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藤原トランキュリティ-大阪女装死金属偶像楽団-

反則級のエンターテインメントショーで音楽シーンをカオティックに染め上げる…

202_藤原2012年5月、“女装デスメタルアイドル”のアレキシ藤原を中心に結成された藤原トランキュリティ。あるときは乙女ポエムを歌う姿が、またあると きは公演中に突然演劇を始める様子等が目撃されており、いま早耳な音楽ファンの間で噂となっている。一体、藤原トランキュリティとはどんなバンドなのか、 バンドを牽引するアレキシ藤原とは何者なのか…その謎を暴くべく、我々はVo.アレキシ藤原氏、Dr.土居氏に突撃インタビューを敢行した。

 

藤原トランキュリティとは?

202_アレキシ藤原

女装デスメタルアイドル
アレキシ藤原

メロディック・デス・メタル、メロスピ、激情系ニュースクールハードコアを足して3で割り台無しにした挙句、スターバックス・コーヒーで一息入れるような、どこかカオティックなエンターテインメントバンド……らしい。アイドル、ツインギターにベース、ドラムス全員が演技に没頭するという、既成概念を打ち破った何もかもが変則・反則な5ピースだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

●藤原トランキュリティさんのプロフィールを見てまっ先に目に入るのが「女装デスメタルアイドル」という単語なんですが…なんでもアレキシ藤原(以下藤原)さんは女装歴22年だそうですね。

藤原:昔から女の人の服装が気になっていたんですけど、10歳くらいのとき、ふとテレビの横に吊ってある母親のワンピースが目に入りまして。それを着て鏡を見たときに“あ、これはイケるぞ”と思ったんですよね。

●感じるものがあったと。

藤原:それはもう、生まれて初めてIRON MAIDENを聴いたときと同じくらいの衝撃でした。その後12歳の頃に、大きな転機があったんですよ。

●その転機とは?

藤原:ヴィジュアル系バンドSHAZNAのデビューです。Vo.IZAMさんが女の人みたいな格好をして歌っていたんですけど、これまでなかったような“女の子っぽい可愛さ”をアピールした見た目だったんです。それがすっごく印象的で“バンドやったら女装してもええんちゃうか?”と思って音楽を始めました。そのときはLUNA SEAのコピーバンドをしていましたね。

●そこが音楽と女装の交差点だったんですね。

藤原:ぶっちゃけた話、音楽にめちゃくちゃ興味があったわけではないです。

●ぶっちゃけるなぁ(笑)。

藤原:まずはメイクの勉強から始めましたからね(笑)。後々デスメタルバンドやギターポップバンドをやっていたんですけど、そこでは初めは女装ができなかったんですよ。

土居:僕はギターポップバンドの頃から一緒にやっているんですが、当時は野郎の骨太な感じというか、Tシャツに短パンスタイルだったんですよ。そこからだんだん“自分のやりたいことを表現していきたい”みたいな欲が出てきたんちゃうかな。

藤原:その頃はある程度自分を封印しながら、とりあえず音楽をやっていた感じで、あまり楽しめていなくて。“もうちょっと自分を出したいな”って思ったとき、女装を音楽とをリンクさせたい気持ちが弾けたんですよね。いろんなものをクロスオーバーさせたかったから、ダンスの練習をしたこともあったし、ライブで寸劇をやっていたこともありました。

●寸劇はどんな内容だったんですか?

藤原:まず女装した私が食パンをくわえながら「遅れちゃう!」って言って出てくるんですよ。で、曲がり角でイケメンとぶつかって、恋に落ちて…そして学校に行ったら「転校生を紹介します」って、さっきぶつかったイケメンが出てくるんです。しかも都合よく私の横の席が空いていて、そこにイケメンが座る、みたいな。

●な、なんという少女漫画展開…!

