アホのために全身全霊をかけて我々を楽しませ続けるコミックバンド・四星球。2013年夏にリリースした3rdアルバム『COMICBAND~アホの最先端~』が第六回CDショップ大賞 地方賞 中国・四国ブロック賞に選ばれて世間を震撼させた彼らが、なんと1200人を動員した伝説のなんばHatchワンマン公演の完全映像化に成功し、4/16にDVDとしてリリースするという。一瞬も立ち止まることなく、一切妥協することもなく、アホと笑い(と音楽)をストイックに追求し続ける彼らに、先日終わったばかりのツアーについて、第六回CDショップ大賞 地方賞 中国・四国ブロック賞受賞の喜び、そして伝説のなんばHatchワンマン公演完全映像化の秘密と今後の野望について訊いた。
●つい先日、“アルバム『COMICBAND~アホの最先端~』リリースツアー&シングル『親孝行 or DIE』リリースツアー”のファイナルシリーズ7本が終わったところですが、ツアーはどうだったんですか?
康雄:めっちゃ時間経ってるような気がしますね。東京は昨日終わったところですけど(※取材は3/10に実施)。
まさやん:年明けてからは、比較的ゆったりしたペースでのライブだったんです。週1本とか、2週に1本とか。それまでは3連チャンとか普通にあったんですけど、そういうゆったりしたペースは新鮮でした。
●腰を据えてアホなことができたと。
U太:でも切り替えが難しかったです。ワンマンは僕らそれぞれテーマを設けているので、1本1本の準備もいっぱいあったし。
●ファイナルシリーズのワンマン4本は毎回違う内容にしたんですか?
康雄:そうですね。気に入っているネタを持ち越したりはありましたけど、基本的には違う内容で。ライブ自体のペースはゆったりしていましたけど、僕はその仕込みや準備に追われていた感じがありましたね。今までもワンマンツアーはやっていましたけど、新譜を絡ませたワンマンツアーはやっていなかったんですよ。だから課題が多いというか、いっぱい絡ませるものがあるんです。去年のアルバムもそうだし、1月に出したシングルもあるし、次の新曲もやらなければならない、それに加えてワンマン4本は違う内容をしなければならない…と、結構考えることが多かったんです。
●なるほど。
康雄:これは音楽の話ではないんですけど…。
●四星球に音楽の話を訊くつもりはないから全然いいですよ。
康雄:1本目のワンマンの京都(2/2@京都MUSE)はめっちゃ入り組んだことをしたんですよ。“四星球ボーカリストオーディション”ということで。
●それライブですよね?
康雄:ライブです。僕の中では“四星球ボーカリストオーディション”は難しい部類のテーマなんです。例えば過去にやった中では“四星中学校文化祭”はわかりやすいものなんです。でも“ボーカリストオーディション”だと、僕にかかる比重も大きければ、3人にかかる比重も大きくなるんです。
●え? どういうこと?
康雄:“ボーカリストオーディション”は、僕が何度もキャラを変えるんです。やっぱりワンマンするからには何か成長が必要じゃないですか。で、僕はキャラが苦手だから、そこを成長させるために“ボーカリストオーディション”をワンマンの1本目に持ってきたんです。
●なるほど。
康雄:更に、僕が着替えとかしている間は3人でライブをまわさないといけない。その部分での成長と、僕のキャラとしての成長…その2つの成長を京都では目標としていたんです。
●自らの課題をまず最初のワンマンで克服しようと。
康雄:そうそう。それをどこでやるかと考えたら、やっぱり京都だったんです。京都ってやっぱり花団が居たから。コミックバンド界の伝説である花団が生まれた地で僕は成長したかった。
●そういうことか。
康雄:だから京都のワンマンはめっちゃ考えたんですよ。これが次のフリになってて、その後にこういうことして、ここミスったら後々難しくなるから…とか。
モリス:あの日はすごかった。
●それ音楽の話じゃないですね。
康雄:だからさっき言ったでしょ。「これは音楽の話ではないです」って。
●あ、そうか。すみません。
康雄:そんな感じで京都のワンマンではめっちゃ頭を使ったから、次のワンマンの高松ではわけのわからんしょうもないことをしようと。映画もそうですけど、頭を使いすぎた人の作品ってだんだんわけわからなくなるでしょ? それはコミックバンドでも同じなんですよね。自分たちの中で強弱をつけるという意味で、高松はしょうもないことをしたんです。
●身体に染み付いたありのままのライブをしようと。
康雄:そうそう。単純に、顔に小麦粉つけたりしたんです。“サーカス団”という設定だったので、ピエロになって顔に小麦粉つけたりして。
●それはニューロティカを馬鹿にしているわけではなく?
康雄:違います。リスペクトです。多大なるリスペクトです。
U太:だから僕、高松では「しょーもな!」というツッコミを連発しましたからね。お客さんにもしょうもないということを認識してもらうために。
●なるほど。
康雄:もっと大きな視点で見ると、京都もしょうもないんですけどね。
一同:アハハハハハハ(笑)。
康雄:そういう感じでファイナルシリーズは色々と考えることが多かったですね。
●要するに、このファイナルシリーズでコミックバンドの向こう側に行こうと。
康雄:そうですね。だから成長したと思います。やっぱり新譜でワンマンツアーをできたことがデカかったですね。ちゃんと新譜の曲で始まって、本編は新譜の曲で締めて。そういう流れもちゃんと作ることができたのでよかったですね。
まさやん:康雄はすごいなって改めて思いました。これだけ短期間に色んなネタを考えてきて、頭の中はどうなってんのかな? って思いました。
モリス:京都と高松の振れ幅なんて狂ってるもんな。
●ハハハ(笑)。
まさやん:セットリストを考えることは普通にできるかもしれないけど、そこにネタを絡めたりとか、ちゃんと3人が目立つ見せ場みたいな箇所も毎回作ってくれるんですよ。すごいなって思いました。
●それは台本みたいな感じでメンバーに渡されるんですか?
