS』がリリースとなりましたが、今作はすごく肉感的というか、熱の高さを感じたんです。今までの作品から感じた構築美みたいな要素ももちろんあるんですけど、それ以上にライブから感じるような熱量が溢れているというか。
Syu:たぶん感情的な部分に訴えかけるものが多いんでしょうね。今まではどっちかというと、演奏や技術だったり、それこそ構築美だったり…芸術作品を見るようなものだったのかもしれないですけど、今回は感情的なところが最前面に押し出されたようなアルバムになったのかなと思うんです。聴いてて、いちばん歌が入ってくると思うんですよ。
●そうですね。
Syu:実は今回、作り方をちょっと変えたんです。僕の曲に関してですけどね。YUHKIさんはいつも通り、すごく構築美あふれる楽曲を作ってくれたんですけど、僕が今回挑戦したのは、ギターのトラックを1つ作って、そこからドラムやベースが入ったオケを作る前に歌メロを完成させるという方法で。
●ほう。
Syu:今まではギターとドラムとベースが入ったオケを作った後に歌メロを乗せていたんですけど、今回はギターと歌…要するに弾き語りの状態で説得力のある曲にするべきだという発想で。昔からたくさんの人に聴かれる音楽って、アコースティックアレンジしても全然OKな曲ばかりじゃないですか。
●そうですね。
Syu:言い換えてみると、無駄がまったくないメロディ。そうなるべくしてなっている歌メロ。それをもっとちゃんと考えないといけないと思ったんです。
●なぜこのタイミングでそういう考えに至ったんでしょうか?
Syu:“まだまだ俺は甘いな”と僕はずっと思っているんです。今までも好きな曲はたくさん作ってきたけど、もっと好きな曲ができるんじゃないかなと思って、考え方を見直したんです。今まではオケを作って、そのオケに対して歌を合わせ込んで作っていた感じがあったんですよね。
●なるほど。サウンド寄りというか。
Syu:そうそう。リズムが食っていたとしたら、歌メロもリズムに合わせて食っていかないといけないっていう。でもよく考えたら「ちょっと待って! なんで歌を合わせなアカンの?」と思い始めて。
●ハハハハ(笑)。
Syu:「歌は奴隷ですか?」と(笑)。そういうのがすごくナンセンスでおかしいとおもったので、単調な感じのバッキングギターを作っておいて、歌メロを作っていって、メロが食うんだったらギターも食わせていこうと。歌にギターを合わせていこうと。それで出来たら、リズムを作っていこうと。歌主導にしていったんです。
●なるほど。それが影響しているのか、伝わりやすさがすごく増していますよね。ライブで初めて聴いてもお客さんをグッと掴む吸引力がある。
Syu:バッキングとか、サウンドが簡単になっているところもあるんですよね。だからライブをやっていてめちゃくちゃ気持ちいいものになったと思うんです。お客さんも僕らも。
●うんうん。
Syu:だから自分たちも感情優先で演奏できるし。“ここ間違わないようにしなきゃ”みたいなことは考えずに、難しいことをやっていたとしてもスルッと表現できる曲たちになったと思います。
●Syuさんは今までのインタビューでもよくおっしゃっていますが、GALNERYUSはテクニック至上主義のバンドと思いきや、例え上手く演奏できなくても感情を爆発させたいという想いでライブを重ねてきたじゃないですか。そういう経緯から考えると、よりバンドがバンドらしくなってきたということでしょうか?
Syu:そうですね。難しいことに挑戦するのはすごく好きなんですけど、それがオリンピック的なことになってしまうと、なんか違うんですよね。オリンピックってタイムや点数を競いますけど、それによって感動を呼べるじゃないですか。でも音楽は、例えばスピード云々で感動するものではないですよね。
●確かにスピードで感動する音楽ってなんか違う気がします(笑)。
Syu:じゃなくて、なぜ速いのか? ということを音で表現しないといけないというか。なぜこの曲は速いのかを音で伝えることができれば、「この曲は速くてかっこいい!」となると思うんです。その辺の考え方を今回見直したんです。
●なるほど。そういう作曲面での考え方の変化は、Onoさんの歌詞や歌にも影響しているんでしょうか?