土居:という感じで、他のバンドが出囃子でSEを流す中、僕らは寸劇をやっていました。

●尺が足りなくなりそうですね(笑)。

藤原:劇をやっていたバンドを辞めた後は、デスヴォイスと可愛い声を使い分けた女装アイドル…“女装デスメタルアイドル”スタイルで歌い始めました。やりたいことを全部やったらこうなった、みたいな。

土居:バンドでも、誰かが「こんなことをしたい」っていうアイディアを持ってきて試してみるパターンが多いですね。ただ、藤原くんの曲は打ち込みで作ってくることが多いから、実際に演奏すると“どうやって叩くんだ!?”っていうのも多いですけど(笑)。

●(笑)。今作の曲はどうやって作ったんですか?

藤原:M-1「用務員の夜」はディーノ伯爵がリフを持ってきて、ボルチオ先輩が仕上げた形ですね。この歌詞にはストーリーがあって。宿題を学校に忘れてしまった竹内くん(10歳)が、仕方なくひとりで夜の校舎に取りに行くんです。でも教室に来てみたら、ほのかに明かりが点いていて…よくよく見てみると、いつもは優しい用務員の政三(56歳)が人体を切り刻んで化け物を作っていたんです…最後には用務員さんが放った化け物に追い回されるっ、ていう歌ですね。

●めちゃめちゃホラーですね…。

土居:藤原くんが頭の中で想い描いていたホラー体験が、そのまま形になっているというか。“もしかしたら、夜の教室には誰かがいて、何かをやってるんじゃないか”っていう。

藤原:学校の怪談が好きだから、そういう都市伝説的な話があればいいなと思っていたんです。M-2「伝線する僕らの距離13denir」の歌詞は個人的に今作の中でいちばん好きなんですけど、パンストの視線から見た女性へのラブソングです。パンストって破れたらすぐ捨てちゃうじゃないですか。だから“使い捨てで切ないけど、短い間一緒にいれてよかったよ”っていう曲です。

土居:仮のタイトルが「パンスト」だったし、それありきで曲をつけていった感じでしたね。

藤原:ちなみにサビは『evolution』の頃の浜崎あゆみを意識して作りました。あゆって“風”とか“街”っていうワードが非常に多いんですよ。あと一人称が“僕”だったり。

●あぁ、確かに! 本当に守備範囲が広いですね。

藤原:この曲をやり始めた頃に、「歌詞がいいね」って言ってもらえたのがすごく嬉しくて。世界観で勝負していこうと思った曲のひとつですね。

土居:ただ初めてライブでやったとき、藤原くんがいきなり「今から新曲の歌詞を読みます!」って言って、一曲まるまる読みあげようとしたことがあったんですよ。あのときは流石にブチ切れましたね。「早く曲やるぞ!」って。

藤原:他のメンバーにもめちゃめちゃ怒られました。

●だから、尺が足りなくなっちゃいますよ(笑)。

土居:まあ、ライブを重ねるうちにどんどん育ってきたし、反響もあったので“ちょっと音源を作ってみようか”という話になりました。

藤原:激情系ハードコアmeets浜崎あゆみです。

●すごいキャッチコピーですね(笑)。

藤原:M-3「女装のポリシー」は、私が今働いている“男の娘”(女の子の格好をした可愛い男の子のこと)カフェ&バー『もこまほ』の2014年度テーマソングなんです。『セーラームーン』のアニメで使われていた「乙女のポリシー」っていう曲から影響を受けてこのタイトルにしました。

●藤原さんご自身のルーツとしても、セーラームーンの存在は大きい?

藤原:大きいですね。それに、アニメの監督をしていた幾原邦彦さんが好きで。幾原さんが担当した『少女革命ウテナ』っていう作品があるんですけど、それを観たときに“自分は男に生まれたけど、お姫様になりたいな”と思って。いかんせんキツい顔で生まれたんで、あまりお姫様っぽい格好はしていないですけど。

●でも、一言に女装と言ってもいろんな服装があると思うんです。興味を持ち始めた頃から今までに、着ている服装も変わってきましたか?