康雄:いや、汚いメモを見ながら口頭でメンバーに説明するんです。
まさやん:それを台本として最後にまとめるのがU太なんです。
●そうだったのか(笑)。
康雄:ライブ当日に打ち合わせがあるんですけど、そのときにPAさんや照明さんにも説明しないといけないじゃないですか。そのときのために、U太が清書してくれるんです。
U太:ライブハウスの人なんて初めて会うような人ばかりじゃないですか。しかも僕らわけわからんことやってるから、最大限わかりやすく文章で伝えないといけないんです。A4用紙10枚分くらいになりますからね。
●このバンドすごい!
●ところでつい先日、昨年リリースしたアルバム『COMICBAND~アホの最先端~』で第六回CDショップ大賞 地方賞 中国・四国ブロック賞を受賞しましたよね。中国・四国ブロックのバイヤーさんってアホばかりなんですか?
一同:アハハハハハ(爆笑)。
康雄:あの作品でCDショップの賞を獲ったということは意味のあることだと思いますね。落語のCDが音楽の賞をもらう、みたいな感じ。
●ああ〜、確かに。
康雄:でももっと毒を吐いていいならば「あ、まだそこに僕らが入れられるんだ」と思いました。「まだ音楽だと思っているのか」と。
●ハハハ(笑)。
康雄:だから表裏一体ですよね。評価してもらって嬉しいと思う反面、もっとえげつないものを作らないといけないんだなって。そこを全部綺麗にまとめることができたら“売れる”ということになると思うんです。
●相変わらずかっこいいな。第六回CDショップ大賞 地方賞 中国・四国ブロック賞なんてひとつの通過点でしかないと。
U太:語弊があるかもしれないですけど、僕らの場合はライブのおまけがCD、みたいなところありますからね。
康雄:そうやな〜。ライブハウスの人が選ぶライブハウス大賞欲しいな。もらえへんかったらめっちゃ凹むやろうし。
●そんなライブを大切にしている四星球ですが、今回なんばHatchのワンマンライブの映像を収録したDVD『四星球放送局~なんばハッチお茶の間計画~』がリリースとなりますよね。
4人:はい!
●ある意味、なんばHatchのワンマンはライブ自体が作品だったと思うんですが、ライブを大切にしている四星球としては、こういうDVD作品に対するこだわりや想い入れも強いと想像するんですが。
康雄:色んな思惑がありますよね。Hatchでワンマンをやるということ自体がメモリアルなことだから当然映像にしたかったし。映像作品として残すことによって区切りというか、ライブ活動のひとつの線引きにもなると思うんです。
●はい。
康雄:それに普通はファイナルを映像にするじゃないですか。でも僕らの場合、ツアー1発目をDVDにしてますからね。
●あ、確かに。普通はツアーファイナルを映像化しますよね。
康雄:なんばHatchで勉強したことがすごくあるんですよ。平日の金曜日に2時間のライブを組む。キッチリしたことをやりたい。でもそこで、どうしても外した方がおもろいこととかも出てくるから、アドリブで曲
を変えたりしたんです。その良さは、なんばHatchで初めてわかったことだったんです。
●ほう。
康雄:それまでの僕らは、何十人もスタッフが居るようなライブで、4人の悪ふざけで段取りを変えたら絶対にあかんと思っていたんですよ。でも実際になんばHatchでやったらお客さんも喜んでくれるし、何しろこっちのテンションも上がる。そういうことも勉強になったし、あの経験はその後の僕らのライブに活きてきましたよね。それが“生”ということなんかなって思って。
●ふむふむ。
康雄:今年のファイナルシリーズとかに活きてきたのは、そういう遊びの場所が作れそうな流れを考えることができるようになったこと。そういう意味で、自分たちの中でもどんどんハードルを高く設けることができる作品になったかなと思います。
●四星球が成長する大きなきっかけになったライブだったと。
康雄:DVDにしようと思ったときはそこまで考えてなかったですけどね。でも作品になっていく過程で、このツアー初日のライブを映像にした作品はおもしろい意味があるなと思いました。
●このインタビューは映像が完成する前にやっているので、僕はまだ映像を観ていないんですけど、なんばHatchでやった曲は全部収録されているんですか?
U太:ちょっとだけカットしてます。MCとダブルアンコールをカットしてますけど、それ以外はほぼ入ってます。曲をカットしたくせに、コントが入ってますからね。
●コント?
U太:DVDのためにコントを新録したんです。
●もはやバンドの話ではない(笑)。
U太:おもしろいもので、映像になっているツアー初日のメンバー間のノリとか間よりも、新録したコントの方が完成度が高いですからね。
一同:アハハハハハ(爆笑)。
●では最後に今後の予定を教えてください。
U太:僕ら日本全部を一気に盛り上げることができないバンドなので、各都道府県に合った動きをしていかなくてはいけないんです。それでここ最近は西高東低(※西日本ではめちゃくちゃ盛り上がるけど東日本ではそれほどでもない、という四星球を取り巻く状況)をなんとかしようと関東でのライブをがんばってきていたんですけど、今度は「大阪をどうするねん」ということで。
●え? 大阪?
U太:7月にZepp なんばでワンマンやります。
●ええー!?
interview:Takeshi.Yamanaka