Syu:楽曲のイメージとかの伝え方は今までと同じだったんですけど、Onoさんが歌いやすいようにしたことで、より意思疎通はスムーズになったと思います。今まで、ブレスを入れ忘れたりしたこともあったので。
Ono:ハハハハ(笑)。
●でもOnoさんは上手いから歌えちゃうという。
Syu:最初できなくても、やっていくうちに歌えちゃう。
Ono:いやいや(笑)。
Syu:ちょっと言い方が難しいんですけど、人工的なものにしたくなかったんですよね。より感情を表現できるもの。
Ono:それは最初にメロを聴いたときに思いました。もちろん表現するのが難しい楽曲も多いんですけど、Syuくんが作ってきた曲を聴いていくと、“だからこういうメロディにしているんだな”という意図というかイメージがなんとなくわかってくる。以前は僕がそこを読みきれなくて、歌詞を書いたときに「そうじゃなくて、もっとこういう感じの方が…」みたいなやり取りもあったんですよ。それでレコーディング中に歌詞を書き直したりとか。
●そうだったんですね。
Ono:でも今回は、そういう部分もクリアしつつ作ることができましたね。
Syu:阿吽な感じです。
●すばらしい。
Syu:ここは煽る部分だとか、ここはキメるところだとか…そういう場面展開のイメージの共通認識が増えてきたというか。
Ono:だからわかりやすいんですよね。以前はレコーディング中にメロを変えることもあったりしたんですよ。でも今回は、Syuくんの作り方が変わったことも影響しているんでしょうけど、メロディが変わったりしなかった。
Syu:オケを最初に作っちゃうと歌メロが迷っちゃうんですよね。いいように考えれば自由度の高い歌メロができるんですけど、最初に歌メロがドン! とあったら説得力が全然違う。変える必要がないというか。
Ono:早い段階で楽曲の完成像が見えていたよね。
●例えばM-2「ENDLESS STORY」とかM-3「THERE'S NO ESCAPE」って、メロディと歌がドカンと入ってくるキャッチーな楽曲ですが、これらの楽曲で歌っていることは、深読みかもしれないですけどお客さんとGALNERYUSの関係性だと捉えたんです。聴いていると、ライブの景色が見えるし、何より曲に入り込める。
Syu:ああ〜、やっぱり一緒に歌ってもらえるっていうのがいちばん嬉しいですからね。今回、初めてSE明けの1曲目(「ENDLESS STORY」)を日本語詞にしたんですよ。やっぱりOnoさんが日本語のスペシャリストでもあるから、まったく迷いなく日本語の楽曲で幕を開けることができたっていう。特に狙って作ったわけじゃなくて、スルッと自然にそうなったんですけど。
●「ENDLESS STORY」の歌詞はSyuさんが書いたんですか?