藤原:そうですね。15歳の頃は、映画『マトリックス』で出てくるような皮のコートを着てコテコテのメイクをしていました。その後“可愛い感じにしたいな”と思うようになって、お洒落目な格好でナチュラルメイクをして街に出たり、イベントに行ったりして。かたやバンドではデスメタルをやっていた時期だったので、落差に苦しむ時期でもありました。

●落差、ですか?

藤原:メンバーからは「だぼだぼのアーミーパンツを履いてくれ」って言われるけど「絶対嫌や!」ってなるわけです。それを経て、普段着も着てみようかと思ったのが20歳くらいでした。その頃から大学も女装して行ったり、ショーパンやニーソにも挑戦してみたり。

●服装や環境にも、いろんな変遷があったんですね。

藤原:一般的に女装って、段階があるんですよ。まず最初は、部屋で着てみて首下だけ写メを撮ってみるんです。そこから可愛い服を着て外に出始めると、オフ会で女装の友達ができたりして「化粧品何を使ってるの?」とか女子的な話になるんですよ。いつのまにやらどんどん女の子の格好になっていって、オフ会以外でも外に出ていく時期が出てくるんです。みんなでプリクラを撮りに行って、お茶して…みたいな。

●よりプライベートに食い込んでくる。

藤原:そうです。それ以上進むと、私のように働き出すわけですね。これが今の時代のテンプレ—トです。私の場合はバンドを入り口に、いつの間にやらギュンっと行ったわけですけど(笑)。ちょっと珍しいパターンです。

●急カーブですもんね(笑)。

藤原:「女装のポリシー」は、そういったすべての女装人たちのために作った歌詞なんです。

●あ、上手いこと話が戻ってきた。

藤原:街に出たときのドキドキ感というか、女装の初期衝動を詰め込みましたね。この曲ができたとき、50歳くらいの女装の人に「この歌詞は誰が書いたん? めっちゃええやん!」って言ってもらえて。“あ、ちゃんと響くんや”っていうのが実感できたんです。

●めちゃくちゃいい曲ができたんですね。お話を訊いていると、このバンドはジャンルに捉われず様々な要素を取り入れて昇華されているように感じます。

藤原:“振り幅が広くありたい”という想いがあって。まだ一部にしか知られていない世界感をバンドにフィードバックしていけば、面白くなるんじゃないかなと思うんですよね。私は女装でカワイコぶっているのにデスヴォイスを出したりするし、メンバーの中は白塗りの人やガスマスクを付けている人もいて。統一感がないやつらが集まっているのに、演奏はがっつりまとまっているのがこのバンドのいいところだと思うんです。

土居:なんでもアリって感じですよね。“こうじゃないといけない”っていう制限を設けずにやっていきたいし、俺らは俺らの好きなことをやろうっていうのがある。

●バラバラだけど、バランスは上手く取れている。

藤原:女装を売りとしてやっているバンドですけど、どう見られ方をしても全然いいと思っているんです。

土居:格好だけを売りにしているわけじゃないもんね。

●少しお話しただけでも様々なバックボーンが見られましたし、まずは一度、バンドの世界感に触れてみてほしいですね。

藤原:そうですね。そしてインタビューを見てくれた男性読者は、まず一度女装をしてみてほしいなと思います。パンストを履くだけでもいいです。“あ、こんな感じなのか”って思ったら、それが女装の始まりです。

Interview:森下恭子

インタビュー中に飛び出したアレキシ藤原名言集

誰がブスやねん! 顔が少し劣っているだけよ
取材後半に「読者に言っておきたいことはありますか?」と訊いた際、藤原氏が答えた言葉。あまりにも会話の前後関係をフル無視した返答に土居氏も編集部も呆然。“誰も言ってないよ!”というツッコミも入れられぬままインタビューは終了した。

今作が完売したあかつきには、御堂筋で盛大なパレードをしてやるんだから!
藤原氏が絶対やりたいことのひとつ、らしい。続けて「メンバーとは関係なく個人的にやってみたい」と発言したことから、その本気度が伺える。見てみたい人はぜひCDを買って参加してみよう。たぶんニュースになると思う。

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