Syu:そうです。自然な流れで日本語がハマるなと。ちょっと昭和チックな雰囲気があったんですよね。だから別に無理して英語にしなくてもいいんじゃないかなと。で、とりあえず日本語で書いてみたらハマって、プロデューサーも「いいんじゃない」と。
●昭和チックな要素って、キャッチーになり得ますよね。
Syu:上手くやればね(笑)。ダサくなる可能性もあるんですけど。
●でもGALNERYUSはそれを瀬戸際でとどめるセンスが優れていると感じるんですが。
Syu:そこだけを一生懸命やりました。ダサくなるのだけは嫌だと。
●ハハハ(笑)。
Syu:さっき言ってもらった「THERE'S NO ESCAPE」は結構縦ノリですけど、“SUMMER SONIC”で初めて披露したんですよ。そしたらお客さんがジャンプしてノッてくれて。僕らも初めてだったから演奏もそこまで慣れていなかったんですけど、すごく盛り上がって。だからツアーが楽しみなんです。
●楽しみですね。あとびっくりした曲があったんですけど、M-5「ENEMY TO INJUSTICE」という、ラテンというかカントリーというか。
Syu:きたきた(笑)。
Ono:アハハハ(笑)。
Syu:「ENEMY TO INJUSTICE」はYUHKIさんが作曲でOnoさんが作詞なんです。カントリーというか、ウエスタンですよね。
●あ、ウエスタン。
Ono:マカロニ・ウエスタンですね。
Syu:仮タイトルが「Macaroni Rainbow」だったんですよ。マカロニ・ウエスタンな感じと、Rainbow(リッチー・ブラックモアのソロバンド)の感じを合わせたというか。
●これ、すごく新鮮でした。
Syu:いや、他にこんな曲やってるバンドいないでしょ。
●例えてみると、和食に洋食が一品入っているみたいな。
Ono:アハハハハハハハハ(笑)。
●無機質なものに有機的なものが入ったというか。
Ono:まさに有機(YUHKI)な感じですよね(笑)。
Syu:“なんだこれ?”っていう衝撃がありますよね。今までのGALNERYUSにはなかった感じなので。別に今までこういうものがタブーだったわけではないんですけど、GALNERYUSという枠組みの中で作ってきたからこういうものがなかったんでしょうね。おもしろい曲だと思います。
Ono:うん、おもしろい。
●そしてリリース後は16本のワンマンツアーが控えていますけど、さきほどの話にもあったように、ツアーがすごく楽しみなアルバムになりましたね。今回のツアーファイナルは昨年と同じく渋谷公会堂ですが、前回の渋谷公会堂はバンドにすごくマッチしていて、客席との一体感もすごかったじゃないですか。だから今回も期待が大きいんです。
Syu:去年の一体感は涙が出ましたね。最初の1〜2曲目なんて感動のあまり何を演奏しているかもよくわかんなくて。グッときてました。
Ono:そうだったね。渋谷公会堂はすごく気持ちよくて。ステージに出て行って「ワーッ!!」って始まったときの客席の感じが、本当にすごくて。俺、実際に後ろを向いてYUHKIさんに「ヤバい! 涙が出るかもしれない!」って言ってたんです。すごいな。ありがたいなって。
Syu:ステージに出て行ったときの「ウオーッ!!」っていうのは予想していたんですけど、その予想を遥かに超える音量だったんですよね。だから「うわー! これヤベえ!」って。あんな感動はなかなか味わえないです。
●楽しみですね。ツアー全体はどのようにしようと考えているんですか?
Syu:毎回そうなんですけど、自分たちがより楽しめるライブにしていきたいですね。今まではむっちゃ難しいことばかりやってきたから、音楽を楽しめているのかよくわからないときがあるんですよ。
●はい。
Syu:だから今回の『VETELGYUS』もそうだし、心の底から各所で楽しみたいですね。僕らもお客さんも、今までで最高に楽しいライブ。そういうツアーにしたいです。
●何度もインタビューさせてただいていますけど、バンドがどんどん人間っぽくなっているような気がします。
Syu:そうですね。今回は特にそうかもしれないです。前回のツアーが本当にヘビーだったんですよ。体力的な面で。ライブが終わったらもう何も残っていない感じ。要するにライブが長いんです。
Ono:やっぱり3時間近くやってますからね。
Syu:年齢的なものとか関係ないんですよ。ただ、長い。
●それ、自分たちが長くしてるんですよね(笑)。
Ono:だからその辺も見直していきたいなと。やっぱりDVDとかでも、2時間超えるものだとちょっと観るの躊躇しますからね。
Syu:ただね、こうやって言ってますけど、絶対に長くなるんですよ。
●ハハハ(笑)。
Syu:僕はサービス精神が強いというか、やっぱりサービスしたいですからね。“少しでも楽しんでもらいたい”という気が起きたら最後、ツアー中でもどんどん曲が増えていきます。でもそれだとツアーの最初に来てもらった人たちに申し訳ないから、最初からその辺も踏まえて長さと濃さのバランスを考えたものにしつつ、ツアーに挑みたいなと。
●渋谷公会堂が楽しみですね。めちゃくちゃ長かったりして(笑)。
Syu:乞うご期待です。
interview:Takeshi.Yamanaka